HCV-RNA検査とは?【C型肝炎やHCV抗体検査についても解説】

HCV感染の診断フローチャート

こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。

本記事では、C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかの確定診断に使われるHCV-RNA検査とはいったいなんなのかについて、その検査の見方を解説します。併せてC型肝炎の概要についても解説します。

C型肝炎とは

C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV:hepatitis C virus)の感染によって、肝細胞が壊れていく状態のことです。

一般的に、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると約70%の症例で持続感染者となって、慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進行していきます。

なお、肝臓は特に“沈黙の臓器”とも呼ばれていて、たとえ感染があっても自覚症状がないまま病気が進むことがあるので、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染がわかれば症状がなくても定期的な検査と治療を検討する必要があります。

C型肝炎ウイルス(HCV)について

C型肝炎ウイルス(HCV)の構造は、ウイルスの遺伝子(RNA)と、これを包んでいるコア(芯)、そして、一番外側を包む外殻(エンベロープ)からなる二重構造をしています。

このC型肝炎ウイルス(HCV)は、非常に変異性の高いウイルスです。現在までに、10種類以上のグループ、30種類以上の遺伝子型に分類されています。

C型肝炎ウイルス(HCV)自体は1989年に発見されていて、それまで原因がわからかった肝炎の原因が、C型肝炎ウイルス(HCV)だと判明しました。

C型肝炎ウイルスの感染経路

C型肝炎ウイルス(HCV)は、主に血液を介して感染します。

感染経路としては、輸血、薬物常用者の注射器の打ちまわし、刺青、医療従事者での針刺し事故があります。なお、現在では輸血前のチェックによって輸血によるC型肝炎ウイルス(HCV)の感染はほとんどありません。

針刺し事故を起こしてしまったら

C型肝炎ウイルス(HCV)の血中濃度は、一般にB型肝炎ウイルス(HBV)に比べて低く、その感染力はB型肝炎ウイルス(HBV)よりもかなり低いです。しかし、現在、C型肝炎ウイルス(HCV)には感染予防としてのワクチンなどがありません。

そのため、針刺し事故後起こった場合には、即座に受傷部位の血液を絞り出すとともに、流水で十分洗浄します。

以降は、月一回の頻度で、肝機能検査とHCV抗体検査をして6カ月間経過を観察します。

C型肝炎ウイルス(HCV)にかかるとどうなる?

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると、全身倦怠感や易疲労感、食欲低下などの肝炎特有の症状が出る場合もありますが、ほとんどは無症状です。

肝臓は特に“沈黙の臓器”と呼ばれていて、たとえ感染があっても自覚症状がないまま病気が進むことがあるので、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染がわかれば症状がなくても定期的な検査と治療を検討する必要があります。

しかし、症状がないからといってC型肝炎は放置しておくと慢性肝炎から肝硬変へと進行し、いずれ肝がんへとなります。

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると、60~80%は10年経つと慢性肝炎になります。そして、慢性肝炎からさらに10年経つと、30~40%の人は肝硬変になります。肝硬変からさらに10年経つと、60~80%に人が肝細胞がんへ進行します。

C型肝炎の診断検査

C型肝炎の診断検査

  • HCV抗体検査
  • HCV-RNA検査

C型肝炎の診断において、血液検査であるHCV抗体検査とHCV-RNA検査が用いられます。

C型肝炎は自覚症状がなく、感染に気づいていない場合もあります。ですので、C型肝炎を症状だけで診断することが難しいので、必ず血液検査が必要になってきます。

肝臓は沈黙の臓器といわれているので、肝炎ウイルスに感染していても自覚症状はほとんどありません。そのため、肝がんと診断されてから初めてB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに関していたことが判明するケースも多いです。

C型肝炎の治療

C型肝炎の治療は、以前はインターフェロンという非常に副作用が強いものをおこなっていました。

しかし、インターフェロンは副作用が強いわりに治療効果も弱かったので、最近ではインターフェロンを使わない薬物治療(DAA:直接作用型抗ウイルス剤)が主流です。この薬物治療を2~3カ月おこなうと、99%の患者さんでC型肝炎ウイルスがいなくなってしまいます。

