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糖新生とはなに?できるだけ簡単にわかりやすく解説してみた

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

本記事では、体内でグルコースをつくって血糖値を維持するためのシステム、糖新生についてわかりやすく説明しています。

糖新生とは

糖新生とは、グルコース以外の物質(アミノ酸、乳酸、グリセロール)からグルコースをつくる仕組みのことです。

参考:生化学―人体の構造と機能〈2〉 (系統看護学講座 専門基礎分野)

もっとざっくりといえば、糖新生とは糖質以外のものからグルコースを合成するために、解糖系を逆行する経路のことです。

解糖系については下記に記事でわかりやすく解説しています。

解糖系とはなに?わかりやすく簡単に解説してみた

糖新生の役割

人体のエネルギー源
  1. グルコース
    (→ ATP)
  2. 脂肪酸
    (→ ATP)
  3. ケトン体
    (→ ATP)

人体にはエネルギー源として、上記のものがあります。
このように、グルコース以外にもエネルギー源があるので、最悪、グルコースはなくてもいいのでは?と思うかもしれません。

しかし、ミトコンドリアを持たない赤血球では、グルコースしかエネルギー源にすることができません。

人体において赤血球だけがミトコンドリアをもたないので、クエン酸回路や電子伝達系がありません。
ですので、脂肪酸や脂肪酸からつくられるケトン体をエネルギー源として使うことができません。
つまり、赤血球は解糖系によってグルコースから得られるエネルギーのみに依存しています。

赤血球にエネルギーを供給することができなければ、赤血球は死んでしまい、全身に酸素を運ぶことができなくなります。
ですので、最低限度の血糖値というのは必要です。

少なくとも赤血球のため、血糖値が下がったときに最低限のグルコースを自前で調達して、血糖値を上げる必要があります。

そのためのシステムが「糖新生」です。

脳はグルコースしかエネルギー源にしかできないといったことを言う人がいますが、それは間違いで、脳はケトン体(脂肪酸を分解してできる物質)もエネルギー源として使うことができます。
ただし、ケトン体だけですべてまかなっているかというとそんなことはなく、なんだかんだいいつつグルコースをメインのエネルギー源としています。
つまり、脳にとっても一定以上の血糖は必要です。
また、脳だけでなく網膜や生殖腺胚上皮など、一部の細胞ではグルコースを主なエネルギー源としています。
糖質を制限すると血糖値は徐々に低下していきます。初めのうちは肝臓において、グリコーゲンを分解してグルコースをつくり、ある一定の範囲で血糖値は維持されます。
しかし、グリコーゲンの備蓄は少なく、食事をとらないと12時間くらいでなくなってしまいます。
このような状況になっても血糖値を維持できるように「糖新生」があります。
目安として、食後3時間ぐらいから糖新生のシステムが働きはじめています。

最低限度の血糖値を維持しなければいけない2つの理由(糖新生の重要性)

最低限度の血糖値を維持しなければならない理由
  • 理由①
    → 身体の中で赤血球のみミトコンドリアをもたないので、グルコースしかエネルギーとして使えないから
  • 理由②
    → グルコースが様々な材料の化合物になるから

最低限度の血糖値を維持しなければならない理由は上記の2つです。

糖新生とは、外部から糖質の摂取がなくても、最低限度の血糖値を維持するためのシステムです。

先ほどにも説明したように、赤血球はミトコンドリアを持たず、解糖系でしかATPをつくることができません。また、脳や網膜、生殖腺胚上皮など、一部の細胞ではグルコースを主なエネルギー源としています。ですので血中に一定のグルコースがかならず必要です。

さらに、グルコースはエネルギー源としてだけでなく、化合物の材料としても重要です。特に重要なのは、核酸(DNA、RNA)や電子伝達体(NAD、FAD)の材料としての利用です。

糖新生の材料

糖新生の材料となる物質
  • アミノ酸
  • 乳酸
  • グリセロール(グリセリン)

糖新生の材料となる物質は上記の3つのうちのどれかです。

アミノ酸、乳酸、グリセロール(グリセリン)は血中に放出されて肝臓に運ばれた後、糖新生がおこなわれます。

この中で、糖新生の材料としてもっともよく使われてるのが「アミノ酸」です。
(糖新生の90%はアミノ酸が使われています)

糖新生に至るまでの過程は以下のようになります(上の図もあわせてご覧ください)

