目次
カルシウムの単位換算(mg/dL⇄mmol/L⇄mEq/L)
まずは、臨床でよく目にするカルシウムの単位を紹介します。
血清カルシウムの単位
- 血清カルシウムの基準値:8.8~10.1 mg/dL
生化学用のスピッツでカルシウムを測定すれば「mg/dL」の単位で表記されます。
血清イオン化カルシウムの単位
- イオン化カルシウムの基準値: 1.15–1.30 mmol/L
血液ガス分析装置でカルシウムを測定した場合、イオン化カルシウムが測定されます。
血清総カルシウム濃度(mg/dL)からイオン化カルシウム(mg/dL)への変換
血清カルシウムは3つの形態で存在し、イオン化したもの(50%)、小分子陰イオンにキレートされたもの(10%)、タンパク質(多くがアルブミン)と結合しているもの(40%)である。
- イオン化したもの:50%
- 小分子陰イオンにキレートされたもの:10%
- アルブミンと結合したもの:40%
血清カルシウムの状態には3つあります。
上記のとおり、血清中のカルシウムは、イオン化したものが50%、アルブミンなどに結合したものが50%です。
ですので、血清総カルシウム濃度が9mg/dLであれば、9mg/dL÷2=4.5mg/dLがイオン化カルシウムとなります。ただし、これはあくまで目安です。
透析液のカルシウムの単位
- 透析液のカルシウムの濃度:2.5~3.0 mEq/L
透析液のカルシウムの濃度の単位は、電解質濃度の単位である「mEq/L」で表記されています。
血清カルシウム(Ca)の単位【mg/dL、mEq/L、mmol/L】の変換
それでは次に、実際にカルシウムの単位変換の方法を解説します。
カルシウムの単位変換【mg/dL→mmol/L】
- イオン化カルシウムの濃度を4.5mg/dL=45mg/Lに変換します。
(100ml中に4.5mgのカルシウムが含まれているので、1L中では45mgになります) - カルシウムの原子量は40.08なので、カルシウムのモル質量は40.08g/molとなります。
(原子のモル質量は、原子量g/molです) - 40.08g/molをミリの単位に変換すると、40.08mg/mmolとなります。
(分母分子にミリの単位を加えただけです) - 45mg/L ÷ 40.08mg/mmol = 1.12mmol/L(少数二桁で丸め)
イオン化カルシウムが4.5mg/dLであるとき、モル濃度(mmol/L)であらわす方法は上記のとおりです。
ですので、カルシウムの単位を「mg/dL→mmol/L」に単位変換する方法は、イオン化カルシウム(mg/dL)に10 をかけて、40.08で割るだけです。
カルシウムの単位変換【mmol/L→mEq/L】
画像引用:大塚製薬株式会社
- カルシウムの原子価は2価です。
(イオン式中での電荷の絶対値をイオンの価数といいます。Ca2+なので、原子価は2価です) - カルシウムのように2価の電解質では、1molのカルシウムは40.08gです。2価なので 1当量(Eq)は 20.04 g = 40.08 ÷ 2。したがって mEq/L = mmol/L × 2。
- なのでカルシウムのモル濃度に2をかければよいので、1.12mmol/L × 2価 = 2.24mEq/Lとなります。
イオン化カルシウムのモル濃度が1.12mmol/Lであるとき、電解質濃度の単位(mEq/L)であらわす方法は上記のとおりです。
ですので、イオン化カルシウムの単位を「mmol/L→mEq/L」に単位変換する方法は、イオン化カルシウム(mmol/L)に2をかけるだけです。
カルシウムの単位変換【mg/dL→mEq/L】
カルシウムの単位をmg/dLからmEq/Lに変換する方法は、ここまででやってきたように「mg/dL→mmol/L→mEq/L」と順番に変換していけばいいです。
つまり、mg/dLで表記されるカルシウムに、10 をかけて、40.08で割って、最後に2をかけると、mEq/Lという単位に変換できます。
- ((4.5mg/dL×10)÷40.08)×2 ≒ 2.25mEq/L
上記の計算のとおり、イオン化カルシウムが4.5mg/dLのとき、mEq/Lに単位を直すと2.24mEq/Lとなります。
臨床での注意(総CaとiCaの違い)
総Caは「蛋白結合Ca+イオン化Ca」の合計です。
「総Ca ÷ 2 ≒ iCa」はあくまで目安で、臨床判断にはiCa測定またはAlb補正を用いてください。
参考文献:
Radiometer「Ionized calcium」 /MSDマニュアル「カルシウム濃度異常の概説」
測定・表示単位の実務
- 血ガス装置の多くはiCaを mmol/L 表記(装置設定で変更可能な場合あり)。
- 記事内の単位は、総Ca=mg/dL、iCa=mmol/Lを基本に両単位併記(丸めは下記ルール)。
- 透析液CaはmEq/L表記が一般的(Caイオンは2価のためmEq/L=mmol/L×2)。
参考文献:JCCLS「共用基準範囲・換算係数」 /Radiometer
丸め方と換算の扱い(表示統一)
- mg/dL ⇄ mmol/L:mg/dL × 0.2495 = mmol/L / mmol/L × 4.00 ≒ mg/dL(厳密4.008)。
- mEq/L:mmol/L × 2(Caは2価)。
参考文献:JCCLS
よくある質問(FAQ)
Q. 1 mmol/L は何 mg/dL?
A. 約 4.00 mg/dL です(厳密には ×4.007…)。
参考文献:JCCLS「共用基準範囲・換算係数」
Q. mEq/L と mmol/L はどう違う?
A. mEq/L = mmol/L × 原子価。カルシウムは2価なので、mEq/L = mmol/L × 2 です。
参考文献:JCCLS
Q. iCa(イオン化Ca)の基準値は?
A. 成人例で 1.15–1.33 mmol/L(4.6–5.3 mg/dL) が目安です。測定機器の表示単位は多くが mmol/L です。
参考文献:Radiometer「Ionized calcium」
Q. 総Ca ÷ 2 ≒ iCa の近似は使ってよい?
A. あくまで目安です。pH↑(アルカローシス)や Alb↑ で蛋白結合が増えると iCa は相対的に低く出ます。臨床判断には iCa 測定または Alb補正を用いてください。
Q. 換算係数は何を使えばよい?
A. 総Ca:mg/dL × 0.2495 = mmol/L(Ca原子量 40.08 に基づく)。逆換算は mmol/L × 4.00 ≒ mg/dL を推奨します。
参考文献:JCCLS
というわけで今回は以上です。文献によっては、カルシウムの単位の表記法が違ったりするので、きちんと単位変換できるようにしましょう。