サイトアイコン 透析note【臨床工学技士 秋元のブログ】

お酒に強い・弱いを確実に診断できる遺伝子検査について

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

世の中にはお酒に強い人と弱い人がいます。

多くの人はなんとなく「自分はお酒に強いかぁとか、あの人はお酒に弱いなぁ」とかって思っていると思います。

しかし、お酒に強いか弱いかというのは「遺伝子の違い」によって明確に決まっています。

つまり、お酒の強さというのは両親からの遺伝によって決定します。

両親ともに酒豪であれば、その子供も酒豪になり、逆に両親とも下戸であれば、その子供も下戸になります。詳細は記事の後半で解説しています。

本記事では、お酒の強さに関わる遺伝子について深掘りしつつ、その仕組みをわかりやすく解説します。

お酒の「強い」「弱い」を診断する方法

冒頭でも少し話したように、お酒に「強い」「弱い」というのは、ほぼ遺伝子で決まります。

ですので、自分がお酒に強いかどうかを確実に知るためには「遺伝子検査」をする必要があります。

上記の画像は、遺伝子検査を行っている(株)ハーセリーズインターナショナルから引用したもので、お酒のアルコールの分解能力を9つのパターンで分類しています。

ただ、いきなりこれを見ても何のことかわからないと思いますので順を追って解説します。

アルコール(≒エタノール)の分解

まず、初めに飲んだお酒がどのように体内で分解されるのかの過程を解説します。

一般的に、飲んだお酒の20%胃で、残りの80%は小腸で吸収されるといわれています。数値は文献によって多少の違いがありますが、大半は小腸で吸収されると考えてください。

お酒のことを「アルコール」といったりしますが、化学の世界では「エタノール」というのが正しいです。アルコールの中に、エタノール、メタノールなどといった感じでいくつか種類があります。

胃や小腸で吸収されたエタノールは血液中に溶け込みます。そして、大部分は肝臓においてアルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに分解されます。

次にアセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって酢酸に分解され、最終的に水と二酸化炭素にまで分解されて体外に排出されます。

  • アルコール脱水素酵素(ADH):エタノールをアセトアルデヒドに分解
  • アルデヒド脱水素酵素(ALDH):アセトアルデヒドを酢酸に分解

これらアルコール脱水素酵素(ADH)とアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きの強さは、遺伝子によって決まっています。

ADHとALDHによるエタノールの分解

お酒(エタノール)に強い、弱いというのはアルコール脱水素酵素(ADH)とアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きが強いかどうかによって診断することができます。

ただし、後述しますが、一般にお酒に強い・弱いというのはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きの強さで語られることが多いです。

上の図で示したものは、エタノールの分解の過程です。

上の図の赤文字で書かれているADH、ALDH、カタラーゼ、CYP2E1というのは、どれも分解に関わる酵素ですが、特に重要なのはADHとALDHです。

これら酵素の働きの強さを決めているのが「ADH遺伝子」と「ALDH遺伝子」です。

ADH遺伝子からアルコール脱水素酵素(ADH)、ALDH遺伝子からアルデヒド脱水素酵素(ALDH)がつくられます。

わたしたちはADH遺伝子とALDH遺伝子を必ずもっています。

ただし、これら遺伝子の型(専門的には遺伝子多型といいます)に少し違いがあり、それによってお酒の分解能力に個人差が出てきます。

特にお酒に「強い」「弱い」にはALDH2遺伝子が重要

お酒を分解する能力に関わる遺伝子には「ADH遺伝子」と「ALDH遺伝子」がありますが、一般に「お酒に強い人・弱い人」の違いは、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の活性の強さで語られることが多いです。

アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)はALDH遺伝子から作られます。

つまり、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の活性が強いと「お酒に強い人」、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の活性が弱いと「お酒に弱い人」というわけです。

もっと詳しくいうと、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)には19種類のアイソザイムがありますが、特にアセトアルデヒドの分解に強く影響しているのは2型のアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)です。

なお、アイソザイムとは、同じ化学反応を触媒する異なる酵素型のことです。私たちの体内では、同じ名前の酵素でありながら、その分子の型が少しだけ異なる酵素があります。このような、少しだけ型が異なる酵素をアイソザイムといいます。

アルデヒド脱水素酵素(ALDH)についてもっと詳しく知りたい方は下記の記事でまとめていますので、よかったらご覧ください。

アルデヒド脱水素酵素(ALDH)とはなに?わかりやすく解説してみました

この2型のアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)をつくるALDH2遺伝子には以下の2種類の遺伝子多型があり、お酒に強いかどうかはこのALDH2の遺伝子多型で決まります。

ALDH2の遺伝子多型
  • ALDH2*1遺伝子:活性型
    (アセトアルデヒドの代謝の活性が強い)
  • ALDH2*2遺伝子:非活性型
    (アセトアルデヒドの代謝の活性がない

