サイトアイコン 透析note【臨床工学技士 秋元のブログ】

透析のバスキュラーアクセスとは?その種類をわかりやすくまとめてみました

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

今回は、透析患者さんにとってなくてはならないバスキュラーアクセスの種類を紹介したいと思います。

透析のバスキュラーアクセスとは?

2005年日本透析医学会が「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」を発表し,わが国ではシャントと呼ばれている動脈と静脈を吻合する動静脈廔をはじめとする血液透析(HD)患者のアクセスを,海外でも通じるVAと呼称統一した。

引用:穿刺技術向上に役立つ 透析スタッフのためのバスキュラーアクセスガイドブック,株式会社メジカルビュー社,p2

バスキュラーアクセスとは、透析のための血管の出入り口の総称のことです。

わたしたちが普段、シャントといっているのは、バスキュラーアクセスの種類のうちの1つです。

ただし日常的には、バスキュラーアクセスとは呼ばず、シャントとわたしたちは呼ぶことが多いです。

シャントとは、短絡という意味で、動脈と静脈を短絡させたものという意味があります。しかし、透析患者の高齢化によってシャント作成が困難な例も増えて、シャント以外(留置カテーテルや動脈表在化)の症例も増えてきました。そういった背景もあり、シャントではなく、世界共通の呼び方であるバスキュラーアクセスと呼ぶようになりました。
以前はバスキュラーアクセスのことをブラッドアクセスと呼んでいました。しかし、海外との整合性もあって、近年はバスキュラーアクセスで統一されています。

なぜ、バスキュラーアクセスが必要なのか

血液透析では一般的に、1分間で150~300mLもの大量の血液を体外へ取り出す必要があります。

しかし、通常の静脈(例えば正中静脈)からでは、せいぜい50mL/min程度の血液しか取り出すことができません。

ですので、血液透析をおこなうためにはバスキュラーアクセスが必ず必要となります。

バスキュラーアクセスの種類

バスキュラーアクセスの種類は、大きく分けてシャントと非シャントに分けられます。

内シャントには、AVF(自己血管内シャント)とAVG(人工血管内シャント)があります。

外シャントとは、チューブを用いて体外で動脈と静脈をつないだもののことです。

ちなみに、バスキュラーアクセスの約90%がAVF(自己血管内シャント)で、約7%がAVG(人工血管内シャント)です。

そして非シャントには、動脈表在化と留置カテーテルがあります。

長期留置カテーテルについては下記の記事で詳しく解説しています。

透析用の長期留置カテーテル【カフ型とは?】

バスキュラーアクセスとシャントの違い

バスキュラーアクセスとは、透析をおこなうための血液の出入口の総称のことです。

シャントというのは、バスキュラーアクセスのうちの1つの種類です。

バスキュラーアクセスのうちの約90%が、自己血管内シャントなので、バスキュラーアクセス≒シャントでも、大体は合っています。実際、臨床の場ではシャントと呼ぶことの方が多いです。

シャントの種類

シャントというのは、本来動脈から毛細血管をとおって静脈へいく経路を、ショートカットして、動脈から直接静脈へ直接血液を流すという意味です。

内シャントには、自己血管を用いた自己血管内シャント(AVF)と、人工血管を用いた人工血管内シャント(AVG)があります。

  1. 自己血管内シャント(AVF)
  2. 人工血管内シャント(AVG)

自己血管内シャント(AVF)

自己血管内シャント(AVF:arterio venousfistula)は、人工血管内シャントと比べて開存性(血管が詰まりにくい状態)、抗感染性、合併症の観点からバスキュラーアクセスの第一選択です。

患者さんの利き腕の反対側で、手首の橈骨動脈と橈側皮静脈静脈を吻合するのが基本で、もっとも理想的なバスキュラーアクセスとされています。

自己血管内シャントでは、腕の静脈と動脈を繋ぎ合わせて作ります。すると動脈の血液の一部が静脈に流れ込むようになり、静脈の血流量が増えます。血流量が増えた部分に針を刺すことで、透析に必要な血液量が得られるようになります。

ただしシャントは、本来の血液の流れとは違うルートを作るものです。そのため、心臓に負担がかかります。心機能が著しく割る場合は内シャントが作れないため、他の方法(動脈表在化や長期留置カテーテル)を選択します。

人工血管内シャント(AVG)

人工血管内シャント(AVG:arterio venousgraft)は、以下の場合に選択されます。ただし、血流量が多いため、心機能が不良である症例に適応はありません。

  1. 自己血管内シャント(AVF)作製ができない
  2. 使用できる動脈と静脈に距離がある場合

人工血管内シャント(AVG)の材質としては、e-PTFE(テフロン)とポリウレタンがあります。
テフロンは蛇腹状の形状をしており、屈曲に強く、硬い材質です。一方、ポリウレタンは柔らかい材料で屈曲に強いが、男性があり、穿刺口をすぐ塞ぐため、術後短期間で使用できるようになります。

しかし、人工血管内シャント(AVG)は、開存性や抗感染性ではAVF(自己血管内シャント)に劣ります。また、狭窄・閉塞のリスクも高いです。

非シャント

非シャントには、動脈表在化と留置カテーテルがあります。

動脈表在化

皮膚から深い部分を走行している上腕動脈などを、外科的に皮膚のすぐ下にまでもってきて、表在化した動脈に直接穿刺して血流を得るのが動脈表在化です。

皮膚から深い部分をを走行している上腕動脈は、そのまま穿刺して止血することが難しいです。緊急的に穿刺することもありますが、日常的に穿刺することはできません。

脱血側を、表在化した動脈に穿刺して、返血側は表面の静脈に穿刺します。

ですので、返血静脈が必要となります。

内シャントがつくれないとき(吻合できる皮下静脈がないときなど)や、心機能が低下していてシャントに適さない患者さんには、動脈表在化が選択されます。ちなみに、返血は通常の表在静脈でおこないます。ただし、何度も穿刺していると、内シャントの血管と違って耐えられず、返血できる血管がなくなってしまいます。

非カフ型カテーテル(短期留置カテーテル)

バスキュラーアクセスがなく、緊急で透析が必要になった場合に作製します。

右内頸静脈、もしくは大腿静脈にカテーテルを挿入することが多いです。右内頸静脈から挿入する場合は12cmまたは16cmの長さのもので、カテーテル先端は右心房付近に留置されています。

カフ型カテーテル(長期留置カテーテル)

他のバスキュラーアクセスがつくれないときに選択されます。

内頚静脈や大腿静脈からカテーテルを挿入し、その先端を上大静脈、下大静脈、右房近傍に留置します。こうすることで多くの血流を得ることができます。

ただし、人工物であるため感染しやすいです。

非カフ型カテーテル(短期型)との最大の違いは、カフがついていることです。

長期的に使用するにあたりカテーテルの抜けやカテーテル感染を防ぐ為にカフとトンネルが最大の違いです。

1980年代に、カテーテルの途中にカフをつくり、皮下トンネルを作製することで、年単位で使用できるカテーテルが登場しました。

長期留置カテーテルについては下記の記事で詳しく解説しています。

透析用の長期留置カテーテル【カフ型とは?】

 

というわけで、今回は透析患者に必須、命綱ともいっていいVA(バスキュラーアクセス)の種類とその特徴を簡単にまとめてみました。少しでも参考になれば幸いです。

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