こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
普段、僕は透析室で勤務していますが、透析中に血圧が下がりすぎてしまうという患者さんには、アメジニウム(リズミック®)、ドロキシドパ(ドプス®)、エチレフリン(エホチール®)、ミドドリン(メトリジン®)などを使うことがあります。
そこで本記事では、下記のツイートを深掘りしつつリズミック®について、その作用機序、透析中での使い方、禁忌などについてまとめてみました。
リズミックの作用機序は、ノルアドレナリンの神経終末への再取り込み抑制+分解抑制による血圧上昇です。
ノルアドレナリンの働きとしては、α受容体とβ受容体に作用して血圧を上げます。
具体的には、α1受容体への作用で血管が収縮、β1受容体への作用で心拍数増加、心収縮力増大で血圧を上げます。
— 秋元@臨床工学技士 (@akimotoME) May 16, 2021
目次
リズミック錠(アメジニウムメチル硫酸塩)の作用機序
- 販売名:リズミック錠10mg(大日本住友)、アメジニウムメチル硫酸塩10mg「サワイ」(サワイ製薬)
- 成分:アメジニウムメチル硫酸塩10mg
リズミック®というのは商品名で、その成分はアメジニウムメチル硫酸塩です。
リズミック錠の適応
■効能・効果
本態性低血圧、起立性低血圧、透析施行時の血圧低下の改善
引用:リズミック®錠 添付文書
リズミック®は、添付文書上は「本態性低血圧、起立性低血圧、透析施行時の血圧低下の改善」のときに使用される昇圧薬となります。
リズミック錠(アメジニウムメチル硫酸塩)の作用機序
リズミック®は、交感神経終末から放出されたノルアドレナリンの再取り込みと分解を抑制して血中濃度を上昇させ、α作用とβ作用を発揮します。
引用:菅野義彦,透析ナースの?がわかる!薬剤Q&A50,p76
★ エチルメチル硫酸アメジニウム(リズミック®)
使用量:10~20mg/回
神経末端にノルアドレナリンと競合して交感神経終末に取り込まれることで,ノルアドレナリンの神経終末への再取り込みを抑制し,同時に神経終末においてノルアドレナリンの不活性化を抑制することで間接的に交感神経を亢進させます。α1受容体刺激作用,β1受容体刺激作用により,血管系,心臓系両方に作用し,血圧を上昇させます。
リズミック®は血圧を上げる薬です。ここではその作用機序について解説したいとおもいます。
- リズミックの作用機序は、間接的にα1受容体とβ1受容体に作用して血圧を上げます。
リズミック®を語るうえで重要となる物質は「ノルアドレナリン」という物質です。
交感神経終末から放出されたノルアドレナリンは通常、神経終末に取り込まれてしまいます。
しかし、リズミック®はノルアドレナリンの神経終末への再取り込みを抑制することで、シナプス間隙のノルアドレナリンの量を増やします。
また、ノルアドレナリンの分解も抑制してノルアドレナリンの量を増やします。
- リズミックはノルアドレナリンの神経終末への再取り込みを抑制
- リズミックはノルアドレナリンの分解を抑制
この結果、ノルアドレナリンの作用が強くなって血圧が上がります。
要するに、リズミック®はノルアドレナリンの神経終末への再取り込み抑制と分解抑制によって血圧を上げます。
カテコラミンについては下記の記事でわかりやすく解説しています。
リズミック®は、このような作用機序によって、間接的にα1受容体とβ1受容体に作用して血圧を上げます。
ノルアドレナリンの作用とは?
- α受容体への作用
(α1とα2への作用は同じくらいの強さです) - β受容体への作用
(主にβ1作用で、β2作用は非常に弱いです)
ノルアドレナリンの作用は上記のとおりです。
β1受容体は心拍数増加、心収縮力増大などに関与しています。β2受容体は血管拡張、気管支拡張、消化管平滑筋弛緩、グリコーゲン分解などに関与しています。β3受容体は脂肪分解に関与しています。
リズミック®の作用機序をまとめますと、リズミック®を内服することで、ノルアドレナリンの再取り込みと分解を抑制してノルアドレナリンの血中濃度を上昇させます。
その結果、α1受容体への作用によって、血管が収縮して血圧があがります。
また、β1受容体への作用によって心拍数増加と心収縮力が増大して血圧を上げます。
リズミック錠の作用機序のまとめ
- リズミック®を飲む
- ノルアドレナリンの再取り込みと分解を抑制することで、ノルアドレナリンの血中濃度が上がる。
- ノルアドレナリンのα受容体への作用(α1とα2への作用は同じくらいの強さです)によって血管が収縮して血圧が上がる。
- ノルアドレナリンのβ受容体への作用(主にβ1作用で、β2作用は非常に弱いです)によって心泊数が増加、心収縮力が増大して血圧が上がる。
リズミック®の作用機序をまとめると、上記のようになります。
このように、リズミック®は間接的にα受容体とβ受容体を刺激して血圧を上げています。
リズミック錠の副作用
4.副作用
承認までの臨床試験693例及び仕様成績調査・特別調査5,045例の合計は5,738例中206例(3.59%)に副作用がみられた。そのうち主なものは、動悸(0.71%)、頭痛(0.33%)、嘔気・嘔吐(0.33%)、ほてり感(0.21%)、高血圧(0.27%)等であった。(再審査終了時)
引用:リズミック®錠 添付文書
数は少ないですが、リズミック®の副作用として動悸や頭痛、嘔気・嘔吐などがありますが、リズミック®に重篤な副作用はありません。
リズミック錠の禁忌
禁忌(次の患者には投与しないこと)
- 高血圧症の患者[高血圧症を悪化させる。]
- 甲状腺機能亢進症の患者[甲状腺機能亢進症を悪化させる。]
- 褐色細胞腫のある患者[急激な昇圧発作を起こすおそれがある。]
- 閉塞隅角緑内障の患者[急激な眼圧上昇をきたすおそれがある。]
- 残尿を伴う前立腺肥大症のある患者[尿閉をきたすおそれがある。]
リズミック®の禁忌は、高血圧症、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、閉塞隅角緑内障、残尿を伴う前立腺肥大のある患者さんです。
高血圧症は禁忌となっていますが、高血圧があっても、透析中に低血圧がある患者さんでは、リズミック®が処方されることはよくあります。
透析のときのリズミック錠はいつ飲む?
投与後1~2時間で血中濃度が上昇し、3~4時間で最高血中濃度となるため、透析前の経口投与が透析中の低血圧予防に有用です。効果持続を目的に透析開始2時間後に追加投与することもあります。
引用:菅野義彦,透析ナースの?がわかる!薬剤Q&A50,p76
リズミック®は、服用後2~3時間くらいのときに血中濃度がピークとなります。
薬剤によっては「血中濃度のピーク=効き目のピーク」とならないものもありますが、リズミック®の場合は、服用後1時間後に効果が出始めます。
ですので、リズミック®は透析開始時か早め内服が正しいです。
透析後半に内服しても、透析中に効果が出てきません。
リズミック錠が必要な透析患者さん
糖尿病患者さんや長期透析患者さんで、透析中に自律神経機能障害が原因と考えられる低血圧がある場合、リズミック®やドプス®などの経口昇圧薬を検討します。
内服が困難な場合は、エホチールなどを検討します。
ただし、リズミック®には血管収縮作用があるので、下肢虚血や未治療の冠動脈疾患がある場合は、慎重に検討します。
リズミック錠を飲んで透析後に血圧が上がる場合
透析終了後に血圧が上がってしまうという場合には、早めにリズミック錠を飲んでしまうというのも一つの手です。
透析を開始して2時間くらい経過してからリズミック錠を内服すると、服用後2~3時間後に効果が出始めてしまうので、血圧が上がりやすくなります。
あと、透析終了時の返血も血圧上昇の要因となります。透析終了後の高血圧が気になる場合は、スタッフの方にゆっくり血液を返してもらうようにお願いしてみましょう。血液を返すスピードをゆっくりにすると、血圧の急上昇を防ぐことができる場合があります。
リズミック錠の内服量
■用法・用量
本態性低血圧、起立性低血圧
通常、成人にはアメジニウムメチル硫酸塩として、1日20mgを1日2回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。透析施行時の血圧低下の改善
通常、成人にはアメジニウムメチル硫酸塩として、透析開始時に1回10mgを経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。引用:リズミック®錠 添付文書
添付文書上では、「透析施行時の血圧低下の改善を目的に、透析開始時に1回10mgを経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する」とあります。
透析でリズミックは除去される?
(2)血液透析
糖液患者にアメジニウムメチル硫酸塩10mgを1回経口投与し、経時的に血漿中及び透析液中末変化体濃度を測定した。透析器通過後の血漿中末変化体濃度は、通過前の約1/2であり、透析液によって一部が除去され、透析液への移行がみられた21)。
引用:医薬品インタビューフォーム「リズミック®錠10mg」
リズミック®錠は透析によってある程度は除去されます。
というわけで今回は以上です。
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