フェリチンとは?基準値についてわかりやすく解説【鉄貯蔵・炎症・腫瘍マーカー】 

フェリチンの構造

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

先日、下記のツイートをしました。

この記事では、このフェリチンについて深掘りしていきます。

なお、貧血には様々な原因がありますが、その原因の約7割を占めるといわれているのが鉄欠乏性貧血といわれるもので、そして、その診断に欠かせないのが「血清フェリチン値」です。

記事の中でも解説していますが、血清フェリチンが低下していれば、ほぼ間違いなく鉄欠乏状態にあります。
以前は、ヘモグロビンが低値である鉄欠乏性貧血のみが疾患として認知されていました。しかし、最近ではヘモグロビンの値が正常でも鉄不足があれば、様々な症状(不安感、意欲低下、幻覚や妄想、疲れやすい、睡眠障害、抑うつ気分など)の原因となるので、「潜在性鉄欠乏症」というものの認識が広まってきています。

血清フェリチンの基準値

健常者の血清フェリチンの基準値

  • 男性:20~280 ng/mL
  • 女性:5~157 ng/mL

健常者の血清フェリチンの基準値は上記のとおりです。

ただし、検査会社などによって血清フェリチンの基準値には若干の違いがあります。

このように血清フェリチン値には男女差があり、男性の方の基準値のほうが高めです。
理由としては、毎月の月経による出血があるためで、女性でも閉経後は男性の値に近づきます。

しかし、後述しますがこの血清フェリチン値の基準値では正常下限5ng/dLや20ng/dLというのはあり得ないほど低すぎます。

ですので、この血清フェリチン値の基準値の下限は臨床上参考にすべきではないと考えています。

ちなみに、欧米ではフェリチン値が100ng/mL以下は鉄不足であるとみなされています。

血清フェリチンの評価

  • 血清フェリチン値=体内にどれだけ鉄がストックされているかの指標
    (ただし、悪性腫瘍、肝炎、膵炎、炎症などで血清フェリチンが上がることがあります)

血清フェリチンは、基本的に鉄欠乏状態では低値となり、鉄過剰状態では高値となります。

ただし、鉄過剰状態でなくとも血清フェリチンが増加する場合があり、悪性腫瘍、肝炎、膵炎などでは組織崩壊の結果、臓器に蓄えられているフェリチンが血中に放出されて血清フェリチンが上昇します。

フェリチンとは何ですか?

フェリチンの構造

画像引用:Mary Ann Knovich et al :Ferritin for the Clinician: Blood Rev.23(3): 95–104. 2009

フェリチンの構造図の補足

  • Ferroxidase Activity(フェロキシダーゼ活性)Fe2+をFe3+に酸化する働きがあります。Hサブユニットのみがフェロキシダーゼ活性をもっています。
  • Sequestered Iron:隔離された鉄
  • Apoferritin(アポフェリチン)鉄を収納していない状態のフェリチンをアポフェリチンといい、ほぼ球形の容器状の物質です。鉄を含んでいる状態はフェリチンと呼ばれます。

フェリチンは、24のH(heavy type)およびL(light type)サブユニットから構成される鉄結合蛋白であり、樽構造を呈し、その内腔に約4,500個までの鉄原子を結合・貯蔵することができる。

引用:鉄 Navi in CKD

フェリチンとはタンパク質でできた鉄を貯蔵できる容器で、上の図はフェリチンの構造図です。

フェリチンは、ほぼ球形の容器のような形をしているタンパク質で、その外殻は24個ものH型サブユニットとL型サブユニットで構成されています(分子量は約45万です)

このフェリチンの容器の中には原子鉄を格納することができて、フェリチン1分子あたり、最大で4,500もの原子鉄を格納することができます。

簡単にいえば、フェリチンとは鉄の貯金箱のようなものです。

フェリチンの中に鉄はFe3+の状態で格納されています。

フェリチンは通常のタンパク質が金属イオンを結合するやり方とは根本的に違ったやり方で、文字通り包み込むようにするので、非常に大量の鉄を小さなタンパク質の中に保有することができます。

ちなみに、H型サブユニットとL型サブユニットの比率は、臓器によって違うとされていて、例えば心臓ではH型サブユニットに比率が高く、肝臓や脾臓ではL型サブユニットの構成比率が高いです。

