臨床工学技士のナキです。
この記事ではIHDF(間歇補液型HDF)について解説します。
IHDFの定義、適応、禁忌、条件設定(補液量・補液タイミング)を現場目線で解説します。
目次
IHDF(間歇補液型HDF)とは
IHDFとはHD中に間歇的に50~200mLを、20~30分ごとに補液する方法です(補液速度150mL/min)。補液分は次の補液までに、除水されます。
HD/IHDFとの違い
通常のHDでは末梢循環不全がおきています。したがって、除水が難しく鳴ったり、毒素の抜けが悪くなります。
一方のIHDFでは、末梢循環がHDに比べて維持されるため、除水が多くできたり、毒素の抜けもよくなります。
IHDFのメリット/効果
- 透析中の血圧が安定する
- 全死亡率・心血管死亡率の低下
- 低灌流臓器の循環を増やし溶質交換を促進する
- 透析膜の目詰まり抑制
上記がIHDFのメリット/効果です。
毛細血管の構造をもとにした末梢循環改善効果の説明
血圧低下時に前毛細血管括約筋がしまり、真ん中のシャントの部分に血液が流れます。
しかし、補液をして血圧を上げると、前毛細血管括約筋が緩み、真の毛細血管に血液が流れます。その結果、末梢循環の改善が改善します。
また、末梢循環が改善することでプラズマリフィリングが促進されるといわれています。プラズマリフィリングについては下記の記事で解説しています。
エビデンスレベルでのIHDFの効果
上記の論文は他施設・前向きのクロスオーパー試験で、日本の8施設が参加しています。
週3回の維持透析を施行中で、週1回以上の血圧低下に対する処置が必要、または収縮期血圧が20mmHg以上低下する77名の患者さんを対象。1回補液200mL(150ml/min)、30min間隔の設定のIHDFです。比較はクロスオーバーの通常透析で、治療スケジュールはHDを2週間→IHDFを4週間→HDを2週間としています。
その結果、IHDFでは透析中の低血圧に対する介入(下肢挙上、除水速度↓、昇圧薬処方)が有意に減り、また透析後半ではHDと比べてIHDFの方が心拍数が低かったと報告しています。
また、高齢患者さんや透析間体重増加が多い患者さんで、IHDFへの反応が良好であったとのことです。
IHDFの条件設定について
多施設RCTクロスオーバー(Blood Purification 2019)と多施設前向きクロスオーバー(Clin Exp Nephrol 2017)の双方が、上記の条件でIHDFを施行しています。
したがって、200mLを30分ごとに補液、というのが現状、最も裏づけが強い標準設定です。
適応/禁忌と注意
IHDFに適さない、あるいは注意する患者さんをリストアップします。
透析中に高血圧を呈する症例
透析中に血圧が上昇する患者さんでは、間歇的な補液を繰り返すこと自体が不要でかつ危険です。
IHDFは本来、『低血圧症例向け』であり、高血圧例は適応外であるといえます。
重度の末梢動脈疾患で末梢循環障害が強い症例
IHDFの有効性が低い症例としてASOが挙げられた報告があります。末梢循環の障害が強い症例では、期待する末梢循環改善が得られにくい可能性があります。
参考:Kenji Eiki,Factors Affecting Intermittent Infusion Hemodiafiltration,2019
低体重や除水速度が速い
30分ごとに200mLを補液する場合のIHDFでは、補液分を30分で除水するため、体格が小さい症例や、元々の除水速度が多い症例では、補液分ほ除水の負荷が高くなり、血圧低下リスクが高くなります。
したがって、補液量の減量(50~100mlの補液に減量するなど)の対策が必要です。
心不全や弁膜症を有する症例
心不全急性増悪(酸素投与が必要、肺うっ血、CTRが著明に拡大)、直近で心血管イベントのある患者さんでは、IHDFは避けるべきでしょう。
また弁膜症を有する患者さんでは、前負荷・後負荷に影響し、不利益となる可能性があります。
以上で本記事は終了です。
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