こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
本記事では、透析中における下肢攣りの対応を紹介します。併せて、以降の透析で下肢つりを起こさないための対策法も紹介したいと思います。
目次
透析中における下肢攣りの対応
- 除水を一時停止する。
- 血圧を測定する。
(血圧低下を伴う場合も多いため) - 補液(100~20ml)をおこなう。
- 10%NaCl(1A:20ml)を透析回路から注入する。
(1A:20mLあたりに食塩2gに相当し、当院では透析後の口渇の原因となるのであまり使用していません) - 足首を90℃以上曲げてふくらはぎの筋肉を伸ばすと同時に、筋肉をマッサージして血流を増やす。
- 温罨法で足を温める。
- 血圧低下の心配がなければ、起立してもらう。
- 芍薬甘草湯を内服する。
- グルコン酸Ca(カルチコール)をゆっくり静注する。
(ただし、低Ca血症による「攣り」は稀です)
透析中における下肢つりの対応は上記のとおりです。
基本的には除水を止めて数分待つか、患部をマッサージします。もしくは、芍薬甘草湯を内服します(詳細は下記の記事で解説しています)。
一般的によく言われている下肢攣りの一番の原因は、除水に伴う循環血液量の減少して血圧が低下し、筋組織の血流量が減少することです。したがって、血圧が急激に低下していれば、200~400mlの補液をするのが良いかと思います。
血圧低下がなければ、ホットパック(リハビリ用で筋肉を温めるもの)でつっているところを温めたり、足首を90℃以上曲げてふくらはぎの筋肉を伸ばしたり、10%塩化ナトリウム20mlを回路から注入してあげてもいいかもしれません。
下肢攣りに対するカルチコール®
低Caを補正する目的でカルチコール®(8.5%グルコン酸カルシウム液)を5~10mLを静脈回路からゆっくり注入します。
ただし、心悸亢進(普通には自覚されない心臓の鼓動を前胸部に感じる不快感)、徐脈、熱感などの副作用があるため注意が必要です。
次回以降の透析で下肢攣りを起こさないために・・・
透析中の下肢攣りが起きやすいのは、除水速度が速いときや除水量が多いとき、あるいはDWがきつい場合です。
ですので、まずはDWがきつすぎないかを検討します。
(DWがきついと、除水速度や除水量が多くなってしまいます。)
DWが適正であろうと思われる場合、除水速度が適正であったかどうかを検討します。
体重の増えが多い場合には、患者さんに体重を増やしすぎないように気を付けてもらいます。
その他の対処法として、以下のものがあります。
- 足がつると予想される1時間ほど前に、漢方薬の芍薬甘草湯(1包2.5g)を内服してもらう。
- 急な体位変換をしないように指導する。
- L-カルニチンを予防投与する。
- 週初めはDWまで除水しない。
いずれにせよ、基本的に体重増加を許容範囲内に抑えておけば下肢攣りの頻度はグッと減ります。患者さんには体重が増えすぎないよう指導しましょう。
透析患者さんの水分制限については下記の記事で解説しています。
透析中の下肢攣りの原因
- 時間当たりの除水速度がはやい
- 総除水量が多い
- DWが低く設定されている
- 血圧や末梢循環血流量低下による筋肉への酸素供給量が低下
- 電解質の変化
- 透析による代謝性アシドーシス改善によるイオン化カルシウムの減少
- L-カルニチンの欠乏
- 下肢の閉塞性動脈硬化症
- 急な体位変換
- 低Ca血症
透析で足がつる原因としては、上記のものが考えられます。
ただし、透析中の下肢攣りの原因ははっきりとはわかっていません。
ただ、一般的によく言われている下肢攣りの一原因は、除水に伴う循環血液量の減少して血圧が低下し、筋組織の血流量が減少することです。経験的にも、血圧が下がりやすい透析後半に攣ることが多いです。
下肢が攣りやすい人で、透析の後半に血圧が下がってきたりしたら要注意です(加えて除水量が多ければなおさら要注意です)。
というわけで今回は以上です。
透析中に足がつるのは、患者さんにとって非常に苦痛ですので、我々医療スタッフは下肢つりを起こさないようしっかりと原因を検討して対応しましょう。
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