糖新生に至るまでの過程
  1. 筋肉において
    タンパク質→アミノ酸→血中→肝臓→糖新生→グルコース→必要とする組織へ供給
  2. 脂肪組織において
    中性脂肪→グリセロール(グリセリン)→血中→肝臓→糖新生→グルコース→必要とする組織へ供給
  3. 赤血球や筋肉において
    乳酸→血中→肝臓→糖新生→グルコース→必要とする組織へ供給

上記の1.~3.は、絶食時や糖質制限時だけでなく、日常的にわたしたちの身体でおこなわれていることです。

なお、糖新生は主に肝臓でおこなわれていますが、腎臓と小腸でもおこなわれています。

これら糖新生の材料が実際にどのように糖新生されるか、その反応経路は下記の記事で詳しく解説しています。

糖新生の反応経路の流れを図を多用して解説します

糖新生の材料:アミノ酸

糖源性アミノ酸(全部で18種類)

アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、イソロイシン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、システイン、スレオニン、セリン、チロシン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン

筋肉の中にあるたんぱく質の分解によって発生するアミノ酸が、糖新生でもっとも使われる材料になります。

糖新生でつくられるグルコースは、約9割がアミノ酸からつくられています。
自然界にはアミノ酸は500種類ほどあるんですが、私たちの身体にあるたんぱく質の原料になるアミノ酸はわずか20種類です。

その中でも、糖新生の材料になるアミノ酸は18種類で、糖新生の材料になるアミノ酸ということで「糖源性アミノ酸」と呼ばれています。

いくつかのアミノ酸からピルビン酸、またはオキサロ酢酸がつくられ、ホスホエノールピルビン酸となって、これが解糖系の逆をたどって、糖新生が進んでいきます。

糖原性アミノ酸は血流を介して肝臓へ入った後、以下の5つの物質のいずれかに変化します。

糖原性アミノ酸が代謝されてできる物質
  1. ピルビン酸
  2. オキサロ酢酸
  3. α-ケトグルタル酸
  4. スクシニルCoA
  5. フマル酸

糖新生の材料:乳酸

解糖系(嫌気状態の場合)
  • 1モルのグルコース → 2モルの乳酸 + 2モルのATP

乳酸は、赤血球や嫌気的状態(酸素が十分にないとき)の筋肉などでグルコースの分解(解糖系)によって生じます。

解糖系で作られたピルビン酸は、酸素がないと乳酸へと変化します。ですので、無酸素運動を続けていると乳酸がたまっていきます。

つくられた乳酸は、血液中に放出された肝臓に入っていきます。そして、肝臓にある酵素(乳酸脱水素酵素)によって乳酸はピルビン酸に変化します。

こうしてできたピルビン酸は、解糖系の逆をたどって(糖新生)、グルコースがつくられます。

解糖系については下記の記事でわかりやすく解説しています。

解糖系とはなに?わかりやすく簡単に解説してみた

上記の反応のように、乳酸は嫌気状態(酸素が十分にないとき)における解糖系で、ピルビン酸を介してつくられています。

そして、筋肉中に蓄積した乳酸は主に肝臓に運ばれて、糖新生の材料として使われています。

糖新生の材料:グリセロール(グリセリン)

中性脂肪(≒トリグリセリド)の構造

グリセロール(グリセリン)とは、トリグリセリド(中性脂肪)の構成成分で、トリグリセリド(中性脂肪)の加水分解によって生じます。

このグリセロール(グリセリン)は、血液を介して肝臓に入った後、解糖系の中間物質であるジヒドロキシアセトンリン酸に変わり、解糖系を逆行して(糖新生)グルコースがつくられます。

グリセロールはグリセロキナーゼという酵素によってグリセロール-3-リン酸に変わります。グリセロール-3-リン酸はグリセロール-3-リン酸脱水素酵素によってジヒドロキシアセトンリン酸になります。

脂肪酸からはグルコースをつくれない理由
このようにグリセロール(グリセリン)は糖新生によってグルコースに変換することができます。しかし、同じ中性脂肪の構成要素である脂肪酸に関しては糖新生によってグルコースをつくることができません。その理由をご説明します。脂肪酸はβ酸化によってアセチルCoAになりますが、アセチルCoAからピルビン酸に直接変換することはできません(アセチルCoAから直接オキサロ酢酸に変わることもできません)。アセチルCoAからクエン酸回路を回ってオキサロ酢酸になれば、アミノ酸からの糖新生のルートによってグルコースをつくれると思うかもしれませんが、それは残念ながら不可能です。アセチルCoAから出発してクエン酸回路を1週回るうちにアセチルCoAのアセチル基(-CH3CO)はCO2として消えてしまうからです。

糖新生はエネルギーを消費する?

