サイトアイコン 透析note【臨床工学技士 秋元のブログ】

痛み止めの種類と選び方|NSAIDs・カロナール・オピオイドを一覧で解説

最初に結論

痛み止めは「NSAIDs/アセトアミノフェン/オピオイド/鎮痛補助薬」の4群。痛みのタイプと合併症(腎・胃・心血管、妊娠/授乳)で選びます。

理由:COX阻害の強さと副作用プロファイルが異なるため。CKDや高齢者、併用薬(RA系阻害薬+利尿薬+NSAIDs=トリプルワーミー)は腎障害リスク↑。

根拠:国内学会資料・添付文書・WHO鎮痛ラダーに準拠(本文末の参考文献参照)。

鎮痛剤(痛み止め)の分類と強さ

  1. NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
  2. アセトアミノフェン
  3. 弱オピオイド(非麻薬性鎮痛薬)
  4. 強オピオイド
  5. 鎮痛補助薬

鎮痛剤(痛み止め)として使われる薬は、上記の5つに分類できます。

これらの鎮痛剤(痛み止め)は、痛みの種類や痛みの強さによって使い分けます。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)

NSAIDsとは「Non Steroidal Anti Inhlammatory Drugs」 の略で、非ステロイド性抗炎症薬と訳され、解熱・鎮痛作用に加えて抗炎症作用を示す、ステロイドを除いた薬剤の総称です。

鎮痛のメカニズムとしては、プロスタグランジンの合成を抑えることで、抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を発揮しています。

アラキドン酸からプロスタグランジンが合成されるときに、COX(シクロオキシゲナーゼ)が必要です。NSAIDsは、このCOXを阻害することで、炎症を惹起して痛みや腫れの原因となるプロスタグランジンの合成を抑制しています。その結果、抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を発揮しています。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の働き

NSAIDsの働き
  • 働き①:抗炎症作用
  • 働き②:鎮痛作用
  • 働き③:解熱作用

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の働きをまとめます。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の主な副作用として、胃潰瘍や腸閉塞があります。

実際に患者さんの中には、ロキソプロフェンを自己判断で大量に内服してしまい、胃潰瘍になって貧血となり、輸血が必要となってしまったケースもありました。

ロキソプロフェンは非常に切れ味が良く、鎮痛薬としてよく処方されます。しかし、副作用として胃粘膜障害があります。これを保護する意味合いで、テプレノンカプセルやムコスタを一緒に処方されたりします。なお、過去にロキソプロフェンで吐血歴などがある人はとくに注意が必要です。実際に

NSAIDs一覧(COX選択性・注意点)

一般名 代表製品 COX選択性の傾向 主な注意点
ロキソプロフェン ロキソニン 非選択的 胃腸障害、腎障害、心血管リスクに留意
イブプロフェン 市販多数 非選択的 小児でも使用歴あり。胃腸/腎に注意
ジクロフェナク ボルタレン等 非選択的 心血管イベントへの注意喚起あり
セレコキシブ セレコックス COX-2選択 胃障害は相対的に少なめだが心血管イベントに注意
メロキシカム モービック COX-2寄り 腎/胃への影響をモニタ
エトドラク ハイペン 非選択的 腎/胃に注意

アセトアミノフェン

アセトアミノフェンもNSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)と同様にCOXを阻害しますが、NSAIDsと比較して痛み止めとしての強さはは弱いといわれています。
また、抗炎症作用はほとんどありません。

アセトアミノフェンの鎮痛作用、解熱作用に関しては、脳から脊髄、末梢神経への痛みの伝達を制御することでえられているといわれていますが、詳細はいまだに不明です。

このように、アセトアミノフェンには抗炎症作用はほとんどありません。そのため、アセトアミノフェンはNSAIDsには分類されていません。

アセトアミノフェンの働き

アセトアミノフェンの働き
  • 働き①:鎮痛作用
  • 働き②:解熱作用

アセトアミノフェンの働きをまとめます。

アセトアミノフェンの主な副作用として、肝障害があります。

カロナール

非常によく使われる薬で、乳児にも使える安全な鎮痛・解熱剤です。

名前の由来は、痛みが取れて「かるくなーる」からきています。

カロナールの有名な副作用は肝機能障害です。実際に添付文書にも以下のように記載されています。

【警告】

(1)本剤により重篤な肝障害が発現するおそれがあることに注意し、1日総量1500mgを超す高用量で長期投与する場合には、定期的に肝機能等を確認するなど慎重に投与すること。

引用:カロナール錠®添付文書

痛み止めとしての強さ

  • 痛み止めとしての強さ:オピオイド>NSAIDs>アセトアミノフェン

ここまでで説明したNSAIDsやアセトアミノフェンの痛み止めとしての強さははオピオイドほど強くありません。

そのため、痛みが強い場合にはこれから説明するオピオイドを使用します。

オピオイドとは

オピオイド(opioid)とは、μ、κ、δ受容体に結合し効果を示す化合物の総称のことです。

オピオイドの鎮痛効果のメカニズム

神経細胞のオピオイド受容体に結合し、その細胞の興奮を抑制します。これにより、鎮痛効果が働きます。

オピオイド鎮痛薬の3大副作用

  1. 便秘
  2. 吐き気
  3. 眠気

オピオイド鎮痛薬の3大副作用は上記の3つです。

弱オピオイド(非麻薬性鎮痛薬)

弱オピオイドとは、鎮痛効果に上限があり、それ以上増やしても鎮痛効果が上がらない投与量があるオピオイドのことです。あるいは、軽度から中等度の痛みに対して使用するオピオイドのことです。

強オピオイド

強オピオイドとは、副作用が生じていない範囲で、投与量を痛みにあわせて上限なく増量できるオピオイドのことです。あるいは、中等度から高度の痛みに対して使用するオピオイドのことです。

