こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
昨今の透析患者の高齢化によるAVF・AVG造設困難例、高度の心不全症例などによって、長期留置カテーテルの使用割合が増加しています。
そこで本記事では、長期留置カテーテルについて、透析室で働く臨床工学技士や看護師、研修医にとって役に立つ基本的な事項をまとめてみました。
目次
長期留置カテーテル【カフ型】
透析用アクセスとしての長期留置カテーテルにはカフ型カテーテルを用います。
カフ型カテーテルとは?
1961年にShaldonらにより初めてカテーテルが透析用アクセスに用いられるようになったが、当時のカテーテルは感染率が高く、数日から3週間程度の短期間しか使用できませんでした。
1988年にShwabらが透析用カフ型カテーテルを用い、カフが組織と癒着することで感染を抑制し、他のアクセスが使用できるまでのブリッジとして1か月以上使用できることを報告しました。このカフ型カテーテルが恒久的な透析用アクセスの一つとして使用されるようになりました。
カフ型と非カフ型カテーテルの違い
上の図のように、皮膚の下のトンネルに「カフ」と呼ばれる綿のような物質がついています。
このカフの役割は、周囲の組織と癒着させることで、カテーテルが容易に抜けないようにすることです。
また、血管への刺入部から皮下トンネルを作製し、カテーテル出口部から血管への刺入部に距離を保ち、その間にカフを置くことで、カテーテル感染を減少させることができます。
長期留置カテーテルの留置部位
長期留置カテーテルの留置部位としては、右内頚静脈が第一選択です。
その他には、左頸静脈、大腿静脈も候補となります。
長期留置カテーテルの先端の位置
長期留置カテーテルの先端位置は右房内がいいですが、カテーテル本体が長すぎると右房壁に接触してしまう危険性があるので、長すぎる場合は、カテーテル先端を下大静脈内に留置することがあります。
長期留置カテーテルの先端形状
段差型では先端で送血し、2~3cmの間隔を置いて中枢側で脱血します。
送血側と脱血側で段差をつけるのは、再循環を防ぐためです。
この段差型では、先端のエンドホールが静脈壁や右房壁に吸い付くと脱血不良になります。そのため、側孔を設けている場合があります。しかし充填したヘパリンがこの側孔から漏れてカテーテル先端に血栓形成が起こりやすくなるため、側孔が多いと問題になることもあります。
長期留置カテーテルのコーティング
長期留置カテーテルではウロキナーゼがコーティングに使用されています。
ウロキナーゼの効果は比較的長いので、カテーテル内腔の血栓形成は抑制されるが、長期になると、カテーテル周囲にフィブリンシースが形成されて脱血不良の原因になることがあります。
長期留置カテーテルの脱血不良の原因
長期留置カテーテルの脱血不良は頻回に鳴るケースが多く、スタッフの負担だけでなく、患者さんの精神的負担も大きいです。
脱血不良の主な原因は、先端位置不良、脱血孔に上大静脈壁や右心房壁の吸い付き、カテーテル内血栓、フィブリンシースです。
まずは、カテーテルや血液回路が曲がっていないかを確認します。次にカテーテルを生理食塩水でフラッシュし、それでも改善しなければ、体位を変えたり、逆接続にします。場合によってはカテーテルの留置位置を変更するため、Drにカテーテルの固定を外して、脱血できる位置を探します。
カテーテル血栓やフィブリンシースに対してはウロキナーゼを使用します。
どうしても脱血が確保できない場合は、カテーテルの入れ替えを行います。
透析後半で脱血不良になる場合は、脱水気味のためである可能性もある。座位から臥位にしたり、左側臥位にすることで対処して改善することもある。
長期留置カテーテルの種類
製品名 | 製造/販売 | 材質 | 先端 | カテーテル断面 |
---|---|---|---|---|
UKカフ付きカテーテル | ニプロ | ポリウレタン | エンドホール型(段差型) | Dの字が2つ背中合わせになった構造 |
パリンドロームプレシジョン | Medtronic | ポリウレタン | エンドホール型(段差型) | Dの字が2つ背中合わせになった構造 |
バスキャスカテーテル(ソフトセル) | バード/メディコン | ポリウレタン | エンドホール型 (段差型) | Dの字が2つ背中合わせになった構造 |
ヒックマン | バード/メディコン | シリコン | エンドホール型 (段差型) | Dの字が2つ背中合わせになった構造 |
参考資料
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