こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
本記事では、血液検査の血中尿素窒素(BUN)についてわかりやすく解説します。
目次
尿素窒素とは(UN:urea nitrogen)
UNはその尿素に含まれる窒素(N2)分で、血清UN濃度は尿素の合成速度と腎からの排出速度とに左右される。
上記で表記されているUNというのは、urea nitrogenの略で、尿素窒素という意味です。
上記のとおり、尿素窒素とは、尿素の中に含まれている窒素量のことです。
血中尿素窒素とは(BUN:blood urea nitrogen)
血中尿素窒素(BUN)血液中の尿素に含まれる窒素(N)を測定したものである。
引用:医療情報科学研究所,病気がみえる vol.8 腎・泌尿器 第2版,p25
血中尿素窒素とは、血液中の尿素に含まれる窒素量のことです。
英語で表記すれば、BUN:blood urea nitrogenで、bloodが血液、ureaが尿素、nitrogenが窒素という意味です。
尿素窒素(UN)と血中尿素窒素(BUN)の違い
尿素は細胞膜を自由に通過して拡散する性質があり、赤血球中にもほぼ同じ濃度で拡散していると考えられているため、慣習的に血中尿素窒素(BUN)と呼んでいるが、実際には全血ではなく血清の尿素窒素濃度を測定しているので、尿素窒素(UN)と呼ぶべきである。
引用:門川俊明,レジデントのための血液透析患者マネジメント 第2版,p57
血清とは、血漿の中のフィブリノゲンを除いた成分です。
現在は尿素窒素(UN)は生化学用のスピッツで検査しています。そして生化学検査では血清に含まれる成分を検査しているため、正確には血清尿素窒素(S-UN:serum urea nitrogen)とすべきです。しかし、慣習的にBUNと表記されていることがほとんどです。
S-UNとBUNの値を比べると、若干S-UNのほうが高い傾向にありますが、ほぼ同じと考えて差し支えはありません。
尿素(Urea)について
尿素はタンパク質の最終代謝産物(要するに体内の老廃物ということ)です。
分子式はH2NCONH2で分子量は60です。主に肝臓で合成され、腎臓から排出さます。
体内での尿素と尿素窒素のつくられかた
尿素窒素は、食物や体タンパクの分解により生じるアンモニアが、肝の尿素サイクルに入ることにより産生され、最終的には腎より排出される。したがって、血中の尿素窒素(BUN)は、尿素サイクルでの産生状況と、腎での尿素窒素排泄機能を反映する。
この尿素の生成の流れは以下のとおりとなります。
- 不要なタンパク質
↓ (分解) - アミノ酸
↓ (脱アミノ) - アンモニア
↓ (尿素サイクル) - 尿素
不要なタンパク質はアミノ酸へと分解されます。そしてアミノ酸は脱アミノによって、二酸化炭素とアンモニアに分解されます。しかしアンモニアは毒性が強いため、主に肝臓の尿素サイクルによって、尿素へと変換されます。
上記の流れでつくられた尿素はすべて腎臓から排泄されます。ですので、腎機能が低下すれば、血中に尿素がたまります。
しかし、臨床的にはこの尿素を直接測定しているのではなく、尿素のなかにふくまれている窒素量である血中尿素窒素(BUN)を測定しています。
ですので、腎機能が低下すると血中尿素窒素(BUN)が上昇するというわけです。
なぜ尿素ではなく、尿素窒素を測定するのか
なお、臨床化学検査では、尿素については尿素そのものの濃度ではなく、尿素窒素濃度が用いられているが、これは、以前はアンモニア窒素として尿素を測定していたことによる。
引用:系統看護学講座 専門基礎 人体の構造と機能[2]生化学(第12版),p85
尿素は体内の老廃物です。
しかし、臨床的には尿素そのものではなく、尿素に含まれる窒素量が測定されています。
この理由は、以前はアンモニア窒素として、間接的に尿素の量を測定していたためです。
- 不要なタンパク質
↓ (分解) - アミノ酸
↓ (脱アミノ) - アンモニア
↓ (尿素サイクル) - 尿素
そもそも、生物にとっては「不要な窒素原子Nを処理すること」が重要であり、尿素というのはその一つの「手段」にすぎません。
ですので、血中濃度を表現するときに「窒素原子N」に着目するのが習慣となっています。
アンモニアはさらに、肝臓で尿素に変えられます(アンモニアは有害であるため)。
そして、尿素は分子量60の低分子量物質であるため、腎臓の糸球体で濾過されて、尿として排泄されます。
現在は、尿素(H2NCONH2)をウレアーゼと反応させて2分子のアンモニア(NH3)と二酸化炭素(CO2)に分解し、そのアンモニア量を測定することで、尿素に含まれる窒素量(尿素窒素(UN))を求めています。
そしてこの尿素窒素(UN)を尿素濃度の代わりに利用しています。
尿素の濃度の計算方法【血中尿素窒素から計算可能です】
尿素1分子は、窒素原子を2つ含んでいます。そして窒素原子の原子量は14です。
ですので、1molの尿素=60gに含まれる尿素窒素は28gということになります。
したがって、尿素窒素(UN)の値に、60/28をかければ尿素の値がわかります。
血中尿素窒素(BUN)の結果について
血中尿素窒素(BUN)は、肝臓での尿素サイクルでの産生の状況と、腎臓での排泄機能を反映しています。
つまり、血中尿素窒素は以下の影響を受けます。
- 1つ目:タンパク摂取量
- 2つ目:肝臓での尿素合成
- 3つ目:腎臓での排泄機能
一般的には腎機能の指標として使われることが多いですが、血中尿素窒素(BUN)だけで腎機能を判断することはありません。
血中尿素窒素(BUN)の基準値
:7~23 mg/dL
血中尿素窒素(BUN)は、女性のほうが男性よりやや低めの値となります。
血中尿素窒素(BUN)が高くなる原因
血中尿素窒(BUN)が高くなる原因は以下のとおりです。
- 原因①:腎排泄の低下
(腎機能障害、尿路閉塞性疾患) - 原因②:尿細管吸収の亢進
(循環血漿量減少(脱水、低血圧、ショック)) - 原因③:タンパク異化の亢進
(消化管出血、絶食、副腎ステロイド治療、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、外科的侵襲、熱傷) - 原因④:タンパク摂取量の増加
(高タンパク食摂取、アミノ酸輸液)
腎不全では、糸球体濾過率が正常の50%に低下するまで、血中尿素窒素(BUN)はわずかしか上昇しませんが、正常の30%以下にまで低下すると、急速に上昇します。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍などで消化管出血した場合、少し高値になります。血液が腸内で分解された結果、増加したアンモ ニアが吸収されるためです。
大量の肉類を食べた際には、余分なアミ ノ酸が大量となるため尿素窒素は少し高値となります。また極度の飢餓の際には、一日分のエネルギー源を自分自身の筋肉などの蛋白を分解して得ることになるので、肉食中心の食事と同様な状態となります。
血中尿素窒素(BUN)が低くなる原因
血中尿素窒素(BUN)が低くなる原因は以下のとおりです。
- 原因①:循環血漿量増加
(容量負荷、妊娠、SIADH) - 原因②:尿細管再吸収の低下
(尿崩症、マンニトールなどによる水利尿) - 原因③:タンパク異化の低下
(低タンパク食、肝不全、タンパク同化ホルモン治療)
通常の健康診断では、高値でなければ異常なしとみなされることが多いです。
栄養療法的には、どれくらいタンパク質を食べているかの判断のひとつとして、血中尿素窒素(BUN)が用いられます。
血中尿素窒素(BUN)が一桁だとかなり低く、タンパク質の摂取量がすくないのでは?と判断できます。
BUN/血清Cr比
腎機能低下に伴い、BUNと血清Crがともに上昇し、BUN/血清Cr比≒10となる傾向がある。
引用:病気がみえる vol.8 腎・泌尿器,p25
一般的に、BUN/血清Cr比はおよそ10:1で、腎性因子、腎前性因子を推定するために利用されています。
血中尿素窒素(BUN)は、腎機能の低下以外にもいろんな理由で上昇します。一方の血清Crは基本的に腎臓の影響のみを受けます(腎機能が低下すれば血清Crは上昇します)。
したがって、血中尿素窒素(BUN)と血清Crの両方が高くなる場合、腎機能の低下を示している可能性が高いです。血中尿素窒素(BUN)と血清Crの両方が上昇して、BUN/血清Cr比が10前後の場合、腎機能低下の可能性が高いです。
消化管出血やタンパク異化が亢進しているとき(例:大量のタンパク質摂取、甲状腺機能亢進症など)には、BUN/血清Cr比は10以上になり、低タンパク食、重症肝障害、利尿剤投与しているときにはBUN/血清Cr比は10以下となります。
まとめ:血中尿素窒素とは
血中尿素窒素とは、血液中の尿素に含まれる窒素量のことです。
血中尿素窒素(BUN)という物質があるわけではないということ、また尿素(H2NCONH2)とはまったくの別物ですので注意してください。
現在は、尿素(H2NCONH2)をウレアーゼと反応させて2分子のアンモニア(NH3)と二酸化炭素(CO2)に分解し、そのアンモニア量を測定することで、尿素に含まれる窒素量(尿素窒素(UN)を求めています。そしてこの尿素窒素(UN)を尿素濃度の代わりに利用しています。
というわけで今回は以上です。
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