血中尿素窒素とはなにかをわかりやすく解説してみた

血中尿素窒素とは

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

本記事では、血液検査の血中尿素窒素(BUN)についてわかりやすく解説します。

尿素窒素とは(UN:urea nitrogen)

血中尿素窒素とは

UNはその尿素に含まれる窒素(N2)分で、血清UN濃度は尿素の合成速度と腎からの排出速度とに左右される。

引用:森下芳孝,検査と技術 vol.33 no.11 2005年増刊号

上記で表記されているUNというのは、urea nitrogenの略で、尿素窒素という意味です。

上記のとおり、尿素窒素とは、尿素の中に含まれている窒素量のことです。

尿素窒素(UN)と尿素(UR)は別物ですので注意してください。

血中尿素窒素とは(BUN:blood urea nitrogen)

血中尿素窒素(BUN)血液中の尿素に含まれる窒素(N)を測定したものである。

引用:医療情報科学研究所,病気がみえる vol.8 腎・泌尿器 第2版,p25

血中尿素窒素とは、血液中の尿素に含まれる窒素量のことです。

英語で表記すれば、BUN:blood urea nitrogenで、bloodが血液、ureaが尿素、nitrogenが窒素という意味です。

尿素窒素(UN)と血中尿素窒素(BUN)の違い

尿素は細胞膜を自由に通過して拡散する性質があり、赤血球中にもほぼ同じ濃度で拡散していると考えられているため、慣習的に血中尿素窒素(BUN)と呼んでいるが、実際には全血ではなく血清の尿素窒素濃度を測定しているので、尿素窒素(UN)と呼ぶべきである。

引用:門川俊明,レジデントのための血液透析患者マネジメント 第2版,p57

血清とは、血漿の中のフィブリノゲンを除いた成分です。

現在は尿素窒素(UN)は生化学用のスピッツで検査しています。そして生化学検査では血清に含まれる成分を検査しているため、正確には血清尿素窒素(S-UN:serum urea nitrogen)とすべきです。しかし、慣習的にBUNと表記されていることがほとんどです。

S-UNとBUNの値を比べると、若干S-UNのほうが高い傾向にありますが、ほぼ同じと考えて差し支えはありません。

尿素(Urea)について

血中尿素窒素とは

尿素はタンパク質の最終代謝産物(要するに体内の老廃物ということ)です。

分子式はH2NCONH2で分子量は60です。主に肝臓で合成され、腎臓から排出さます。

アンモニアには神経毒性があり、尿素はアンモニアの無毒化という重要な役割を果たした結果できた産物です。しかし、尿素も高濃度では弱い毒性をもっています。

体内での尿素と尿素窒素のつくられかた

尿素窒素は、食物や体タンパクの分解により生じるアンモニアが、肝の尿素サイクルに入ることにより産生され、最終的には腎より排出される。したがって、血中の尿素窒素(BUN)は、尿素サイクルでの産生状況と、腎での尿素窒素排泄機能を反映する。

引用:三井記念病院総合検診センター 山門実,尿素窒素

この尿素の生成の流れは以下のとおりとなります。

尿素の生成の流れ

  1. 不要なタンパク質
    (分解)
  2. アミノ酸
    (脱アミノ)
  3. アンモニア
    (尿素サイクル)
  4. 尿素

不要なタンパク質はアミノ酸へと分解されます。そしてアミノ酸は脱アミノによって、二酸化炭素とアンモニアに分解されます。しかしアンモニアは毒性が強いため、主に肝臓の尿素サイクルによって、尿素へと変換されます。

上記の流れでつくられた尿素はすべて腎臓から排泄されます。ですので、腎機能が低下すれば、血中に尿素がたまります。

しかし、臨床的にはこの尿素を直接測定しているのではなく、尿素のなかにふくまれている窒素量である血中尿素窒素(BUN)を測定しています。

ですので、腎機能が低下すると血中尿素窒素(BUN)が上昇するというわけです。

ただし、血中尿素窒素(BUN)はいろんな理由によって上昇するので、血中尿素窒素(BUN)が上昇したからといって必ずしも腎機能が低下したとは限りません。

なぜ尿素ではなく、尿素窒素を測定するのか

アンモニアの構造

なお、臨床化学検査では、尿素については尿素そのものの濃度ではなく、尿素窒素濃度が用いられているが、これは、以前はアンモニア窒素として尿素を測定していたことによる。

引用:系統看護学講座 専門基礎 人体の構造と機能[2]生化学(第12版),p85

尿素は体内の老廃物です。
しかし、臨床的には尿素そのものではなく、尿素に含まれる窒素量が測定されています。

この理由は、以前はアンモニア窒素として、間接的に尿素の量を測定していたためです。

  1. 不要なタンパク質
    (分解)
  2. アミノ酸
    (脱アミノ)
  3. アンモニア
    (尿素サイクル)
  4. 尿素

そもそも、生物にとっては「不要な窒素原子Nを処理すること」が重要であり、尿素というのはその一つの「手段」にすぎません。

ですので、血中濃度を表現するときに「窒素原子N」に着目するのが習慣となっています。

摂取したタンパク質や体を構成しているタンパク質は、役割を終えるとアミノ酸に分解され、脱アミノによりアンモニアがつくられます。
アンモニアはさらに、肝臓で尿素に変えられます(アンモニアは有害であるため)
そして、尿素は分子量60の低分子量物質であるため、腎臓の糸球体で濾過されて、尿として排泄されます。