このフェリチンは、ほとんどの組織の細胞質に存在し、肝臓、脾臓などの臓器に特に多く、微量ですが血液中にも存在しています。

フェリチンの役割

フェリチンの役割

  1. 鉄の貯蔵
  2. 鉄の毒性を消すこと

フェリチンの役割としては、主に2つあります。

フェリチンには細胞内に鉄を貯蔵するという役割がありますが、必要時には鉄を放出して血液中の鉄の量を維持しています。

フェリチンに鉄を格納しなければならない理由としては、遊離した鉄イオンはフェントン反応によって、有害な活性酸素をつくって、細胞に対して有毒であるためです。

細胞内に鉄が過剰になってくると、遊離鉄分画(非フェリチン分画)が増えてきます。この遊離した鉄は、酸素を活性酸素に変換させる反応を触媒します。中でもフェントン反応では、最も毒性の高い活性酸素であるヒドロキシラジカルを大量につくって、細胞膜、核膜、ミトコンドリア膜、DNA鎖の切断、脂肪の過酸化などをひき起こし、細胞を障害します。
活性酸素とは、化学的に活性化した酸素のことで、周囲の物質を酸化させます。主に「スーパーオキシド」「過酸化水素」「ヒドロキシラジカル」の3つが有名な活性酸素です。
2価のFe2+は毒性が強く、Fe3+は毒性もありつつ水に難溶性があるため、体内の鉄はフェリチンやトランスフェリン、ヘムなどと結合して、貯蔵・運搬されています。
遊離鉄分画(非フェリチン分画)

  • Fe2+:毒性が強い
  • Fe3+:毒性あり+水に難溶性がある

ちなみに、酸素は金属イオンと結合しやすいので、生物によってさまざまな金属イオンが酸素の運搬に利用されていますが、代表的な金属は銅と鉄です。

なお、鉄は生体内に存在する金属元素のなかでは最も多く、総鉄量は 3~4 g で、そのうち約 3 分の 2 は赤血球中にヘモグロビン鉄として存在します。残りの大部分はフェリチンとして貯蔵鉄の状態にあります。

フェリチンの役割:鉄の貯蔵+鉄の毒性を抑えること

遊離した鉄はフェントン反応によって活性酸素を産生する毒性の強い原子なので、フェリチンやトランスフェリンといった鉄を格納するタンパク質を用意し、遊離鉄を生じさせないようにしています。

そして、必要に応じてヘモグロビンや鉄を含む酵素を作るときに、鉄を供給するという役割があります。

フェリチンは身体の組織のどこにある?

フェリチンは分子量役445,000、24個のサブユニットが中空でかつ球形に組み合わさり立体構造を呈した可溶性の鉄貯蔵蛋白で、肝細胞、脾臓・骨髄等の網内系細胞に多く分布している。

引用:公益社団法人 福岡県薬剤師会 , 質疑応答 フェリチンとは何か?(薬局)

フェリチンは身体の組織のどこにある?

  1. 肝臓
  2. 脾臓
  3. 骨髄
  4. その他(ほぼすべての細胞内)

フェリチンは肝臓、脾臓、骨髄の細胞内に多く存在しています。

その他として、そもそもフェリチンはほぼすべての細胞内に含まれていて、血中にもわずかですがフェリチンは分泌されています。

血中にわずかに存在する血清フェリチン値は、体内の鉄の貯蔵量の指標となります。
フェリチンは、生体に鉄が負荷されるとその合成が増加し、逆に鉄欠乏では合成が低下します。