HCV抗体検査

HCV抗体検査は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によってつくられる抗体を調べる検査です。

ただし、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染が成立してからHCV抗体が陽性になるまでに、平均して2~3カ月、場合によっては9カ月かかるので注意が必要です。

HCV抗体は、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染したことにより体内で産生される抗体です。しかしHCV抗体は中和抗体ではないので、HCV抗体があるからといってウイルスを抑えているという意味にはなりません。

HCV抗体検査が陽性の場合

HCV感染の診断フローチャート

HCV抗体検査が陽性の場合

  1. 現在HCVに感染している人
    (ほとんどはHCVキャリア)
  2. 過去にHCVに感染して、治癒した後の人
    (感染既往者)

HCV抗体検査が陽性の場合、「現在HCVに感染している人(ほとんどはHCVキャリア)」と「過去にHCVに感染して、治癒した後の人(感染既往者)」のどちらかです。あるいは「偽陽性」もあります(ただし、偽陽性はほとんどありません)

HCVキャリアとは、C型肝炎ウイルス(HCV)が体の中に住み着いてしまった状態にある人のことで、HCVの持続感染者を意味しています。

このため、「現在HCVに感染している人(ほとんどはHCVキャリア)」と「過去にHCVに感染して、治癒した後の人(感染既往者)」を区別するために、血液中のHCV抗体の量(HCV抗体価)を測定することと、HCV-RNA検査をする必要があります。

なお、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した直後であるために、身体の中にHCVがいても、HCV抗体が作られる以前(HCV抗体陰性)の時期(HCV感染のウインドウ期)に検査を受ける場合もあります。

HCV抗体高力値のほとんどがウイルス血症で、HCV低力価のほとんどが既往感染ですので、HCV抗体価からウイルス血症をある程度予測できます。

HCV抗体検査が陰性の場合

HCV抗体検査が陰性の場合、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染している可能性は少ないです。

しかし、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した直後であるために、身体の中にHCVがいても、HCV抗体が作られる以前(HCV抗体陰性)の時期(HCV感染のウインドウ期)に検査を受ける場合もあります。

HCV抗体検査の測定について

  • 第一世代HCV抗体
  • 第二世代HCV抗体
  • 第三世代HCV抗体

HVC遺伝子は変異が多く、1カ所の抗原ではすべてのHCV感染者をとらえることができないため、複数の抗原を混ぜることで検出感度を高めており、現在では第一世代から第三世代までが開発されています。

当初は、第三世代は第二世代よりも検出感度が高いといわれていましたが、第二世代でも検出感度は十分だともいわれています。

ですので、HCV抗体(第二世代)とHCV(第三世代)では基本的に性能の差はありません。しかし、HCV抗体(第三世代)は抗体価によりウイルス血症の有無を予測することができます。

HCV抗体の測定原理

  • 化学発光免疫測定法(CLIA法)
  • 化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)
  • 蛍光酵素免疫測定法(FLEIA法)
  • イムノクロマトグラフィ-法(ICA法)

先ほど、HCV抗体には第一世代から第三世代まであるといいましたが、この世代間に加えてHCV抗体の測定原理にも、上記のように様々あります。

HCVキャリアとは

HCVキャリアとは、C型肝炎ウイルス(HCV)が体の中に住み着いてしまった状態にある人のことで、HCVの持続感染者を意味しています。

HCV-RNA検査とは?

