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LDLアフェレーシス(LDL吸着)とは?保険適応・回路・手順を図解【新人CE/看護師向け】

はじめまして、臨床工学技士のナキです。

今回は、新人の臨床工学技士や看護師向けに、LDLアフェレシスの“回路・プライミング・設定値”を新人でも迷わないように1ページで整理します

LDLアフェレーシス(LDL吸着)とは?

LDLアフェレーシスとは、血液中に含まれるLDLコレステロールを除去する治療法のことです。

LDLアフェレーシスでは、実際にはLDL以外にも除去されます。

LDLとは、low density lipoproteinの略で、LDLコレステロールは動脈硬化の原因になる悪玉コレステロールの代表的成分です。

参考:大阪大学腎臓内科ホームページ

血液中の脂質はタンパク質と結合したリポタンパクとして存在しています。
リポタンパクは、カイロミクロン(CM)、超低比重リポタンパク(VLDL)、低比重リポタンパク(LDL)、高比重リポタンパク(HDL)の主に4つに分類されます。このLDL中に存在するコレステロールをLDLコレステロール(LDL-C)といいます。

LDLアフェレーシスの回路構成

LDLアフェレーシスを行う際の回路構成は上の図のように、複雑となっています。

血液を1分間当たり、100mL程度採血して、上の図にある膜型血漿分離器に血液を流します。この膜型血漿分離器で、血液の血漿成分を上の図にある吸着器という部分に流して、血漿成分中のLDL、VLDLを吸着します。その後、血漿は患者さんの身体の中へと返血回路を通して、戻されます。

LDLアフェレーシスで吸着除去されるものは?

LDLアフェレーシスで吸着されるものは主に上記の4つです。

血液中の脂質はタンパク質と結合したリポタンパクとして存在しています。
リポタンパクは、カイロミクロン(CM)、超低比重リポタンパク(VLDL)、低比重リポタンパク(LDL)、高比重リポタンパク(HDL)の主に4つに分類されます。このLDL中に存在するコレステロールをLDLコレステロール(LDL-C)といいます。

リポソーバーの吸着のメカニズム

引用:血漿吸着法:吸着型血漿浄化器リポソーバー,日本アフェレシス学会雑誌

血液中の脂質はタンパク質と結合したリポタンパクとして存在しています。

リポタンパクには、VLDL、LDL、HDLなどがあります。
このうち、LDLを構成するタンパク質の多くはapoB-100といわれるものです。なお、VLDLを構成するアポタンパクも主にapoB-100です。

LDL吸着のメカニズムは、このLDL、VLDLにあるapoB-100が陽性に荷電していることを利用しています。

一方、リポソーバーの中にはいっている「デキストラン硫酸」は陰性に荷電しています。

つまり、マイナスに荷電している「デキストラン硫酸」とプラスに荷電している「apoB-100」との静電相互作用により、血漿中のLDLとVLDLは吸着除去されます。

LDLアフェレーシスの保険適応

参考:厚生労働省保険局医療課リポソーバーシステムとセレソーブシステムの保険適用

LDLアフェレーシスの保険適応は上記疾患ですが、LDLコレステロールの値や薬物療法で効果が得られないなどの細かな要件がありますので、注意が必要です。

実際のところ、LDLアフェレーシスを実施する患者さんとしては、ネフローゼ症候群を呈している場合が多いです。

家族性高コレステロール血症

家族性高コレステロール血症であり、上記のいずれかに該当する者のうち、黄色腫を伴い、負荷心電図及び血管撮影により冠状動脈硬化が明らかな場合であり、維持療法としてのLDLアフェレーシスの実施回数は週1回を限度として算定します。

参考:成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022

巣状糸球体硬化症、膜性腎症又は微小変化型ネフローゼ症候群

巣状糸球体硬化症、膜性腎症又は微小変化型ネフローゼ症候群で、従来の薬物療法では効果が得られず、ネフローゼ状態を維持し、血清コレステロール値が250mg/dL以下に下がらない場合です。