よく、鉄分を補給するには「レバー」を食べるといいと言いますが、牛や豚などの動物も肝臓が鉄分をストックする場所なので、鉄を多く含んでいるというわけです。

血清フェリチンは体内鉄貯蔵量の指標

  • 体内の鉄貯蔵量と血清フェリチン値は相関

フェリチンは鉄を格納しているタンパク質で、主に肝臓、脾臓、骨髄の細胞内に多いです。

このように、フェリチンは鉄の貯金箱としての役割がありますが、一部は血清に溶けだしたものが血清フェリチン値として測定されます。

この血清フェリチン値は、体内に貯蔵されている鉄の量を反映しているため、代理的に鉄の貯蔵量の指標として用いられています。

なお、成人の血清フェリチン 1ng/mLは貯蔵鉄約8mgに相当し、貯蔵鉄量は血清フェリチン値で評価されます。

ただし、体内の鉄貯蔵量を調べるために最も信頼性の高い検査は肝生検で得られた組織中の鉄濃度測定です。しかし、この検査は侵襲性が高く、合併症のリスクも高いので基本的に行われません。最近、欧米では MRIを用いた肝鉄濃度測定法が開発され普及してきているとのことです。
鉄剤の投与によって、血清鉄、血清フェリチン値の順に増加していきます。しかし、ヘモグロビン値が回復しても血清フェリチン値が回復しないと貯蔵鉄が不足していることになり、血清フェリチン値が回復するまで鉄剤の投与が必要となります。

鉄の排出

鉄の排出量

  • 成人男性:1mg/日
  • 月経のある女性:2~3mg/日

人間には鉄を積極的に排泄するシステムがありません。

ですので、体内に過剰に蓄えられてしまった鉄が尿としてたくさん出ていく、なんてことはありません。

ようするに、鉄を体内に大量に負荷する輸血を何度もしてしまうと、容易に鉄過剰症になってしまうということです。

鉄の主な排泄経路としては、消化管粘膜の脱落による粘膜上皮細胞内のフェリチンの喪失です。その他として、少量ですが、鉄は尿や汗の中に含まれています。

成人男性の場合、1日の鉄排泄量は1mgですが、女性の場合は生理の出血のせいでもう少し多くなります。

フェリチンが基準値外のとき【炎症・腫瘍マーカー】

健常者の血清フェリチンの基準値

  • 男性:20~280 ng/mL
  • 女性:5~157 ng/mL

血清フェリチンが基準値よりも低ければ、鉄欠乏状態は疑いようがありません。

基準値よりも高い場合は、体内に貯蔵されている鉄の過剰を示唆していますが、鉄が過剰でなくとも炎症性疾患で血清フェリチンが上昇する場合があるので注意が必要です。

血清フェリチンを評価するときの注意点【炎症・腫瘍マーカー】

フェリチンは鉄貯蔵蛋白であり,血清フェリチンは生体内の鉄貯蔵量を反映することから鉄欠乏や鉄の過剰状態の把握に使われてきた.つまり、鉄欠乏性貧血では血清フェリチンは減少し,鉄過剰状態になると増加する.しかし,貯蔵鉄の増加を反映しない高フェリチン血症が種々の炎症性疾患および悪性腫瘍に見出されている.

引用:太田俊行,高フェリチン血症と疾患,JuoEH (産業医科大学雑誌)22 (2):189− 200 (2000)

血清フェリチンの意味

  • 体内にどれくらい鉄があるかの指標
  • 炎症マーカー
  • 腫瘍マーカー

血清フェリチンは鉄貯蔵の重要な指標ですが、それと同時に炎症マーカーや腫瘍マーカーでもあります。

血清フェリチンは、かつて腫瘍マーカーでした。ですので悪性腫瘍があれば、鉄を全く投与していなくとも血清フェリチンが上昇します。また、肺炎や骨髄炎のように体内で炎症が起こると血清フェリチンは上昇します。

例えば、体内の鉄が不足していて、かつ炎症がともなっているとき場合は、炎症によって血清フェリチンが高めの数値となることがあります。
この場合、TIBC(総鉄結合能)をみて、300μg/dLより低いときは炎症の可能性が高いと考えます。あるいは、短期間で急速に血清フェリチン値が上昇しているときは、鉄の蓄積よりも炎症の影響を考えるべきです。

TIBC(総鉄結合能)とは鉄を運ぶトラックのことで、通常300μg/dL程度です。このTIBC(総鉄結合能)は鉄が不足しているときは増えますが、体内で炎症があって鉄を運べないときは減ります。したがって、TIBC(総鉄結合能)の上がり、下がりというのは、炎症の有無の判断材料になります。

