こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
本記事では、エビデンスレベルとは?というところをわかりやすく解説しています。
世の中には、正しい情報と間違った情報が溢れていて、いったい何を信じたらいいのか、わからない人も多いと思います。
なかには「論文や研究が発表されてるから大丈夫!」と思ってる人もいるかもしれませんが、その論文や研究もピンキリです。
しかし、このエビデンスレベルというものを知っていれば、その情報がどのエビデンスレベルに位置して、どのくらい信頼できるのかがわかります。
そんなとき、その情報がどの程度信頼できるか、その判断をするときに知っておきたい「エビデンスレベル」というものをできるだけわかりやすく紹介します。
目次
エビデンスレベルとはなに?わかりやすくまとめてみた【研究レベル】
エビデンス(科学的な根拠)というのは、主には大学や専門機関による研究結果ですが、このエビデンスにはさまざまなレベルがあります。
上の図は「エビデンスピラミッド」と呼ばれているもので、下から上に向かってエビデンスレベルは高くなっていきます。
ピラミッドの頂上、最も信頼度が高いとされているのが複数の研究をもとにした「システマティック・レビュー」や「メタアナリシス(メタ解析)」と呼ばれるものです。
そもそもエビデンスって何?
情報がどの程度信頼していいかどうか、その裏づけとなる「科学的根拠」のことを「エビデンス」といいます。
このエビデンスを出す研究にはいくつかの方法があり、その方法によってエビデンスレベルが変わってきますので、それをこれから紹介していきます。
システマティックレビューとは?
ランダム化比較試験(RCT)などの質の高い複数の臨床研究を,複数の専門家や研究者が作成者となって,一定の基準と一定の方法に基づいてとりまとめた総説のことをいいます.
システマティックレビューとは、あるテーマに関する論文を徹底的に収集し、それらを一定の基準で評価し、評価を満たした質の高い研究だけを選び出し、そのデータを統合して総合評価の結果をまとめたものになります。
メタアナリシス(メタ解析)とは?
統計的手法を用いてランダム化比較試験(RCT)など複数の原著論文のデータを定量的に統合させる総説論文のことを意味します.メタとは分析の分析という意味で,個々の原著論文の分析をまとめてあらに分析するということを表します。システマティックレビューとは異なり,作成方法がエビデンスに基づいているか否かは問われませんが,結果のまとめ方に関しては定量的であることが必須となります.
- 手順①:解析しようとするテーマに従って過去に行われた複数
の研究のデータを集める。 - 手順②:データを計算してまとめる。
- 手順③:まとめたデータを解析する。
- 手順④:解析結果から結論を出す。
メタアナリシス(メタ解析)とは、あるテーマに関する論文を徹底的に収集して、これらを分析する手法です。
診療ガイドラインでは、メタアナリシス(メタ解析)に基づくエビデンスが、もっともエビデンスレベルが高いとされています。
ただ、メタアナリシス(メタ解析)の質は、収集した論文の質や、解析者が恣意的に論文を収集しているのかどうかに左右されるので注意が必要です。
ランダム化比較試験(RCT)とは?
ある試験的操作(介入・治療など)を行うこと以外は公平になるように,対象の集団(特定の疾患患者など)を無作為に複数の群(介入群と対照群や,通常+新治療を行う群と通常の治療のみの群など)に分け,その試験的操作の影響・効果を測定し,明らかにするための比較研究です。
ランダム化比較試験(RCT)では、まずはランダムにグループを分けます。そして、一方のグループに介入(治療など)をおこない、経過をみていく研究です。
ランダムにグループを分けるので、介入(治療など)の有無以外の条件を理論上は揃えることが可能となります。
また、介入(治療など)の実施と、その結果や効果を判定することの時間的前後がはっきりしているというメリットがあります。
ですので、ランダム化比較試験試験(RCT)では、グループ間に効果の差がみられた場合、それは介入(治療など)によってもたらされたと結論づけることができます。
研究のエビデンスレベルは高いですが、時間がかかり、費用も高くなります。また、倫理的に被験者に危害が及んだり、享受できるはずの利益が得られないような介入(治療など)は許されません。
非ランダム化比較試験とは?
治療法の効果を比較するために患者さんをグループ分けする際,くじ引きや乱数表など,作為性を排除するためのランダム化の手法を採用しない試験のことです。対象者のグループ分けに試験実施者の作為性が入り込む可能性があるため,得られた結果の信頼性はランダム化比較試験よりも低くなります。
引用:医学用語解説 比較研究 [非ランダム化 ](ひかくけんきゅう [ひランダムか ] ),公益財団法人日本医療機能評価機構
非ランダム化比較試験は、先ほどのランダム化比較試験(RCT)とは違い、ランダムではなく分けられた集団での比較試験です。
コホート研究とは?
