透析 短期留置カテーテル 挿入部位|右内頸>左内頸>大腿の理由をエビデンスで解説

最初に結論

結論: 透析の短期留置カテーテルは右内頸 > 左内頸 > 大腿が基本。鎖骨下は原則回避

理由: 将来のVA温存(中心静脈狭窄の回避)、解剖学的直線性と到達性、合併症・感染のバランス。

根拠: KDOQI 2019/JSDT推奨、IJ vs FemoralのRCT(CATHEDIA、因果解析)や3SITES試験、総説。

 

挿入部位の優先順位と選択アルゴリズム(右内頸>左内頸>大腿/鎖骨下は原則回避)

短期留置カテーテルの挿入部位の優先度は基本「右内頸静脈→左内頸静脈→右大腿静脈→左大腿静脈」です。鎖骨下静脈は原則回避します。

右内頸静脈から上大静脈までまっすぐおろし、カテーテルの先端を右房開口部付近に留置することで良好な脱血が得られます。

なぜ鎖骨下静脈は原則回避なのか

透析患者さんでは将来VA(AVF/AVG)を作製するためです。

鎖骨下静脈が狭窄すると、将来のVA(AVF/AVG)作製したとき静脈高血圧のリスクとなります。

鎖骨下静脈は狭窄しやすく、将来上肢でVAを作成することが困難になるため、原則回避が原則です。

また頸動脈誤穿刺、気胸の危険性もあります。

日本透析医学会(JSDT)でも静脈高血圧症(中枢側狭窄)をきたしやすいことから「鎖骨下からのカテ留置は避けるべき」と明記されています。

引用:慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン,日本透析医学会,2011

鎖骨下静脈が狭窄しやすい理由

透析 短期留置カテーテル 挿入部位|右内頸・左内頸・大腿の比較 図解

解剖学的に鎖骨下静脈は、鎖骨と肋骨に挟まれており物理的につぶれやすい場所にあります。

鎖骨下静脈は、鎖骨と第1肋骨のすき間を通ります。腕を上げ下げしたり肩を動かすたびに、血管が外側から押されやすい構造です。

この鎖骨下静脈に太い透析用のカテーテルが挿入されると、カテの先端が微妙に揺れて血管の内側の壁をこすり細かな傷ができることがあります。そうすると、小さな血栓やフィブリンシースが固まって内腔が狭くなります。

また高流量の血液に血管の内皮がさらされて、血管の内側が傷ついて厚くなり、狭窄しやすいです。

参考:Central vein stenosis in hemodialysis vascular access: clinical manifestations and contemporary management strategies,2023

右内頸静脈を第一選択にする理由(右内頸>左内頸>大腿)

短期留置カテーテルの挿入部位の優先度は基本「右内頸静脈→左内頸静脈→右大腿静脈→左大腿静脈」です。

左内頸静脈

左内頸静脈は脱血が安定しない、血管の損傷や血栓形成のリスクが高いなどの理由で第一選択ではありません。

参考:Vijayan A. Vascular access for continuous renal  replacement therapy. Semin Dial 2009Schetz M. Vascular access for HD and CRRT.Contrib Nephrol 2007

大腿静脈

大腿静脈からの挿入は、挿入しやすく安全性も高いです。しかし、大腿静脈部からの挿入は、他の部位からの挿入に比べて排泄物に近いため、感染リスクが高くなると一般的にいわれています。

なお、腎移植が予定されている患者さん絵は腸骨静脈狭窄を生じさせないために、大腿静脈からの挿入は避けることが望ましいです。

参考:2011 年版 慢性血液透析用バスキュラーアク セスの作製および修復に関するガイドライ ン.透析会誌 2011

歩行再開後は固定や清潔維持が難しく、カテーテルの早期抜去が必要です。

よくある質問(FAQ)

大腿静脈は本当に感染が多いのか?

一概に「常に多い」とは言えません。 ICUを含む大規模試験では内頸静脈と大腿静脈のカテ関連血流感染は概ね同等という結果となっています。ただし高BMIや可動性が高い患者では大腿が不利になりやすい、という傾向が示されています。

参考:Femoral vs Jugular Venous Catheterization and Risk of Nosocomial Events in Adults Requiring Acute Renal Replacement TherapyJugular versus femoral short-term catheterization and risk of infection in intensive care unit patients. Causal analysis of two randomized trials

参考文献

  1. Lok CE, Huber TS, Lee T, et al.
    KDOQI Clinical Practice Guideline for Vascular Access (2019).
    Am J Kidney Dis. 2020.
  2. 日本透析医学会(JSDT).
    2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン.
  3. Parienti JJ, et al.
    Femoral vs Jugular Venous Catheterization and Risk of Nosocomial Events (CATHEDIA).
    JAMA. 2008.
  4. Parienti JJ, et al.
    Intravascular Complications of Central Venous Catheterization (3SITES RCT).
    N Engl J Med. 2015.
  5. Timsit JF, et al.
    Jugular versus femoral short-term catheterization and risk of infection in ICU patients: causal analysis of two randomized trials.
    Am J Respir Crit Care Med. 2013.
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    Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infections (2011; 2017 update).
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  7. Echefu G, Stowe B.
    Central vein stenosis in hemodialysis vascular access: clinical manifestations and contemporary management strategies.
    Frontiers in Nephrology. 2023.
  8. Salik E, Daftary A, Tal MG.
    Three-dimensional anatomy of the left central veins: implications for dialysis catheter placement.
    J Vasc Interv Radiol. 2007.

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