こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
わたしは透析室に勤務しており、患者さんのDWを決めるために胸部レントゲンを毎日のようにみています。
そこで本記事では、胸部レントゲンの中心にある心陰影のどこが、心臓のどこの部分にあたるのかを解説します。
目次
胸部レントゲンの心陰影の見方
引用:長尾大志,レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室 第2版,p78
・右第1弓:上大静脈(SVC) ・右第2弓:右房 |
・左第1弓:大動脈弓 ・左第2弓:左肺動脈 ・左第3弓:左心耳 ・左第4弓:左室 |
胸部レントゲンの中心にある心陰影の辺縁は、上の画像のとおりです。
心陰影は右側に2つ、左側に4つの弓で形成されています。
ただし、弓と表現していますが、実際に肺野にむかって弓のようにとびだすのは、右第2弓、左第1弓、左第4弓です。
ですので、右第1弓、左第2弓、左第3弓がはっきりと肺野に向かってとびだしていれば、異常である可能性が高いです。
右第1弓:上大静脈(SVC)
画像引用:Ryu-SCEO ~琉球大学 医学部PBL勉強会~
右第1弓は、上大静脈(SVC)で形成されています。
しかし、右第1弓は通常はっきりと弓上に飛び出しているわけではありません。
上大静脈(SVC)のすぐ内側には上行大動脈が走行しているので、肺野に向かって右第1弓が飛び出していれば、動脈硬化によって上行大動脈が右側に張り出し、右1弓を形成している場合があります。
右第2弓:右房
右第2弓は右房で形成されています。
異常に突出している場合、心房中隔欠損症や心不全による右房拡大を疑います。
左第1弓:大動脈弓
左第1弓は大動脈弓で形成されています。
大動脈弓が異常に突出している場合、動脈硬化や大動脈瘤を疑います。逆に大動脈狭窄症では欠如します。
ちなみに下行大動脈は背骨に沿った感じで下行していきます。
左第2弓:左肺動脈
左第2弓は左肺動脈で形成されています。
通常、左第2弓ははっきりとしません。しかし、肺野に向かって飛び出していれば、肺動脈の拡張が考えられます。例えば肺高血圧があれば、肺動脈が太くなり、左第2弓が突出します。
その他に左第2弓が飛び出す原因としては、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、僧帽弁狭窄症などがあります。
左第3弓:左心耳
左第3弓は左心耳ので形成されています。
通常、左第3弓はっきりとしません。しかし、肺野に向かって飛び出していれば、僧帽弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全などによる左房の拡張が考えられます。
左第4弓:左室
左第4弓は、左室で形成されています。
心不全などで左心機能が低下して左室が拡大すれば、左第4弓は突出します。
例えば、大動脈弁閉鎖不全で血液が左室に逆流していれば、左室は拡大します。
透析患者さんの胸部レントゲンの心陰影が拡大している場合
胸部レントゲンの心陰影の大きさが、血液量と関係しています。
ですの、胸部レントゲンの心陰影の心胸比(CTR)を計算することで、心拡大を評価することができます。
一般的には心胸比(CTR)が50%を超えた場合、心拡大と判定します。
心拡大とは?
心拡大とは、基本的に心臓の内径・内腔の大きさが大きいことを意味します。
ただし、透析患者さんは弁膜症疾患、肥大型心筋症、拡張型心筋症などをともなっていることが多いため、個々によって適正な心胸比(CTR)は違います。また、撮影条件(立位、座位、臥位、吸気不足など)によっても心胸比(CTR)は違うので、心胸比(CTR)は同じ撮影条件であることも確認することも大事です。
透析患者さんの心胸比(CTR)の評価は難しい
- 腹水や肥満のある人では横隔膜が挙上し、心臓は横向きになって心胸比(CTR)は大きめになる。
- 心肥大があれば心筋の厚みで心胸比(CTR)は大きめになる。
- 弁膜症があり、右室圧が上昇すれば右房が拡張し、心胸比(CTR)大きめになる
- 虚血性心疾患が原因の拡張型心筋症では心胸比(CTR)は大きくなる。
- 多発性嚢胞腎のある人では胸郭は大きめになるため心胸比(CTR)は小さくなる。
心胸比(CTR)は、上記1.~5.のある人ではあてになりません。
透析患者さんの場合、循環血漿量(≒体液量)が多くなった結果、心胸比(CTR)が拡大するケースが多いです。この場合はDWを下げて対処します。
ただし、吸気と呼気の差で心胸比(CTR)は5%程度の差がでるといわれているので注意が必要です。
心胸比(CTR)が拡大しているのに血圧が低下しているなら、心臓の機能が落ちているとか、別の原因を考える必要があります。
透析患者さんの心胸比(CTR)の評価
- 透析患者さんの心胸比(CTR)は時系列で評価する!
心胸比(CTR)は様々な要因で変化します。そのことを念頭に置いて、透析患者さんの心胸比(CTR)は時系列で評価すべきです。
「心血管合併症ガイドライン」では、男性50%以下、女性53%以下を基準としていて、過去の報告でも予後との関連でこれを裏付ける結果が得られています。
しかし、透析患者さんの心胸比(CTR)を評価するうえでは、過去に比較して大きくなったのか、小さくなったのかを各患者さんごとに個別にみていく必要があります。
つまり、同じ心胸比(CTR)が45%だったとしても、もともと40%だったのか、あるいはもともと50%だったのかによって意味合いは全然変わってきます。
ですので、その透析患者さんにとって適正な心胸比(CTR)を知ることがめちゃくちゃ重要です。
過去と比べて、心胸比(CTR)に変化があれば、DWを変更していくことが必要です。
ちなみに、透析患者さんが月に1~2回程度ルーチンで胸部レントゲンを撮影する意味とは、循環血漿量(≒体液量)の推移をみるためです。
(もちろん、肺野の状態をみたりなどその他の疾患を鑑別する意味合いもありますが・・・)
なお、胸部レントゲンからは、胸水の有無、うっ血の有無など他の所見の存在も確認できますので、そちらもDWの参考にします。
というわけで今回は以上です。
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