造影CTや心臓カテーテル検査などで使用する造影剤は、腎機能を悪化させる薬剤として有名です。
この造影剤は血管を評価するときに使用します。代表例としては、冠動脈、脳動脈、大動脈などです。その他には血流の多い臓器、例えば感染などの炎症の部位を特定したり、悪性腫瘍を評価するときにも使用します。
目次
造影剤腎症(CIN)とは
造影剤腎症とは、造影後48~72時間に起こる腎機能悪化の総称のことです。
とくに腎機能低下患者における造影剤の使用は造影剤腎症の発症リスクとなります。
造影剤腎症の定義/診断
ヨード造影剤投与後、72時間以内に血清クレアチニン(sCr)値が前値より0.5mg/dL以上または25%以上増加した場合に造影剤腎症と診断します。急性腎障害(AKI)の診断基準を用いることもあります。
参考:腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018
造影剤はなぜ腎臓に悪いのか
造影剤が腎臓に悪い確かな原因はわかっていませんが、主に以下の原因が考えられています。
- 腎臓への血流低下
- 腎臓への毒性
造影剤腎症の予防
造影剤は腎機能が悪いほど、リスクは高まります。また、造影剤の使用量が多いほどリスクは高まります。
造影剤腎症の予防としては下記のものがガイドラインで推奨されています。
- NSAIDs(ロキソニンなど)を事前に中止する。
- 検査前後に点滴(主に生理食塩水)をする。
- 短期間で連続して造影剤を使用しない。
参考:腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018
造影剤使用後に透析は必要か
造影剤腎症の予防目的で、造影剤使用後の透析は推奨されていません。
参考:Guideline on the use of iodinated contrast media in patients with kidney disease 2018
また急性腎障害になっている患者さんに対し、造影剤を使用しても予後は変わらないのでは?といった報告もされています。
Ehmann 2023(Intensive Care Med):救急外来受診時点で急性腎障害のある入院患者14,449例の後ろ向き他施設コホート研究です。静脈造影の有無で、退院時までの急性腎障害が遷延したり、180日以内の透析導入に有意差なしと報告されています。
維持透析患者の場合(無尿)
造影剤を使用したからといって、その後に臨時で透析をしたり、スケジュール変更(造影剤使用後に透析をするように予定の変更)をする必要はありません。
残腎機能がある透析患者の場合(非無尿)
残腎機能があっても(非無尿:尿量100mL以上/日)造影剤を使用したからといって、造影剤使用後の前倒し透析は不要です。
ただし、造影剤使用前に下記の予防策を講じることは検討します。
- NSAIDs(ロキソニンなど)を事前に中止する。
- 検査前後に点滴(主に生理食塩水)をする。
- 短期間で連続して造影剤を使用しない。
参考:ACR Manual on Contrast Media 2024
まとめ
- 造影後の“予防目的の透析”は不要。無尿/非無尿とも原則同じ扱い。
- 予防の基本:等張液での前後輸液、ネフロトキシン(例:NSAIDs)の休薬検討、短期間での反復造影の回避。
- 維持透析(無尿):臨時透析や前倒しは不要。通常スケジュールを維持。
- 残腎機能あり(非無尿):高リスクとして造影前後管理を徹底(輸液・薬剤調整)。ただし“前倒し透析”は行わない。
- 検査適応が妥当なら過度に忌避しない:腎予後に大差なしとする報告もある。
- 共有事項:造影剤の種類・使用量、実施した予防策、必要に応じて48–72時間のsCr確認計画をチームで共有。
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