こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。
本記事では、非常に分かりにくい神経系(中枢神経系+末梢神経系)の構造と機能を可能な限りわかりやすく説明しています。
目次
神経系=中枢神経系+末梢神経系
わたしたちの身体全体には、神経系という神経細胞によるネットワークが張り巡らされています。
神経系を構成する細胞には「神経細胞(ニューロン)」と「グリア細胞(神経膠細胞)」の2種類の細胞があります。
- 神経細胞(ニューロン)
- グリア細胞(神経膠細胞)
(以下はグリア細胞の種類)- アストロサイト(星状膠細胞)
- オリゴデンドログリア(乏突起膠細胞)
- ミクログリア(小膠細胞)
- Schwann細胞
神経細胞(ニューロン)によって緻密なネットワーク(神経系)が構成され、脳の中心的な役割、すなわち情報の「やり取り」や「処理」がおこなわれています。
グリア細胞は神経細胞に栄養を運んだり、神経細胞が正常に機能するのを助けています。
神経細胞(ニューロン)の機能的分類
- 求心性神経
(身体の各部位からの情報を、中枢神経に伝える) - 遠心性神経
(中枢神経により情報処理された情報を、身体の各部位に伝える) - 中枢性神経
(身体の各部位からの情報を処理し、決定をおこなう)
神経細胞(ニューロン)は、機能的に上記のいずれかに分けることができます。
神経系(中枢神経系+末梢神経系)の分類と機能
- 中枢神経系
(→脳と脊髄にあります。) - 末梢神経系
(→脳や脊髄のようにかたまってあるのではなく、身体の隅々に張り巡らされています。)
神経系は、脳と脳の下に続く脊髄までの中枢神経系と、中枢神経系から枝分かれして身体の隅々に張り巡らされている末梢神経系に分けられます。
簡単にいえば、脳と脊髄にあるのが中枢神経系、それ以外はすべて末梢神経系です。
中枢神経系の機能
中枢神経系は、脳と脊髄からなり、運動、感覚、自律、機能などの生体の諸機能を統括する。
引用:病気がみえる 〈vol.7〉 脳・神経,p2
中枢神経系は脳と脳の下に続く脊髄にあります。
この中枢神経系の機能は、全身から伝えられる情報を解析・判断し、全身の器官に指令を与える『司令塔』としての役割があります。
末梢神経系の機能
末梢神経系とは、中枢神経系(脳、脊髄)と身体の末梢(筋肉や皮膚の感覚受容器など)を連絡する神経路(神経系の道)のことであり、脳神経と脊髄神経からなる。
引用:病気がみえる 〈vol.7〉 脳・神経,p252
末梢神経系は中枢神経系から枝分かれして身体の隅々に張り巡らされています。
この末梢神経の機能は、身体中の情報を中枢神経に伝えたり、逆に中枢神経から身体中に伝えています。
末梢神経の分類
- 解剖学的な分類
→脳神経と脊髄神経 - 機能による分類
→体性神経(運動神経、感覚神経)と自律神経(交感神経、副交感神経) - インパルスの向きによる分類
→求心性神経と遠心性神経
末梢神経は、「解剖学的な分類」「機能的な分類」「インパルスの向きによる分類」の3パターンの分け方があります。
では、それぞれをみていきましょう。
1.末梢神経の解剖学的な分類
- 脳神経(12対)
→脳から出入りする末梢神経 - 脊髄神経(31対)
→脊髄から出入りする末梢神経
解剖学的な分類では、末梢神経が出入りする部位によって、脳神経(12対、脳から出入りする末梢神経)と脊髄神経(31対、脊髄から出入りする末梢神経)に分けられます。
さらに脳神経(12対)と脊髄神経(31対)は、以下に示すように一対一対に名前がついています。
- 臭神経、視神経、内耳神経、動眼神経、滑車神経、外転神経、舌下神経、三又神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経、副神経
脳神経は主に、頭部、顔面、頸部を支配しています。
- 頚髄神経(8対)
- 胸神経(12対)
- 腰神経(5対)
- 仙骨神経(5対)
- 尾骨神経(通常は1対)
脊髄神経は大きく分けて5種類あり、頚髄神経は8対、胸神経は12対、腰神経は5対、仙骨神経5対、尾骨神経は1対あります。
覚え方は「812551(はいじごごいち)」で覚えましょう。「ハイジ」が「ごごいち」です!
