サイトアイコン 透析note【臨床工学技士 秋元のブログ】

etCO2とは|カプノグラムの基礎・正常値・CPR活用まで【新人看護師向け】

新人さんでも迷わないように、「etCO2=数値」「カプノグラム=波形」をセットで理解できる構成にしました。


まず結論(要点だけ先に)

これだけ覚える


etCO2とは?(定義と意義)

定義

etCO2(End-Tidal CO2)は、患者が吐き終わった瞬間の呼気に含まれる二酸化炭素分圧(mmHg)のことです。

「体からどのくらいCO2を出せているか」を1呼吸ごとに数値化します。

臨床での使いみち


正常値とPaCO2の関係

正常範囲の目安

自発呼吸下では35–45 mmHgが目安です。

健常ではPaCO2がetCO2よりわずかに高いです(約2–5 mmHg)。

カプノグラム(波形)の基礎

「カプノグラム(波形)」「カプノメトリ(数値)」のことです。

波形は4相で見る

カプノグラムの異常波形

気道閉塞タイプ

何らかの原因で速やかに呼気ガスを排出することができなくなっている状態です。
肺気腫や閉塞性肺疾患、喘息の呼気延長所見として出現することが多いです。

その他の原因として、挿管チューブなどの気管の不完全閉塞などでも出現することがあります。

自発呼吸出現タイプ

人工呼吸管理中に第Ⅲ相に凹部がみられ、2峰性化が認められる場合、呼気中に吸気が現れたことを意味します。

自発呼吸管理では、喀痰量の増加によりこのような波形となることがあります。

リークタイプ

第Ⅲ相でのプラトーが消失し、吸気相である第Ⅳ相に入っても傾斜を認める場合、何らかのガス漏れ(リーク)があることを示唆します。


カプノグラムの異常波形 → 初期対応(早見表)

波形の特徴 よくある原因 初期対応
シャークフィン
(Ⅱ相遅延+Ⅲ相急峻)
気道狭窄、分泌物、気管支痙攣 吸引、気道拡張、呼気時間延長、回路屈曲の解除
Ⅲ相に切れ込み(curare cleft) 自発呼吸混入、鎮静浅い 鎮静・同調の再評価、換気モード調整
プラトー消失/Ⅳ相傾斜 カフ漏れ、回路リーク、呼気時間不足 リーク点検、カフ圧確認、I:E比見直し
ベースライン上昇 リブリージング(弁不良・換気量不足) 弁/回路点検、呼気時間・換気量・FGFの調整
波形消失 回路外れ、食道挿管、無呼吸、心停止 即時の回路・気道確認、必要ならCPR開始

参考文献:LITFL:波形読影GEアプリガイド

EtCO2の数値からわかること

EtCO2上昇する要因(代表例)

  1. 閉塞性肺疾患(COPD・喘息など):気道抵抗↑で呼気に時間がかかり、CO2排出が遅れて終末値が上がりやすいです。
  2. 心拍出量↑(循環↑):肺に運ばれるCO2が増え、一過性にEtCO2が上昇。
  3. 低換気(分時換気量↓):呼気として捨てられるCO2が減り、体内CO2が蓄積→EtCO2上昇。

臨床の読み方:値だけでなくカプノグラムのⅢ相(プラトー)形成やシャークフィン形状の有無を確認。吸引・気道拡張・呼吸器設定の見直しで改善するかをトレンドで追います。

参考文献:LITFL:カプノグラムの読み方StatPearls:Capnography and Pulse Oximetry

EtCO2低下する要因(代表例)

  1. 肺血栓塞栓症(PE)などで肺血流↓:肺に運ばれるCO2が減るためEtCO2低下(死腔換気↑)。代償的な過換気も加わりやすいです。
  2. 心拍出量↓(ショック・出血など):右室から肺への送血が減り、呼気CO2が低下。
  3. ECMO管理中:膜肺でCO2が除去されるため、呼気由来のEtCO2は低めに出る(自己心や肺機能が回復すると再上昇)。

臨床の読み方:急激な低下は回路外れ・食道挿管・心停止も鑑別。循環評価(脈圧、皮膚温、乳酸など)と合わせ、必要時はABGで裏取りを。

参考文献:LITFL:心停止時のカプノグラフィAHA 2020 ハイライト:CPRでのEtCO2活用

判断のコツ(トレンドと文脈)

参考文献:DFTB:PaCO2–EtCO2解離LITFL:Capnography基礎

etCO2の「上がる/下がる」理由

上昇する主な要因

低下する主な要因


PaCO2−etCO2の解離(広がるときの考え方)

臨床状況 PaCO2−etCO2の傾向 背景/機序 対応のヒント
健常・安定 2–5 mmHg 測定差+肺胞ガス分布 問題なし。トレンド監視。
ショック・低心拍出 拡大(etCO2低下) 肺血流↓→死腔換気↑ 循環再評価(圧迫・輸液・昇圧薬等)。
肺血栓塞栓症(PE) 拡大 換気血流不均衡(V/Q↑) Dダイマー/画像/超音波などで精査。
COPD/喘息増悪 ばらつき/高めに出やすい 呼気延長・Ⅲ相形成不良 吸引・気道拡張・呼気時間延長。

参考文献:McSwain 2010:PaCO2とEtCO2の相関DFTB:解離の臨床解釈

現場での使いどころ(新人向けミニガイド)

挿管直後の確認

鎮静・検査・内視鏡

CPRの質評価とROSCサイン

※低い値が続く場合は胸骨圧迫の質や換気過多を再評価します


測定方法:サイドストリーム/メインストリーム

方式

サイドストリーム/メインストリームの違いと誤差

出典:Medtronic アプリケーションガイド

よくあるエラーと対処


観察・記録のチェックリスト

観察ポイント(数値+波形)

記録のコツ


よくある質問(FAQ)

Q. etCO2の正常値は?PaCO2とどのくらい違いますか?

A. 自発呼吸下の目安は35–45 mmHg。健常ではPaCO2がetCO2より2–5 mmHg高い傾向があります。

Q. 鼻カニュラで低めに出ます。なぜ?

A. サイドストリームは高流量酸素・口呼吸で希釈され低め表示になりやすいです(専用カニュラや口元近接タイプを使用)。

Q. ECMO中はどう読む?

VV-ECMOでは膜肺がCO₂の多くを除去するためetCO₂は低めになりがちです。離脱評価ではetCO₂やPaCO₂/etCO₂比の推移が参考になります。

VA-ECMOでは心拍出量の変化に伴ってetCO₂が変動します。

参考文献:Medtronic アプリガイドASA Standards

参考文献


※本記事は教育目的の概説です。実施は必ず施設のマニュアル・医師の指示に従ってください。

モバイルバージョンを終了