こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
本記事では、アイソザイムとはいったいなんなのか?アイソザイムの意味をわかりやすく解説してみました。
なお、本記事では有名なアイソザイムがあるLDH(乳酸脱水素酵素)を例として紹介しています。
目次
アイソザイムとはなに?わかりやすく解説してみた
アイソザイムとは、同じ反応を触媒する異なる酵素型のことです。
上の図は、消化酵素であるα-アミラーゼによるでんぷんの酵素反応についてのものになります(酵素反応の参考です)。
詳しくは下記の記事で解説しています。
酵素とはなに?わかりやすく説明してみた【消化酵素と代謝酵素の違い】つまり、酵素とは触媒として働くタンパク質のことです。この酵素は、食べ物の消化の触媒として、あるいは代謝の触媒としての働いています。
ちなみに、人間の体内には3,000種以上の酵素があるといわれています。
アイソザイムの特徴
- アイソザイムは同じ反応の触媒として機能しますが、その物理化学的・酵素学的特性に違いがみられます。
私たちの体内では、同じ名前の酵素でありながら、存在する場所(臓器や細胞など)によって、その分子の型が少しだけ異なる酵素があります。このような、少しだけ型が異なる酵素をアイソザイムといいます。
これらアイソザイムは、同じ化学反応を触媒しますが、その物理化学的・酵素学的特性に違いがみられて、それによって代謝能に影響を与えています。
次に紹介するLDH(乳酸脱水素酵素)のアイソザイムの割合は、各細胞・組織における 2 種のサブユニット遺伝子の発現量に規定されていて、特徴的なパターンを示しています。
例:LDH(乳酸脱水素酵素)のアイソザイム
乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LDH)は解糖系からTCA回路に入る直前の代謝産物であるピルビン酸と乳酸の変換を触媒する酵素である。
引用:[改訂第3版]透析患者の検査値の読み方,p141
LDH(乳酸脱水素酵素)とは、解糖系の最終的な生成物であるピルビン酸を乳酸へと分解するために(もしくは乳酸からピルビン酸へと変換するときに)必要な酵素です。
このLDH(乳酸脱水素酵素)を構成する要素には、2種類の異なるサブユニット(M鎖とH鎖)があります。
LDH(乳酸脱水素酵素)は四量体ですので、2種類のサブユニット(M鎖とH鎖)が4つ組み合わさってできていて、その組み合わせの数は全部で5種類あります。
つまり、LDH1(H4)、LDH2(H3M1)、LDH3(H2M2)、LDH4(H1M3)、LD5H(M4)の 5種類のアイソザイムがあります。
なお、LDH1~5は、同じ化学反応を触媒しますが、それぞれの酵素の形が若干ながら異なっています。
- アイソザイムとは、同じ反応を触媒する異なる酵素型のことです。
これらLDHのアイソザイムの割合は各細胞・組織における 2 種のサブユニット遺伝子の発現量に規定されていて、特徴的なパターンを示します。
すなわち、H(heart:心臓)サブユニットの多い心筋や赤血球では LDH1とLDH2 が多く、逆に M(muscle:筋肉)サブユニットが多い肝細胞や骨格筋では LDH5が多いです。
LDHはこれらの細胞が傷害を受けた時に血中に逸脱し、由来細胞のアイソザイムパターンに近いパターンを形成します。
LDHのサブユニット欠損症とは?
- M鎖サブユニット欠損ではLDH1のみの活性が認められる。
- H鎖サブユニット欠損ではLDH5のみの活性が認められる。
LDH(乳酸脱水素酵素)は2種類のサブユニット(M鎖とH鎖)が4つ組み合わさってできている四量体で、その組み合わせの数は全部で5種類あります。
ですが、サブユニット欠損によって、つまりM鎖サブユニット欠損ではLDH1のみが分画され、H鎖サブユニット欠損ではLDH5のみが分画されます。
なお、H鎖サブユニット欠損では臨床的に重大な症状はみられませんが、M鎖サブユニット欠損症では、運動後の筋崩壊とミオグロビン尿といった臨床症状があらわれます。
M鎖サブユニット欠損症の人では、運動後にミオグロビン尿があらわれる理由としては、骨格筋に十分なLDH活性がないため、解糖系からエネルギーであるATPが十分に得られず、横紋筋壊死によるミオグロビン尿症となっているわけです。
なお、H鎖サブユニット欠損症の中には、完全欠損ではなく、赤血球のLDHアイソザイムパターンで、完全にLDH5のみではなく、LDH3やLDH4も観察される不完全欠損例もあります。
というわけで今回は以上です。
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