ニプロ社製BMSについて解説【ΔBV】

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

今回はニプロ社製のBMSのΔBVについて解説したいと思います。

ニプロのBMSとは

参考:ニプロ株式会社,NCV-11

ニプロのBMS(ブラッドモニタリングシステム)は、透析用監視装置「NCV-2シリーズ」「NCV-3シリーズ」、個人用透析装置「NCV-10シリーズ」にオプションで搭載されているものです。

このBMSは、透析治療中の⊿BV(循環血液量変化率)%を測定することで、循環血液量を把握することで、患者さんの状態管理に役立ちます。

BMSの測定項目

  1. ヘマトクリット:%
  2. 循環血液量変化率(⊿BV):%

ニプロのBMSでは上記の2つの項目を測定することができます。

ΔBV(循環血液量変化率)%

ΔBVとは、透析治療中の患者の測定開始時点を基準とした循環血液量の変化率のことです。

測定開始時点を0とし、測定開始時点よりも循環血液量が減少している場合には、-10%というふうに表示し、逆に循環血液量が増えている場合は+10%といった感じで+の値になります。

BMSの測定原理

BMSは光センサによって測定しています。

血液回路内に流れる血液に光を当てて、Hbによる吸光度の影響を測定することで、血液濃度の算出を行っています。

  • 吸光度=モル吸光係数×モル濃度×光路長
    (吸光度は光路長と濃度に比例する:ランベルト・ベールの法則)

ランベルト・ベールの法則を用い、血液回路内を流れる血液に光を投射し、Hbによる吸光度の影響を測定することで、血液濃度の算出を行っています。

なお、光には酸素化Hbと脱酸素化Hbの割合の影響を受けない波長である810nmのLEDが使用されています。

BMSの計算式

ニプロのBMSにおけるΔBVの計算式Ht(0):測定開始時点でのヘマトクリット値
Ht(t):治療中のある時間でのヘマトクリット値

ニプロのBMSにおけるΔBVの計算式は上記のとおりです。

ΔBVとHt

ΔBVは透析前のHtを測定し、除水が進むにつれ濃縮したHtから算出して表示しています。

したがって、透析前の循環血液量の影響を受けます。例えば、体重の増えが多いときΔBVの減少も大きくなります。

BMSの操作

透析装置の準備工程に移行したときに、BMSの自己診断が自動的に行われています。

また、脱血工程に移行したときには、血液回路内がプライミング液で満たされた状態でゼロ点校正を自動で行うことで、血液回路の装着状態を測定に加味し、精度の高い測定が可能となっています。

なお、何らかの理由でゼロ点校正が行われなくても、装置内に保存された標準値が用いられるため、⊿BVの測定は可能です。

BMSの測定

透析装置が運転を開始すると一定時間経過後に、自動的にBMSの測定が開始されます。なお、手動による測定も可能となっています。

⊿BVの変化率(%/min)とは

変化率(%/min)は、単位からも想像できると思いますが、⊿BVの1分間の変化率を表しています。

変化率が大きくマイナスの値(例えば、変化率が-1.0(%/min))では、急激な血液濃縮が起こっていることを意味し、血圧の急低下に注意が必要となります。

⊿BVと血圧の間には関係があるの?

血圧低下率と⊿BVには有意な相関が認められたとする報告があります1)。また、この報告では透析中の血圧の低下がみられない症例でも、⊿BVの減少は冠血流量の減少や交感神経系の亢進を介して、狭心症や不整脈を誘発する可能性があり、⊿BVの減少は可能な限り少なくするほうがよいとしています。

まとめ

ニプロのBMSでは810nmの光を用い、Hbの違いから生じる、発光部から受光部への光量の変化の違いによって、ΔBV%を算出しています。

 

 

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