腎臓から出るエリスロポエチンとはなに?簡単にわかりやすく解説してみた

腎臓

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

透析室に勤務していると、エポエチンアルファやネスプ、ダルベポエチンアルファなどのESA剤を透析後に投与することは多いと思います。

そして、ESAはみなさんご存知のように貧血を改善する薬です。しかし、このESAの元になっている、体内に元々存在しているエリスロポエチン(EPO)についてはあまり考えたことはないと思います。

そこで今回は、元々体内から分泌されているエリスロポエチンとはいったいどんな物質なのか、正確かつわかりやすく解説していこうと思います。

腎臓から出るエリスロポエチンとはなに?簡単にわかりやすく解説してみた

エリスロポエチン(EPO)について簡単に

  • 主に腎臓から分泌される造血因子
  • 分子量:34,000~40,000
  • 165個のアミノ酸からなるポリペプチド基本骨格と分子量の約40%を占める糖鎖部分で構成される糖蛋白
    (ポリペプチド基本骨格部分は受容体との結合に、糖鎖部分は血中での安定化に重要)

エリスロポエチン(EPO:erythropoietin)は、主に腎臓から分泌される造血因子です。

作用としては、骨髄において赤芽球系前駆細胞に働き、その増殖や分化を促して、赤血球の造血を促進しています。

これだけでは説明が不十分だと思いますので、これからエリスロポエチン(EPO)という物質について、できるだけ簡単にわかりやすく解説していこうと思います。

エリスロポエチンの産生部位

画像引用:公益財団法人日本心臓財団,腎性貧血はどのように診断するのですか?治療についても教えてください

腎臓におけるEPO産生細胞は近位尿細管周囲間質に存在する繊維芽細胞様細胞とされ、局所の酸素分圧低下に反応してEPOを産生する。

引用:2015年版 日本透析医学会 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン

エリスロポエチン(EPO)について

  • アミノ酸で構成される糖タンパクホルモン
  • 分子量は30,400
  • ほとんどが腎臓の近位尿細管周囲の間質にある繊維芽細胞様細胞でつくられる
  • 骨髄での赤血球の造血を促進するホルモン

エリスロポエチン(EPO)はアミノ酸で構成されているタンパク質に、糖鎖が結合した糖タンパクホルモンです。

エリスロポエチン(EPO)は、主に腎臓の近位尿細管周囲の間質にある繊維芽細胞様細胞から産生されています(上の図をご覧ください)

補助的に肝臓でもエリスロポエチン(EPO)は産生されていて、全産生量の10~15%は肝臓などの腎臓以外の臓器で産生されています。

 

エリスロポエチン(EPO)の働きとしては、骨髄にある赤芽球系細胞に作用して赤血球の産生を促進しています。

血糖が上がるとインスリンが分泌されるのように、エリスロポエチン(EPO)も、貧血があると腎臓からのエリスロポエチン(EPO)の分泌が増えて、骨髄での造血が亢進して貧血が治ります。

 

エリスロポエチン(EPO)が産生されるのは、2008年にObaraらによって,尿細管細胞近傍の神経細胞様繊維芽細胞であることが証明されています2)

エリスロポエチンの産生の調節

貧血の進行や動脈血酸素分圧の低下などで単位体積当りの血中酸素容量が減少するとEPO産生が亢進する.腎における低酸素によるEPO産生の亢進機序については低酸素状態を認識するセンサー(hypoxia-inducible factor)を介する経路が実証され、新たな赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agents:ESA)療法に繋がるものと考えられ,すでに臨床治験が進行している4)

引用:[改訂第3版]透析患者の検査値の読み方,p277

エリスロポエチン(EPO)の産生を調節しているのは、酸素の需要と供給のバランスです。

具体的には、低酸素状態(高地在住や肺疾患)や貧血になって腎臓での酸素が欠乏した場合に、腎臓にあるセンサーが感知します。これが刺激となり腎臓におけるエリスロポエチン(EPO)の産生が亢進します。