アセトアルデヒドの代謝の活性が強い活性型のALDH2遺伝子はALDH2*1遺伝子、活性のない非活性型のALDH2遺伝子はALDH2*2遺伝子と表記します。

私たちは、この2つの遺伝子のいずれかを2つもっています。

つまり、以下の3パターンの人に分けられます。

  1. ALDH2*1とALDH2*1を持っている人(ALDH2*1/*1)
  2. ALDH2*1とALDH2*2を持っている人(ALDH2*1/*2)
  3. ALDH2*2とALDH2*2を持っている人(ALDH2*2/*2)

お酒の強さを決める「ALDH2」活性の3タイプ

ALDH2遺伝子には、アセトアルデヒドの代謝の活性が強いALDH2*1遺伝子と活性のないALDH2*2遺伝子があります。

この2種類の遺伝子の内のどれか2つを私たちはもっています。

つまり、以下の3パターンの人に分けられます。

  1. ALDH2*1とALDH2*1を持っている人(ALDH2*1/*1):お酒に強い人
  2. ALDH2*1とALDH2*2を持っている人(ALDH2*1/*2):お酒に弱い人
  3. ALDH2*2とALDH2*2を持っている人(ALDH2*2/*2):お酒にかなり弱い人
ALDH2*1/*1(野生型、NN型)の人はお酒に強い人です。
ALDH2*1/*2(ヘテロ欠損型、ND型)の人は、アセトアルデヒドの代謝の活性が強いALDH2*1遺伝子と活性のないALDH2*2遺伝子を1つずつ持っています。ですので、お酒に強い人の半分くらいはアセトアルデヒドを分解する能力があると思うかもしれませんが、実際には1/16程度しかアセトアルデヒドを分解する力はありません。ですので、このタイプの人もお酒に弱い人です。
ALDH2*2/*2(ヘテロ欠損型、ND型)に人は、アセトアルデヒドを分解する力が全くないので、少量の飲酒で顔が赤くなったり、気分が悪くなる人で、いわゆる下戸と呼ばれています。

お酒の強さを判定する簡単な問診

初めてビール一杯を飲んだとき、赤くなりましたか?という質問が一番正確に診断できます。

ただ、覚えていない人も多いと思いますので、そういう場合は遺伝子検査をやるのが確実に、お酒に強いかどうかの診断ができます。
»『アルコール感受性遺伝子分析キット』

お酒に強い人と弱い人を確実に知れる遺伝子診断

上の画像は、遺伝子検査を行っている(株)ハーセリーズインターナショナルの画像を改変したものです。

左側の縦軸のADH1Bというのは、エタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素のことで、これはあまりお酒の強さとは関係しません。

一般に、お酒に強い・弱いで重要となってくるのは、横軸の2型のアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の働きの強さです。

ALDH2の遺伝子多型
  • ALDH2*1遺伝子:活性型
    (アセトアルデヒドの代謝の活性が強い)
  • ALDH2*2遺伝子:非活性型
    (アセトアルデヒドの代謝の活性がない

ALDH2*1遺伝子を2つ持っている人はお酒に強い人です。

1つでもALDH2*2遺伝子をもっていれば、お酒に弱い人ということになります。

日本人の約半数はお酒に弱い人で、約半数はお酒に強い人です。

このALDH2遺伝子は、口腔内を綿棒でこすって送るだけの簡単な検査で調べることができます。
»『アルコール感受性遺伝子分析キット』

両親からの遺伝でお酒の「強い」「弱い」は決まる!

私たちは両親から1つずつ、ALDH2遺伝子を受け継いでいます。

例えば、両親ともにアセトアルデヒドの分解能力の強いALDH2*1遺伝子を2つずつ持っていれば、当然その子供もALDH2*1遺伝子を2つ持つお酒に強いタイプとなります。

しかし、もし母親の方がアセトアルデヒドの分解能力の弱いALDH2*2遺伝子を1つでも持っていれば、子供にその遺伝子が伝わり、お酒に弱いタイプになる可能性があります。

両親ともにアセトアルデヒドの分解能力の強いALDH2*2遺伝子を2つずつ持っていれば、子供は必ずALDH2*2遺伝子を2つ持つ、お酒を全く受け付けない下戸になります。

ですので、両親ともに酒豪であれば、自分も酒豪であると予測を立てることができます。

お酒と正しく付き合おう

というわけで今回は以上です。

お酒の飲みすぎは身体に悪いというのはよく知られています。

しかし、自分がお酒に強いタイプであれば、毒性・発がん性のあるアセトアルデヒドの分解能力が高いので、多少は飲んでもいいです。

ただし、お酒の弱い人が無理にお酒を飲むと、お酒に強いタイプの人と比べて、発がん性など身体への悪影響が大きくなります。そういった人は無理して飲まないほうがいいです。

ですので、自分のお酒に対する強さを遺伝的に正確に知っておくのは大切です。

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