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クエン酸回路とはなに?世界一わかりやすく解説してみた

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

本記事では「クエン酸回路」について、初めて聞く人でもわかりやすく解説しています。

最初に結論をいいます。

クエン酸回路のもっとも重要な役割は、主にアセチルCoAが使われますが、これを代謝して「水素イオン(H+」と「電子」を取り出すことです。取り出された「水素イオン(H+」と「電子」を電子伝達系へと運び、「大量にATP」を産生することが、クエン酸回路でもっとも重要な役割となります。

というわけで、クエン酸回路の反応を、初めての人でもわかるように一つずつひも解いていきます。

クエン酸回路とはなに?わかりやすく解説してみた

クエン酸回路は、糖質、脂質、タンパク質の酸化のための最終的な経路であり、共通の最終代謝物であるアセチルCoAは、オキサロ酢酸と反応してクエン酸を生成する。

引用:イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版,p186

クエン酸回路とは生命がエネルギーをつくり出すためのシステムのことです。

後述しますが、クエン酸回路の最大の意義はNADH+H+とFADH2をつくりだし、これを電子伝達系へと渡すことです。もう少しわかりやすくいうと、クエン酸回路によって基質から水素(電子と水素イオン)を奪うことが最大の意義といえます。この水素が電子伝達系へと運ばれて大量にATPがつくられます。クエン酸回路自体で大量にATPをつくっているわけではありません。

これではザックリとしすぎているのでもう少し詳しく説明します。クエン酸回路とは、アセチルCoAを反応の起点(上図のようにアセチルCoAがクエン酸回路に入っていきます)とした、私たちが生きるために必要なエネルギーであるATPをつくり出すための代謝システムのことです。

上の図は、クエン酸回路の全体像です。山手線のように循環していることがわかると思います。

基本的に、クエン酸回路の最初の反応は外部からやってきたアセチルCoAとオキサロ酢酸が反応するところから始まります。

ただし、後述しますが、クエン酸回路への途中参入もあるので、必ずしもアセチルCoAとオキサロ酢酸の反応がクエン酸回路の始まりとならない場合もあります。

クエン酸回路の覚え方は下記の記事で紹介しています。

クエン酸回路の覚え方【ゴロで覚えれば楽勝です】

クエン酸回路の名前の由来

クエン酸回路という名前の由来は、クエン酸回路の一番初めの反応(アセチルCoAとオキサロ酢酸の反応)でできる物質がクエン酸で、そして以降の反応が回路状に進行するからです。

最終的に一番初めの反応でできたクエン酸は、オキサロ酢酸となります。そして、外部から新たにやってきたアセチルCoAと反応して、クエン酸回路の反応は繰り返されます。

つまり、アセチルCoAとオキサロ酢酸がある限り、クエン酸回路の反応は延々と繰り返されるということです。

クエン酸回路の役割

クエン酸回路の役割
  • 役割①:GTPをつくること
  • 役割②:NADH+H+とFADH2をつくりだし、これを電子伝達系にわたすこと

※ NADH+H+とFADH2を受け取った電子伝達系では、大量のATPがつくられます。

クエン酸回路の役割で特に重要なのは、上記の役割②のほうです。

NADH+H+とFADH2は電子と水素イオン(H+を預かっている状態です。このNADH+H+とFADH2が、次の代謝システムである電子伝達系に電子と水素イオン(H+を供給することで、大量のATPがつくられます。

NADH+H+とFADH2とは、高エネルギー物質でエネルギーが蓄えられています。このエネルギーを利用して、電子伝達系で大量のATPがつくられています。

なお、クエン酸回路は直接的にもATP(クエン酸回路でつくられたGTPはATPに変わりますので)をつくっていますが、その量はごく少量で、ATPの多くはクエン酸回路の次のATP産生システムである電子伝達系でつくられています。

電子伝達系については下記の記事で解説しています。

電子伝達系とはなに?図を多用してわかりやすく解説してみた

NADH+H+とFADH2はついて詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

【NADとは?FADとは?】電子伝達体の役割についてわかりやすく解説してみた    

クエン酸回路の反応はどこでおこなうの?

