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飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い|図解・表で一発理解(食品例/調理の向き)

ひとことで:飽和脂肪酸は二重結合なしで常温は固体が多く酸化に強め。不飽和脂肪酸は二重結合ありで常温は液体が多く酸化しやすい(多価ほど)。

  • 飽和脂肪酸:バター・ラード・ココナッツ油 など
  • 不飽和脂肪酸:オリーブ油(オレイン酸)、青魚(EPA/DHA)、菜種/大豆油(リノール酸)など

食品例は 日本食品標準成分表(八訂)増補2023 脂肪酸成分表編 に基づく一般的整理です。

飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸とは?

名前からわかるとおり、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は脂肪酸の一種になります。

まず、脂肪酸について軽く説明します

作図:透析note

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を説明する前に、まず脂肪酸についての説明をしたいと思います。

上の図は、脂肪酸の一種であるパルミチン酸の構造です。このように、脂肪酸は炭素(C)が数~数十個、横につながった構造をしています。

もう少し専門的にいえば「脂肪酸とは炭化水素基(疎水性)にカルボキシ基(親水性)がくっついたもの」となっています。

ちなみに脂肪酸は、体内での多くはグリセリン(グリセロール)と結合して、中性脂肪として存在しています(中性脂肪の構造は下の図をご覧ください)。
そして、食べ物に含まれている脂質の大半は中性脂肪(≒トリグリセリド)で、その構成要素である脂肪酸が油脂の特徴や栄養価を決めています。つまり、脂肪酸というのはめちゃくちゃ大事ということです。

作図:透析note

脂肪酸の基本的なことについては下記の記事で解説しているので併せてごらんください。

脂肪酸の構造と種類についてわかりやすく解説します 

脂肪酸の分類

脂肪酸の分類方法
  • パターン①:脂肪酸の中に二重結合があるかないか
    → 飽和脂肪酸 or 不飽和脂肪酸
  • パターン②:炭素の鎖の長さ
    → 短鎖脂肪酸 or 中鎖脂肪酸 or 長鎖脂肪酸

脂肪酸の分類のしかたには、上記のように2パターンあります。

ですので、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸というのは、脂肪酸の分類の「パターン①」のほうで、脂肪酸のなかに二重結合があるかどうかということになります。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い

それでは飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いを説明します。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のイメージ

作図:透析note

  • 飽和脂肪酸
    → 固体の脂
    (肉の脂やバターなど動物性のものに多い)
  • 不飽和脂肪酸
    → 液体の油
    (サラダ油、ごま油、オリーブオイルなど植物性のものに多い)

上の写真をみてもらうとわかりやすいんですが、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のイメージはこんな感じだと思います。
つまり、動物性の肉の脂やバターなど常温で固体で、植物性のサラダ油やオリーブオイルなどのものは常温で液体、っていう感じです。

  • 飽和脂肪酸
    → 動物性の脂で、常温で固体
  • 不飽和脂肪酸
    → 植物性の油で、常温で液体

まとめますと、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いとして、イメージ的には上記のとおりとなります。

ただし、飽和脂肪酸にも植物性であるココナッツオイル(常温(25℃以上)で液体)があり、不飽和脂肪酸にも動物性である魚油などの例外があるので注意してください。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の構造の違い

作図:透析note

しかしこれだけでは飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いを正しく説明しているとは言えません。

ですので、もう少しきちんと飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いを解説したいと思います。

  • パターン①:脂肪酸の中に二重結合があるかないか
    → 飽和脂肪酸 or 不飽和脂肪酸
  • パターン②:炭素の鎖の長さ
    → 短鎖脂肪酸 or 中鎖脂肪酸 or 長鎖脂肪酸

脂肪酸の分類のしかたには、上記のように2パターンあります。
そして、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸というのは、脂肪酸の分類の「パターン①」のほうです。

ですので、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは、脂肪酸の中に二重結合があるかどうかだということです。

不飽和脂肪酸(例:オレイン酸)

