こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
本記事では、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いをわかりやすく解説します。
目次
飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸とは?
名前からわかるとおり、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は脂肪酸の一種になります。
まず、脂肪酸について軽く説明します
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を説明する前に、まず脂肪酸についての説明をしたいと思います。
上の図は、脂肪酸の一種であるパルミチン酸の構造です。このように、脂肪酸は炭素(C)が数~数十個、横につながった構造をしています。
もう少し専門的にいえば「脂肪酸とは炭化水素基(疎水性)にカルボキシ基(親水性)がくっついたもの」となっています。
そして、食べ物に含まれている脂質の大半は中性脂肪(≒トリグリセリド)で、その構成要素である脂肪酸が油脂の特徴や栄養価を決めています。つまり、脂肪酸というのはめちゃくちゃ大事ということです。
脂肪酸の基本的なことについては下記の記事で解説しているので併せてごらんください。
脂肪酸の構造と種類についてわかりやすく解説します脂肪酸の分類
- パターン①:脂肪酸の中に二重結合があるかないか
→ 飽和脂肪酸 or 不飽和脂肪酸 - パターン②:炭素の鎖の長さ
→ 短鎖脂肪酸 or 中鎖脂肪酸 or 長鎖脂肪酸
脂肪酸の分類のしかたには、上記のように2パターンあります。
ですので、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸というのは、脂肪酸の分類の「パターン①」のほうで、脂肪酸のなかに二重結合があるかどうかということになります。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い
それでは飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いを説明します。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のイメージ
- 飽和脂肪酸
→ 固体の脂
(肉の脂やバターなど動物性のものに多い) - 不飽和脂肪酸
→ 液体の油
(サラダ油、ごま油、オリーブオイルなど植物性のものに多い)
上の写真をみてもらうとわかりやすいんですが、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のイメージはこんな感じだと思います。
つまり、動物性の肉の脂やバターなど常温で固体で、植物性のサラダ油やオリーブオイルなどのものは常温で液体、っていう感じです。
- 飽和脂肪酸
→ 動物性の脂で、常温で固体 - 不飽和脂肪酸
→ 植物性の油で、常温で液体
まとめますと、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いとして、イメージ的には上記のとおりとなります。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の構造の違い
しかしこれだけでは飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いを正しく説明しているとは言えません。
ですので、もう少しきちんと飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いを解説したいと思います。
- パターン①:脂肪酸の中に二重結合があるかないか
→ 飽和脂肪酸 or 不飽和脂肪酸 - パターン②:炭素の鎖の長さ
→ 短鎖脂肪酸 or 中鎖脂肪酸 or 長鎖脂肪酸
脂肪酸の分類のしかたには、上記のように2パターンあります。
そして、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸というのは、脂肪酸の分類の「パターン①」のほうです。
ですので、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは、脂肪酸の中に二重結合があるかどうかだということです。
不飽和脂肪酸(例:オレイン酸)
引用一部改変:筋肉大全
言葉ではなかなか分かりにくいと思いますので、脂肪酸の1つであるオレイン酸を例にして構造を上にのせます。
このオレイン酸の構造をみてもらうと一目でわかるように、炭化水素基部分に「C=C」となっている箇所があります。ここが炭素の二重結合といわれているところです。
つまり、オレイン酸は炭化水素基のなかに炭素の二重結合があるため、「不飽和脂肪酸」ということになります。
飽和脂肪酸(例:パルミチン酸)
上の図は、飽和脂肪酸であるパルミチン酸の構造です。みてもらうとわかるように、炭化水素基の部分に「C=C」となっている部分がありません。ですので、パルミチン酸は飽和脂肪酸となるわけです。
このように、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは炭化水素基の中に炭素の二重結合「C=C」があるかどうか、たったこれだけです。
飽和脂肪酸とは?
先ほど説明したように、飽和脂肪酸とは炭化水素基に二重結合がない脂肪酸のことです。
飽和脂肪酸の特徴と性質
- 常温で固体のことが多い
(ただし、ココナッツオイルのような例外もある) - 酸化しにくい
- 動物性の脂肪に多い
常温では固体である場合が多く、化学的に安定した構造のため(どうして安定しているのかについては後で説明します)、酸化しにくい脂肪酸です。
動物性の脂肪に多く含まれていますが、ココナッツオイルのような一部植物性の油にも含まれています。
不飽和脂肪酸とは?
