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脂質とは?その種類をとくに重要な5つにしぼって紹介します    

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

脂質は、とくに明確な定義や分類法があるわけでもなく、初めて学ぶ人にとっては少しややこしいかもしれません。

しかし、本記事では私たちの身体の中で特に重要な脂質を5種類にしぼって、わかりやすく解説しています。

3分ほどでサクッと読めると思いますので最後までお付き合いください。

脂質とは?【脂質の定義ってあるの??】

脂質(lipids)は、水に不溶で、有機溶媒に溶解する化合物である。

引用:厚生労働省「1-3 脂質」

脂質の定義に世界共通のものはありません。

厚生労働省によると「脂質は、水に不溶で、有機溶媒に溶解する化合物」とあります。ですので、糖質やタンパク質のように化学構造によって定められているわけではなく、脂質は物性によって定義されています。

補足:有機溶媒について
溶媒とは、なにかを溶かすための液体のことです(溶媒は水であることが多いです)
つまり有機溶媒とは、有機物を溶かすための溶媒ということです(有機物とは、主に「炭素を含む物質」のことで、水に溶けないものが多いため、有機溶媒で溶かします。)
(有機溶媒には例えば、ヘキサン、エタノール、ベンゼン、クロロホルムなどがあります。)

脂質とは?

では、実際に脂質とはいったい何?といわれれば、「脂質とは生物(動物と植物)が合成する化合物のうち、水に溶けないもの(あるいは水に溶けにくいもの)のことを脂質」と呼んでいることが多いです。

水に溶ける脂質(例えば糖脂質など)もあります。なお、水に溶けない、溶けにくいという性質は「疎水性」と呼びます。

また、脂質には有機溶媒に溶けやすいという性質もあります。

有機溶媒とは、炭素原子を骨格に持つ有機化合物でできた液体のことです。例えば、ガソリン、アルコール、アセトンなどがあります。

脂質と脂肪の違い

  • 脂質=脂肪

後述しますが、脂質には脂肪酸、中性脂肪、コレステロールなどの種類があります。

この脂質という言葉は生化学でよく使われる言葉です。

一方の脂肪というのは、栄養学でよく使われる言葉です。

ですので、脂質=脂肪と考えても問題ありません。

脂質の種類

脂質の種類
  1. 脂肪酸
  2. 中性脂肪
  3. リン脂質
  4. 糖脂質
  5. コレステロール

脂質に系統的な分類基準があるわけではありませんが、私たちの身体にとって覚えておくべき重要な脂質は上記の5種類です。

ちなみに、体内にある脂質の約9割は中性脂肪です。

では、1つ1つ順番にみていきます。

1.脂肪酸とは

上記は、脂肪酸の一種であるパルミチン酸の構造です。このように、脂肪酸は炭素(C)が数~数十個、横につながった構造をしています。

脂肪酸は、コレステロール以外のほとんどの脂質のなかに含まれているので、脂質の主役といってもいいです。

もう少し専門的にいえば「脂肪酸とは炭化水素基(疎水性)にカルボキシ基(親水性)がくっついたもの」となっています。

つまり、脂肪酸は疎水性と親水性の両方をもっています。しかし、炭化水素基が大部分を占めるため、炭化水素基(疎水性)の影響が強く、水にはほとんど溶けません。

脂肪酸の炭素(C)の数は12個から20個の範囲におさまることが多いです。

脂肪酸については下記の記事でわかりやすく解説していますのでよかったら併せてごらんください。

脂肪酸の構造と種類についてわかりやすく解説します 

脂肪酸の分類

脂肪酸の分類のしかたには2パターンあります。

1つ目のパターンは、脂肪酸のなかに二重結合があるかどうかによって以下の2つに分けられます。

1つ目のパターン

  1. 「飽和脂肪酸」
  2. 「不飽和脂肪酸」

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは下記の記事で解説しています。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いをわかりやすく解説します

