サイトアイコン 透析note【臨床工学技士 秋元のブログ】

γ-GTP(ガンマGTP)の基準値や高くなる原因をわかりやすく解説します

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

本記事では、血液検査の項目の一つであるγ-GTP(ガンマGTP)についてわかりやすく解説しています。

健康診断などでγ-GTPが高いといわれた際に、お酒(アルコール)が原因なのか、それともそれ以外の病気が原因なのかが、この記事を読むことである程度わかるようになると思います。

γ-GTP(ガンマGTP)とは?

γ-GTP(ガンマGTP)は、大量に飲酒することで上昇することで有名です。

ただし、飲酒でγ-GTPが上昇しないこともあり、高くないからといって安心はできません。

「血液検査でγ-GTPだけ」が高い場合はお酒(アルコール)が原因の場合がほとんどです。
2~3週間飲酒を控えてγ-GTPが下がればアルコールが原因と考えられます。

その他に、胆管・胆道が閉塞されたり、特定の薬剤によっても上昇します。ですので、臨床的には胆道系酵素と呼ばれています。

なお、γ-GTP自体は、哺乳類に限らず、植物、微生物にも存在する酵素です。人間の体内には、肝臓、腎臓、肺、膵臓、血管内皮など多くの臓器に存在しています。とくに腎臓に多く存在していて、肝臓の5倍以上存在しているとされています(1)。しかし、腎臓のγ-GTPは尿に排泄されるので、血液中のγ-GTPは、一般的に肝細胞や胆管細胞由来と考えられています。
健康な人でも数日間連続でお酒を飲み続けると、一時的に肝臓が壊れてγ-GTPは上昇してしまいます。

γ-GTP(ガンマGTP)の役割

画像引用:水田敏彦,検査値の読み方 連載 γ-GTは敵か味方か?,臨牀消化器内科 Vol.34 No.11 2019

γ-GTP(ガンマGTP)は、γ-glutamylltranspeptidを加水分解するとともに、γ-glutamyl基を他のペプチドやアミノ酸に転移する酵素です。

具体的には、γ-GTP(ガンマGTP)はグルタチオンの分解や合成に関与しています。

グルタチオンは、人間によって必須の細胞内抗酸化物質です。このグルタチオン(GSH)は、そのままの形で細胞内に取り込むことができません。そのため、細胞外で各アミノ酸に分解された後、トランスポーターを介して細胞内に取り込まれ、細胞質内でグルタチオンに再合成されます。このグルタチオンをアミノ酸に分解するための唯一の酵素がγ-GTPです(2)。細胞内で再合成されたグルタチオンは、酸化ストレスを緩和したり、有害物質の除去の役割を果たします。したがって、γ-GTPは間接的に抗酸化ストレスに重要な役割をもっています。

ここでは詳細は省きますが、血中や組織中に放出されたγ-GTPも酵素活性をもっており、脂質の過酸化を促進することでアテローム性動脈硬化症を悪化させることに関与していると明らかになっています。

γ-GTPとγ-GTの違い

以前は、γ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチターゼ:γ-glutamyltranspeptidase)と呼ばれていました。

しかし、酵素の化学的性質を正しく表現する意味で、γ-GT(γ-グルタミルトランスフェラーゼ:γ-glutamyltransferase)と呼ばれるようになりました。

つまり、γ-GTPは正式には「γ-グルタミルトランスフェラーゼ」と呼びます。

トランスフェラーゼとは、日本語で転移酵素といい、転移反応を触媒する酵素のことです。

参考:土島陸:生化学的検査 酵素関係(アイソザイムを含む) γ-グルタミルトランスペプチターゼ(γ-GTP).日本臨床 2009:67[増刊8. 広範囲血液・尿化学検査, 免疫学的検査(第7版)1ーその数値をどう読むか]:386-388

γ-GTPの基準値

  • γ-GTPの基準値
    ・男性:13~64 U/L
    ・女性:9~32 U/L

参考:日本臨床検査標準化協議会 基準範囲共用化委員会資料

γ-GTPの基準値は上記のとおりです。

生理的にはγ‒GTP は男性のほうが女性より高値となる傾向にあります。

日内変動は少なく、食事の影響も少ないため、検査の値は安定しています。飲酒の影響に関しても、元々脂肪肝やアルコール性肝炎などがなければ、採血前に短期的に飲酒したとしても検査値に影響が出ることはありません。

γ-GTPが基準値より高くなる原因

  1. アルコール
  2. 薬剤
  3. 脂肪肝
  4. その他(膵臓疾患、癌、心筋障害、肺疾患、糖尿病)

よくあるγ-GTPが上昇する原因は上記の3つです。

γ-GTPとお酒(アルコール)の関係

画像引用:河口勝憲ら,各論 1.検査前手順 1)生理的変動,サンプリング,試料の取り扱い (3)AST,ALT,γ-GT,検査と技術 vol.35 no.11 2007年 増刊号

γ-GTは、飲酒習慣で上昇するが、その程度は個体差がある。長期にわたる過度の飲酒で脂肪肝やアルコール性肝障害になると、ALT、AST、LD(lactatedehydrogenase)、ChE(cholinesterase)、TBi(total bilirubin)など他の肝機能検査にも異常をきたすが、そのなかでもγ-GTとALTがその変化をより鋭敏に反映する。

