こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
本記事では、血液検査の項目の一つであるγ-GTP(ガンマGTP)についてわかりやすく解説しています。
健康診断などでγ-GTPが高いといわれた際に、お酒(アルコール)が原因なのか、それともそれ以外の病気が原因なのかが、この記事を読むことである程度わかるようになると思います。
目次
γ-GTP(ガンマGTP)とは?
γ-GTP(ガンマGTP)は、大量に飲酒することで上昇することで有名です。
「血液検査でγ-GTPだけ」が高い場合はお酒(アルコール)が原因の場合がほとんどです。
2~3週間飲酒を控えてγ-GTPが下がればアルコールが原因と考えられます。
その他に、胆管・胆道が閉塞されたり、特定の薬剤によっても上昇します。ですので、臨床的には胆道系酵素と呼ばれています。
γ-GTP(ガンマGTP)の役割
画像引用:水田敏彦,検査値の読み方 連載 γ-GTは敵か味方か?,臨牀消化器内科 Vol.34 No.11 2019
γ-GTP(ガンマGTP)は、γ-glutamylltranspeptidを加水分解するとともに、γ-glutamyl基を他のペプチドやアミノ酸に転移する酵素です。
具体的には、γ-GTP(ガンマGTP)はグルタチオンの分解や合成に関与しています。
ここでは詳細は省きますが、血中や組織中に放出されたγ-GTPも酵素活性をもっており、脂質の過酸化を促進することでアテローム性動脈硬化症を悪化させることに関与していると明らかになっています。
γ-GTPとγ-GTの違い
以前は、γ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチターゼ:γ-glutamyltranspeptidase)と呼ばれていました。
しかし、酵素の化学的性質を正しく表現する意味で、γ-GT(γ-グルタミルトランスフェラーゼ:γ-glutamyltransferase)と呼ばれるようになりました。
つまり、γ-GTPは正式には「γ-グルタミルトランスフェラーゼ」と呼びます。
参考:土島陸:生化学的検査 酵素関係(アイソザイムを含む) γ-グルタミルトランスペプチターゼ(γ-GTP).日本臨床 2009:67[増刊8. 広範囲血液・尿化学検査, 免疫学的検査(第7版)1ーその数値をどう読むか]:386-388
γ-GTPの基準値
- γ-GTPの基準値
・男性:13~64 U/L
・女性:9~32 U/L
γ-GTPの基準値は上記のとおりです。
生理的にはγ‒GTP は男性のほうが女性より高値となる傾向にあります。
日内変動は少なく、食事の影響も少ないため、検査の値は安定しています。飲酒の影響に関しても、元々脂肪肝やアルコール性肝炎などがなければ、採血前に短期的に飲酒したとしても検査値に影響が出ることはありません。
γ-GTPが基準値より高くなる原因
- アルコール
- 薬剤
- 脂肪肝
- その他(膵臓疾患、癌、心筋障害、肺疾患、糖尿病)
よくあるγ-GTPが上昇する原因は上記の3つです。
γ-GTPとお酒(アルコール)の関係
画像引用:河口勝憲ら,各論 1.検査前手順 1)生理的変動,サンプリング,試料の取り扱い (3)AST,ALT,γ-GT,検査と技術 vol.35 no.11 2007年 増刊号
γ-GTは、飲酒習慣で上昇するが、その程度は個体差がある。長期にわたる過度の飲酒で脂肪肝やアルコール性肝障害になると、ALT、AST、LD(lactatedehydrogenase)、ChE(cholinesterase)、TBi(total bilirubin)など他の肝機能検査にも異常をきたすが、そのなかでもγ-GTとALTがその変化をより鋭敏に反映する。
引用:河口勝憲ら,各論 1.検査前手順 1)生理的変動,サンプリング,試料の取り扱い (3)AST,ALT,γ-GT,検査と技術 vol.35 no.11 2007年 増刊号
γ-GTPは、アルコールに敏感に反応しやすく、お酒の飲み過ぎによる影響で異常値、比較的高めの値になりやすいです。ただし、飲酒してもγ-GTP が上昇しない、γ-GTP 不応者が 10~20%いるとされています。
とくにγ-GTPが単独で上昇している場合、お酒(アルコール)が原因であることが多いです。ただ、お酒の飲みすぎによって他の臓器や筋肉の障害も起こっている場合もあり、AST有意の上昇を伴うこともあります。
一定期間禁酒した後にγ-GTPの再検査をして、値が改善していなければお酒(アルコール)による肝障害以外の原因を疑います。γ-GTPの上昇にともない、ALPも上昇していれば胆汁うっ滞が考えらます。
またアルコール以でも、抗てんかん薬などの薬物や脂肪肝によりγ-GTPが上昇する場合もあります。
もし、アルコール、薬剤、肥満、によるγ-GTPの上昇が疑われれば、禁酒、、疑わしい薬剤の中止、ダイエットをおこないます。
γ-GTPと肥満の関係
γ-GTPは肥満度の上昇に伴い、上昇していきます。
γ-GTPの異常値と疾患
γ-GTPは、肝臓や胆道系疾患のときに上昇します。疾患の代表例としては、胆汁うっ滞があります。
特にγ-GTPとともにALPも上昇していれば、胆汁うっ滞の可能性が高いです。
(γ-GTPとALPは胆汁うっ滞に対して特異性が非常に高いので!)
具体的な胆汁うっ滞性疾患としては、総胆管結石、急性胆嚢炎、胆管がんがあります。
また、お酒を飲まないにも関わらないのに、γ-GTPが100 U/Lを超えている場合は要注意です。肝機能を評価する他の血液検査項目の追加や肝炎ウイルスなどの検査項目を追加したり、超音波検査やCTなどの画像検査で精密検査をおこないます。
γ-GTPが上昇するメカニズム
- 胆汁排泄障害による血中への逆流入
- 胆管上皮細胞でのγ-GTPの産生増加
胆管閉塞時に、胆汁がうっ滞して胆汁の排泄障害による血中への逆流入と、胆管上皮細胞でのγ-GTPの産生の増加によって、血中のγ-GTPが上昇します。
お酒(アルコール)を飲むとγ-GTPが上昇するメカニズムとしては、アルコールによって肝臓の負担が大きくなり、肝細胞が壊れてしまうからです。肝臓の負担が大きい状態が続くと、壊れたままの肝細胞が増えていき、肝細胞に含まれていたγ-GTPが血液中へ放出されていき、血中のγ-GTPが上昇します。
また、お酒を飲むと肝臓でγ-GTPの酵素誘導(飲酒によるミクロソーム機能の亢進による酵素誘導)も血中のγ-GTPが上昇する要因として考えられています。
薬物によってもγ-GTPは上昇します。
特定の薬物(個人差が大きいです)が投与されると誘導され、血中γ-GTPは上昇します。γ-GTPが誘導される理由としては、薬物を代謝するためだと考えてもらえればいいかと思います。
その他に、胆管・胆道以外の病変(膵臓疾患、癌、心筋障害、肺疾患、糖尿病)でも血中のγ-GTPは上昇しますが、詳しいメカニズムはわかっていません。
γ-GTPが基準値より低くなる原因
妊娠時や経口避妊薬を服用している場合は低くなります。
というわけで、今回はγ-GTP(ガンマGTP)の基準値や異常値の原因などについてまとめてみました。少しでも参考になれば幸いです。
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