サイトアイコン 透析note【臨床工学技士 秋元のブログ】

透析中に心房細動(AF)が起きる理由と対策|除水・K/Ca/Mgの考え方

維持透析中に生じる心房細動(AF)はめずらしくありません。

鍵になるのは、除水速度が速すぎないか、そして血清と透析液の電解質差(とくにK・Ca・Mg)が大きくなっていないかの二点です。

本稿では、「なぜ透析中にAFが起きるのか」を押さえたうえで、起きたときの初期対応を解説します。

透析中にAF(心房細動)が発生する理由

透析中の除水速度が速すぎるとAfが発生しやすいです。除水速度は6mL/kg/h前後からAfのリスク上昇が始めるという観察研究があります。

Ultrafiltration rate and incident atrial fibrillation among older individuals initiating hemodialysis, Nephrol Dial Transplant, 2021

また血清と透析液の電解質差(特にK・Ca・Mg)の急変が大きいほど心筋の電気的安定性が損なわれやすいです。

したがって、Af抑制を狙う実務では除水は無理に速くしない、電解質の差を小さく保つの2点が基本方針です。

除水速度

観察研究では、除水速度(UFR)が高いほど不整脈や心血管イベントのリスクが増える関連が示されています。

臨床ではおおむね10–13 mL/kg/h以内を意識し、それ以上になりそうな場合は治療時間の延長を検討します。

カリウム

カリウム(K)は心筋の電気活動に直結します。

透析液Kを低くしすぎると、透析中に血清Kが過度に下がって不整脈リスクが高まります。

Af抑制の観点では、患者の透析前Kに近い濃度へ合わせる(極端に低い設定を漫然と使わない)ことが大切です。

カルシウム

カルシウム(Ca)は心拍のリズム調整と血圧の維持に関与します。

ILR(植込み型ループレコーダー) を用いた前向き観察では、透析液Caが2.5 mEq/Lより高いほどAfリスクが低い関連が報告されています。

ILR(植込み型ループレコーダー) は植込み型心電計のことです。胸の皮下に小さなデバイスをいれて、長期間心電図リズムを記録します。

マグネシウム

マグネシウム(Mg)は“リズムの安定役”です。

Mgが低すぎると上室性不整脈やQT延長のリスクが上がる可能性があります。

Af抑制の視点では、患者さんの血清Mgが低下しすぎていないか確認しましょう。

透析中にAFが起きたら(初期対応の考え方)

透析中の心房細動(AF)は、循環動態の急変や電解質の急激な変化が引き金になります。

初期対応(1–5分)

  1. 除水を一時停止し、下肢挙上で静脈還流を確保。SpO2・血圧・意識レベルを同時に確認します。
  2. リズムの確認:12誘導心電図ででAF(特にRVR)かどうか、QT異常や虚血所見の有無を評価します。
  3. 電解質のチェック:透析前値と現在のK・Ca・Mgを確認します。
  4. レートコントロール:必要であればアトロピンなどの抗不整脈薬を検討します。

 

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