引用:河口勝憲ら,各論 1.検査前手順 1)生理的変動,サンプリング,試料の取り扱い (3)AST,ALT,γ-GT,検査と技術 vol.35 no.11 2007年 増刊号

γ-GTPは、アルコールに敏感に反応しやすく、お酒の飲み過ぎによる影響で異常値、比較的高めの値になりやすいです。ただし、飲酒してもγ-GTP が上昇しない、γ-GTP 不応者が 10~20%いるとされています。

とくにγ-GTPが単独で上昇している場合、お酒(アルコール)が原因であることが多いです。ただ、お酒の飲みすぎによって他の臓器や筋肉の障害も起こっている場合もあり、AST有意の上昇を伴うこともあります。

一定期間禁酒した後にγ-GTPの再検査をして、値が改善していなければお酒(アルコール)による肝障害以外の原因を疑います。γ-GTPの上昇にともない、ALPも上昇していれば胆汁うっ滞が考えらます。

お酒(アルコール)を飲むとγ-GTPが上昇するメカニズムとしては、肝臓において、γ-GTPの酵素誘導(飲酒によるミクロソーム機能の亢進による酵素誘導)や肝細胞膜障害による血中への遊離の増加などが考えられています。

またアルコール以でも、抗てんかん薬などの薬物や脂肪肝によりγ-GTPが上昇する場合もあります。

もし、アルコール、薬剤、肥満、によるγ-GTPの上昇が疑われれば、禁酒、、疑わしい薬剤の中止、ダイエットをおこないます。

γ-GTPと肥満の関係

γ-GTPは肥満度の上昇に伴い、上昇していきます。

γ-GTPの異常値と疾患

参考:薬剤師のための基礎からの検査値の読み方 臨床検査専門医×薬剤師の視点 / 上硲俊法 〔本〕

γ-GTPは、肝臓や胆道系疾患のときに上昇します。疾患の代表例としては、胆汁うっ滞があります。

胆汁は、肝臓でつくられて胆道系を通って十二指腸に分泌されます。胆汁うっ滞とは、この胆汁の流れが結石や腫瘍でせき止められた状態のことです。

特にγ-GTPとともにALPも上昇していれば、胆汁うっ滞の可能性が高いです。
(γ-GTPと
ALPは胆汁うっ滞に対して特異性が非常に高いので!

具体的な胆汁うっ滞性疾患としては、総胆管結石、急性胆嚢炎、胆管がんがあります。

アルカリフォスファターゼ(ALP)の基準値について

また、お酒を飲まないにも関わらないのに、γ-GTPが100 U/Lを超えている場合は要注意です。肝機能を評価する他の血液検査項目の追加や肝炎ウイルスなどの検査項目を追加したり、超音波検査やCTなどの画像検査で精密検査をおこないます。

γ-GTPが上昇するメカニズム

胆汁うっ滞でγ-GTPが上昇するメカニズム
  1. 胆汁排泄障害による血中への逆流入
  2. 胆管上皮細胞でのγ-GTPの産生増加

胆管閉塞時に、胆汁がうっ滞して胆汁の排泄障害による血中への逆流入と、胆管上皮細胞でのγ-GTPの産生の増加によって、血中のγ-GTPが上昇します。

お酒(アルコール)を飲むとγ-GTPが上昇するメカニズムとしては、アルコールによって肝臓の負担が大きくなり、肝細胞が壊れてしまうからです。肝臓の負担が大きい状態が続くと、壊れたままの肝細胞が増えていき、肝細胞に含まれていたγ-GTPが血液中へ放出されていき、血中のγ-GTPが上昇します。

また、お酒を飲むと肝臓でγ-GTPの酵素誘導(飲酒によるミクロソーム機能の亢進による酵素誘導)も血中のγ-GTPが上昇する要因として考えられています。

日本酒に換算して2合/日以上では、常に肝臓内でγ-GTPがアルコールによって酵素誘導されるため、血中のγ-GTPは高値となります。

薬物によってもγ-GTPは上昇します。

特定の薬物(個人差が大きいです)が投与されると誘導され、血中γ-GTPは上昇します。γ-GTPが誘導される理由としては、薬物を代謝するためだと考えてもらえればいいかと思います。

その他に、胆管・胆道以外の病変(膵臓疾患、癌、心筋障害、肺疾患、糖尿病)でも血中のγ-GTPは上昇しますが、詳しいメカニズムはわかっていません。

γ-GTPが基準値より低くなる原因

妊娠時や経口避妊薬を服用している場合は低くなります。

 

というわけで、今回はγ-GTP(ガンマGTP)の基準値や異常値の原因などについてまとめてみました。少しでも参考になれば幸いです。

 

<注意事項>
本ブログに掲載されている情報の正確性については万全を期しておりますが、掲載された情報に基づく判断については利用者の責任のもとに行うこととし、本ブログの管理人は一切責任を負わないものとします。
本ブログは、予告なしに内容が変わる(変更・削除等)ことがあります。

モバイルバージョンを終了