APTTとは?基準値をわかりやすく解説

こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。

本記事では、新人の看護師やコメディカルに向けて、凝固系の検査の一つであるAPTT(活性化部分トロンポプラスチン時間)とはいったいなんなのかについて、わかりやすく解説しています。

APTTとは?その意味をわかりやすく解説します

内因系凝固因子のXIII、ΧΙI、ΧΙ、Χ、ΙΧ、VIII、V、IIおよびI因子が関与している。これらの血中濃度が減少するとAPTTは延長する。

引用:本田孝之,検査値を読むトレーニング ルーチン検査でここまでわかる,医学書院

APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は、血液の凝固能を調べる検査で、とくに内因系凝固過程の活性を調べることができます。

外因系凝固と内因系凝固

  1. 外因系凝固
    (組織因子による凝固)
  2. 内因系凝固
    (異物による凝固)

血液が凝固する反応には、上記の2つの経路があります。

両方とも最終的にフィブリンがつくられることに変わりありませんが、その経路には2経路あるということです。

具体的には、外因系では組織因子が血管内に入ることにより活性化します。例えば外傷などで出血した際に、血液が凝固する機序です。

組織因子を産生する細胞はいろいろありますが、有名なものは血管内皮細胞や、単球/マクロファージがあります。例えば、外傷などによって組織から組織因子が産生され、これが血液中に侵入することで外因系の凝固が活性化されます。

一方の内因系は、血液が血管内皮細胞以外の異物や血管内皮細胞の下側のコラーゲン(血管壁の損傷によってコラーゲンがむき出しとなります)と接触することで活性化します。

このうち、APTTは内因系凝固の活性を調べる検査です。

  • APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)
    →内因系凝固過程の活性を調べる検査
  • PT(プロトロンビン時間)
    →外因系凝固過程の活性を調べる検査

PTの基準値などについては、下記の記事で解説しています。

PTとは?基準値をわかりやすく解説

APTTが延長するということは・・・

APTTが延長するということは、内因系の凝固因子の消費亢進であったり、肝臓による抗凝固因子の産生低下、あるいはヘパリンなどの抗凝固薬の使用が考えられます。

APTTの基準値

APTTの基準値は23.0~38.0秒です。

参考:本田孝之,検査値を読むトレーニング ルーチン検査でここまでわかる,医学書院

血漿に検査試薬を加えてから固まるまでの時間を測定しています。

APTTの異常値

APTTが異常だと判断されるのは、ほぼ延長時のみです。

APTTが延長する原因

APTTが延長するのは、内因系凝固因子のXIII、ΧΙI、ΧΙ、Χ、ΙΧ、VIII、V、IIおよびI因子が先天性、もしくは後天性に欠乏しているときです。

内因系凝固因子が欠乏する原因は大きく3つにわけることができます。

  1. 凝固亢進による内因系凝固因子の消費
    例:DIC、血栓症、敗血症、血管炎症候群、SIRS、手術など
  2. 肝臓での内因系凝固因子の産生低下
    例:重症の肝機能障害(肝硬変など)による蛋白合成低下、ビタミンK欠乏症(抗菌薬によって腸内細菌が乱されるとビタミンK産生が低下します)、血友病
  3. 抗凝固薬使用
    例:ヘパリン、ループスアンチコアグラント、ワーファリン

APTTが短縮する原因

APTTが問題になるのは高くなる時です。臨床的に、APTTが短くなって問題になることはあまりありません。

一部、妊娠や加齢によって低値になることはあります。

どんなときにAPTTを調べるのか

基本的に、ルーチンの採血でAPTTを含む凝固系の検査をする必要はありません。

では、どのようなときに凝固系の採血が必要なのか、簡単に紹介したいと思います。

  1. 原因不明の出血があるとき
  2. DICや敗血症が疑われるとき
  3. 肝疾患が疑われるとき
    (多くの凝固因子は肝臓でつくられます)
  4. 肺血栓塞栓症、深部静脈血栓症が疑われるとき
    (診断にAPTTは不要ですが、抗凝固療法のベースラインとして必要なので)
  5. 手術前のスクリーニング検査
  6. ヘパリン治療時におけるコントロールの指標として

ヘパリン量のコントロール

APTTは、抗凝固療法のヘパリン投与決定量の指標として用いられます。

ヘパリンコントロール時のAPTT値は基準値の約1.5~2.5倍延長になるよう調節していきます。

APTTはヘパリンの調整をする際に検査されます。

 

というわけで今回は以上です。

 

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