一方、酸素過剰や多血症の際にはエリスロポエチン(EPO)の産生は低下します。

ですので、血液中のエリスロポエチン(EPO) の測定は体内での赤血球造血の状態を把握するうえで役に立ちます。

腎臓の細胞には、酸素センサーがあり、その情報をEPO産生細胞(REP細胞:renal EPO producing cells)に伝えます。そして、転写因子である低酸素誘導因子(HIF:hypoxia inducible factor)の安定化によって、EPO遺伝子の転写が促進され、エリスロポエチン(EPO)の産生が誘導されます。

エリスロポエチンの働き

エリスロポエチンが作用する赤血球系前駆細胞

図.赤血球の分化図

画像引用:浦部晶夫:エリスロポエチン.ライフ・サイエンス, p10, 1991

エリスロポエチン(EPO)は、赤血球系前駆細胞の増殖と分化を促進する働きがります。

赤血球の分化は上の図のとおりで、エリスロポエチン(EPO)が働く赤血球系前駆細胞は、BFU-E(前期赤芽球系前駆細胞)、CFU-E(後期赤芽球系前駆細胞)、前赤芽球です。

このなかでもCFU-E(後期赤芽球系前駆細胞)はエリスロポエチン(EPO)の感受性が高いです。

透析患者の腎性貧血に対するESA製剤とは

エリスロポエチン製剤とESAの関係

ここまでで説明したように、エリスロポエチン(EPO)とは、主に腎臓でつくられる赤血球産生を促進する造血因子です。

そして、エリスロポエチン(エポエチンアルファ、エポエチンベータ)とその関連物質(ダルベポエチンアルファ、エポエチンベータペゴルなど)を総称して、ESA(赤血球造血刺激因子製剤)と呼びます。

エリスロポエチン(EPO)は分子量34,000~40,000、165個のアミノ酸からなる糖蛋白です。作用としては、骨髄における赤芽球系造血前駆細胞の分化・増殖を刺激するとともに、アポトーシスを抑制することによって赤血球の産生量を調節する造血因子です。
腎機能が正常であれば、貧血などによって組織が低酸素に陥ると、腎臓のエリスロポエチン産生細胞がこれを感知し、 エリスロポエチンの産生が増えます。しかし腎性貧血では、貧血の程度に比べて十分なエリスロポエチンが産生されません。

1985年に、エリスロポエチン(EPO)遺伝子がクローニングされ、エリスロポエチン製剤(rHuEPO製剤:recombinant human erythropoietin)が生産可能になりました。そして、世界各地で腎性貧血の治療に使われました。

遺伝子のクローニングとは、遺伝子のコピーをつくる工程のことです。

このときにつくられたエリスロポエチン製剤は、遺伝子工学によってエポエチンアルファとエポエチンベータの2種類がつくられています。

その後、エポエチンアルファに糖鎖を2本付け加えたダルベポエチンアルファや、エポエチンベータにポリエチレングリコールを付け加えたエポエチンベータペゴルが開発されました。これらによって半減期が長くなりました。ですので、現在日本で臨床使用されているエリスロポエチン製剤は、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、ダルベポエチンアルファ、エポエチンベータペゴルの4種類です。

まとめますと、エリスロポエチン(エポエチンアルファ、エポエチンベータ)とその関連物質(ダルベポエチンアルファ、エポエチンベータペゴルなど)を総称して、ESA(赤血球造血刺激因子製剤)と呼びます。

エポエチンアルファとエポエチンベータは、人間の体内で産生されるエリスロポエチンと同じ構造です(ただし、糖鎖は若干異なります)。ESAは、エリスロポエチンレセプターに作用し、赤血球造血刺激をおこなうものの総称です。

 

というわけで今回は以上です。エリスロポエチンとはいったいなんなのか、知っていただけたなら幸いです。

 

腎臓が悪くなった結果起こる腎性貧血については、その定義を下記の記事でまとめていますので、興味のある人は併せてご覧ください。

腎性貧血とは?看護師などの医療従事者向けに詳しく解説します

 

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