透析患者のhANPの基準値について

臨床工学技士のナキです。

今回は、臨床工学技士や看護師向けの、透析患者さんのDWの評価指標の一つである「hANP」について、簡単にわかりやすくまとめてみました。

透析患者のhANPの基準値について

日本透析医学会のガイドラインでは、透析後のhANPが50~100pg/mLとなるようにDWを決めるとしています。

参考:日本透析医学会「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」、2011

ただし、心房負荷・拡大を生じる心房細動や僧帽弁閉鎖不全があるとhANP濃度は高値となり、DWの絶対値のみで評価することは困難となります。

hANPは半減期が短く、除水で速やかに変化するため、透析後の採血で評価します。

hANPとは?

hANPとは、human atrial natriuretic peptideの頭文字をとったもので、日本語ではヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドといいます。

hANPはほぼ心房で産生されています。

このhANPは心房圧上昇による心房筋の進展によって分泌されるホルモンで、血液量の増加によって上昇します。ただし、Afのある透析患者さんではhANPは高値となるのでDWの評価としては利用しずらいです。

hANPの作用

hANPは、利尿、血管の拡張、レニン・アルドステロンの分泌抑制、循環血漿量の減少など、多彩な生理作用を介して、生体の体液バランスならびに血圧調整に関与しています。

具体的には、hANPは腎臓の輸入細動脈拡張と輸出細動脈収縮を起こしてGFRを増やし、その結果Na利尿をもたらします。

その他として、血管を拡張性、前負荷・後負荷を軽減し、血圧をおだやかに下げていきます。さらには、心保護作用もあります。

体液不足時と体液過剰時のhANP

hANPが25pg/mL以下では体液不足、hANPが100pg/mL以上では体液過剰とされています。

参考:血液透析(HD)患者の血中心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)値によるドライウェイト(DW)の判断基準に関する検討

hANPの注意点

hANPは体位変化の影響を受けやすいため、透析終了後に寝たまま測定します。

先述したように、心房負荷・拡大を生じる心房細動や僧帽弁閉鎖不全があるとhANP濃度は高値となり、DWの絶対値のみで評価することは困難となります。

 

以上でhANPについて簡単にまとめてみました。少しでも参考になれば幸いです。

 

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