こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。
本記事では、CoAとはなんなのかについてわかりやすく解説します。
- CoAや補酵素Aってなに?CoASH、コエンザイムAとは違うの??
これらの疑問にできるだけわかりやすく答えようと思います。
目次
CoAとは(補酵素A)
CoA(補酵素A)とは、すべての生物が利用する重要な補酵素の一つです。
CoA(補酵素A)の化学構造は、核酸関連の物質のビタミンの1種が結合したもので、酵素に分類されるものではありません。
ただ、酵素ではないけれど、酵素の働きにかかわっているので、補酵素といわれています。
なお、CoAとは、CoenzymeA(補酵素A)の略称です。Coenzymeとは補酵素の意味で、酵素の働きを補助する酵素以外の化学物質のことです。
酵素については下記の記事で解説していますので、興味のある方は併せてご覧ください。
CoAの「A」の意味
CoenzymeについているアルファベットのAは、最初に発見されたものであることを意味しています。
たまたま最初にみつかった補酵素だから「A」がついているだけで、特別な意味があるわけではありません。
CoAの別の呼び方【補酵素A・CoASH・コエンザイムA】
- 補酵素A
- CoASH
- コエンザイムA
CoAには、上記のように様々な呼び方があります。
上記すべての語句は、CoAと同じ意味で使われています。
CoASHと、SHを強調した表記があるのは、このSH(チオール基)は、いろんなものに結合するからです。つまり、CoAはいろんな化合物と結合します。
CoA(補酵素A)の構造
CoA(補酵素A)の構造は上の図のとおりです。
上の構造図でグレーの網掛けを施した部分を『ホスホパンテテイン基』と呼び、アセチル基(CH3CO−)や脂肪酸の炭化水素鎖を運ぶための「キャリア」として働きます。
CoA(補酵素A)を構成する化合物
- パントテン酸
- チオエタノールアミン
- リン酸
- リボース
- アデニン
CoA(補酵素A)を構成する化合物は以下のとおりです。
様々な化合物が結合しており、複雑な構造をしています。
CoA(補酵素A)の働き
- CoA(補酵素A)の働き:様々な物質と結合し、化学反応を促進させる
CoA(補酵素A)には、様々な基質に結合して化学反応を進めやすくする働きがあります。
具体的には下記の諸反応に関係しています。
- クエン酸回路
- 脂肪酸の合成と酸化
- アセチル化
- コレステロール合成
アセチルCoAについて
アセチルCoAとは、CoA(補酵素A)にアセチル基(-COCH3)が結合した化合物のことです。
CoA(補酵素A)がアセチルCoAになるときは、CoA(補酵素A)の一番右の水素(H)が外れて(下の図参照)、硫黄(S)部分にアセチル基(-COCH3)が結合します。
下のCoA(補酵素A)の構造と併せてご覧ください。
このアセチルCoAは、さまざまな代謝系の中心に位置する重要な化合物です。
具体的には、クエン酸回路、脂肪酸の合成と分解、コレステロールの合成など、様々な反応にアセチルCoAは関与しています。
【アセチルCoA】CoA(補酵素A)とクエン酸回路の関係
解糖系における最終生成物はピルビン酸(もしくは乳酸)です。
思い出してみてください。
解糖系によるグルコースの分解を解糖 glycolytic という。グルコース1モルから2モルのピルビン酸 pyruvic acid あるいは乳酸 lactic acid が生じ、その過程で2モルのATPが消費され、4モルのATPが生成する。その結果2モルのATPが生じる。
引用:系統看護講座 専門基礎 生化学 人体の構造と機能② p169
ピルビン酸はそのままの形ではクエン酸回路の代謝には組み込まれません。まず、ピルビン酸はミトコンドリア内に入っていきます。そこで、ピルビン酸はアセチルCoAに変えられます。
そして、アセチルCoAはオキサロ酢酸と反応してクエン酸になります(これが、クエン酸回路の一番初めの反応です)。
さらに、クエン酸は、イソクエン酸酸に、次にα-ケトグルタル酸にという風に順次反応していき、最終的にオキサロ酢酸へとなります。
このような一連の反応を、クエン酸回路といいます(下の図参照)。
ちなみに、CoA(補酵素A)は補酵素であるため、クエン酸回路には取り込まれず、アセチル基(-COCH3)のみがクエン酸回路に取り込まれます。
クエン酸回路については下記の記事でわかりやすく解説しています。
【アシルCoA】CoA(補酵素A)とβ酸化の関係
脂肪酸をβ酸化するためには、脂肪酸にCoA(補酵素A)をつけなければなりません。
上の構造は脂肪酸の一種であるパルミチン酸です。
パルミチン酸の左側にカルボキシ基があるのがわかると思います。
脂肪酸がエネルギー代謝経路に入るためには、CoA(補酵素A)が、脂肪酸のカルボキシ基に結合して活性化させる必要があります。
そして、脂肪酸にCoA(補酵素A)が結合した化合物のことをアシルCoAと呼びます。
アシルCoAとなることで、カルボニル基の反応性が上昇し、反応性が高まります。
- アシルCoA=脂肪酸+CoA(補酵素A)
- アシルCoAとなってはじめて脂肪酸のエネルギー代謝がおこなえる
なお、パルミチン酸にCoA(補酵素A)をつけた化合物のことを単にアシルCoAとも呼びますが、パルミトイルCoAとも呼びます。
このアシルCoAとなってはじめて、脂肪酸のβ酸化がおこなわれます。
まとめ:CoAとは
CoAとは、すべての生物が利用する重要な補酵素の一つです。
CoA(補酵素A)の化学構造は、核酸関連の物質のビタミンの1種が結合したもので、酵素に分類されるものではありません。
ただ、酵素ではないけれど、酵素の働きにかかわっているので、補酵素といわれています。
- 補酵素A
- CoASH
- コエンザイムA
CoAには、上記のように様々な呼び方があり、CoAと同じ意味で使われています。
というわけで今回はCoAについてわかりやすくまとめてみました。少しでも参考になれば幸いです。
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