透析患者さんのIVC径の基準値をわかりやすく解説します

心エコーをされている女性

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

先日に下記のツイートをしました。

ツイートのとおり、エコーによる下大静脈(IVC)の大きさは、循環血液量を反映しているので、DWを評価できます。

そこで本記事では、透析室に勤務している看護師や臨床工学技士向けに、エコーによる下大静脈(IVC:inferior vena cava)と虚脱係数(CI)について、わかりやすく解説していきます。

IVC径とは下大静脈の径のことで、ここの径を測定することで右房圧(中心静脈圧)を推定することができます。右房圧は循環血液量を反映しているので、循環血液量が多いのか、少ないのかの判定に有用です。

吸気と呼気のIVC径の大きさの違いについて

 自発呼吸において吸気時は胸腔内圧の低下によりIVC内の血液が胸腔へ引き込まれてIVCの内圧が低くなり、横隔膜の下降により外圧である腹圧が上昇し、その結果IVCDは最小となる。一方、呼気時は胸腔内圧の上昇により血流が妨げられ、IVC内の血液が増加して内圧が高くなり、また横隔膜の上昇で腹圧は低下し、IVCDは最大となる。

引用:亀田徹 他,超音波検査を用いた下大静脈の観察による循環動態の評価,日救急医会誌. 2013; 24: 903-15

まず、前提の知識として、吸気と呼気ではIVCの径は変わります。上記の論文の引用文のIVCDというのはIVC diameterの略で、IVC径のことです。

  • 吸気時→IVCは小さくなる
  • 呼気時→IVCは大きくなる

まずは上記のことを押さえておきましょう。

透析患者さんのIVC径の基準値

基礎体重が適正である場合、透析後の下大静脈呼気径は7(6~10mm)mm以下で虚脱係数は0.8以上と報告されており、また、透析前のIVC呼気径が22mm以上のときは心不全の危険があるとされます15)

〜至適透析を理解する〜 血液透析処方ロジック

  • 透析後の呼気時のIVC径(IVCe)の基準値:6~10mm
  • 透析後の虚脱係数(Cl)の基準値:0.8以上

透析患者さんの透析後の呼気時のIVC径(IVCe)と虚脱係数(Cl)の基準値は上記のとおりです。

透析後のIVCeは6~10mm、虚脱係数(CI)は0.8以上をDWの目標とします。

・循環血液量が多いとき:虚脱係数(CI)は0に近づいていく。
・循環血液量が少ないと:虚脱係数(CI)は1に近づいていく。

参考にした書籍

透析患者さんのIVCの異常値

  • 呼気時のIVCeの異常値:22mm以上
  • 虚脱係数(Cl)の異常値:0.22未満

IVCeが22mm以上、かつClが0.22未満はうっ血の恐れがあります。

参考:安藤康宏,透析患者の体液量評価法,AnnReview腎臓,中外医学社,132-138,1997

透析の前後における透析患者さんのIVC径

  • 透析前のIVCe:14.9±3.2 mm CI:0.68±0.24
  • 透析後のIVCe:8.2±2.3mm CI:0.94±0.09

透析患者さんの循環血液量と呼気時のIVCeには高い相関関係があると報告されています。ですので、透析患者さんのIVC径は除水によって経時的に減少していきます。

IVCは循環血液量を評価できます。

安藤先生が報告されている標準的な値は上記のとおりです。

呼気時の下大静脈径(IVCe)として、透析前のIVCeは約15mm、透析後のIVCeは約8mmとされています。

とくにIVCeが22mmを超えたり、虚脱係数(CI)が0.22未満ならば肺水腫になるほどの溢水状態であると述べています。

参考:安藤康宏,透析患者の体液量評価法,AnnReview腎臓,中外医学社,132-138,1997

虚脱係数(Cl)の計算方法

  • 虚脱係数(CI)=(呼気時IVC径-吸気時IVC径)÷(呼気時IVC径)

IVC径は循環血液量を反映しています。

循環血液量が適正な場合、呼吸による胸腔内圧の変化に連動して、呼気時のIVC径と吸気時のIVC径は変化します。

これをIVC径の呼吸性変動と呼びます。

呼吸性変動の定義は、吸気時の径が呼気時の径の50%以下です。

虚脱係数(CI)の計算方法は上記に示した通りで、呼気時のIVC径と吸気時のIVC径から計算できます。

虚脱計数(CI)は、透析前のものなのか、透析後のものなのかによって大きく変化するため、心エコー検査のタイミングも必ずチェックするようにしてください。
透析後に、体液過剰であれば呼吸性の変動幅は小さくなります。

虚脱係数(Cl)の評価

  • 循環血液量が多いとき:虚脱係数(CI)は0に近づいていく
  • 循環血液量が少ないとき:虚脱係数(CI)は1に近づいていく

虚脱係数(CI)は、循環血液量が多い状態では0に近くなり、逆に重篤な脱水状態では1に近くなります。

とはいえ、このように虚脱係数(CI)が極端な値になる場合は稀で、循環血液量の程度を評価する場合はIVCeが最も参考になります。

まとめ:透析患者さんのIVCとCIによるDWの評価

基礎体重が適正である場合、透析後の下大静脈呼気径は7(6~10mm)mm以下で虚脱係数は0.8以上と報告されており、また、透析前のIVC呼気径が22mm以上のときは心不全の危険があるとされます15)

〜至適透析を理解する〜 血液透析処方ロジック

  • 透析後の呼気時のIVC径(IVCe)の基準値:6~10mm
  • 透析後の虚脱係数(Cl)の基準値:0.8以上

透析患者さんのDWを評価するために、エコーによるIVCeと虚脱係数(CI)は有効です。

例えば、循環血液量が多ければ、IVCeは大きくなり、またIVCの呼吸性変動も小さくなっています(虚脱係数(Cl)が0.22未満はうっ血の恐れがあります)。

透析終了直後にもかかわらず、IVCeが大きくてIVCの呼吸性変動も乏しければ、十分な除水ができていないと判断できます。

呼吸性変動の定義は、吸気時の径が呼気時の径の50%以下です。

 

というわけで今回は以上です。

適正なDWを決めるというのは、なかなか難しい局面もありますが、その参考指標の一つとして、エコーによる下大静脈径の計測と虚脱係数(CI)が有用です。

1つでもDWを決定するための判断材料が多いというのは、適正なDWへの決定へとつながりますので、ぜひ下大静脈系を評価できるようにしておきましょう。

 

<注意事項> 本ブログに掲載されている情報の正確性については万全を期しておりますが、掲載された情報に基づく判断については利用者の責任のもとに行うこととし、本ブログの管理人は一切責任を負わないものとします。 本ブログは、予告なしに内容が変わる(変更・削除等)ことがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA