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アルカリフォスファターゼ(ALP)の基準値について

こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。

本記事では、アルカリフォスファターゼ(ALP)の基準値などについて、初心者でもわかるようにわかりやすく解説しています。

アルカリフォスファターゼ(ALP)の基準値

  • アルカリフォスファターゼの基準値:106~322 U/L

参考:日本臨床検査標準協議会(JCCLS)基準範囲共用化委員会の共用基準範囲

一般的には肝・胆道系酵素と呼ばれていて、肝疾患(肝機能の異常)と胆道疾患(肝臓から十二指腸への胆汁の動き)のときに高値となります。
その他、骨疾患(とくに骨への悪性腫瘍の転移)の際にも高値となります。

胆道系酵素とは、肝細胞の毛細胆管膜に多く含まれている酵素のことで、毛細胆管の障害による肝内胆汁うっ滞(アルコール性肝障害、肝炎、肝硬変など)や閉塞性黄疸(総胆管結石、腫瘍など)のときに血中濃度が上昇します。
胆道系酵素としては、ALP、γ-GTP、LAPがあります。

そもそもアルカリフォスファターゼ(ALP)ってなに?

アルカリフォスファターゼ(ALP)とは、細胞膜に存在する糖たんぱく質で、一般的には、肝・胆道系酵素と呼ばれています。

例外的に好中球では大部分が細胞内顆粒に存在しています。

主に肝臓、骨、小腸、胎盤に多くふくまれていますが、全身の細胞や臓器などにも広く分布しています。

アルカリフォスファターゼ(ALP)の役割

アルカリフォスファターゼ(ALP)とは、その名のとおり、アルカリ性の環境下(pH9~11)で働くホスファターゼ((リン酸モノエステル加水分解)酵素)です。

具体的な役割としては、リン酸モノエステルを加水分解し、糖・脂肪の吸収、リン酸やカルシウムイオンの吸収と輸送、核酸合成の調節、骨の破壊と化骨に関与しています。

アルカリフォスファターゼ(ALP)が多く含まれる組織

アルカリフォスファターゼ(ALP)が多く含まれる組織
  • 肝臓
  • 小腸
  • 胎盤

ALP(アルカリフォスファターゼ)は、ほとんどすべての組織にふくまれていますが、特に肝臓、骨、小腸、胎盤に多くふくまれています。

ちなみに、血液中に存在するアルカリフォスファターゼ(ALP)のほとんどは肝臓由来または骨由来のものです。
血液中のALP(アルカリフォスファターゼ)が高値になる場合、組織が破壊されていることを意味します。このように、組織が破壊された場合に血液中に流出する酵素を「逸脱酵素」といいます。

アルカリフォスファターゼ(ALP)が基準値から外れている場合

アルカリフォスファターゼ(ALP)は先ほど述べたようにいろんな組織に存在する酵素ですが、血液中に現れるのは、肝臓、胆道、骨、胎盤、小腸に由来するものです。ときに、悪性腫瘍がALPを大量に産生することもあります。

アルカリフォスファターゼ(ALP)が基準値よりも高い

アルカリフォスファターゼ
(ALP)
考えられる疾患
黄疸あり 黄疸なし
軽度上昇
(基準上限の2倍まで)
急性肝炎(ウイルス)、薬剤性肝障害(肝細胞障害型) 慢性肝炎、肝硬変、甲状腺機能亢進症、骨折、原発性肝癌、慢性腎不全
中等度上昇
(基準上限の2~4倍)
アルコール性肝炎、薬剤性肝障害(胆汁うっ滞型) 副甲状腺機能亢進症、くる病、成長期、妊娠、原発性肝癌
高度上昇
(基準上限の4倍以上)
閉塞性黄疸(結石、腫瘍)、胆道感染症、先天性胆道疾患 限局性肝病変(転移性肝癌、肉芽腫、腫瘍)、ページェット病、転移性骨腫瘍、骨肉腫、ALP産生腫瘍(泌尿生殖器癌、肺癌、肝癌)

肝・胆道系酵素のアルカリフォスファターゼ(ALP)が高値のときに考えられる原因として、おもに肝臓疾患、胆道疾患、骨疾患が考えられます。

ただし、ALP(アルカリフォスファターゼ)のみで疾患を特定することはせず、他の血液検査項目や画像検査なども併せて評価します。

ALPの上昇に伴い、γ-GTPも上昇していれば胆汁うっ滞の可能性が高いです。具体的な胆汁うっ滞性疾患としては、総胆管結石、急性胆嚢炎、胆管がんがあります。
(γ-GTPとALPは胆汁うっ滞に対して特異性が非常に高いので!)

γ-GTP(ガンマGTP)の基準値や高くなる原因をわかりやすく解説します
例えば、肝臓疾患や胆道疾患では、ビリルビンやAST、ALT、γ-GTPなどの血液検査値も高値となることが多いです。
逆にこららの数値が基準値内が正常であれば、骨疾患が疑われます。

しかし、ALP(アルカリフォスファターゼ)が高値だからといって必ずしも何らかの病気になっているわけではなく、小児期の骨形成期では成人の2~3倍、妊娠後期では胎盤性ALPの出現によって2~3倍、O型とB型の人は、前日に高脂肪食を食べた翌日に採血するとALPが高くなります(1)。

アルカリフォスファターゼ(ALP)のアイソザイム

由来 高値を示す疾患
ALP1 肝臓 閉塞性黄疸(胆管癌、膵頭部癌、総胆管結石など)、肝細胞障害
ALP2 肝臓、毛細胆管 胆道疾患、肝疾患
ALP3 骨疾患、骨代謝異常、副甲状腺機能亢進症、成長期
ALP4 胎盤、癌 悪性腫瘍、妊娠後期
ALP5 小腸 肝硬変、慢性肝炎、小腸疾患、慢性腎不全、血液型B型、O型の分泌型の人の食後
ALP6 免疫グロブリン結合型 潰瘍性大腸炎の活動期、関節リウマチ

アルカリフォスファターゼ(ALP)は、つくられる臓器によって分子構造の異なるアイソザイムが存在します。

アイソザイム:同じ作用をもっていますが、酵素を構成するタンパク質の構造が異なる酵素のこと

アルカリフォスファターゼ(ALP)のアイソザイムには6種類(ALP1~ALP6)があり、それぞれに由来する組織が異なっています。

アルカリフォスファターゼ(ALP)が高値でもなかなか原因を特定できない場合は、どのアイソザイムが高値かで、考えられる原因となる臓器・疾患を推測することができます。

アルカリフォスファターゼ(ALP)が基準値よりも低い

臨床的に、アルカリフォスファターゼ(ALP)が低値で問題になることは稀です。

異常に低い数値でなければ、多少下回ったとしても健康に支障が出ることはありません。

ちなみに、アルカリフォスファターゼ(ALP)が低値になる原因には、甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症、マグネシウム欠乏、低栄養状態などがあります。

 

というわけで今回は以上です。

 

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