こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
本記事では、「生命活動に微量で作用するが、生体内では合成できないため食事で摂取しなければいけない栄養素」と定義されているビタミンのうち、ビタミンBについて、その種類と役割をまとめています。
目次
ビタミンB群の種類と役割
ビタミンBには8種類あり、「ビタミンB1(チアミン)」「ビタミンB2(リボフラビン)」「ナイアシン(ビタミンB3)」「ビタミンB6」「ビタミンB12」「パントテン酸(ビタミンB5)」「葉酸(ビタミンB9)」「ビオチン(ビタミンB7)」があります。
このようにビタミンBは種類がおおくてややこしいですが、特徴としてはエネルギー代謝に関係しているものが多いです。
それでは順を追って、それぞれのビタミンB群の簡単な役割を紹介します。
ビタミンB1(チアミン)の役割【脚気で有名】
- 糖質の代謝
- タンパク質の代謝
ビタミンB1(チアミン)の主な役割は上記のとおりです。
とくに重要なビタミンB1の役割は、糖質の代謝に必要な酵素の補酵素としての働きです。
糖質がうまくエネルギーとして使われにくくなるので、疲れやすくなります。
なお、食品中にビタミンB1(チアミン)は、以下の3種類のチアミンリン酸エステルとして含まれています。
- チアミン1リン酸(TMP)
→ チアミンにリン酸が1つ結合 - チアミン2リン酸(TPP、またはTDP)
→ チアミンにリン酸が2つ結合 - チアミン3リン酸(TTP)
→ チアミンにリン酸が3つ結合
食品中に含まれる上記3種類のチアミンリン酸エステルは、消化管内のホスファターゼの作用により加水分解されてビタミンB1(チアミン)になってから吸収され、体内で再びリン酸化され、リン酸エステルとなります。
私たちの体内では、チアミンに二つのリン酸が結合した補酵素となるチアミンピロリン酸(TPP、またはTDP)がもっとも多く、活性型ビタミンB1と呼ばれています。
ビタミンB2(リボフラビン)の役割
- 糖質の代謝
- 脂質の代謝
- タンパク質の代謝
- 酸化反応を行う各種酵素の補酵素として
ビタミンB2(リボフラビン)は、7,8-ジメチル-10-リビチルイソアロキサジンの構造をもつ化合物で、主な役割は上記のとおりです。
とくに重要なビタミンB2の役割は、脂質の代謝に必要な酵素の補酵素としての働きです。
リボフラビン(ラテン語の黄色=’flavus’に由来する)は,酸化還元補酵素であるフラビンモノヌクレオチド(FMN)およびフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の成分として代謝にかかわる(p.104).
体内に吸収されると、補酵素として働くFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)またはFMN(フラビンモノヌクレオチド)に変化します。
FADとFMNはそれぞれ、ビタミンB2から細胞内においてフラボキナーゼとFAD合成酵素によりつくられています(ビタミンB2に、リン酸が結合したものがFMNです。FMNにさらにアデニン、リボース、リン酸が結合したものがFADです)。なお、体内では主にFADの形で存在しています。
FADとFMNの両者とも、主に三大栄養素の「糖質・脂質・タンパク質の代謝」の補酵素として働き、エネルギーである「ATP」の産生に深く関わっています。
ビタミンB2が不足すると口内炎や口の端が切れる口角炎が起こります。皮膚や粘膜の細胞は破壊と再生のサイクルが早いので、不足すると即座に影響がでます。
ナイアシン(ビタミンB3)の役割【ペラグラで有名】
- 糖質の代謝
- 脂質の代謝
- タンパク質の代謝
- 脱水素反応や還元反応を行う各種酵素の補酵素として
ナイアシン(ビタミンB3)には、ニコチン酸とニコチン酸アミド(ニコチンアミド)があり、主な役割は上記のとおりです。
- ニコチン酸
→植物に多く含まれる - ニコチン酸アミド(ニコチンアミド)
→動物に多く含まれる
植物に多く含まれるのがニコチン酸で、動物に多く含まれるのがニコチン酸アミド(ニコチンアミド)です。
とくに重要なナイアシンの役割はエネルギー代謝、つまりATP産生です。これを直接担うのは、活性型のナイアシンであるNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、あるいはNADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)です。
ニコチン酸とニコチンアミドは,まとめて”ナイアシン”と呼ばれるが,補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)とニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)の生合成に必要である.
