サイトアイコン 透析note【臨床工学技士 秋元のブログ】

血液透析での血液流量に対する除水速度の上限

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

今回は血液透析での血液流量に対する除水量について検討してみました。

血液透析での血液流量に対する除水速度の上限

結論をいうと、血液透析での血液流量に対する除水速度の上限について書かれた文献を見つけることができませんでした。

そこで、PE(血漿交換)で、よくいわれている血漿分離速度は血液流量の30%以下にするように、というところから、少し検討してみました。

PE(血漿交換)では、血漿分離速度は血液流量の30%以下に設定するようにと、日本アフェレシス学会より出されている「アフェレシスデバイス使用マニュアル(簡易版)」には書かれています。

理由としては、あまりに多くの血漿を分離してしまうと、血液が濃縮されすぎてしまい、膜の目詰まりの原因となってしまうからです。

検討症例:Ht30%の患者さんで血液流量は200mL/minに設定

例えばHt値30%の患者さんに血液流量を200mL/minで設定した場合、ダイアライザに流入する血液は血球成分が60mL/min、血漿成分が140mL/minと分けることができます。

上記の条件下で、血液流量の30%の除水速度60mL/min(3.6L/h)でかけた場合、ダイアライザから流出する血球成分は変わらず60mL/min、しかし血漿成分は80mL/min(140-60(mL/min))となるので、Htの値は60/140 × 100≒43%となります。Hbであらわせば13~14g/dLとなり、そこまで血液が濃縮された印象はありません。

ただ、実臨床で3.6L/hの除水速度を設定することはないので、血液流量200mL/minの場合の除水速度の上限は事実上ない、といえます。

血液流量70mL/minでの除水上限は?

では今度は、血液流量70mL/minで検討してみたいと思います。なかなかこの条件で透析を行っている患者さんはいませんが、脱血量でこういった状況になってしまうことは往々にしてあります。

例えばHt値30%の患者さんに血液流量を200mL/minで設定した場合、ダイアライザに流入する血液は血球成分が60mL/min、血漿成分が140mL/minと分けることができます。

 

同じくHt値30%の患者さんを想定します。

 

血液流量を70mL/minで設定した場合、ダイアライザに流入する血液は血球成分が21mL/min、血漿成分が49mL/minと分けることができます。

上記の条件下で、除水速度を血液流量の30%、つまり21mL/min(1.26L/h)でかけた場合、ダイアライザから流出する血球成分は変わらず21mL/min、しかし血漿成分は28mL/min(49-21(mL/min))となるので、Htの値は21/49 × 100≒43%となります。Hbであらわせば13~14g/dLとなり、先ほどの結果と同じ結果になりました。

まとめ

つまり、血液流量の30%の除水速度にしたところで、血液はそこまで過濃縮になることなく、膜や回路の凝固といったトラブルは少ないといえます。

 

以上で、今回は血液透析での血液流量に対する除水速度の上限を検討してみました。

 

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