鎮痛補助薬

鎮痛補助薬とは、「主たる薬理作用には鎮痛作用がなく、鎮痛薬と併用すると、鎮痛効果を高め、特定の状況下で鎮痛効果を示す薬剤」と定義されています。

鎮痛補助薬は、痛みの強さにかかわらず、痛みの種類に応じて使用することが多いです。

リリカ

例えば、リリカは腰の痛みなどの神経からくる痛みに対し使用することが多いです。
ただし、比較的強い薬なので、めまいや立ちくらみなどの副作用がでることがあります。

また、薬を止める際も精神薬などと同じように離脱症状があるので、他の痛み止めのようにすぐに止めることができないので注意が必要です。

ロキソニンとカロナールの違い

持病(腎・肝・胃腸・心血管)や併用薬がある場合は、自己判断での継続服用は避け、医師・薬剤師に相談してください。

痛みのタイプ別の選び方

筋骨格痛(腰痛・捻挫・打撲)の選び方

神経障害性疼痛(坐骨神経痛・帯状疱疹後痛 など)の選び方

頭痛(緊張型・片頭痛)の選び方

片頭痛:痛みの出はじめにアセトアミノフェンやNSAIDsを内服します。吐き気が強い場合は受診して処方薬を検討します。

 Q&A(8問)

Q1. ロキソニンとカロナールの違いは?

ロキソニンはNSAIDs(ロキソプロフェンナトリウム)で、COXを阻害して鎮痛・解熱・抗炎症作用が期待できます。
カロナールはアセトアミノフェンで、主に中枢で鎮痛・解熱を示し、抗炎症作用は弱いです。胃腸・腎への配慮が必要な方や妊娠・授乳中は、まずアセトアミノフェンを検討します。

Q2. 胃に優しいのはどれですか?

一般にアセトアミノフェンは胃腸障害が少ないとされています。NSAIDsではCOX-2選択薬(例:セレコキシブ)が相対的に胃障害が少ない傾向はありますが、ゼロではありません。既往歴や併用薬をふまえて選びます。

Q3. 腎臓が悪い人でも使えますか?

腎機能低下がしている人はNSAIDsを原則避けます。第一選択はアセトアミノフェンになりますが、用量・投与間隔や肝機能に注意します。自己判断での長期連用は控え、主治医に相談してください。

Q4. 何日まで連続で飲んでよいですか?

市販薬は「最小用量・最短期間」が原則です。発熱は3日、痛みは5日を超える場合や、症状が悪化する場合は受診をおすすめします。

Q5. 空腹時でも飲めますか?

アセトアミノフェンは空腹時でも服用できる製品が多いです。NSAIDsは胃への負担を考えて食後を推奨することがあります。必ず各製品の添付文書に従ってください。

Q6. 授乳中はどれが安全ですか?

一般にアセトアミノフェンは授乳中に選ばれやすい薬です。NSAIDsは成分によって注意点が異なります。産科・小児科、薬剤師に相談してください。

Q7. 飲み合わせで注意する薬はありますか?

 ACE阻害薬/ARBや利尿薬とNSAIDsの併用(いわゆる「トリプルワーミー」)は急性腎障害の原因になります。抗血栓薬や一部の降圧薬とも相互作用に注意が必要です。併用中は自己判断での継続を避け、医療者に相談してください。

Q8. 薬が効かないときはどうしたらいいですか?

用量・服用タイミング・痛みのタイプを見直します。神経障害性の痛みは、補助鎮痛薬(処方)を含めた別の治療が必要になることがあります。長引く・増悪する場合は受診をおすすめします。

まとめ:鎮痛剤(痛み止め)の分類と強さ

  1. NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
  2. アセトアミノフェン
  3. 弱オピオイド(非麻薬性鎮痛薬)
  4. 強オピオイド
  5. 鎮痛補助薬
  • 痛み止めとしての強さ:オピオイド>NSAIDs>アセトアミノフェン
  • 鎮痛補助薬:痛みの強さにかかわらず、痛みの種類に応じて使用することが多い

というわけでまとめますと、痛み止め(鎮痛剤)の分類と強さは上記のとおりです。

NSAIDsやアセトアミノフェンの痛み止めとしての強さははオピオイドほど強くありません。そのため、痛みが強い場合にはこれから説明するオピオイドを使用します。鎮痛補助薬は、痛みの強さにかかわらず、痛みの種類に応じて使用することが多いです。

この分類を意識しながら、この痛み止めはどの分類に当てはまるのかを意識すれば、自分の中でスッキリとして覚えられるのではないでしょうか。

参考文献

日本緩和医療学会:WHO方式がん疼痛治療法(鎮痛薬の使用法・三段階ラダー)
jspm.ne.jp

日本緩和医療学会:共通する疼痛治療(COX-2選択薬と胃腸リスクの記載)
jspm.ne.jp

日本腎臓学会:CKD診療ガイドライン2018(NSAIDs/アセトアミノフェンの推奨)
cdn.jsn.or.jp

日本臨床薬理学会:NSAIDsと腎障害(CKDでの回避/長期使用回避の目安)
jspc.gr.jp

STOP-AKI(滋賀県):Triple Whammyへの疑義照会取り組み
seikoukai-sc.or.jp

セレコキシブ(セレコックス)添付文書の注意(心血管イベントほか)
Japic Pins

第一三共ヘルスケア:ロキソニンS 公式製品情報
第一三共ヘルスケア

タイレノールA 公式(製品特性・添付文書)
tylenol.jp

厚生労働省:アセトアミノフェン「使用上の注意」改訂(2023)
厚生労働省

厚生労働省:COX阻害薬と妊娠中のリスクに関する改訂(2024)
厚生労働省

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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