デンプン・砂糖・乳糖などの糖質の『消化→吸収→代謝』の仕組みと過程を解説

砂糖と乳糖の消化

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

私たちは一般的に1日に250~800gの糖質を摂取しています。そしてその内訳は、デンプン(多糖):60%、砂糖(二糖):30%、乳糖(二糖):10%です。

ようするに、食べ物の中に含まれる炭水化物(≒糖質)は、主にデンプン、スクロース(砂糖)、ラクトース(乳糖)です。

食べ物に含まれる糖質の内訳(一般的に)

  1. デンプン:60%
  2. スクロース(砂糖=グルコース+フルクトース):30%
  3. ラクトース(乳糖=グルコース+ガラクトース):10%

しかし、糖質が吸収されるためには『単糖(例えばグルコース)』にまで消化される必要があります。

私たちの身体は腸で主に栄養素を吸収していますが、単糖(グルコースやフルクトースなど)の状態でないと吸収することができません。デンプンは当然そのままでは吸収できませんが、砂糖や乳糖のような二糖では腸で吸収することができません。

そこで、本記事では「デンプン」「砂糖」「乳糖」を食べた後の『消化』の過程を解説し、あわせて『吸収』と『代謝』の過程を解説します。

デンプン・砂糖・乳糖などの糖質の『消化→吸収→代謝』の仕組み・過程

食べ物に含まれる糖質の内訳(一般的に)

  1. デンプン:60%
  2. スクロース(砂糖=グルコース+フルクトース):30%
  3. ラクトース(乳糖=グルコース+ガラクトース):10%

私たちは一般的に1日に250~800gの糖質を摂取しています。そしてその内訳は、デンプン(多糖):60%、砂糖(二糖):30%、乳糖(二糖):10%です。

ですので、本記事ではデンプン、スクロース(砂糖)、ラクトース(乳糖)の消化・吸収・代謝の過程を解説します。

なお、糖質が体内へ吸収されるためには『単糖(例えばグルコース)』にまで消化される必要があります。ですので、食べ物に含まれる糖質が『どこで消化され』『どの酵素によって分解されるのか』がポイントとなります。

結論をいえば、糖質が消化されるのは主に口腔内と小腸(十二指腸、小腸粘膜上皮細胞)で、吸収されていくのは小腸です。

炭水化物(食物繊維+糖質)ってなんだっけ?という方は下記の記事でわかりやすく解説しています。興味のある方は是非ご覧ください。

炭水化物とは?【糖質と食物繊維の違い・種類を解説】

というわけで、本記事ではこれらの糖質を以下の3つに分けて順を追って説明していきます。

  1. 消化
  2. 吸収
  3. 代謝

糖質について簡単に補足

糖質には、グルコース、ガラクトース、フルクトースなどの単糖があります。

グルコース・ガラクトース・フルクトースのの化学式はすべてC6H12O6で同じなんですが、構造が異なっています。ちなみに、単糖のなかでもっとも甘いのはフルクトースです。

これら単糖を基本的な構造として、結合した単糖の数によって、二糖、オリゴ糖、多糖にわけられます。

私たちがよく聞くことのあるデンプンは多糖の一つで、グルコースのみで構成されています。

なお、食事中の糖質は、多くはデンプンとして摂取しています。

糖質の消化がおこなわれる場所

デンプンなどの糖質の消化酵素と消化産物

糖質の消化がおこなわている部位

  1. 口腔内
    (消化酵素:唾液アミラーゼ)
  2. 十二指腸
    (消化酵素:膵アミラーゼ)
  3. 小腸粘膜上皮細胞
    (消化酵素:マルターゼ、スクラーゼ、ラクターゼなど)

糖質の消化がおこなわれる部位は主に「口腔内」「十二指腸」「小腸粘膜上皮細胞」です。

上の表にある十二指腸と空腸というのがありますが、両方とも小腸の一部分です。

消化管の解剖がわからないという方は下記の記事をご覧ください。

【簡単】消化管とはなに?【解剖・構造・役割を解説】

デンプンの消化の仕組み・過程

デンプンの構造

まず、デンプンの消化の仕組み・過程を説明します。

なお、デンプンはグルコース(ぶどう糖)のみが沢山つながっています(イメージ的には下の図のような感じです)