糖新生で新しくグルコースを作る場合、逆にエネルギーを消費します。

上の図で、ピルビン酸からオキサロ酢酸に変わる部分、3.ホスホグリセリン酸から1,3.ビスホスホグリセリン酸に変わる部分でATPを消費します。また、オキサロ酢酸からホスホエノールピルビン酸に変わる部分でもGTPを消費しますが、GTPはATPをつくるための材料なので、ATPを消費したのと同じことです。

ATPってなに?って方は下記の記事でわかりやすく解説していますので、よかったら併せてご覧ください。

ATPとは何?わかりやすく解説してみた【アデノシン三リン酸】

糖新生をおこなう場所

糖新生は主に肝臓でおこなわれています。

筋肉で糖新生を行っていると勘違いしている人もいると思いますが、糖新生の90%は肝臓で行われていて、残りは腎臓などで行われています。

ですので、肝臓は血糖製造臓器とも呼ばれています。

肝臓で糖新生がおこなわれる理由としては、解糖系を逆行するときに必要な酵素であるグルコース6ホスファターゼが肝臓と腎臓にしかないからです。

このように糖新生は主に肝臓で行われているので、肝機能が低下している人は糖新生が起こりづらく、低血糖になりやすいです。

肝臓では、空腹時や夜間において、糖新生によりグルコースをつくりだし、血糖値を維持しています。そして、食事により糖質を摂取して血糖値が上がってくると、糖新生によるグルコースの生産が抑制されます。

糖新生の全体像

最後に、糖新生の実際の流れを簡単に解説します。

上の図は、かなり大まかな糖新生の反応の流れ(上の図のオレンジの矢印)を示したものになります。

冒頭のほうでもはなしたように、糖新生は解糖系を逆行していることがわかるかと思います。

糖新生とは糖質以外のものからグルコースを合成するために、解糖系を逆行する経路のことです。

解糖系については下記に記事でわかりやすく解説しています。

解糖系とはなに?わかりやすく簡単に解説してみた

しかし、解糖系をそのまま逆行することはできませんので、一部迂回路を通ったりします(上の図の「迂回路」のところです)

いずれにしても、糖新生の材料である「アミノ酸」「乳酸」「グリセリン」は、経路はさまざまですが、クエン酸回路や解糖系の一部を介しつつ、上の図の頂上の「グルコース」を目指して反応が進んでいきます。

まとめ:糖新生とは

糖新生とは、糖質以外のもの(アミノ酸、乳酸、グリセロール)から、グルコースを合成する仕組みのことです。

なお、糖新生の実際の反応は、解糖系を逆行して進んでいきます。

そして、糖新生の材料となりうる物質には主に以下の3つがあります。

糖新生の材料となる物質
  • アミノ酸
  • 乳酸
  • グリセロール(グリセリン)

アミノ酸、乳酸、グリセロール(グリセリン)は血中に放出されて肝臓に運ばれた後、糖新生がおこなわれます。

この中で、糖新生の材料としてもっともよく使われてるのが「アミノ酸」です。
(糖新生の90%はアミノ酸が使われています)

糖新生に至るまでの過程は以下のようになります。

糖新生に至るまでの過程
  1. 筋肉において
    タンパク質→アミノ酸→血中→肝臓→糖新生→グルコース→必要とする組織へ供給
  2. 脂肪組織において
    中性脂肪→グリセロール(グリセリン)→血中→肝臓→糖新生→グルコース→必要とする組織へ供給
  3. 赤血球や筋肉において
    乳酸→血中→肝臓→糖新生→グルコース→必要とする組織へ供給

上記の1.~3.は、日常的にわたしたちの身体でおこなわれていることです。

なお、糖新生は主に肝臓でおこなわれていますが、腎臓と小腸でもおこなわれています。

まとめると、糖新生とは、主にアミノ酸からグルコースをつくるためのシステムで、そのほとんどが肝臓でおこなわれているということです。

いくつかのアミノ酸からピルビン酸、またはオキサロ酢酸がつくられ、ホスホエノールピルビン酸となって、これが解糖系の逆をたどって、糖新生が進んでいきます。

 

というわけで今回は以上です。実際の糖新生の反応経路を知りたい!という人は下記の記事をご覧ください。

糖新生の反応経路の流れを図を多用して解説します

 

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