2つ目のパターンは、脂肪酸の炭素の数によって以下の3つに分けられます。

2つ目のパターン

  1. 「短鎖脂肪酸」
  2. 「中鎖脂肪酸」
  3. 「長鎖脂肪酸」

ちなみに、身体の中や食べ物に含まれる脂肪酸は、炭素の数が16~22個の長鎖脂肪酸が多いです。

2.中性脂肪とは

中性脂肪(≒トリグリセリド)の構造

中性脂肪の構造は、グリセリン(グリセロールともいいます)に、3つの脂肪酸がくっついたものとなっています。

ちなみに、身体の中にある脂質の9割は中性脂肪です。

体内での中性脂肪のほとんどは脂肪細胞(皮下脂肪や内臓脂肪)に蓄えられています。
この脂肪細胞は、中性脂肪の倉庫のようなもので、貯蔵する中性脂肪が増えて脂肪細胞に入りきらなくなると、脂肪細胞は分裂し、新たな脂肪細胞をつくりだします。
これがどんどん進むと、いわゆる「肥満」ということになります。ただ、中性脂肪というと悪いイメージがあるかもしれませんが、人類は中性脂肪を蓄えることによって、飢餓に備えることができるようになり、人類の進化を促したという学説さえあります。

中性脂肪の役割

中性脂肪は、中性脂肪は脂肪細胞に蓄えられており、エネルギー源になります。

中性脂肪の種類

  1. モノグリセリド(=モノアシルグリセロール)
  2. ジグリセリド(=ジアシルグリセロール)
  3. トリグリセリド(=トリアシルグリセロール)

中性脂肪には上記の3種類ありますが、血中にある中性脂肪のほとんどはトリグリセリドです。

ですので「中性脂肪=トリグリセリド」と書かれていることが多いです。

補足:中性脂肪の種類
・モノグリセリド・・・1つのグリセリンに、1つの脂肪酸がくっついたもの
・ジグリセリド・・・1つのグリセリンに、2つの脂肪酸がくっついたもの
・トリグリセリド・・・1つのグリセリンに、3つの脂肪酸がくっついたもの

3.リン脂質(グリセリン+脂肪酸+リン酸)とは

リン脂質の構造

リン脂質とは、中性脂肪(≒トリグリセリド)の3つの脂肪酸のうち、1つがリン酸に置き換わったものです。

リン脂質の特徴的な性質は「両親媒性」です。

両親媒性とは?
1つの分子内に水と混ざりやすい親水性部分と、水と混ざりにくい疎水性部分の両方をあわせもっている場合、その分子は両親媒性の性質があるといいます。

そして、リン脂質は脂肪酸の部分が疎水性で、リン酸の部分が親水性となっています。

つまり、リン脂質には疎水性と親水性の部分があります。この性質(両親媒性)により「細胞膜」の主な構成要素となっています。

4.糖脂質(グリセリン+脂肪酸+糖)

糖脂質とは、糖質を含む脂質のことです。

糖脂質には以下の2種類があります。
  1. グリセロ糖脂質(代表例:モノガラクトシルジアシルグリセロ―ス)
  2. スフィンゴ糖脂質(代表例:α-ガラクトシルセラミド)

5.コレステロール【ステロイドの一種】

コレステロールだけ他の脂質と全く違う構造をしていて、ステロイド骨格をもっています。

このステロイド骨格を基本形として持つような脂質を「ステロイド」といいます。

つまり、コレステロールはステロイドの一種ということになります。

ステロイドには例えばステロイドホルモンといわれるものがあり、一番有名なのは「性ホルモン」です。テストステロンやプロゲステロンなどが性ホルモンとして挙げられます。また、ビタミンDもステロイドの一種で、皮膚に紫外線があたると、コレステロールから合成されています。

コレステロールは、悪玉コレステロールのイメージが強いので身体に悪い!と思っている人が多いともいますが、細胞膜の強度を高めたり、ステロイドホルモンや胆汁酸の原料になったりと、身体にとってなくてはならない成分です。

ステロイド骨格とは?

ステロイド骨格とは、3つの六角形(六員環(ろくいんかん))と1つの五角形(五員環(ごいんかん))が組み合わさった下のような構造のことです(例:コレステロール)

画像引用:研究.net

コレステロールの役割には以下の2つがあります。

  1. 細胞膜の構成成分
  2. ステロイドホルモンの材料

まとめ:脂質とは?その種類は??

脂質とは生物(動物と植物)が合成する化合物のうち、水に溶けないもの(あるいは水に溶けにくいもの)のことです。

そしてその脂質で、私たちの身体にとってとくに重要で覚えておくべきものは以下の5種類あります。

脂質の種類
  1. 脂肪酸
  2. 中性脂肪
  3. リン脂質
  4. 糖脂質
  5. コレステロール

とくに、脂質の中でもほとんどの脂質に含まれている脂肪酸がもっとも重要です。

 

というわけで今回は以上です。

 

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