作図:透析note

言葉ではなかなか分かりにくいと思いますので、脂肪酸の1つであるオレイン酸を例にして構造を上にのせます。

このオレイン酸の構造をみてもらうと一目でわかるように、炭化水素基部分に「C=C」となっている箇所があります。ここが炭素の二重結合といわれているところです。

つまり、オレイン酸は炭化水素基のなかに炭素の二重結合があるため、「不飽和脂肪酸」ということになります。

飽和脂肪酸(例:パルミチン酸)

作図:透析note

上の図は、飽和脂肪酸であるパルミチン酸の構造です。みてもらうとわかるように、炭化水素基の部分に「C=C」となっている部分がありません。ですので、パルミチン酸は飽和脂肪酸となるわけです。

このように、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは炭化水素基の中に炭素の二重結合「C=C」があるかどうか、たったこれだけです。

飽和脂肪酸とは?

作図:透析note

先ほど説明したように、飽和脂肪酸とは炭化水素基に二重結合がない脂肪酸のことです。

飽和脂肪酸の特徴と性質

  • 常温で固体のことが多い
    (ただし、ココナッツオイルのような例外もある)
  • 酸化しにくい
  • 動物性の脂肪に多い

常温では固体である場合が多く、化学的に安定した構造のため(どうして安定しているのかについては後で説明します)、酸化しにくい脂肪酸です。

動物性の脂肪に多く含まれていますが、ココナッツオイルのような一部植物性の油にも含まれています。

不飽和脂肪酸とは?

作図:透析note

不飽和脂肪酸とは、炭化水素基に二重結合がある脂肪酸のことです。

不飽和脂肪酸の特徴と性質

不飽和脂肪酸の特徴と性質
  • 常温で液体であることが多い
  • 酸化しやすい
  • 植物性の油に多い

不飽和脂肪酸は、常温では液体である場合が多く、化学的に不安定な構造のため酸化しやすい脂肪酸です。

不飽和脂肪酸は二重結合により鎖が折れ曲がり、分子が密に並びにくく融点が低い(常温で液体が多い)。一方、二重結合は酸化の反応点になりやすく、多価になるほど酸化しやすいため、光・熱・空気・金属との接触に注意が必要です。

いわゆるサラダ油やオリーブオイルなどの植物性の油のほとんどが、不飽和脂肪酸を多く含んでいます。同じく不飽和脂肪酸に分類されている魚に多く含まれているオメガ3脂肪酸というものもありますが、詳しくは下記の記事で解説しているので興味のある人はぜひご覧ください。

オメガ3脂肪酸とはなんですか?わかりやすく解説してみた

不飽和脂肪酸の種類

作図:透析note

不飽和脂肪酸は二重結合の数によってさらに分類されます。

二重結合が1つのものは一価不飽和脂肪酸。二重結合が2つ以上のものは、多価不飽和脂肪酸といいます。

前者の一価不飽和脂肪酸は二重結合のある位置によってオメガ9脂肪酸とも呼ばれます。

後者の多価不飽和脂肪酸はオメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸という2つのグループがあります。

不飽和脂肪酸のほうが酸化しやすい理由

作図:透析note

上記は、脂肪酸の一種であるパルミチン酸の構造です。

このように、脂肪酸の基本的な構造は、炭素(C)が数~数十個、横につながっていて、この大部分の炭素(C)に水素(H)がくっつき、端っこのほうに酸素(O)がくっついています。

構造式をみてもらうと分かるように、炭素の2本の手それぞれに、水素が1つずつくっついています。残りの2本の手にはそれぞれ別の炭素につながれています。こうして炭素同士のつながりが続いていて、端っこ部分に酸素がついているのが脂肪酸です。