また、鉄不足の判断には MCV (平均赤血球容積)も一緒に見ることも大切です。MCV (平均赤血球容積)が90fl未満であれば鉄不足を疑います。しかし、MCV(平均赤血球容積)は、葉酸やビタミンB12の不足によって上昇することがあるので、必ずしも鉄不足の指標にならないことも念頭に入れておく必要があります。

血清フェリチン値と炎症

  • 肝炎:肝細胞には大量にフェリチンがあるので、肝炎ではフェリチンが血液中に放出されて血清フェリチン値は上昇
  • 膵炎:膵炎では組織からフェリチンが逸脱して血清フェリチン値は上昇
  • がん:腫瘍ではフェリチンが産生され、血液中に逸脱するので血清フェリチン値は上昇

体内の貯蔵鉄を反映せずに血清フェリチンが増加するメカニズムとしては、肝臓、脾臓、骨髄、心臓、肺などの臓器にフェリチンが存在していますが、これらの臓器が障害されると血中に逸脱して増加します。悪性腫瘍でも増加しますが、これは腫瘍細胞からの逸脱、癌貧血に伴う鉄代謝異常、転移に伴う細胞破壊などのためです。

癌、悪性リンパ腫、白血病などの腫瘍細胞内ではフェリチンが産生され、これが血液中に逸脱することで血清フェリチンは上昇します。ですので、一種の腫瘍マーカーとしての意味をもちますが、腫瘍の特異性はほとんどありません。

また、炎症があると、血液中に鉄を流さないようにします。そのため、全身の組織にあるフェリチンを血液中に運べなくなって鉄が利用しずらくなり、血清フェリチンが上昇します。
さらに、血液で鉄を運ぶ必要がなくなり、TIBC(総鉄結合能)の生産も低下します。ようするに、炎症では鉄の利用障害が起こって、造血に鉄が利用しにくくなっているということです。ですので、赤血球が小さくなり、MCV(平均赤血球容積も)も低下します。

血液中の鉄のほとんどはトランスフェリンと結合しています。骨髄の赤芽球はトランスフェリン受容体を介して鉄を取り込んでヘモグロビンを合成し、赤血球を産生しています。

こういった背景もあり、体内で炎症が起こっているときは、原則として鉄剤は投与しません。

それに加えて、腸からの鉄の吸収障害が生じやすく、鉄剤を投与しても、吸収できずに腸に余った鉄が、カンジダ菌などの腸の有害菌のエサとなり、腸内環境の悪化にもつながります。

フェリチンが基準値より低いとき

 血清フェリチン値が低値を示す場合は疑いもなく体内鉄欠乏状態であり,12ng/mL以下で貧血が存在する場合は鉄欠乏性貧血と診断する15)

引用:鉄 Navi in CKD p56

血清フェリチンが基準値よりも低い場合は、体内の貯蔵鉄が低下した状態、すなわち鉄欠乏であると判断します。

血清フェリチン値が低ければ問答無用で鉄が足りていない状態であると判断しましょう。

鉄欠乏性貧血の診断【特に血清フェリチンが重要】

鉄欠乏性貧血の診断で重要な採血の項目

  • Hb(ヘモグロビン)
  • 血清鉄
  • 総鉄結合能(TIBC)
  • 血清フェリチン
  • MCV(平均赤血球容積)

一般的に、採血でHb(ヘモグロビン)の低下、血清鉄の低下、総鉄結合能(TIBC)の増加、血清フェリチンの低下があれば、鉄欠乏性貧血と診断できます。

また、典型的な鉄欠乏性貧血ではMCV(平均赤血球容積)は90fL未満の小球性貧血となります。
血清フェリチン、血清鉄、総鉄結合能(TIBC)という数値は、健康診断ではあまり測定されません。人間ドックでは測定されることもあります。

特に血清フェリチンは鉄欠乏性貧血の診断には欠かせません。

なぜなら、まず鉄欠乏状態の初期の段階で貯蔵鉄(フェリチン)が減少し、次に血清鉄、最後にヘモグロビンが低下するからです。ですので、鉄を評価する際には、必ず血清フェリチンをチェックします。

なお、血清鉄では一日の中でも変動があり、朝高く、夕方に低くなります。さらに食後には増加し、各種炎症性疾患や感染症で低下することがあり、体内の鉄の貯蔵量を評価するには特異性が低いです。しかし、血清フェリチンが低値というのは、鉄欠乏の診断に関してはほぼ100%の特異性があり、鉄欠乏の診断には血清フェリチンは欠かせません。

