こんにちは、臨床工学技士の秋元です。
透析液の電解質濃度、例えばカリウムやナトリウムの値は気にしていると思いますが、透析液のpHの基準値についてはあまり気にしていない人も多いともいます。
そもそも透析液のpHに基準値なんてあるの?なんて思う方もいるかと思いますが、本記事ではこの疑問に答えたいと思います。
目次
透析液のpHの基準値:7.2~7.4
使用前に透析液の電解質濃度を測定し、それらが適正であることを確認すること。また、透析液のpHは希釈する水などの影響で若干の変動があり得るので、使用前pH7.2~7.4の範囲にあることを確認すること。
透析液のpHは透析用希釈用水等の影響で若干の変動があり得るので、pH7.2~7.4の範囲内にあることを確認すること。
引用:キンダリー透析剤AF2号
Dドライ透析剤2.75Sとキンダリー透析剤AF2号を参考にすると、透析液のpHの基準範囲はpH7.2~7.4のようです。
その他の透析液(カーボスター透析剤L/M/P、キドライム透析剤T-30、リンパック透析剤TA1)の添付文書を確認しても、いずれもpHは7.2~7.4であることを確認するようにと書かれてあります。
- 透析液のpHの基準値:7.2~7.4
pHの基準値
- 血清のpHの基準値:7.40±0.05
pHとは、酸性なのかアルカリ性なのかを示す尺度で、生体内の血清のpH7.40±0.05の範囲で弱アルカリ性に維持されています。
アシドーシスとアルカローシス
人間の血清のpHは7.40±0.05程度に維持されています。
このpHが低くなればアシドーシス、pHが高くなればアルカローシスです。
血液のpHを決めるもの
- 二酸化炭素濃度
- 重炭酸イオン濃度(HCO3–)
血液中のpHを決定するのは「二酸化炭素濃度」と「重炭酸イオン濃度(HCO3–)」です。
二酸化炭素濃度が増えればpHは低下しますし、重炭酸イオン濃度(HCO3–)が増えればpHは上昇します。
透析患者さんでは、腎臓のはたらきが低下しているので、血液の中の重炭酸イオン濃度(HCO3–)が減少してしまっています。
つまり、透析患者さんの血液は酸性に傾いているのです。
これを「代謝性アシドーシス」といいます。
血液透析では重炭酸イオン(HCO3–)を補って、この「代謝性アシドーシス」を補正しています。
透析患者さんのpHとHCO3–の基準値
- 透析患者さんの血清のpHの基準値:なし
- 透析患者さんの透析前の血清のHCO3–の基準値:20~25mEq/L
腎臓では、不揮発性酸(硫酸や塩酸など)の排泄と重炭酸イオン(HCO3–)の再吸収によって、pHを調節しています。
しかし、透析患者さんでは腎臓による不揮発性酸(硫酸や塩酸など)の排泄の低下と重炭酸イオン(HCO3–)の再吸収が低下します。そのため、透析患者さんでは腎不全に伴う代謝性アシドーシスとなります。
血液透析をおこなうことで、透析液に含まれるHCO3–が体内に入っていき、透析患者さんのアシドーシスは補正されます。そして透析後、次の透析前までのHCO3–は徐々に低下していきます。
透析患者さんのの透析前の血清のHCO3–の基準値は20~25mEq/Lであり、HCO3–の透析前の値が19mEq/L以下の場合、代謝性アシドーシス側に傾いていると判断することができます。
動静脈が混ざったシャント血でもpHは参考になるの?
血液の酸塩基平衡を評価する場合は、動脈血で静脈血でもどちらでもかまいません。
血ガスで、代謝性アシドーシスや呼吸性アシドーシスを評価すると思いますが、これらの判断基準は以下の3項目です。
- pH
- PCO2
- HCO3–
これら3つの値は、動脈血液と静脈血液の間での相関関係は0.9以上、つまりほとんど同じということです。
ですので、血液の酸塩基平衡を評価するのであればシャント血でも問題ありません。
まとめ:透析液のpHの基準値は7.2~7.4
- 透析液のpHの基準値:7.2~7.4
Dドライ透析剤2.75Sとキンダリー透析剤AF2号を参考にすると、透析液のpHの基準範囲はpH7.2~7.4です。
その他の透析液(カーボスター透析剤L/M/P、キドライム透析剤T-30、リンパック透析剤TA1)の添付文書を確認しても、いずれもpHは7.2~7.4であることを確認するようにと書かれてあります。
ですので、透析液のpHの基準値は7.2~7.4です。
実際に測定してみるとpHは7.3前後であることが多いです。
というわけで今回は以上です。透析液の電解質濃度については下記の記事で解説していますので併せてご覧ください。
透析液の組成(濃度)と、その値の理由を詳しく解説します
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