LDLアフェレーシスの実施回数は、一連につき3カ月に限って12回を限度として算定します。

参考:日本アフェレシス学会 難治性ネフローゼ症候群

難治性ネフローゼ症候群へのLDLアフェレーシスの保険適応拡大

治療抵抗性の難治性ネフローゼ症候群の原因疾患として巣状糸球体硬化症(FSGS)がありますが、膜性腎症(MN)や微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)も頻度が高く、難治になれば予後不良で透析を必要となる場合があります。

これらに対して、1992年以来、巣状糸球体硬化症のみに保険適応が限定されていましたが、2024年6月より膜性腎症や微小変化型ネフローゼ症候群にも保険適応が拡大されています。

LDLアフェレーシスでのプライミングと治療に必要な物品

以上が、LDLアフェレーシスのプライミングと治療に必要な物品です。

LDLアフェレーシスでのプライミング方法

先ほど必要物品で記載させていただいた、下記の物品はプライミングで使用します。

まず、生理食塩水1000mL×2でプライミング後に、ラクテック500mL(ヘパリン1500u)×2を使用してプライミングします。

ヘパリンの使用ができない患者さんの場合、ラクテック500mLにフサン10mgをivして代用します。

プライミングに関しては、装置の指示通りにおこなえば、難しくはありません。

カネカの公式サイトでプライミングの動画が公開されていますので、詳しく知りたい方はご覧ください。

参考:血漿浄化装置 KANEKA MA03 操作マニュアル

LDLアフェレーシスの治療条件

基本的には、安定して血液が採血できる短期留置カテーテルを選択します。

ただ、しっかりと皮静脈が発達している患者さんであれば、普通の採血と同じように、腕の正中辺りの皮静脈に穿刺をして、治療をおこなうことも可能です。

リポソーバーは陰性に荷電しているため、血中のキニン系が亢進し、血管拡張作用のあるブラジキニン産生が増加します。血漿流量が20mL/min以下の場合は速やかに分解されます。したがって、血圧が低下傾向であれば、血漿流量を落とすなどの対応が有効です。

血漿流量が15~35mL/minの理由

引用:リポソーバ,添付文書

リポソーバの添付文書に、血漿流量を「15~35L/min程度」と明記されています。また、添付文書のin vitro容量試験では、わずか0.1mL/minというかなり低い血漿流量でリポソーバの吸着能力を評価しています。これは、試験条件そのものが、「遅く流すほど吸着が進む」ということを示唆していると思われます。

日本アフェレシス学会のデバイス手引きでも、血漿流量は15~35mL/minとするよう記載があります。

参考:アフェレシスデバイス使用マニュアル(簡易版)、日本アフェレシス学会

 

LDLアフェレーシスとACE阻害薬:なぜ禁忌なのか/いつ中止する?

引用:リポソーバ,添付文書

吸着器(リポソーバ)の特性上、カリクレイン-キニン系が活性化してブラジキニンが増加します。ACE阻害薬はブラジキニン分解を抑えるため、重篤な低血圧のリスクが上がります。

ブラジキニン発生のメカニズム

LDLアフェレーシスによるブラジキニン発生のメカニズムは、下記のPMDA医療安全情報のサイトが参考になります。

PMDA医療安全情報「ACE阻害薬服用患者の血液浄化時の注意について」

いつ中止する?

メーカーから具体的な休薬期間は定められていませんが、米FDAでは「治療の過去24時間以内にACE阻害薬を使用した患者には、リポソーバの使用不可(禁忌)」と明記されています。

参考:米FDA(LIPOSORBER LA-15)

したがって、『少なくとも24時間』はACE阻害薬の内服を休薬するのが望ましいです。

 

 

 

以上で、LDLアフェレーシスについての簡単な説明を終わります。

 

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