こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
先日に下記のツイートをしました。
【DWの指標:IVCe】
IVC(下大静脈)は大きな静脈で、エコーにより観察できます。
このIVCは呼吸によって径が変わり、呼気時に大きく、吸気時に小さくなりますが、DWの指標としては、呼気時のIVCeが参考になります。
透析後のIVCeの適正範囲は6~10mmで、IVCeが22mm以上はうっ血の危険があります。
— 秋元@臨床工学技士 (@akimotoME) May 23, 2021
ツイートのとおり、エコーによる下大静脈(IVC)の大きさは、循環血液量を反映しているので、DWを評価できます。
そこで本記事では、透析室に勤務している看護師や臨床工学技士向けに、エコーによる下大静脈(IVC:inferior vena cava)と虚脱係数(CI)について、わかりやすく解説していきます。
目次
吸気と呼気のIVC径の大きさの違いについて
自発呼吸において吸気時は胸腔内圧の低下によりIVC内の血液が胸腔へ引き込まれてIVCの内圧が低くなり、横隔膜の下降により外圧である腹圧が上昇し、その結果IVCDは最小となる。一方、呼気時は胸腔内圧の上昇により血流が妨げられ、IVC内の血液が増加して内圧が高くなり、また横隔膜の上昇で腹圧は低下し、IVCDは最大となる。
引用:亀田徹 他,超音波検査を用いた下大静脈の観察による循環動態の評価,日救急医会誌. 2013; 24: 903-15
まず、前提の知識として、吸気と呼気ではIVCの径は変わります。上記の論文の引用文のIVCDというのはIVC diameterの略で、IVC径のことです。
- 吸気時→IVCは小さくなる
- 呼気時→IVCは大きくなる
まずは上記のことを押さえておきましょう。
透析患者さんのIVC径の基準値
基礎体重が適正である場合、透析後の下大静脈呼気径は7(6~10mm)mm以下で虚脱係数は0.8以上と報告されており、また、透析前のIVC呼気径が22mm以上のときは心不全の危険があるとされます15)。
- 透析後の呼気時のIVC径(IVCe)の基準値:6~10mm
- 透析後の虚脱係数(Cl)の基準値:0.8以上
透析患者さんの透析後の呼気時のIVC径(IVCe)と虚脱係数(Cl)の基準値は上記のとおりです。
透析後のIVCeは6~10mm、虚脱係数(CI)は0.8以上をDWの目標とします。
・循環血液量が少ないと:虚脱係数(CI)は1に近づいていく。
参考にした書籍
透析患者さんのIVCの異常値
- 呼気時のIVCeの異常値:22mm以上
- 虚脱係数(Cl)の異常値:0.22未満
IVCeが22mm以上、かつClが0.22未満はうっ血の恐れがあります。
透析の前後における透析患者さんのIVC径
- 透析前のIVCe:14.9±3.2 mm CI:0.68±0.24
- 透析後のIVCe:8.2±2.3mm CI:0.94±0.09
透析患者さんの循環血液量と呼気時のIVCeには高い相関関係があると報告されています。ですので、透析患者さんのIVC径は除水によって経時的に減少していきます。
安藤先生が報告されている標準的な値は上記のとおりです。
呼気時の下大静脈径(IVCe)として、透析前のIVCeは約15mm、透析後のIVCeは約8mmとされています。
とくにIVCeが22mmを超えたり、虚脱係数(CI)が0.22未満ならば肺水腫になるほどの溢水状態であると述べています。
虚脱係数(Cl)の計算方法
- 虚脱係数(CI)=(呼気時IVC径-吸気時IVC径)÷(呼気時IVC径)
IVC径は循環血液量を反映しています。
循環血液量が適正な場合、呼吸による胸腔内圧の変化に連動して、呼気時のIVC径と吸気時のIVC径は変化します。
これをIVC径の呼吸性変動と呼びます。
虚脱係数(CI)の計算方法は上記に示した通りで、呼気時のIVC径と吸気時のIVC径から計算できます。
透析後に、体液過剰であれば呼吸性の変動幅は小さくなります。
虚脱係数(Cl)の評価
- 循環血液量が多いとき:虚脱係数(CI)は0に近づいていく
- 循環血液量が少ないとき:虚脱係数(CI)は1に近づいていく
虚脱係数(CI)は、循環血液量が多い状態では0に近くなり、逆に重篤な脱水状態では1に近くなります。
とはいえ、このように虚脱係数(CI)が極端な値になる場合は稀で、循環血液量の程度を評価する場合はIVCeが最も参考になります。
まとめ:透析患者さんのIVCとCIによるDWの評価
基礎体重が適正である場合、透析後の下大静脈呼気径は7(6~10mm)mm以下で虚脱係数は0.8以上と報告されており、また、透析前のIVC呼気径が22mm以上のときは心不全の危険があるとされます15)。
- 透析後の呼気時のIVC径(IVCe)の基準値:6~10mm
- 透析後の虚脱係数(Cl)の基準値:0.8以上
透析患者さんのDWを評価するために、エコーによるIVCeと虚脱係数(CI)は有効です。
例えば、循環血液量が多ければ、IVCeは大きくなり、またIVCの呼吸性変動も小さくなっています(虚脱係数(Cl)が0.22未満はうっ血の恐れがあります)。
透析終了直後にもかかわらず、IVCeが大きくてIVCの呼吸性変動も乏しければ、十分な除水ができていないと判断できます。
というわけで今回は以上です。
適正なDWを決めるというのは、なかなか難しい局面もありますが、その参考指標の一つとして、エコーによる下大静脈径の計測と虚脱係数(CI)が有用です。
1つでもDWを決定するための判断材料が多いというのは、適正なDWへの決定へとつながりますので、ぜひ下大静脈系を評価できるようにしておきましょう。
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