こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。
私は透析室で勤務しており、透析をしている患者さんはCKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)を治療するために、リン、カルシウム、そしてPTHを基準値内にコントロールする必要があります。ですので、日々これらの採血データを確認しながら業務をおこなっています。
そこで、本記事では血清カルシウムの基本的事項について、わかりやすくまとめてみました。3分ほどでサクッと読めますのでぜひ気楽にご覧下さい。
目次
血清カルシウムの基準値(Caの基準値)
- 血清カルシウムの基準値:8.8~10.1 mg/dL
血液中のカルシウムの基準値は8.8~10.1 mg/dLです。
ちなみに、血液中のカルシウムの調節には、主に副甲状腺ホルモンのパラトルモン(PTH)、ビタミンD3が関与しています。
- 補正カルシウム濃度(mg/dL)=実測カルシウム濃度(mg/dL)+4-Alb(g/dL)
身体の中でのカルシウムの役割
- 筋肉の収縮
筋肉の収縮のためにカルシウムイオンが必要 - 血液凝固
カルシウムは凝固因子の一つ - 神経伝達物質の放出
- 酵素活性
- 細胞分化、細胞増殖、細胞死
- 骨や歯の材料
骨にヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)の形で存在しています
身体の中でのカルシウムの役割は上記のとおりです。
詳しくは下記の記事で解説しています。
骨や歯の材料以外でも多彩な役割をもつカルシウム
体内にあるカルシウムは1kgといわれていますが、そのうち99%以上は骨や歯の材料として存在しています。
そして、残り1%のほとんどが細胞の中に存在し、細胞の外に存在するのはカルシウム全体の約0.1%です。
しかし、この残り1%のカルシウムのほうが私たちの身体の生理機能にとって重要な役割を担っています。
血液中のカルシウム
血清カルシウムは3つの形態で存在し、イオン化したもの(50%)、小分子陰イオンにキレートされたもの(10%)、タンパク質(多くがアルブミン)と結合しているものである。
血液中のカルシウムの約50%はカルシウムイオン(Ca2+)として存在しています。残りの約50%は結合型カルシウムとして存在しています。
→リンク
そして、通常の血液検査では、これらすべてを合わせた総カルシウム濃度を測定しています。
- 血清カルシウムの基準値(総カルシウム濃度)
:8.8~10.1 mg/dL
なので、本当はカルシウムイオン(Ca2+)だけを測定できればよいのですが、総カルシウム濃度は生化学用のスピッツで他の項目と一緒に測定できるため、総カルシウム濃度を測定しています。
カルシウムの異常値
血液中のカルシウムの調節には、主に副甲状腺ホルモンのパラトルモン(PTH)、ビタミンD3が関与しています。なので、パラトルモン(PTH)の高値や低下、あるいはビタミンD3の作用不足や効きすぎがカルシウムの異常値の原因としては多いです。
血清カルシウムが高いとき
高カルシウム血症とは、血清総カルシウム濃度が10.4 mg/dL(2.6mmol/L)を上回るか、または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態である。
血清カルシウムが10.4 mg/dL以上を高カルシウム血症といいます。
高カルシウム血症の原因と症状
高カルシウム血症の原因は以下のとおりですが、原発性副甲状腺機能亢進症や悪性腫瘍によるものが最も多いです。
- 原発性副甲状腺機能亢進症
- 二次性副甲状腺機能亢進症
- 悪性腫瘍
- サルコイドーシス
- 極度の不動
- 薬剤性
(カルシウム製剤、ビタミンD製剤、ビタミンA製剤、サイアザイド系利尿薬) - ミルクアルカリ症候群
(牛乳の大量摂取と共にアルカリ(炭酸カルシウムなど)を摂取すると起こる高カルシウム血症のこと)
- 頭痛
- 筋力低下
- 消化器症状(悪心・嘔吐)
- 多飲多尿
- 心電図異常(QT短縮)
- 抑うつ状態
- 錯乱
- 意識障害
血清カルシウムが低いとき
低カルシウム血症とは、血漿タンパク濃度が正常範囲内にある場合に血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL(2.20mmol/L)未満であること、または血清イオン化カルシウム濃度が4.7mg/dL(1.17mmol/L)未満となった状態である。
血清カルシウムが8.8mg/dL未満の場合を低カルシウム血症といいます。
(真の値よりも見かけ上、血清カルシウムが低くなるため。)
- 補正カルシウム濃度(mg/dL)=実測カルシウム濃度(mg/dL)+4-Alb(g/dL)
低カルシウム血症の原因と症状
低カルシウム血症の原因は以下のとおりです。
副甲状腺機能低下症、ビタミンD不足(慢性腎不全含む)などが原因として多いです。
- 副甲状腺機能低下症
- ビタミンD3不足
- 慢性腎不全
- 薬剤性
ですので、これらPTHやビタミンD3の作用不足が低カルシウム血症の主な原因です。
低カルシウム血症の症状は以下のとおりです。
とくに、神経筋に対する作用(テタニー、感覚障害、痙攣など)や心血管に対する作用(低血圧、心拍出量減少、心室性期外収縮)が重要です。
- 手指や唇のしびれ
- 感覚異常
- テタニー
(手足の筋肉が硬直して動かせなくなったり、痙攣をおこした状態) - 全身性痙攣
- 心電図変化
- 無症状
低カルシウム血症に対する基本的治療はカルシウムの補充、もしくは原因となっている薬剤の中止です。内服や点滴でカルシウムを補充する場合、カルシウムの吸収をよくするためにビタミンDを一緒に服用することもあります。
というわけで今回は以上です。カルシウムの基本的な役割、そして基準値や異常値についてまとめてみました。少しでも参考になれば幸いです。
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