クエン酸回路は、細胞内にあるミトコンドリアのマトリックス部分でおこないます。

↓ ミトコンドリアを拡大

クエン酸回路の反応の全体像

クエン酸回路は、アセチルCoAを起点とし、9つの反応系からなります。

以下が、クエン酸回路の反応の全てです。反応①~⑨の順に進んでいきます。

反応前 反応後
反応① ・アセチルCoA
・オキサロ酢酸
クエン酸
反応② クエン酸 cis-アコニット酸
反応③ cis-アコニット酸 イソクエン酸
反応④ イソクエン酸 α-ケトグルタル酸
(別名:2-オキソグルタル酸)
反応⑤ α-ケトグルタル酸 スクシニルCoA
反応⑥ スクシニルCoA コハク酸
反応⑦ コハク酸 フマル酸
反応⑧ フマル酸 リンゴ酸
反応⑨ リンゴ酸 オキサロ酢酸

クエン酸回路の材料

クエン酸回路の材料
  • 材料①:アセチルCoAなど※1
  • 材料②:酸素※2
  • 材料③:いろんな酵素

※1:アセチルCoAでなくても、クエン酸回路を構成するクエン酸やα-ケトグルタル酸などがあれば、クエン酸回路の反応は進みます(つまり、クエン酸回路の途中参入も可能です)。
※2:クエン酸回路の次の反応である電子伝達系に酸素が必要です。もし仮に酸素が不足してしまうと、電子伝達系の反応が進まなくなり、その結果、クエン酸回路の反応も進まなくなってしまいます。

クエン酸回路を動かすためには、主に上記の3つの材料が必要です。

この材料のなかでもっとも大切なのは『アセチルCoA※1』です。

実はグルコースから始まる解糖系からスタートしなくとも、クエン酸回路に、アセチルCoAやクエン酸、α-ケトグルタル酸を供給することができれば、クエン酸回路の反応を進ませることができます。
(ここでは詳細は省きますが、中性脂肪はβ酸化によりアセチルCoAになりますし、たんぱく質が代謝されてピルビン酸やα-ケトグルタル酸などになって、クエン酸回路に入っていきます)

解糖系→クエン酸回路の流れ

一例として、解糖系からクエン酸回路への流れを紹介します。

解糖系とはなに?という人は下記の記事で解説していますのでよかったらご覧ください。

解糖系とはなに?わかりやすく簡単に解説してみた

解糖系では、グルコースからピルビン酸がつくられます。

解糖系の反応でできたピルビン酸

反応全体の収支は、

  • パターン①:グルコース+2NAD++2ADP+2リン酸 → 2ピルビン+2NADH+H++2ATP+2H2O
  • パターン②:グルコース+2ADP+2リン酸 → 2乳酸+2ATP+2H2O

参考:公益社団法人 日本薬学会 「解糖系」

上記のとおり、解糖系の反応式には2パターンあります。

解糖系は、およそ10段階の反応からなる代謝であり、好気的条件下でも嫌気的条件下でも反応が進行します。ただ、好気的条件下の場合と嫌気的条件下の場合とで、解糖系によって最終的につくられる物質に違いがあります。

好気的条件下とは、酸素が十分にある状態のことです。
嫌気的条件下とは、酸素が十分にない状態のことです。

ピルビン酸からアセチルCoAへの変化

ミトコンドリア内のマトリックスでの反応
  • ピルビン酸→アセチルCoA + 2(NADH+H+)

解糖系でつくられたピルビン酸はミトコンドリア内に入っていきます。そこで、ピルビン酸はアセチルCoAに変えられます。

ちなみに、ピルビン酸からアセチルCoAに変えられる過程で、NADH+H+がつくられます。

クエン酸回路へと入っていくアセチルCoA

アセチルCoAはオキサロ酢酸と反応してクエン酸になります(これが、クエン酸回路の一番初めの反応です)

さらに、クエン酸は、イソクエン酸酸に、次にα-ケトグルタル酸にという風に順次反応していき、最終的にオキサロ酢酸へとなります。

このような一連の反応を、クエン酸回路といいます。

クエン酸回路によってつくられる重要な物質

クエン酸回路によってつくられる重要な物質
  1. GTP
  2. NADH+H+
  3. FADH2

最後にクエン酸回路でつくられる重要な物質を紹介しますと、上の3つとなります。

1個のアセチルCoAがクエン酸回路で代謝されることによって、GTPが1個、NADH+H+のセットが3個、FADH2が1個つくられます。

GTPは、ADPにリン酸基をわたしてATPになります。

クエン酸回路で発生する二酸化炭素

α-ケトグルタル酸がスクシニルCoAに変化するときにでる二酸化炭素が、私たちが呼吸のときに吐き出す二酸化炭素です。

補足:NADH+H+とFADH2ってなに?

