解糖系とはなに?わかりやすく簡単に解説してみた

解糖系とは、わかりやすく

こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。

臨床工学技士はメジャーな職種ではないので知らない人も多いと思いますが、病院やクリニックなどで生命維持管理装置などの機器を操作・保守管理している医療系の職種です。

本記事では、私たち人間の糖質代謝の中心ともいえる「解糖系」について、初めて聞く人でもわかりやすく解説しています。

解糖系とはなに?わかりやすく解説してみた

解糖はすべての哺乳類細胞のサイトゾルに存在する経路であり、グルコース(またはグリコーゲン)を代謝してピルビン酸と乳酸を生成する。

引用:清水孝雄[監修],イラストレイテッドハーパー・生化学,p202

解糖系によるグルコースの分解を解糖 glycolytic という。グルコース1モルから2モルのピルビン酸 pyruvic acid あるいは乳酸 lactic acid が生じ、その過程で2モルのATPが消費され、4モルのATPが生成する。その結果2モルのATPが生じる。

引用:系統看護講座 専門基礎 生化学 人体の構造と機能② p169

解糖系とは、わかりやすくいえば、私たちの身体にエネルギーを供給するためのシステムのことです。

なお、グルコースの分解のことを文字どおり「解糖」といいます。

具体的には、解糖系はほぼ全ての生物の細胞の細胞質基質(サイトゾル)に存在していて、主にグルコースを分解してピルビン酸、もしくは乳酸をつくっています。
この解糖系の反応の過程でエネルギー物質であるATPがつくられています。また解糖系でつくられた生成物は、クエン酸回路や電子伝達系へと運ばれて、そこでもATP生産に利用されています。

ちなみに、最初、地球上に生物が誕生したときは、地球の大気の酸素濃度は低く、酸素を利用しないでエネルギーをつくりだしていました。この酸素を利用しないでエネルギーをつくりだすシステムが解糖系です。酸素がなくてもエネルギーをつくりだせるため、嫌気的代謝とも呼ばれています。

まとめると、グルコースなどの単糖をピルビン酸(または乳酸)へと分解し、エネルギーをつくりだすシステムのことを解糖系といいます。

解糖系の役割

解糖系の役割は以下の3つです。

  • 役割①:ATPの産生
  • 役割②:ピルビン酸をつくり、クエン酸回路へ渡す
  • 役割③:NADH+H+をつくり、電子伝達系へ渡す

役割①~③のすべては、わたしたちの身体のエネルギー源であるATPをつくるためにおこなっています。

つまり、わかりやすくいえば、解糖系とはその名のとおり「糖」を分「解」することによって、わたしたちの身体にエネルギーを供給する代謝経路だということです。

ただし、後でも説明しますが、嫌気的条件下ではピルビン酸は乳酸になり、またNADH+H+はピルビン酸を乳酸にする際に消費されます。

解糖系がおこなわれる場所

解糖系がおこなわれる場所は、細胞内のサイトゾル(細胞質ゾル)です。

細胞質ゾル:細胞内で核以外の部分を細胞質といいます。細胞質には小胞体やミトコンドリアなども含んでいますが、それら細胞小器官をさらに除いた部分をサイトゾル(細胞質ゾル)といいます。

解糖系の反応式

反応全体の収支は、

  • パターン①:グルコース+2NAD++2ADP+2リン酸 → 2ピルビン+2NADH+H++2ATP+2H2O
  • パターン②:グルコース+2ADP+2リン酸 → 2乳酸+2ATP+2H2O

参考:公益社団法人 日本薬学会 「解糖系」

上記のとおり、解糖系の反応式には2パターンあります。

解糖系は、およそ10段階の反応からなる代謝であり、好気的条件下でも嫌気的条件下でも反応が進行します。ただ、好気的条件下の場合と嫌気的条件下の場合とで、解糖系によって最終的につくられる物質に違いがあります。

好気的条件下とは、酸素が十分にある状態のことです。嫌気的条件下とは、酸素が十分にない状態のことです。

パターン①:好気的条件下の場合

  • グルコース+2NAD++2ADP+2リン酸 → 2ピルビン+2NADH+H++2ATP+2H2O

好気的条件下(酸素が十分にある状態)の場合、グルコースは最終的にピルビン酸にまで分解されます。

ここでのポイントは、1モルのグルコースから、2モルのビルピン酸、2モルのATP、そして2モルのNADH+H+がつくられることです。

ピルビン酸はそのあと、アセチルCoAへと変換され、アセチルCoAはクエン酸回路へと入っていき代謝され、ATP合成に利用されます。

ピルビン酸はミトコンドリアの外膜と内膜を難なく通過することができます。なお、クエン酸回路は、細胞内にあるミトコンドリアのマトリックス部分でおこなわれます。

クエン酸回路については下記の記事で解説しています。

クエン酸回路とはなに?世界一わかりやすく解説してみた

NADH+H+は電子伝達系へと渡されて、ATPが合成されます。

後述しますが、解糖系によってできた2モルのNADH+H+は、嫌気的条件下では、乳酸をつくるために利用されます。

電子伝達系については下記の記事で解説しています。

電子伝達系とはなに?図を多用してわかりやすく解説してみた

パターン②:嫌気的条件下の場合

  • グルコース+2ADP+2リン酸 → 2乳酸+2ATP+2H2O

嫌気的条件下では、グルコースはピルビン酸に分解され(ここまでは好気的条件下と同じ)、そしてさらにピルビン酸は乳酸にまで代謝されます。

ここでのポイントは、1モルのグルコースから、2モルの乳酸と2モルのATPがつくられることです。

このピルビン酸が乳酸に分解されるときに、NADH+H+が消費されます。

ちなみに、この反応を触媒する酵素は乳酸脱水素酵素(LDH)です。また、解糖系というシステムが動くために必要なNADがNADH+H+から再生されます。

その後、解糖系でつくられた乳酸は細胞外へと出ていき、主に肝臓で糖新生の材料として利用されます。

この嫌気的条件下で解糖系が進行した場合、グルコース1molからつくられるATPの量はごくわずかです。そのため、より多くのエネルギーをつくるためには、たくさんのグルコースを代謝する必要があります。

という感じで、解糖系で最終的にできる物質は「好気的条件下」と「嫌気的条件下」によって違っているので注意してください。

解糖系に酸素は不要?