2.末梢神経の機能による分類【体性神経と自律神経】
- 体性神経
① 運動神経
② 感覚神経 - 自律神経
① 交感神経
② 副交感神経
末梢神経は機能により、「体性神経」と「自律神経」の2つに分けることができます。
体性神経
- 運動神経
(→身体の各部への意識的な運動命令を伝える神経) - 感覚神経
(→外部からの情報を中枢神経に送る神経)
体性神経とは、身体が受けた刺激を脳まで伝えたり、逆に脳から身体を動かすための神経系です。
例えば、目で情報をキャッチしたとします。すると、脊髄神経の後根を感覚神経がとおり、脊髄にいきます。次に、脊髄から脳へ情報が伝わります。そして、脳が指令を脊髄に出します。この脳からの指令を脊髄神経の前根を運動神経がとおって、筋肉にいき、腕を動かしたりしています。ポイントは、感覚神経が後根をとおり、運動神経が前根をとおるというところです。
自律神経
- 交感神経
- 副交感神経
自律神経とは、心臓の動き、体温調節、消化、呼吸、ホルモンの分泌などの基本的な生命活動を自動的にコントロールしている神経系です。
末梢神経の断面構造
非常にわかりやすい末梢神経の断面構造図がありましたので、「看護roo!」より引用させていただきました。
上の画像のとおり、末梢神経は多数の神経線維(軸索)の束である神経繊維束が何本か集合した構造をしています。
神経線維束の1つを拡大したものが下の図になります。
- 体性神経
① 運動神経
② 感覚神経 - 自律神経
① 交感神経
② 副交感神経
上の図のように、1本の神経線維束の中に、体性神経(運動神経、感覚神経)や自律神経といった機能のことなる神経線維が一緒に含まれています。
このため、末梢神経は混合神経とも呼ばれます。
末梢神経の神経線維束の中に、基本的には体性神経である運動神経と感覚神経といった機能の違う神経繊維が含まれています。さらに、自律神経を含んでいる神経線維束もあります。
つまり、自律神経のない末梢神経もあるということです。
脳神経の場合は、運動神経と感覚神経のみで構成された末梢神経があります。
補足①:神経線維とは?
ここまでで、何度も神経線維(軸索)という言葉を使ってきましたが、神経線維(軸索)とは、多くの場合、神経細胞の「軸索」のことをいっています。
ちなみに、神経線維(軸索)の長さは、長いもので数十センチにもおよびます。
長いもので数十センチにおよぶ:たとえば足底の筋群を支配するニューロン(α運動ニューロン)の細胞体は、腰髄や仙髄の前角(高さからいうと、上位腰椎のあたり)にあり、その軸索は途中シナプスを介することなく足底にまで分布する(1)。
補足②:神経節とは?
神経節とは、神経節は、末梢神経において神経細胞がコブのように集まった場所のことです。
脳や脊髄から出た末梢神経の神経線維(軸索)は、伸びていく途中に神経節という部位に到達します。
自律神経(交感神経、副交感神経)の場合、脳や脊髄から出た神経線維が直接、制御対象の臓器や器官に到達することはなく、途中の神経節において、1回だけ神経細胞を乗り換えて、制御対象の臓器や器官に到達します(このことを神経細胞の乗り換えると表現します)。
まとめ:神経系(中枢神経系+末梢神経系)の分類
神経系は、脳と脳の下に続く脊髄までの中枢神経系と、中枢神経系から枝分かれして身体の隅々に張り巡らされている末梢神経系に分けられます。
そして、末梢神経系には「解剖学的な分類」「機能的な分類」「インパルスの向きによる分類」の3パターンの分け方があります。
- 解剖学的な分類
→脳神経と脊髄神経 - 機能による分類
→体性神経(運動神経、感覚神経)と自律神経(交感神経、副交感神経) - インパルスの向きによる分類
→求心性神経と遠心性神経
解剖学的な分類では、末梢神経が出入りする部位によって、脳神経(12対、脳から出入りする末梢神経)と脊髄神経(31対、脊髄から出入りする末梢神経)に分けられます。
また、末梢神経は機能により「体性神経」と「自律神経」の2つに分けることができます。
というわけで今回は以上です。
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