透析膜のセルローストリアセテート(CTA)について解説

セルローストリアセテート(CTA)の構造

こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。

今回は、透析膜の中でも比較的よく使われているセルローストリアセテート(CTA)について、いったいどんな膜素材なのか、その特徴などについて解説していきたいと思います。

透析膜のセルローストリアセテート(CTA)について

セルロース系 CTA
(セルローストリアセテート)
合成高分子系 PS
(ポリスルホン)
PES
(ポリエーテルスルホン)
PMMA
(ポリメチルメタクリレート)
EVAL
(エチレンビニルアルコール共重合体)
PAN
(ポリアクリルニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウム共重合体)
PAES
(ポリアリルエーテルスルフォン)
PEPA
(ポリエステル系ポリマーアロイ)

血液透析で使用する透析膜の種類を上の表にまとめました。構成する材質の違いから、透析膜はセルロース系と合成高分子系膜に大きく2つに分けられます。

なお、2020年現在、日本で流通しているものとしては、CTA、PS、PES、PMMA、PAN、PAES、PEPAです。EVALは日本では流通していません。

「わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在)」によると、HD患者さんではPS を使用している患者が 56.5 %、次いでPESが16.4%、CTAが15.6%、PMMA4.1%、PEPA 3.1%となっています。HDF患者さんではPSが43.5%とHD患者同様にもっとも多く使用されていて、PES が 36.3 %、CTAは14.3%、PEPA 4.6 %でした。

セルロース系の透析膜

セルローストリアセテート(CTA)の構造

画像引用:富沢成美,山下明泰:連載 透析工学の基礎,臨牀透析 2015 Vol.31 No.1

セルロース系の透析膜の種類

  1. 再生セルロース(RC)
  2. 表面改質セルロース(MRC)
  3. セルローストリアセテート(CTA)

セルロース系の膜では、再生セルロース(RC)、表面改質セルロース(MRC)、セルロースアセテート(CTA)がありますが、セルロース系ではセルローストリアセテート(CTA)が国内では使われています。

1990年代までは、植物繊維を原材料とするセルロース系膜が主に使われていました。

セルロース系膜は、薄膜化が可能で、また機械的に安定していたので、透析の黎明期から利用されてきた膜です。

現在では、生体適合性と中分子除去能に優れた合成高分子系膜が主流で、80%以上の透析で合成高分子系膜が使われています。

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セルローストリアセテート(CTA)とは

 

画像引用:富沢成美,山下明泰:連載 透析工学の基礎,臨牀透析 2015 Vol.31 No.1

再生セルロース(RC)の化学構造式を上に示します。

再生セルロース膜では、再生セルロース(RC)の構造をみていただくとわかりますが、水酸基(-OH)があります。この水酸基(-OH)の部分が補体を活性化させてしまうとわかっています。

再生セルロース(RC)は、生体適合性の面では補体の活性化作用が強く、白血球減少の作用もあります。実際に、再生セルロース(RC)を使って透析をすると、透析開始直後に血液中の白血球が減少します。これは、白血球表面の接着分子表出が、補体の活性化によって増加し、血管床に接着してしまうためです。ですので、現在では再生セルロース(RC)の透析膜は製造されていません。

結論をいうと、この水酸基(-OH)をアセチル基(-COCH3にすべて置換したものがセルローストリアセテート(CTA)です。

もう少し具体的に解説します。

再生セルロースの生体適合性を改善したものがセルローストリアセテート(CTA)

セルローストリアセテートの構造

画像引用:富沢成美,山下明泰:連載 透析工学の基礎,臨牀透析 2015 Vol.31 No.1

セルロース((C6H10O5)n,N≒5×103~6×103の水酸基(-OH)を、アセチル基(-COCH3に置換したものが、セルロースアセテート(CTA)です。

セルロースアセテート(CTA)は、セルロースに酢酸を反応させて、水酸基をアセチル化したもので、1922年に工業化されました。

アセチル基の数が1つ、2つ、3つと増えるにつれ、セルロース(モノ)アセテート、セルロースジアセテート(CDA)、セルローストリアセテート(CTA)と呼びます。

  1. セルロース(モノ)アセテート
    →アセチル基の数が1つ
  2. セルロースジアセテート(CDA)
    →アセチル基の数が2つ
  3. セルローストリアセテート(CTA)
    →アセチル基の数が3つ