でんぷんの簡単な構造

デンプンはその構造によってアミロースとアミロペクチンに分けられます。アミロースとアミロペクチンはそれぞれグルコースがたくさん結合したもので、デンプンの中にはこれら両方が存在しています。
お米などに含まれるデンプンは、グルコースがα-1,4グリコシド結合したアミロース部分と、α-1,6グリコシド結合したアミロペクチン部分で構成されています。

口腔内でのデンプンの消化の仕組み・過程【唾液アミラーゼ】

口腔内でのデンプンの消化によってできる物質

  1. α-限界デキストリン
    (多糖)
  2. マルトトリオース
    (三糖、グルコース×3)
  3. マルトース
    (二糖、グルコース×2)

まず最初に、口腔内に分泌される『唾液アミラーゼ』によってデンプンは消化されます。

デンプンには、1-4α結合が主体のアミロースと、1-6α結合によって枝分かれしたアミロペクチンが存在します。唾液アミラーゼは、1-4α結合のみを切断します。

したがって、唾液アミラーゼによってデンプンを構成しているグルコース同士の結合の「1-4α結合」部分がランダムに切断されます。

その結果、口腔内ではデンプンの消化産物「α-限界デキストリン」「マルトトリオース(グルコースが3個結合したもの)」「マルトース(グルコースが2個結合したもの)がつくられます。

デキストリンとは、デンプンを化学的あるいは酵素的に低分子化したものの総称です。
とくに、アミラーゼによってデンプンのα1→4結合のみが切断され、α1→6結合が切断されずに残っているものを、α-限界デキストリンといいます。

最小単位ではマルトースまで消化されますが、実際にはそこまでしっかりと口の中で消化が行われることはなく、数個~数十個のグルコースがくっついたデキストリンあたりにまで消化されます。

実際、口の中で完全に消化されるまで徹底的にかみ続けることはなく、ある程度分解されたデンプンは、胃へと運ばれていきます。

α-アミラーゼである唾液アミラーゼによるデンプンの消化過程・仕組みは下記の記事で詳しく解説しています。

でんぷんとαアミラーゼの酵素反応【酵素反応】α-アミラーゼによるでんぷんの加水分解をわかりやすく解説 

胃でのデンプンの消化

次に、口腔内で消化されたデンプンはそのまま胃に入ります。

しかし、胃の中にデンプンを消化する酵素はありません。

胃には糖質を消化する酵素はありません。胃にある消化酵素はタンパク質と脂肪の消化酵素のみです。

胃の中では強酸性の状況下で唾液アミラーゼは失活し、デンプンの消化活動は停止します。

十二指腸でのデンプンの消化の仕組み・過程【膵アミラーゼ】

  • 膵アミラーゼによって、大量のマルトースに消化される

十二指腸では、膵液に含まれる膵アミラーゼによって、大量のマルトース(グルコースが2個結合したもの)がつくられます。

なお、デンプンが本格的に消化されるのがここ、十二指腸です。

マルトースとは、グルコース2個が結合したもののことです。

小腸粘膜上皮細胞でのデンプンの消化の仕組み・過程

  • 二糖のマルトースは、イソマルターゼやマルターゼによって、グルコースにまで消化される

小腸粘膜上皮細胞の細胞膜上には、二糖類分解酵素(イソマルターゼやマルターゼ)があります。

デンプンの消化によってできたマルトース(グルコースが2個結合したもの)は、最終的に小腸粘膜上皮細胞の細胞膜にある酵素(イソマルターゼやマルターゼ)によって、単糖のグルコースにまで分解されます。

スクロース(砂糖)とラクトース(乳糖)の消化の仕組み・過程

砂糖と乳糖の消化

次に、スクロース(砂糖)とラクトース(乳糖)の消化の仕組み・過程を解説します。

二糖のスクロース(砂糖)やラクトース(乳糖)は唾液中や膵液中にふくまれるアミラーゼでは消化されず、そのままのかたちで小腸まで到達します。

そして、小腸粘膜上皮細胞の細胞膜にある以下の酵素によって分解されます。

  • スクラーゼ(消化酵素)
    →砂糖(スクロース)を、グルコースとフルクトースに消化します。
  • ラクターゼ(消化酵素)
    →乳糖(ラクトース)を、グルコースとガラクトースに消化します。

デンプン・スクロース・ラクトースの吸収の仕組み・過程

  • デンプン
    →(消化されて)→グルコース
  • 砂糖(スクロース)
    →(消化されて)→フルクトース、グルコース
  • 乳糖(ラクトース)
    →(消化されて)→ガラクトース、グルコース