ナイアシン(ビタミンB3)は、ニコチン酸とニコチン酸アミド(ニコチンアミド)の総称です。
ナイアシンから、活性型のナイアシンであるNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、あるいはNADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)が合成されます。
また、トリプトファンからも活性型ナイアシンは合成でき、合成にはビタミンB6、亜鉛、銅などが必要です。
その役割も特に重要で、約500種類の酵素の補酵素として働きます。
具体的には、糖質、脂質、たんぱく質の代謝過程で必要な酵素(酸化還元酵素、脱水素酵素)の補酵素としてATP生成に深く関与しています。
ナイアシン(ビタミンB3)の欠乏症にはペラグラという病気があり、症状としては皮膚炎や消化管症状(下痢など)、頭痛、めまいなどが知られています。3Dと呼ばれる、皮膚症状(dermatitis)、下痢(diarrhea)、神経症状(dementia)が有名ですが、これらすべての症状がそろわないこともあり、特徴的な皮膚症状から早く診断し、速やかに治療することが重要です。
ビタミンB6の役割
- 糖質の代謝
- 脂質の代謝
- タンパク質の代謝
- 神経伝達物質(ドーパミン、アドレナリン、セロトリンなど)の代謝
- グリコーゲンの代謝
ビタミンB6の主な役割は上記のとおりです。
体内においてビタミンB6は、ピリドキサール-5′-リン酸(PLP)、ピリドキサミン-5′-リン酸(PMP)の形で多く存在し、100種類以上の酵素の補酵素としての役割があります。
とくに重要なビタミンB6はの役割は、タンパク質の代謝に必要な酵素の補酵素としての働きです。
ビタミンB6が不足すると、皮膚や粘膜の合成がうまく行われず、皮膚炎や口内炎などの症状がでることがあります。
なお、ビタミンB6は、以下の6種類の化合物の総称です。
- ピリドキシン(PN)
- ピリドキサール(PL)
- ピリドキサミン(PM)
上記のリン酸エステル型である - ピリドキシン-5′-リン酸(PNP)
- ピリドキサール-5′-リン酸(PLP)
- ピリドキサミン-5′-リン酸(PMP)
ビタミンB12の役割
- 脂質の代謝
- タンパク質の代謝
- 赤血球の形成
- メチオニンの合成
- 核酸合成
- プリビオン酸の合成
ビタミンB12は葉酸と協働して赤血球のヘモグロビンをつくり出します。
欠乏症としては悪性貧血の1つである巨赤芽球性貧血が知られています。
なお、ビタミンB12はコバルトを含む以下の化合物の総称です。
- ヒドロキソコバラミン
- アデノシルコバラミン
- メチルコバラミン
- シアノコバラミン
- スルフィトコバラミン
ビタミンB12の活性をもつのは、コバルトに水酸基が結合したヒドロキソコバラミン、メチル基が結合したメチルコバラミン、5′-デオキシアデノシンが結合したアデノシルコバラミンです。
体内では主に、アデノシルコバラミンとメチルコバラミンが酵素作用を示します。
パントテン酸(ビタミンB5)の役割
- 糖質の代謝
- タンパク質の代謝
- 脂質の代謝
- コレステロールの合成
ナイアシンやビタミンB12と協働して、脂肪酸からアセチルCoAをつくり出すβ酸化を促進しています。
ですのでパントテン酸が不足すると、脂肪酸の燃焼が進まないので、脂肪がたまりやすくなります。
パントテン酸は、補酵素A(CoA)やホスホパンテテインなどの構成成分として、重要な働きをしています。
なお、体内のパントテン酸のほとんどは、補酵素Aとして存在し、三大栄養素である糖質、脂質、タンパク質すべての代謝に関与しています。
