こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。
本記事では、インタクトPTH(intact PTH)とホールPTH(Whole PTH)の違いをできるだけわかりやすく解説しています。
目次
インタクトPTHとホールPTHの違い
- インタクトPTH(intact PTH)
→生理活性をもっている1-84PTHの完全分子だけでなく、そのフラグメント(断片)の7-84PTHも同時に測定 - ホールPTH(Whole PTH)
→生理活性をもっている1-84PTHの完全分子のみを測定
測定法が違うだけで、PTHはPTH、同じものを測定しているの?と思うかもですが、そもそもPTHは血中に分泌されると肝臓や腎臓などで分解され、様々な大きさフラグメント(断片)になります。
ですので、測定法によって測定対象が異なり、PTHフラグメント(断片)を含めて測定しているかどうかという違いがうまれます。
PTHについて
まず、PTH(parathyroid hormone:副甲状腺ホルモン)について簡単に解説します。
PTH(parathyroid hormone:副甲状腺ホルモン)は、副甲状腺の主細胞でおもに合成されています。
PTHの構造としては84個のアミノ酸で構成されるペプチドホルモンで、1-84PTHと表記します。
この1-84PTHが生物学的活性をもっていて、骨と腎臓に作用して生理作用を発揮します。
インタクトPTH(intact PTH)
- インタクトPTH(intact PTH)
→生理活性をもっている1-84PTHの完全分子だけでなく、そのフラグメント(断片)の7-84PTHも同時に測定 - ホールPTH(Whole PTH)
→生理活性をもっている1-84PTHの完全分子のみを測定
インタクトPTHは、第2世代の測定キットで測定されたものです。
このインタクトPTHは、生理活性をもっている1-84PTHの完全分子のみを測定し、その他のPTHフラグメントは含まない考えられていました。
しかし、後の研究によって1-84PTHのみを測定すると考えられていたインタクトPTHは、実はそのフラグメント(断片)の一つである7-84PTHも同時に測定し、副甲状腺機能を過大評価していることが明らかになりました。
これをうけて、本当に完全な1-84PTHのみを測定する第3世代の測定法が確立され、第3世代の測定キットで測定されたPTHをホールPTHと呼びます。
インタクトPTH(intact PTH)の測定法
インタクトPTHは、PTH分子のN端(13-34アミノ酸)とC端(39-84アミノ酸)を認識する2抗体を用いてサンドウィッチ法により測定します。
この方法により、しばらくの間は生理活性をもっている1-84PTHのみを測定するものとして考えられてきました。しかし、1-84PTHに加え、7-84PTHなど一部のフラグメント(断片)も同時に測定していることが明らかになり、副甲状腺機能を過大評価していることが明なかになりました。
ホールPTH(Whole PTH)
- インタクトPTH(intact PTH)
→生理活性をもっている1-84PTHの完全分子だけでなく、そのフラグメント(断片)の7-84PTHも同時に測定 - ホールPTH(Whole PTH)
→生理活性をもっている1-84PTHの完全分子のみを測定
ホールPTHは、第3世代の測定キットで測定されたものです。
ホールPTHは、インタクトPTHとは違い、生理活性をもっている1-84PTHの完全分子のみを測定できるといわれています。
ホールPTH(Whole PTH)の測定法
ホールPTHは、PTH分子のN端(1-4アミノ酸)に対する抗体を用いているため、7-84PTHとの交差反応を示さず、ほぼ1-84PTHのみが測定されます。
インタクトPTHとホールPTHの関係式
- インタクトPTH ≒ ホールPTH × 1.7
インタクトPTHとホールPTHの間には上記の式が成り立ちます。
結局、インタクトPTHとホールPTHのどちらがいいの?
PTHは84個のアミノ酸で構成されるぺプチでホルモンで、1-84PTHと表記します。
そして、生理活性をもっているのはこの1-84PTHのみです。
しかし、インタクトPTHは様々な大きさのフラグメント(断片)も測定してしまうので、生理活性をもっている完全長の1-84PTHのみを測定できるホールPTHのほうが望ましいです。
まとめ:インタクトPTHとホールPTHの違い
- インタクトPTH(intact PTH)
→生理活性をもっている1-84PTHの完全分子だけでなく、そのフラグメント(断片)の7-84PTHも同時に測定 - ホールPTH(Whole PTH)
→生理活性をもっている1-84PTHの完全分子のみを測定
インタクトPTHでは、生理活性をもっている1-84PTHだけでなく、そのフラグメント(断片)で失活している7-84PTHも測定しています。
一方のホールPTHは、生理活性をもっている1-84PTHの完全分子のみを測定しているといわれています。
これがインタクトPTHとホールPTHの違いです。
というわけで今回は以上です。
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