デンプンは最終的にグルコースにまで消化され、小腸の小腸上皮細胞膜から吸収されます。

二糖のスクロースとラクトースは、単糖のグルコース、フルクトース、ガラクトースにまで消化され、小腸の小腸上皮細胞膜から吸収されます。

吸収された糖質の代謝の仕組み・過程

小腸で吸収された単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース)は、門脈をへて肝臓に運ばれます。

グルコースの代謝の過程・仕組み

  1. 全身の細胞での代謝
    1. 全身の細胞のエネルギー源として利用される
    2. 主に脂肪組織で中性脂肪に変換され、貯蔵される
    3. 主に筋肉組織でグリコーゲンに変換され、貯蔵される
    4. 核酸の材料として利用される
  2. 肝臓での代謝
    1. 肝臓のエネルギー源として利用される
    2. グリコーゲンに変換され、貯蔵される
    3. 中性脂肪に変換され、貯蔵される

小腸から吸収されたグルコースは肝臓に運ばれ、一部は肝静脈を経て全身に供給され全身で利用されます。

基本的にグルコースは全身の細胞の重要なエネルギー源です。

ですので、血液中のグルコースはインスリンによって脳や内臓、筋肉などの細胞内に取り込まれ消費されます。

細胞内に取り込まれたグルコースは、解糖系・クエン酸回路・電子伝達系で代謝されてエネルギー物質であるATPの合成に利用されますが、その過程は下記の記事で解説しています。

解糖系とは、わかりやすく解糖系とはなに?わかりやすく簡単に解説してみた

補足:インスリンの作用

膵臓のβ細胞内にグルコースが入ると、この刺激によりインスリンが血中に分泌されます。

インスリンの主な役割は、①グルコースの細胞内への取り込みを促進、②グリコーゲン(主に筋組織と肝臓)や③中性脂肪合成(主に脂肪組織と肝臓)の促進です。

インスリンが細胞膜上の受容体に結合すると、GLUT4(Glucose transporter type-4)が細胞膜上に出現します。
このGLUT4を介して、細胞内へグルコースが取り込まれます。
とくに、筋組織や脂肪組織にGLUT4は多く存在しています。

細胞内に取り込まれたグルコースは、エネルギー生産システムである解糖系やクエン産回路で代謝され、ATPがつくられます。

エネルギーとして消費しきれなかった分は、インスリンの働きによって肝臓や筋肉でグリコーゲンに変えられたり、脂肪組織に中性脂肪として蓄積されます。

このようにグルコースはエネルギーとして消費されたり、中性脂肪として蓄積されるため、上昇した血糖値は徐々に空腹状態の値まで低下していきます。

フルクトースの代謝の過程・仕組み

フルクトースの代謝

  1. 解糖系へ進みエネルギーとして利用される
  2. グリコーゲンに変換される
  3. 中性脂肪に変換される
  4. 糖新生へ進みグルコースに変換される

通説では、小腸から吸収されたフルクトースは門脈をへて肝臓に運ばれ、ほとんどは肝臓で代謝を受けるといわれています。

肝臓を素通りして全身に供給されるフルクトースはごく少量です。
(実際、果物を食べても、血中のフルクトース濃度はほとんど上がりません)

そして、フルクトースの代謝経路には主に上記の4つがあります。

一説には一定の量のフルクトースであれば、ほぼ全てが小腸で代謝され、肝臓では代謝されないとの見解もあります。
このように、フルクトースが体内に吸収されてからの、正確な代謝の詳細については、はっきりとしたことはまだわかっていません。

ガラクトースの代謝の仕組み・過程

ガラクトースの代謝の過程・仕組み

ガラクトースの代謝酵素

    • ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ
    • ガラクトキナーゼ
    • UDP-ガラクトース-4-エピメラーゼ

小腸から吸収されたガラクトースは門脈をへて肝臓に運ばれます。

肝臓へと運ばれたガラクトースは、以下の酵素の働きを段階的に受けて、グルコースに変換され、最終的にエネルギーとして利用されます。

正常では、ガラクトースは肝臓でほとんどが代謝されるので、肝臓を通ったあとの血液中にガラクトースはほとんど含まれません。

 

というわけで今回は以上です。

食べ物の中に含まれる炭水化物(糖質)のほとんどを占める①デンプン②スクロース③ラクトースの消化・吸収・代謝の過程と仕組みを解説しました。

 

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