とくに、補酵素A(CoA)のアセチル化体のアセチルCoAは、クエン酸回路へエネルギー源を供給する物質として重要です。
補酵素A(CoA)については下記の記事で詳しく解説していますので興味のある方はご覧ください。
【補酵素A】CoAとは?その構造や働きについてわかりやすく解説します葉酸(ビタミンB9)の役割
- タンパク質の代謝
- 核酸の原料
- メチオニンの合成
- 赤血球の形成
- ビタミン代謝
葉酸(ビタミンB9)はビタミンB12と同様に造血に関係してます。
また、葉酸(ビタミンB9)は核酸の合成に不可欠です。
葉酸(ビタミンB9)は、プテロイルグルタミン酸とも呼び、パラアミノ安息香酸とグルタミン酸が結合した構造をもっています。
通常の食品中には、ほとんどがポリグルタミン酸型の葉酸(複数のグルタミン酸が結合した型)として含まれていて、加工食品でははモノグルタミン酸型の葉酸(グルタミン酸が一つ結合した型)として含まれております。
- 食品中 → ポリグルタミン酸型の葉酸
- 加工食品 → モノグルタミン酸型の葉酸
食品から摂取したポリグルタミン酸型の葉酸は、消化管の酵素によって消化され、モノグルタミン酸型の葉酸となったあと、わたしたちの体内に吸収されます。
さらに、モノグルタミン酸型の葉酸は、体内で還元されてテトラヒドロ葉酸(THF)となり、私たちの体内で補酵素として働きます。
ビオチン(ビタミンB7)の役割
- 糖質の代謝
- 脂質の代謝
- タンパク質の代謝
ビオチン(ビタミンB7)の主な役割は上記のとおりです。
ビオチンは4種のカルボシキラーゼ(①ピルビン酸カルボキシラーゼ、②アセチルCoAカルボキシラーゼ、③プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、④メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ)の補酵素としての役割があります。
これら4種のカルボキラーゼは、糖新生、脂肪酸合成、アミノ酸代謝などと関係しているので、エネルギー代謝において重要です。
しかし、ビオチンは色んな食品に含まれており、また腸内細菌によっても合成されるため欠乏症となることは稀です。
ビタミンBの種類が多い理由
本記事ではビタミンBの種類と役割を紹介してきました。
しかし、なぜビタミンBだけこれだけ種類が多いのでしょうか?
一説には、脂溶性のビタミンをビタミンAとし、水溶性のビタミンをビタミンBにしようと予定していたんですが、いろんな水溶性ビタミンが続々と発見されてしまし、B1、B2と呼んでいくうちに、命名が後回しになってしまったというものがあります。
ビタミンBの番号が飛び飛びなのは、当初は順番にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB4という風に名付けられていましたが、ビタミンB4のように、その化学構造がアデニンであると判明すると、これは核酸に分類されるものだということで、除外されたりしたからです。
まとめ:ビタミンBの種類と役割
- 脂溶性ビタミン
(ビタミンD、ビタミンA、ビタミンK、ビタミンE) - 水溶性ビタミン
(ビタミンB、ビタミンC)
ビタミンには大きく分けて脂溶性ビタミン(ビタミンD、ビタミンA、ビタミンK、ビタミンE)と水溶性ビタミン(ビタミンB、ビタミンC)があります。
しかし、ビタミンBは1種類ではなく、全部で8種類あります。
種類が多いビタミンBなんですが、その役割としては全体的にエネルギー代謝に関わるものが多いです。
というわけで今回は以上です。
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