HCV感染の診断フローチャート

血液検査でまず、HCV抗体検査をおこない、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によりつくられる抗体を確認します。もし、このHCV抗体検査が陽性であれば、さらにウイルスそのものがいるかどうかをHCV-RNA検査で調べます。つまり、HCV-RNA検査は血液中のC型肝炎ウイルス(HCV)を確認する検査です。

HCV-RNAとはウィルスのRNA(つまり本体)の測定なのでHCV-RNA検査で陽性であれば、現在のHCV感染を意味しています。

ただし、感染直後から陽性となるわけではなく、HCV感染してから3週間ほどしてHCV-RNA陽性となります。

HCV抗体が陽性でHCV-RNAが陰性であれば「かつてHCVに感染していた(既感染)もしくはHCV抗ウィルス療法によりウィルスが消失した状態と判断されます。

HCV-RNA検査の測定法

HCV-RNA定量検査では、感度の高いリアルタイムPCR(polymerase chain reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)法が一般的です。

このリアルタイムPCR法は、定性と定量を兼ねていること、従来の定性検査に比べてアンプリコア法に比べて感度が改善されていることが特徴です。

リアルタイムPCR法の定量域下限は、TaqMan法では1.2 LogIU/mLです。これよりも少ないウイルス量でも遺伝子増幅シグナルを認めた場合は「検出」、認めなかった場合は「検出せず」と報告されます。「検出せず」の場合、ウイルスは存在しないと判断します。

リアルタイムPCR法によるHCV-RNA検査は2007年12月より臨床現場で使用可能となっています。

HCV-RNA検査(Taq Man、リアルタイムPCR法)の基準値

  • HCV-RNA定量検査(Taq Man、リアルタイムPCR法):1.2 logIU/mL未満

HCV-RNAの定量検査で、TaqManプローブを用いたリアルタイムPCR法により測定した場合、1.2 logIU/mL未満で、HCV-RNAシグナルが「検出せず」となっていれば、HCV-RNA検査で陰性と判断されます。

リアルタイムPCR法の定量域下限は、TaqMan法では1.2 LogIU/mLです。これよりも少ないウイルス量でも遺伝子増幅シグナルを認めた場合は「検出」、認めなかった場合は「検出せず」と報告されます。「検出せず」の場合、ウイルスは存在しないと判断します。
TaqManプローブを用いたリアルタイムPCR法は、1.2~7.8 logIU/mLと、低ウイルス量・高ウイルス量ともに検出感度と定量性に優れているので、HCV-RNA検査の標準になっています。

また、上記のHCV-RNA検査において、5.0 logIU/mL以上を高ウイルス量、5.0 logIU/mL未満を低ウイルス量としています。

感染してどのくらいの期間でHCV-RNA検査でウイルスに感染したかわかるの?

C型肝炎ウイルス(HCV)はきわめて早いスピードで増殖することがわかっています。

したがって、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染してから少なくとも1~2週間後には核増幅検査(NAT)によってHCV-RNAで検出可能となります。

HCV抗体陽性でHCV-RNA陰性の場合

血中のHCV抗体が陽性で、HCV-RNAが陰性の場合、C型肝炎の治癒後であることを意味しています。

念のため腹部エコーをとり、慢性肝疾患や腫瘍がないことを確認します。異常がなければ、年に1回程度、肝機能検査やHCV-RNA検査を受けることが望ましいです。

HCV-RNAの増幅反応、拡散増幅検査ってなに?

HCV-RNA検査では、同時に増幅反応、拡散増幅検査(NAT:Nucleic acid Amplification Test)と呼ばれる検査も並行しておこないます。

これは、血液中に含まれるC型肝炎ウイルス(HCV)の量が少ないので、標的とする遺伝子の一部を試験管の中にまで1億倍にまで増やして計測する検査です。

この拡散増幅検査(NAT)によって、血液中に存在するごく微量のC型肝炎ウイルス(HCV)の遺伝子を感度よく検出できます。また、C型肝炎ウイルス(HCV)感染の初期でHCV抗体がつくられる以前の時期でも、的確に診断することができます。

例えば、HCV-RNAの定量検査で、TaqManプローブを用いたリアルタイムPCR法により測定し、1.2 logIU/mL未満で陰性であるけれど、増幅反応、拡散増幅検査(NAT)で「検出」となる場合があります。この場合、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているとみさします。

 

 

というわけで今回は以上です。

 

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