脂肪酸のβ酸化の流れ一つずつ解説【パルミチン酸のβ酸化によるATP産生量も紹介します】

こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。

本記事では、脂肪酸を分解する反応であるβ酸化について、その反応の流れを一つずつ解説します。併せて、脂肪酸の一種であるパルミチン酸を例に、パルミチン酸のβ酸化によってどれくらいのATPが産生されるのかを紹介します。

そもそもβ酸化ってなに?という方は下記の記事で詳しく解説しているので、本記事を読む前にご覧いただくと、より理解がしやすいと思います。

パルミチン酸のβ酸化【ベータ酸化】β酸化とは何?簡単にわかりやすく解説してみた

β酸化の流れを一つずつ解説【反応は全部で4つ】


β酸化の反応

  • 反応①:脱水素(酸化還元反応)
  • 反応②:水分子の付加(除去付加反応)
  • 反応③:脱水素(酸化還元反応)
  • 反応④:炭素間の切断(転移反応)

上記の4つの反応をまとめてβ酸化といいます。

それでは順を追って一つずつ説明していきます。

反応①:脱水素(酸化還元反応)

1つ目の反応は脱水素反応です。

α炭素とβ炭素からそれぞれ水素が除去されるので、合計2個の水素が除去されます。

水素を持ち去っていく化合物は、電子伝達体のFADです。

  • FAD + 2H → FADH2

※ FADは2個の水素を運ぶことができます。

電子伝達体については、わかりやすく下記の記事で解説しています。

NADとFAD【NADとは?FADとは?】電子伝達体の役割についてわかりやすく解説してみた    

反応②:水分子の付加(除去付加反応)

β酸化の除去付加反応

2つ目の反応は水分子を付加する反応です。

α炭素に水素(H)β炭素にヒドロキシ基(OH)が付加されます。

反応③:脱水素(酸化還元反応)

3つ目の反応は脱水素反応です。

β炭素の水素が2個除去されます。

ここで水素を取り去っていく化合物はFADではなく、同じく電子伝達体のNAD+です。

  • NAD+ + 2H → NADH + H+

※ NAD+は2個の水素を運ぶことができます。

反応④:炭素間の切断(転移反応)

4つ目の反応は、α炭素とβ炭素の結合を切断です。

この反応によってアセチルCoAが分離し、β炭素のあるアセチル基に新たなSCoA(補酵素A)が転移してきます。
そして、炭素数が2個減ったアシルCoAが誕生します。

β酸化のまとめ(反応①~④)

β酸化(反応①~④)

  • アシルCoA
    → アセチルCoA + 炭素数が2個減ったアシルCoA

ここまでの反応①~④までがワンセットでβ酸化です。

このβ酸化によってアシルCoAは、アセチルCoAと炭素数が2個減ったアシルCoAになります。

そして、炭素数が2個減ったアシルCoAは、再びβ酸化をうけて、1個のアセチルCoAを生成する、という反応を繰り返します。

最終的には脂肪酸は炭素数に応じた回数分のβ酸化をうけ、アセチルCoAが次々とつくられます。

※ 炭素数が4個にまで減ったアセトアセチルCoAだけは、それまでとは違う酵素によって、2個のアセチルCoAに分断されます。

脂肪酸のβ酸化によるATP産生量【パルミチン酸を例に解説】

脂肪酸の一種である炭素数が16個のパルミチン酸を例に、β酸化によるATP産生量を紹介します。

なお、パルミチン酸のままだとβ酸化をうけることができないため、ATPのエネルギーを使いつつ脂肪酸に補酵素AがつけられてアシルCoAとなります(上の図を参照ください)

パルミチン酸のβ酸化

炭素数16個のパルミチン酸が1回のβ酸化の過程で以下の生成物がつくられます。

パルミチン酸が1回だけβ酸化されたときに生じる生成物

  • FADH2が1個
  • NADH+H+が1個
  • アシルCoAが1個
  • アセチルCoAが1個

炭素数が16個のパルミチン酸の場合、β酸化のサイクルが7回繰り返されるので、トータルで以下の生成物がつくられます。

パルミチン酸が7回、β酸化されたときに生じるトータルの生成物

  • FADH2が7個
  • NADH+H+が7個
  • アセチルCoAが8個

生成されたFADH2とNADH+H+は、電子伝達系に運ばれてATP産生に利用されます。

アセチルCoAは、クエン酸回路に運ばれてATP産生に利用されます。

電子伝達系でのFADH2とNADH+H+の代謝によるATP産生

  • 1個のFADH2からつくられるATP産生量は1.5個です。
  • 1個のNADH+H+からつくられるATP産生量は2.5個です。

脂肪酸のβ酸化によって生成したFADH2とNADH+H+は、電子伝達系に運ばれてATP産生に利用されます。

なお、電子伝達系でつくられるATP産生量は上記に示したとおりです。

パルミチン酸のβ酸化によって、FADH2とNADH+H+がそれぞれ7個ずつつくられるので、トータルでつくられるATP産生量は28個となります。

パルミチン酸のβ酸化由来のFADH2とNADH+H+から作られるATP産生の総量

  • 1.5×7 + 2.5×7
    =10.5 + 17.5
    = 28個のATP産生

クエン酸回路でのアセチルCoAの代謝によるATP産生

  • 1個のアセチルCoAからつくられるATP産生量は9.75個です。

※ 書籍によって、1個のアセチルCoAからつくられるATPの量が10個となっている場合もあります。

脂肪酸のβ酸化によって生成したアセチルCoAは、クエン酸回路→電子伝達系の順番に代謝されてATP産生に利用されます。

1個のアセチルCoAからつくられるATP産生量は上記に示したとおりです。

パルミチン酸の場合、β酸化によって8個のアセチルCoAがつくられるため、トータルでつくられるATPの量は78個となります。

パルミチン酸のβ酸化由来のアセチルCoAから作られるATP産生の総量

  • 9.75×8
    =78個のATP産生

まとめ:パルミチン酸のβ酸化によってつくられるATP産生の総量

パルミチン酸を完全にβ酸化した場合につくられるATP産生の総量

  • FADH2とNADH+H+から作られるATP産生の総量:28個
  • アセチルCoAから作られるATP産生の総量:78個

 まとめますと、パルミチン酸を完全にβ酸化した場合につくられるATP産生の総量は28+78=106個となります。

ただし、パルミチン酸の活性化のため(アシルCoAにするため)にはATPが必要で、実質2個のATPが消費されます。

したがって、正味のATPの産生量は104個となります。

 

というわけで今回は以上です。

そもそもβ酸化とはそもそも何か知りたい方は下記の詳しく解説しているので、よかったら併せてご覧ください。

パルミチン酸のβ酸化【ベータ酸化】β酸化とは何?簡単にわかりやすく解説してみた

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