引用一部改変:筋肉大全
不飽和脂肪酸とは、炭化水素基に二重結合がある脂肪酸のことです。
不飽和脂肪酸の特徴と性質
- 常温で液体であることが多い
- 酸化しやすい
- 植物性の油に多い
いわゆるサラダ油やオリーブオイルなどの植物性の油のほとんどが、不飽和脂肪酸を多く含んでいます。同じく不飽和脂肪酸に分類されている魚に多く含まれているオメガ3脂肪酸というものもありますが、詳しくは下記の記事で解説しているので興味のある人はぜひご覧ください。
オメガ3脂肪酸とはなんですか?わかりやすく解説してみた不飽和脂肪酸の種類
不飽和脂肪酸は二重結合の数によってさらに分類されます。
二重結合が1つのものは一価不飽和脂肪酸。二重結合が2つ以上のものは、多価不飽和脂肪酸といいます。
前者の一価不飽和脂肪酸は二重結合のある位置によってオメガ9脂肪酸とも呼ばれます。
後者の多価不飽和脂肪酸はオメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸という2つのグループがあります。
不飽和脂肪酸のほうが酸化しやすい理由
上記は、脂肪酸の一種であるパルミチン酸の構造です。
構造式をみてもらうと分かるように、炭素の2本の手それぞれに、水素が1つずつくっついています。残りの2本の手にはそれぞれ別の炭素につながれています。こうして炭素同士のつながりが続いていて、端っこ部分に酸素がついているのが脂肪酸です。
パルミチン酸の場合、このように炭素と水素が全ての手をつかって隙間なく手をつないでいるため、結合が強いです。
なので酸化にも強く、常温でも固体をしっかり保てるのです。
一方の不飽和脂肪酸はというと・・・
引用一部改変:筋肉大全
不飽和脂肪酸であるオレイン酸の構造式を上に示しています。
不飽和脂肪酸の場合、このように炭素と炭素の二重結合(C=C)があるため、この部分に酸素が入りやすく酸化しやすくなります。
以下はその詳しい説明です。
二重結合は構造として不安定で酸化しやすい
(前略)原子の結合は「単結合」という結合の仕方が一番安定で、
これ以上変質しません。
一般的には我々の身近にある物質のほとんどの結合はこの形です。
ですが中には「二重結合」や「三重結合」といって、
少し特殊な形で原子同士が結合している場合があります。
二重結合というのは結合のうちの一本がとても切れやすくなっていて、
例えば「紫外線」を照射されたり、「熱」を加えられたり、「酸化剤」や「還元剤」を作用されたりすると結合が切れて変質してしまう結合の仕方です。
(中略)
ですから二重結合が多い脂肪酸は酸化しやすいのです。
上記の内容をまとめると、二重結合は構造として不安定なので、熱なんかを加えられたりすると簡単に酸化してしまうということです。
補足:バター=飽和脂肪酸ではない!?
食品にはいろんな脂肪酸が含まれています。よく『バター=飽和脂肪酸』という風にいわれたりしますが、実際には『不飽和脂肪酸』もバターには含まれています。
バターの場合ですと、脂肪酸の構成は以下のようになっています。
- 飽和脂肪酸:69%
- 一価不飽和脂肪酸:28%
- 多価不飽和脂肪酸:3%
バターの中に一番多く含まれているのが飽和脂肪酸なので、『バター=飽和脂肪酸』といわれているわけです。
まとめ:飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い
- パターン①:脂肪酸の中に二重結合があるかないか
→ 飽和脂肪酸 or 不飽和脂肪酸 - パターン②:炭素の鎖の長さ
→ 短鎖脂肪酸 or 中鎖脂肪酸 or 長鎖脂肪酸
脂肪酸の分類のしかたには、上記のように2パターンあります。
脂肪酸の基本的なことについては下記の記事で解説しているので併せてごらんください。
脂肪酸の構造と種類についてわかりやすく解説しますですので、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いというのは、脂肪酸の分類の「パターン①」のほうで、脂肪酸のなかの炭化水素基に二重結合があるかどうかということになります。
イメージ的には、飽和脂肪酸(動物性の脂で常温で固体)で、不飽和脂肪酸(植物性の油で常温で液体)で正しいですが、一部例外もありますのでご注意ください。
というわけで今回は以上です。
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