現在は、尿素(H2NCONH2をウレアーゼと反応させて2分子のアンモニア(NH3)と二酸化炭素(CO2)に分解し、そのアンモニア量を測定することで、尿素に含まれる窒素量(尿素窒素(UN))を求めています。
そしてこの尿素窒素(UN)を尿素濃度の代わりに利用しています。

尿素の濃度の計算方法【血中尿素窒素から計算可能です】

血中尿素窒素とは

尿素濃度(mg/dl) = BUN(血中尿素窒素) × 60/28

尿素1分子は、窒素原子を2つ含んでいます。そして窒素原子の原子量は14です。

ですので、1molの尿素=60gに含まれる尿素窒素は28gということになります。

したがって、尿素窒素(UN)の値に、60/28をかければ尿素の値がわかります。

血中尿素窒素(BUN)の結果について

血中尿素窒素(BUN)は、肝臓での尿素サイクルでの産生の状況と、腎臓での排泄機能を反映しています。

つまり、血中尿素窒素は以下の影響を受けます。

  • 1つ目:タンパク摂取量
  • 2つ目:肝臓での尿素合成
  • 3つ目:腎臓での排泄機能

一般的には腎機能の指標として使われることが多いですが、血中尿素窒素(BUN)だけで腎機能を判断することはありません。

血中尿素窒素(BUN)の基準値

血中尿素窒素(BUN)の基準値
:7~23 mg/dL

血中尿素窒素(BUN)は、女性のほうが男性よりやや低めの値となります。

血中尿素窒素(BUN)が高くなる原因

血中尿素窒(BUN)が高くなる原因は以下のとおりです。

  • 原因①:腎排泄の低下
    (腎機能障害、尿路閉塞性疾患)
  • 原因②:尿細管吸収の亢進
    (循環血漿量減少(脱水、低血圧、ショック))
  • 原因③:タンパク異化の亢進
    (消化管出血、絶食、副腎ステロイド治療、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、外科的侵襲、熱傷)
  • 原因④:タンパク摂取量の増加
    (高タンパク食摂取、アミノ酸輸液)

参考:広浜大五郎 下澤達雄,BUN(血中尿素窒素)

腎不全では、糸球体濾過率が正常の50%に低下するまで、血中尿素窒素(BUN)はわずかしか上昇しませんが、正常の30%以下にまで低下すると、急速に上昇します。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍などで消化管出血した場合、少し高値になります。血液が腸内で分解された結果、増加したアンモ ニアが吸収されるためです。

大量の肉類を食べた際には、余分なアミ ノ酸が大量となるため尿素窒素は少し高値となります。また極度の飢餓の際には、一日分のエネルギー源を自分自身の筋肉などの蛋白を分解して得ることになるので、肉食中心の食事と同様な状態となります。

血中尿素窒素(BUN)が低くなる原因

血中尿素窒素(BUN)が低くなる原因は以下のとおりです。

  • 原因①:循環血漿量増加
    (容量負荷、妊娠、SIADH)
  • 原因②:尿細管再吸収の低下
    (尿崩症、マンニトールなどによる水利尿)
  • 原因③:タンパク異化の低下
    (低タンパク食、肝不全、タンパク同化ホルモン治療)

参考:広浜大五郎 下澤達雄,BUN(血中尿素窒素)

通常の健康診断では、高値でなければ異常なしとみなされることが多いです。

栄養療法的には、どれくらいタンパク質を食べているかの判断のひとつとして、血中尿素窒素(BUN)が用いられます。
血中尿素窒素(BUN)が一桁だとかなり低く、タンパク質の摂取量がすくないのでは?と判断できます。

BUN/血清Cr比

腎機能低下に伴い、BUNと血清Crがともに上昇し、BUN/血清Cr比≒10となる傾向がある。

引用:病気がみえる vol.8 腎・泌尿器,p25

一般的に、BUN/血清Cr比はおよそ10:1で、腎性因子、腎前性因子を推定するために利用されています。

血中尿素窒素(BUN)は、腎機能の低下以外にもいろんな理由で上昇します。一方の血清Crは基本的に腎臓の影響のみを受けます(腎機能が低下すれば血清Crは上昇します)

したがって、血中尿素窒素(BUN)と血清Crの両方が高くなる場合、腎機能の低下を示している可能性が高いです。血中尿素窒素(BUN)と血清Crの両方が上昇して、BUN/血清Cr比が10前後の場合、腎機能低下の可能性が高いです。

消化管出血やタンパク異化が亢進しているとき(例:大量のタンパク質摂取、甲状腺機能亢進症など)には、BUN/血清Cr比は10以上になり、低タンパク食、重症肝障害、利尿剤投与しているときにはBUN/血清Cr比は10以下となります。

まとめ:血中尿素窒素とは

血中尿素窒素とは

血中尿素窒素とは、血液中の尿素に含まれる窒素量のことです。

血中尿素窒素(BUN)という物質があるわけではないということ、また尿素(H2NCONH2とはまったくの別物ですので注意してください。

現在は、尿素(H2NCONH2をウレアーゼと反応させて2分子のアンモニア(NH3と二酸化炭素(CO2に分解し、そのアンモニア量を測定することで、尿素に含まれる窒素量(尿素窒素(UN)を求めています。そしてこの尿素窒素(UN)を尿素濃度の代わりに利用しています。

 

というわけで今回は以上です。

 

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