人間の血液温度の正常値ってどのくらいなの?【中枢温と末梢温】

静脈の血液温度の種類1

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

本記事では、人間の血液温度の正常値について、いったいどのくらいの値なのかを紹介しています。

なお、血液温度といっても心臓周囲を流れる血液の温度なのか、体の末梢を流れる血液の温度なのかでも違っていて、その辺の違いを含めて紹介しています。

体温はそもそも一定ではなく、体の部位によって違っていて、大きく中枢温(核心温)と末梢温(外殻温)に分けて考えるのが一般的です。生理学的には、体温というと体の中心部に近い中枢温(核心温)のことをいう場合が多いですが、測定が困難なことが多いので、腋下などの末梢温(外殻温)がよく測定されています。

人間の血液温度の正常値はどのくらい?

静脈の血液温度の種類1

 

引用一部改変:辻孝之他,深部体温計と心臓外科,医用電子と生体工学14:220-224,1976

  • 血液温度の正常値:約37.3℃
    (肺動脈内における血液温度)

人間の血液温度(肺動脈内の血液温度)は中枢温(核心温)とみなすことができ、約37.3℃です。

なお、中枢温(核心温)には、直腸温、膀胱温、食道温、鼓膜温、肺動脈温(血液温)などがあります。しかし、これらの中枢温(核心温)は必ずしも均一ではありません。

人間の体温を調節する中枢は視床下部にあり、視床下部を流れる血液温がモニターされ、全身の体温を一定に保つように調節されています。
私たち身体の代謝において重要な働きをしている酵素の活性がいちばん高くなるのが、中枢温(核心温)で37℃前後といわれています。

視床下部を流れる血液温=中枢温(核心温)

体温調節の中枢は視床下部にあります。

この視床下部を流れる血液温によって体温が設定されているため、この部位を流れる血液温が中枢温といえます。

血液温度の測定方法

  • 肺動脈を流れる血液温度
    → 中枢温(核心温)を反映
  • 末梢血管を流れる血液温度
    → 環境温度の影響を受けやすい

血液温度には、心臓から出た後のすぐの肺動脈を流れる血液温度と末梢血管を流れる血液温度などがあり、当然これらに流れる血液の温度には違いがあります。

肺動脈を流れる血液温度は、肺動脈カテーテル(Swan-Ganzカテーテルなど)を用いて測定することができます。

とくに、心臓は各種臓器からの血液が集まっているので、中枢温(核心温)の平均値と考えられており、重要視されています。

実際の血液温度の測定結果

静脈の血液温度の種類1

引用一部改変:辻孝之他,深部体温計と心臓外科,医用電子と生体工学14:220-224,1976

上の表は、1974~1975年に東京女子医大第二病院循環器外科で管理されている心疾患を有する患者さん(1~38歳)の対象者のうち、心臓カテーテルを用いて各静脈血管の血液温度を測定できた9名の結果を示したものです1)

内頚静脈や肝静脈の血液温度のほうが、手掌より流れてくる腋下静脈より高いことがわかります。

体温の種類【中枢温と末梢温】

体温の種類(中枢温と末梢温)

体温の種類

  1. 中枢温(核心温)
  2. 末梢温(外殻温)

体温には2種類あり、中枢温(核心温)と末梢温(外殻温)に分けて考えるのが一般的です。

通常、中枢温(核心温)は腋下温度などの末梢温(外殻温)と比べて、0.5~1.0℃高いです。

中枢温(核心温)

中枢温(核心温)は、大気温に影響されない体の中心部の温度です。

中枢温(核心温)には、直腸温、膀胱温、食道温、鼓膜温、肺動脈内の血液温(血液温)などがあります。

しかし、これらの中枢温(核心温)は必ずしも均一ではありません。直腸温や膀胱温は比較的末梢温(外殻温)に近いとされています。

米国集中治療医学会(ACCM)と米国感染症学会(IDSA)のガイドライン1)では、血液温度、膀胱温度(膀胱カテーテルに組み込まれた温度センサー)、食道温度(温度プローブ)、直腸温度(温度プローブ)が、深部温度をより正確に反映するとして、その使用を推奨しています。

中枢温(核心温)が40℃以上で臓器障害が始まるといわれています。

末梢温(外殻温)

体の中心部の温度である中枢温(核心温)に対し、体の表層部の温度は末梢温(外殻温)と呼ばれています。

末梢温(外殻温)は、熱の産生量が少なく、大気温の影響を受けやすいです。

末梢温(外殻温)は、指先、前腕、足背などの皮膚の温度です。

中枢温(核心温)と末梢温(外殻温)の温度の違い

中枢温(核心温)は、末梢温(外殻温)よりも0.5~1.0℃高いです。

それぞれの部位の中枢温(核心温)について

体温の種類(中枢温と末梢温)

ここでは中枢温(核心温)について、それぞれの特徴を簡単に解説していきます。

直腸温

  • 直腸温は中枢温(核心温)の指標

直腸温は中枢温(核心温)の指標として用いることができます。

臨床の場では、直腸温が用いられることが多いです。ただし、糞便によって測定温度に影響が出るため注意が必要です。

特に便がある場合は,、直腸温は他の中枢温(核心温)よりも高い温度を示すといわれています。さらに途中で排便があると温度測定が不可能になり、また排便後の直腸温は排便前に比べて低い温度になりやすいです。

直腸温で正確な値を知りたいときには、事前に直腸内を空虚にしておく必要があります。

中枢温(核心温)の変化が激しい場合は、直腸温はそれに追従することができません。

直腸温は中枢温(核心温)の指標として用いられていますが、直腸温はあくまで直腸内の温度です。直腸内の温度に影響する様々な影響を把握しておく必要があります。

膀胱温

  • 膀胱温は中枢温(核心温)の指標

膀胱温は中枢温(核心温)の指標として用いられています。

欠点としては、膀胱温は尿量の影響を受けやすいです。

尿量が十分にある場合は、中枢を流れる血液温をよく反映しています。
しかし、尿量が少ない場合には中枢温(核心温)の変化が激しいとそれに追従できません。

膀胱温は中枢温(核心温)の指標として用いられていますが、膀胱温はあくまで膀胱内の温度です。膀胱内の温度に影響する様々な影響を把握しておく必要があります。

鼓膜温

鼓膜温は脳温に最も近いといわれていて、こちらも中枢温(核心温)のモニターとして有用です。

しかし、1回ごとに測定が必要であり、また固定性にも問題があるので持続的なモニターには不向きです。

血液温

血液温は肺動脈カテーテル(Swan-Ganzカテーテルなど)で測定でき、この場合の血液温はまさに中枢温(核心温)を反映しています。

ただし侵襲性が高く、簡単には測定できません。

とくに、心臓は各種臓器からの血液が集まっているので、中枢温(核心温)の平均値と考えられており、重要視されています。

脳温

脳温は頭蓋内圧センサーで測定することができますが、穿頭を手術で行う必要があり、手間と侵襲性が高いです。

まとめ:血液の温度

静脈の血液温度の種類1

心臓から出てすぐの肺動脈を流れる血液の正常値は約37.3℃です。

とくに、心臓は各種臓器からの血液が集まっているので、中枢温(核心温)の平均値と考えられており、重要視されています。

その他、心臓から近い静脈を流れる血液の温度は37.0~37.4℃となっています。

一方で、体の末梢の静脈を流れる血液温度はさらに低く、末梢温(外殻温)ですので外気の温度の影響が強いです。

 

というわけで今回は以上です。

主要な静脈を流れる血液の温度と体温の種類についてわかりやすくまとめてみました。少しでも参考になれば幸いです。

 

 

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