こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
本記事では、輸血用の血液製剤「RBC」がなぜ凝固しないのか、その理由を解説しています。
輸血用の血液製剤「RBC」が凝固しない理由
輸血用の血液製剤のRBCには保存液として、CPD(Citrate,Phosphate,Dextrose)が加えられています。
CPD液には、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ブドウ糖、リン酸二水素ナトリウムが含まれています。
このCPD液に含まれるクエン酸イオンが、血液凝固因子である血液中のカルシウムと化学的にしっかりと結合することで、血液の凝固を防いでいます。
つまり、保存液中のクエン酸ナトリウムによって輸血用の血液製剤のRBCが凝固しないというわけです。
ちなみに、CPD液に含まれているリン酸二水素ナトリウムは緩衝液として、ブドウ糖は赤血球のエネルギー源としての役割があります。
血液の凝固を抑える方法がなかった時代の輸血【クエン酸による血液凝固予防の発見】
1915年以前の輸血は、血液をもらう人と、血液を提供する人を並べて、急いで腕から腕へと血液を輸血する方式(arm-to-arm)が一般的でした。
なぜなら、血液は放っておけば数分で凝固するからです。こういった理由があり、当時は満足な輸血量を確保することが困難でした。
しかし、アメリカ・ニューヨークの病院に勤務する生理学者のリチャード・ルーイソンは、「血液の凝固を止めれば、急いで輸血する必要はないのではないか?」という発想を思いつきました。そこでルーイソンが目を付けたのが「クエン酸ナトリウム」です。当時すでに血液検査では使われていましたが、クエン酸ナトリウムには毒性があるので、人体に使うのはタブーとされていました。しかし、ルーイソンは「薄めれば使えるのではないか」と考え、4年に及ぶ実験の末(患者に危害を及ぼさない濃度の研究し)、1915年に、血液を凝固させず、毒性も出ない抗凝固剤(クエン酸ナトリウム)をつくることに成功しました。
このルーイソンがつくりだした抗凝固剤であるクエン酸ナトリウムを基本としたものが現在でもつかわれています。
というわけで、今回は輸血用の血液製剤『RBC』がなぜ凝固しないのか、その理由を解説してみました。
輸血用の血液製剤の種類については下記の記事で解説していますので興味のある人はぜひご覧ください。
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