ある特定の疾患の起こる可能性がある要因・特性を考え,対象集団(コホート)を決め,その要因・特性を持った群(暴露群)と持たない群(非暴露群)に分け,疾患の罹患や改善・悪化の有無などを一定期間観察し,その要因・特性との関連性を明らかにする研究方法です.原則として,コホート研究は介入をせず,観察のみで行われる研究です.
- コホート研究
(ある集団を一定期間追跡して観察する) - 今から未来に向けて過程を追う
(ただし、後ろ向きコホート研究というものもあります)
コホート研究とは、仮定した疾患の原因をもつ群(暴露群)と、持たない群(非暴露群)に分けて、長期間追跡し観察して、疾患の原因との関係を調べる研究です。
コホート研究のことを縦断的研究や前向き研究と呼ぶこともあります。
症例対照研究(ケース・コントロール研究)とは?
ある疾患をもつ患者群とそれと比較する対照群に分けて,疾患の特徴や疾患の起こる可能性がある要因にさらされているかどうか,また背景因子の違いなどを比較し,関連を確認するための研究方法です.現在の要因や過去にさかのぼった要因を用いるため,横断研究または後ろ向き研究として分類されます.
- 症例対照研究
(ある疾患をもつ群ともたない群にわけて比較) - 過去にさかのぼって調査
(後ろ向き研究)
症例対照研究(ケース・コントロール研究)とは、ある疾患をもつ患者群と、もたない対照群に分けて、仮定した疾患の原因をもつか、もたないかを過去にさかのぼって調査する方法です。
症例対照研究では、すでに疾患を発症している患者群と、そうでない患者群を集めるので、稀な疾患に対して有効なのが特徴です。
ケースシリーズ(症例集積)や症例報告とは?
ある疾患をもつ患者群,または同じ治療を受けた一連の患者群のみを対象とし,その疾患の特徴を測定・調査した研究報告のことであり,対照群との比較は行わない研究方法です.横断研究として,その疾患をもつ患者群の現状を調べるために用いられることが多いです.
症例報告は、ある一例の報告で、こんな症例を経験しましたというものになります。
ケースシリーズは、特徴的な症例を数例から数十例まとめたものになります。
専門家や個人の意見や考え
専門家や個人の意見や考えなどは、その裏付けとなる研究データがない限り、エビデンスレベルはかなり低いです。
テレビで専門家やコメンテーターが色々話している内容が、「なんらかの根拠となる研究データがある発言」なのか、「ただの個人的な経験」なのかに注目しましょう。
もし、根拠となるものがなければ「ただの意見」だと認識しましょう。
動物を使った研究やin vitro(試験官)の研究
動物を使った研究やin vitro(試験官)の研究が、大々的に宣伝されていることがありますが、エビデンスレベルとしてはもっとも低いです。
ただ、エビデンスがあるか、ないかでいえば、動物を使った研究やin vitro(試験官)の研究でもエビデンスはきちんとあります。
しかし、当たり前ですが動物やin vitro(試験官)と人では、体の複雑さがまったく異なります。人でも効果があることを確認するためには、エビデンスピラミッドを駆け上がっていく必要があります。
まとめ:エビデンスレベルとは?
エビデンスとは、情報がどの程度信頼していいかどうか、その裏づけとなる「科学的根拠」のことです。
このエビデンスは、信頼度によってレベル分けすることができ、上の図は「エビデンスピラミッド」と呼ばれているもので、下から上に向かってエビデンスレベルは高くなっていきます。
ようるすに、エビデンスで情報を判断する際は、エビデンスがあるかどうかだけでなく、そのエビデンスが高いか低いかまで判断する必要があります。
ピラミッドの頂上、最も信頼度が高いとされているのが複数の研究をもとにした「システマティック・レビュー」や「メタアナリシス(メタ解析)」で効果が保証されていれば、信用度はかなり高いといえます。
というわけで今回は、エビデンスレベルについてわかりやすく解説してみました。
世の中には様々な情報が出回っており、それが正しいのかどうなのか、非常に悩ましいところです。
お医者さんが言っていたから大丈夫!と信じるのは少し安易です。その発言が何の情報に基づいているのか、それが信頼できる情報源なのかまで把握しておく必要があります。
なかには「論文や研究が発表されてるから大丈夫!」と思ってる人もいるかもしれませんが、その論文や研究もピンキリです。
しかし、このエビデンスレベルというものを知っていれば、その情報がどのエビデンスレベルに位置して、どのくらい信頼できるのかがわかりますので、これからはぜひエビデンスに注目して情報の確かさを確認する癖をつけていきましょう。
<注意事項> 本ブログに掲載されている情報の正確性については万全を期しておりますが、掲載された情報に基づく判断については利用者の責任のもとに行うこととし、本ブログの管理人は一切責任を負わないものとします。 本ブログは、予告なしに内容が変わる(変更・削除等)ことがあります。