パルミチン酸の場合、このように炭素と水素が全ての手をつかって隙間なく手をつないでいるため、結合が強いです。

なので酸化にも強く、常温でも固体をしっかり保てるのです。

一方の不飽和脂肪酸はというと・・・

作図:透析note

不飽和脂肪酸であるオレイン酸の構造式を上に示しています。

不飽和脂肪酸の場合、このように炭素と炭素の二重結合(C=C)があるため、この部分に酸素が入りやすく酸化しやすくなります。

専門的な話しになりますが、有機化合物中の炭素と炭素の二重結合(C=C)は、空気による反応性が高く、酸化しやすいという特徴があります。

以下はその詳しい説明です。

二重結合は構造として不安定で酸化しやすい

作図:透析note

原子の結合は「単結合」という結合の仕方が一番安定で、これ以上変質しません。

一般的には我々の身近にある物質のほとんどの結合はこの形です。ですが中には「二重結合」や「三重結合」といって、少し特殊な形で原子同士が結合している場合があります。

二重結合というのは結合のうちの一本がとても切れやすくなっていて、

例えば「紫外線」を照射されたり、「熱」を加えられたり、「酸化剤」や「還元剤」を作用されたりすると結合が切れて変質してしまう結合の仕方です。

ですから二重結合が多い脂肪酸は酸化しやすいのです。

ようするに、二重結合は構造として不安定なので、熱なんかを加えられたりすると簡単に酸化してしまうということです。

補足:バター=飽和脂肪酸ではない!?

食品にはいろんな脂肪酸が含まれています。よく『バター=飽和脂肪酸』という風にいわれたりしますが、実際には『不飽和脂肪酸』もバターには含まれています。

バターの場合ですと、脂肪酸の構成は以下のようになっています。

  • 飽和脂肪酸:69%
  • 一価不飽和脂肪酸:28%
  • 多価不飽和脂肪酸:3%

バターの中に一番多く含まれているのが飽和脂肪酸なので、『バター=飽和脂肪酸』といわれているわけです。

バターに含まれる脂肪酸は、飽和脂肪酸100%ではありませんのでご注意ください。

まとめ:飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い

日本人の食事摂取基準(2025年版)では、脂質の目標量(%エネルギー)に加えて、飽和脂肪酸は成人で上限を設定しています(循環器疾患予防の観点)。詳細は厚労省の資料をご参照ください。
日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント(厚労省)

項目 飽和脂肪酸 不飽和脂肪酸
構造 二重結合なし 二重結合あり(1つ=一価、2つ以上=多価)
常温での状態 固体が多い(例外あり) 液体が多い
酸化のしやすさ 酸化しにくい 酸化しやすい(多価ほど)
代表的な食品 バター、ラード、ココナッツ油 など オリーブ油(オレイン酸)、青魚(EPA/DHA)、なたね/大豆油(リノール酸)など
調理の向き/注意 加熱に比較的強い 低温/短時間向き、保存・光・空気に注意

食品例の分類は 日本食品標準成分表(八訂)増補2023 脂肪酸成分表編 などを総覧化した一般的なまとめです。

  • パターン①:脂肪酸の中に二重結合があるかないか
    → 飽和脂肪酸 or 不飽和脂肪酸
  • パターン②:炭素の鎖の長さ
    → 短鎖脂肪酸 or 中鎖脂肪酸 or 長鎖脂肪酸

脂肪酸の分類のしかたには、上記のように2パターンあります。

脂肪酸の基本的なことについては下記の記事で解説しているので併せてごらんください。

脂肪酸の構造と種類についてわかりやすく解説します 

ですので、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いというのは、脂肪酸の分類の「パターン①」のほうで、脂肪酸のなかの炭化水素基に二重結合があるかどうかということになります。

イメージ的には、飽和脂肪酸(動物性の脂で常温で固体)で、不飽和脂肪酸(植物性の油で常温で液体)で正しいですが、一部例外もありますのでご注意ください。

よくある質問

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは?
二重結合の有無です。飽和は二重結合なしで酸化に強め、常温で固体が多い。不飽和は二重結合ありで酸化しやすく、常温で液体が多い(例外あり)。
どの油が加熱向き?
飽和や一価不飽和が多い油は比較的安定。多価不飽和が多い油は低温・短時間・保存管理に注意(酸化しやすい性質による)。
摂取の目安は?
厚労省は飽和脂肪酸に上限(%エネルギー)を設定しています。詳細は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」を参照。

 

というわけで今回は以上です。

 

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