解糖系とは、わかりやすく

解糖系の反応に酸素は不要です(解糖系の反応の全体像は上記の図をご覧ください)。

解糖系そのものに酸素は不要ですが、酸素の有無によって最終生成物に違いがあります(ピルビン酸、または乳酸)。

酸素が不要な理由は、解糖系というのは大気中に酸素が増える前に生まれた反応経路だからといわれています。

解糖系でグルコース1molからつくられるATPの数はいくつ?

解糖系とは、わかりやすく

解糖系によるグルコースの分解を解糖 glycolytic という。グルコース1モルから2モルのピルビン酸 pyruvic acid あるいは乳酸 lactic acid が生じ、その過程で2モルのATPが消費され、4モルのATPが生成する。その結果2モルのATPが生じる。

引用:系統看護講座 専門基礎 生化学 人体の構造と機能② p169

好気的条件下では、解糖系によって1モルのグルコースは2モルのピルビン酸(あるいは乳酸)にまで分解されます。この結果、最終的に2個のATPがつくられています。

基本的に解糖系はグルコースから出発して様々な物質へと変化し、ATPをつくるためのシステムです。

この過程で、ATPがつくられているわけなんですが、不思議なことに逆にATPを消費している箇所もあります。しかし、最終的なATPの収支はプラスになります。

解糖系でATPを消費する反応


  • ①グルコース → ②グルコース6-リン酸
    (1個のATPを消費)
  • ③フルクトース6-リン酸 → ④フルクトース1,6-ビスリン酸
    (1個のATPを消費)

解糖系において、上の図の2種類の反応ではATPをつくるのではなく、逆にATPを消費しています。

つまり、解糖系の反応を進めるために、2個のATPが必要です。

解糖系でATPがつくられる反応


  • ⑥1,3-ビスホスホグリセリン酸 → ⑦3-ホスホグリセリン酸
    (1個のATPを生成)
  • ⑨ホスホエノールピルビン酸 → ⑩ピルビン酸
    (1個のATPを生成)

解糖系において、上の図の2種類の反応でATPがつくられています。

これらの反応は、グルコース1モルにつき、それぞれ2回ずつ起きますので、トータル4個のATPがつくられています。

解糖系でつくられるATPの数は結局いくつなのか?

最終的な結論としては、1モルのグルコースから解糖系でつくられるATPの数は2個です。

解糖系の序盤のほうの反応で2個のATPが消費されます。その後の反応で、4個のATPがつくられます。したがって、1モルのグルコースが解糖系ですべて反応を終えると、差し引き2個のATPがつくられることになります。

意外かもしれませんが、解糖系でグルコース1モルからつくられるATPの数はごくわずかです。

解糖系の材料

グルコースを分解して、ピルビン酸や乳酸を生成する代謝経路。
(中略)
グルコース以外にもフルクトース、ガラクトース、マンノースやグリセロールも解糖系に回収されて代謝される。

引用:公益社団法人 日本薬学会 「解糖系」

解糖系の一般的な材料はグルコース(ブドウ糖)です。しかし、上記のようにグルコース以外にもフルクトース、ガラクトース、マンノース、グリセロールも解糖系の材料として利用されています。

  • フルクトース
    別名「果糖」ともいい、果物に多く含まれています。化学式はC6H12O6でグルコースと同じですが構造が少し違っています。
  • ガラクトース
    牛乳などの乳製品に含まれている乳糖(ラクトース=ガラクトース+グルコース)を構成する要素です。ガラクトースの化学式はC6H12O6でグルコースと同じですが、構造が違っています。
  • マンノース
    こんにゃくや果実などに多く含まれてます。マンノースの化学式はC6H12O6でグルコースと同じですが、構造が違っています。
  • グリセロール
    中性脂肪(グリセロール+脂肪酸)の構成要素の一つです。

まとめ:解糖系とはエネルギーをつくるためのシステム

解糖系とは、グルコースなどの単糖をピルビン酸(または乳酸)へと分解し、エネルギーをつくりだすシステムのことです。

そして、解糖系の反応には好気的条件下と嫌気的条件下で、以下の2パターンがあります。

反応全体の収支は、

  • パターン①:グルコース+2NAD++2ADP+2リン酸 → 2ピルビン+2NADH+H++2ATP+2H2O
  • パターン②:グルコース+2ADP+2リン酸 → 2乳酸+2ATP+2H2O

参考:公益社団法人 日本薬学会 「解糖系」

好気的条件下(酸素が十分にある状態)の場合、グルコースは最終的にピルビン酸にまで分解されます。
(1モルのグルコースから、2モルのビルピン酸、2モルのATP、そして2モルのNADH+H+がつくられます。)

嫌気的条件下では、グルコースはピルビン酸に分解され(ここまでは好気的条件下と同じ)、そしてさらにピルビン酸は乳酸にまで分解されます。
1モルのグルコースから、2モル乳酸と2モルのATPがつくられるます。)

というわけで今回は以上です。

 

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