アセチル基が増えるにつれて疎水性は高まります。しかし、膜が膨潤しにくくなるので、薄膜化が可能となり湿潤時の膜厚を薄く保つことができるので、透水性は上がります。

膨潤とは、物体が水を吸収してその体積が増加する現象のことです。

まとめると、セルローストリアセテート(CTA)は、セルロースの水酸基(-OH)をすべてアセチル基(-COCH3で置換したものです。これにより、補体の活性化をはじめとした生体適合性を改善することができています。

化学構造のベンゼン環上に存在する水酸基(-OH)が補体を活性化する可能性があるため、これをアセチル基(-COCH3に置換して生体適合性を向上させています。

現在では、セルローストリアセテート(CTA)が主に医療用では使われています。

透析膜のセルローストリアセテート(CTA)の特徴

透析膜のセルローストリアセテート(CTA)の特徴

  1. 補体の活性化が少ない
  2. 膜強度が強く、薄膜化が可能
  3. 均質構造
  4. PVPやビスフェノールAといった親水剤が含まれていない
  5. 合成高分子系膜に比べて抗血栓性に優れる
  6. グリセリンが含まれている
  7. 膜の荷電が少ない

透析膜のセルローストリアセテート(CTA)の特徴としては上記のものがあります。

それでは一つずつ解説していきます。

補体の活性化が少ない

セルローストリアセテート(CTA)は、セルロースの水酸基(-OH)をすべてアセチル基(-COCH3で置換したものです。これにより、補体の活性化をはじめとした生体適合性を改善することができています。

膜強度が強く、薄膜化が可能

セルロース系膜は、水分を含むと膨張して物理的な強度を増す性質があります。

ですので、薄膜化が可能で、ポアサイズや除水性能を調節しやすいです。

薄い薄膜は尿素窒素やクレアチニンなどの小分子物質の除去に優れます。

また、セルローストリアセテート(CTA)はもともと親水性が高い素材ですので、ポリビニルピロリドン(PVP)やビスフェノールAなどの親水化剤が不要です。このことは生体適合性の高さの一因となります。

均質構造

セルローストリアセテート膜は均質構造です。

ポリスルホン膜やポリエーテルスルホン膜は、断面構造が緻密痩~支持層とう非対称構造になっています。

PVPやビスフェノールAといった親水化剤が含まれていない

セルローストリアセテート膜は、もともと素材自体が親水性をもっているため、PVP(ポリビニルピロリドン)やビスフェノールAなどの親水化用剤は含まれていません。

なので、親水化剤に過敏に反応する患者さんにも安心して使うことができます。

合成高分子膜のPS膜やPES膜では親水化剤としてPVPやビスフェノールAが配合されています。これらにより、透析中の血圧低下、呼吸苦、嘔気などの症状が出る場合があります。

合成高分子系膜に比べて抗血栓性に優れる

古くからセルローストリアセテート(CTA)は、合成高分子系膜より血小板刺激が少なく、透析中の血小板の変化や抗血栓性に優れていると報告されてきています。

抗血栓性に優れている理由としては、PS膜とセルローストリアセテート(CTA)膜への付着するタンパク質の違いだと考えられています。セルローストリアセテート(CTA)に付着するタンパク質はアルブミンの比率が多いです。一方のPS膜に付着するタンパク質はフィブリノゲンやフィコリン2が多いです。アルブミンは親水性が高いので、膜表面で付着と脱着を繰り返すといわれているので、セルローストリアセテート(CTA)膜の表面は血小板刺激の少ない環境を保っていると考えられています。一方のPS膜の表面は、変質しやすいフィブリノゲンが多く付着しているため、血小板の凝集反応が起こりやすい環境になっていると考えられます。

実際、PS膜では透析後に顕著な血小板減少をきたした症例に対し、セルローストリアセテート(CTA)に変更した後は透析後の血小板低下はなくなり、透析前の血小板数も正常範囲に回復した症例も報告されています(1)。

グリセリンが含まれている

セルローストリアセテート膜(CTA)は、膜が乾くとポアに水が透過しにくくなります。そのため、膜のポア内にグリセリンが充填されています。

このグリセリンは、水への溶解が非常に強いので、しっかりとプライミングを行えば、膜に付着しているグリセリンは洗い流せるとされています。

膜の荷電が少ない

セルローストリアセテート(CTA)は、膜の荷電が少ないので、薬剤や血中成分の吸着が少ないという特徴があります。

 

というわけで、今回は透析膜のセルローストリアセテート(CTA)について解説してみました。少しでも参考になれば幸いです

 

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