NADH+H+とFADH2とは、エネルギーが蓄えられている高エネルギー物質です。

NADH+H+とFADH2は電子と水素イオン(H+を預かっている状態です。

このNADH+H+とFADH2はATP合成のために電子伝達系に運ばれて電子とH+を渡します。

電子伝達系とは、解糖系やクエン酸回路でつくられたNADH+H+、FADH2から電子と水素イオン(H+を受け取り、ATPをつくる反応系です。

なお、電子伝達系の反応経路には以下の2種類があります。

  • NADH+H+から始まるもの
    (→1個のNADH+H+から2.5個のATPがつくられます)
  • FADH2から始まるもの
    (→1個のFADH2から1.5個のATPがつくられます)

NADH+H+とFADH2はついて詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

【NADとは?FADとは?】電子伝達体の役割についてわかりやすく解説してみた    

【まとめ】クエン酸回路とは?(役割・材料・重要な物質・おこなわれる場所)

本記事の内容をまとめます。

クエン酸回路とは生命がエネルギーをつくり出すためのシステムのことです。

もう少し詳しく説明すると、クエン酸回路とは、アセチルCoAを反応の起点(上図のようにアセチルCoAがクエン酸回路に入っていきます)とした、私たちが生きるために必要なエネルギーであるATPをつくり出すための代謝システムのことです。

このクエン酸回路の役割は、以下の2つです。

クエン酸回路の役割
  • 役割①:GTPをつくること
  • 役割②:NADH+H+とFADH2をつくりだし、これを電子伝達系にわたすこと

※ NADH+H+とFADH2を受け取った電子伝達系では、大量のATPがつくられます。

クエン酸回路は、直接的にもATP(GTPはATPに変化しますので)をつくっていますが、その量はごく少量です。

実質、ほとんどのATPは、クエン酸回路の次にATP産生システムである電子伝達系(NADH+H+とFADH2を受け取ってATPをつくります)でつくられています。

ここで簡単にまとめますと、クエン酸回路の最大の意義はNADH+H+とFADH2をつくりだし、これを電子伝達系へと渡すことです。もう少しわかりやすくいうと、クエン酸回路によって基質から水素(電子と水素イオン)を奪うことが最大の意義といえます。

この水素が電子伝達系へと運ばれて大量にATPがつくられます。クエン酸回路自体でATPを大量につくっているわけではありません。

そして、クエン酸回路の反応に必要な材料は主に以下の3つです。

クエン酸回路の材料
  • 材料①:アセチルCoAなど※1
  • 材料②:酸素※2
  • 材料③:いろんな酵素

※1:アセチルCoAでなくても、クエン酸回路を構成するクエン酸やα-ケトグルタル酸などがあれば、クエン酸回路の反応は進みます(つまり、クエン酸回路の途中参入も可能です)。
※2:クエン酸回路の次の反応である電子伝達系に酸素が必要なためです。もし仮に酸素が不足してしまうと、電子伝達系の反応が進まなくなり、その結果、クエン酸回路の反応も進まなくなってしまいます。

この材料のなかでもっとも大切なのは『アセチルCoA※1』です。

実はグルコースから始まる解糖系からスタートしなくとも、クエン酸回路に、アセチルCoAやクエン酸、α-ケトグルタル酸を供給することができれば、クエン酸回路の反応を進ませることができます。
(ここでは詳細は省きますが、中性脂肪はβ酸化によりアセチルCoAになりますし、たんぱく質が代謝されてピルビン酸やα-ケトグルタル酸などになって、クエン酸回路に入っていきます)

このクエン酸回路がおこなわれる場所は、細胞内にあるミトコンドリアのマトリックスの部分です。

 

というわけで今回は以上です。

クエン酸回路の前段階である解糖系については下記の記事で解説していますので併せてごらんください。

解糖系とはなに?わかりやすく簡単に解説してみた

 

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