【日機装】透析装置の脱気ポンプについて

こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。

本記事では、透析の装置に組み込まれている「脱気ポンプ」について解説したいと思います。

そもそも脱気ポンプってなに?

画像引用:枝村八郎、[展望・解説]人工透析(人工腎臓)におけるポンプ

脱気ポンプは、ヒータにて体温程度まで加温された水を真空近くまで減圧することにより過飽和空気を気泡として分離発生させる役割を担っている。

引用:枝村八郎、[展望・解説]人工透析(人工腎臓)におけるポンプ

そもそも脱気とは、液体中に存在する気体(O2やN2など)を除去することです。

ですので、脱気ポンプとは透析液の中に含まれてる気体を除去するためのポンプのことです。
(ただし、これから解説しますが脱気ポンプ単体で脱気をおこなっているわけではありません。)

液体は、目には見えなくとも気体と接していれば空気の成分である(O2やN2といった気体が含まれています。

透析液の脱気の方法

一般的に多くの透析装置が、脱気方式として、まず透析を加温、そして陰圧方式によって透析液の脱気をおこなっています。

この脱気のメカニズムについて簡単に説明します。

そもそも液体中に溶けている気体の量は1.圧力と2.温度に依存します。

液体中に溶ける気体の圧力と温度の関係

  1. 圧力
    →ヘンリーの法則:一定温度のもとで、液体に溶ける気体の量は、その気体の圧力に比例します。
    (つまり、圧力が高いほど液体に気体がたくさん溶け込んでいるということ)
  2. 温度
    →一般に高温になるほど、液体に溶けている気体の量は少なくなります。
    (温度が高くなる→液体中の気体分子の運動が激しくなる→液体から気体が飛び出しやすくなるため)

ようするに、圧力が高ければ高いほど気体に溶けている気体は多く、温度が低いほど溶けている気体は多いです。

ですので、透析液中の気体を除去するためには透析液を温めて、陰圧をかけてやればよいということになります。

脱気ポンプとしてのカスケードポンプ

画像引用:株式会社ニクニ、渦流タービンポンプ(カスケードポンプ)

日機装DCS100NXの脱気ポンプにはカスケードポンプが使われています。

カスケードポンプは、外周に放射状の溝をもつ羽根車の回転により、ポンプ内の内壁に沿って渦を発生させて繰り返し加圧させ、比較的少量の液体を高圧で移送することができるポンプです。
(ようするに、羽根車の回転エネルギーを液体の圧力エネルギーに変換するポンプということ!)

そして、透析液の脱気にはけっこうな陰圧(-67~-80kPa)によっておこなわれているため、高揚程が可能なカスケードポンプが採用されています。

揚程とは、ポンプを使って水をくみ上げる高さのことです。

なぜ、透析液の脱気が必要か?

脱気ポンプは、透析効率の低下を防ぐために必要不可欠なものであり、カスケード(渦流ポンプ)を使用している。

引用:枝村八郎、[展望・解説]人工透析(人工腎臓)におけるポンプ

ダイアライザに供給される透析液は37.0℃程度まで加温されていて、圧力も陰圧になることがあり、脱気されていなければ透析液中に気泡が発生してしまいます。

この気泡がダイアライザの膜に付着すると透析効率が低下したり、あるいは電導度計の測定値が不安定になったり、除水誤差の原因となります。

ですので透析液の脱気が必要となるわけです。

日機装DCS100NXの透析液の脱気方法

日機装DCS100NXでの脱気の方法

  1. DCS100NXに透析液が一定の圧力に調整された透析液が供給され、脱気部へ向かいます。
  2. 脱気部では、まずヒーターによって透析液が温められます。
    次に、脱気ポンプ(カスケードポンプ)の入り口に配管の流路を部分的に細くする絞り(オリフィス)があり、ここで陰圧を発生させます。
  3. 透析液が温められ、かつ陰圧になったことで透析液に溶けている気体が気泡として発生します。
  4. 液体と気体を含む透析液は脱気ポンプ(カスケードポンプ)により送液され、気泡分離器に入ります。
  5. 気泡分離器では、気体の性質により上部にたまり、気泡を含まない透析液は気泡分離器の下部より送液されます。
  6. 発生した気泡は、気泡分離チャンバの上のポートから排液ラインへと排出されます。

日機装DCS100NXでの脱気の方法は上記のとおりです。

 

というわけで今回は以上です。透析室で働くスタッフの「脱気ポンプってなに?」という疑問を少しでも解消できたなら幸いです。

 

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