ただし、血清フェリチン値は、鉄欠乏があっても炎症などによって高値となることがあるので、その他の採血データとともに、実際の食事内容、爪、眼瞼結膜、皮膚の状態の所見、症状に関する十分な問診も必要です。

貧血とは、赤血球に含まれるヘモグロビンが正常値以下に低下した状態をいい、WHOの基準では、男性で13g/dL、女性で12g/dL未満と定義されています。

ガイドラインでの鉄欠乏性貧血と貧血のない鉄欠乏の診断基準

ヘモグロビン
(g/dL)
総鉄結合能(TIBC)
(μg/dL)
血清フェリチン
(ng/mL)
正常≧12<360≧12
貧血のない鉄欠乏≧12≧360 or <360<12
鉄欠乏性貧血<12≧360<12

※:成人女性の場合、年齢、性別によってHb値の基準値は異なります。

参考:内田立身:鉄欠乏性貧血の治療指針.日本鉄バイオサイエンス学会治療指針作成委員会(編):鉄剤の適正使用による貧血治療指針,改訂第2版,2009より

日本鉄バイオサイエンス学会の診断基準では、ヘモグロビンが12g/dL未満、総鉄結合能(TIBC)が360μg/dL以上、血清フェリチンが12ng/dL未満のときに鉄欠乏性貧血となっています。

また、ヘモグロビンの低下がなくとも、血清フェリチンが12ng/mL未満であれば潜在的な鉄欠乏状態にあると判断します。

日本鉄バイオサイエンス学会の診断基準では、鉄欠乏は総鉄結合能(TIBC)と血清フェリチン、貧血の判定にはヘモグロビン値を用いています。

しかし、実際のところ、男性では生理がありませんから、ヘモグロビンが15g/dL以上は欲しいところです。

鉄欠乏性貧血の原因

鉄欠乏性貧血の原因

  1. 鉄需要の増加:思春期、妊娠中
  2. 鉄の供給不足:鉄の摂取不足、鉄の吸収障害(胃切除など)
  3. 鉄の喪失:月経、子宮筋腫、消化管出血(胃癌や大腸癌など)

鉄欠乏性貧血で重要なことは、その原因です。

原因としては、1.鉄需要の増加、2.鉄の供給不足、3.出血などによる鉄の喪失があります。

血液1mL中には0.5mgの鉄が含まれています。一般的な人が食べ物から1日に吸収する鉄は1mgとされているので、1日2mLの出血で吸収分の鉄が失われることになります。

月経のある女性では、過多月経、もしくは婦人科系の病気(子宮筋腫や子宮内膜症など)が多く、原因不明のことも多いです。

男性と閉経後の女性では、消化管出血が原因であることが多いです。

若い人で多い消化管出血の原因としては胃潰瘍と十二指腸潰瘍があります。

高齢者では、鉄欠乏性貧血をきっかけに、胃癌や大腸癌が発見されることが多いです。

胃を切除している人では、胃酸欠乏によってFe3+からFe2+に還元されず、十二指腸から吸収されなくなります。

鉄欠乏性貧血253例の報告では、男性で30例中6.4%が消化管出血、女性で223例中31.2%が過多月経、10.4%が消化管出血であり、消化管出血のなかでは胃癌と大腸癌が5.2%でした1)。また高齢者の鉄欠乏性貧血では125例中、56.8%が悪性腫瘍(胃癌と大腸癌)で、数%は胃潰瘍でした2)

 

参考文献
1) 内田立身:鉄欠乏性貧血─鉄の基礎と臨床.新興医学出版,pp96-98,1996
2) 村井善郎:「貧血」診療の実際 高齢者における貧血.治療78:113-117,1996

氷かじり

鉄欠乏性貧血の人の中には、10~20%程度の割合で、氷の塊をカリカリとかじるという症状があります。この「氷かじり」と鉄欠乏性貧血には関係があるので、こういった症状が見られたら要注意です。

フェリチンが基準値より高いとき

 血清フェリチンが高値を示す場合としては,①全身の鉄貯蔵量が増加するような疾患,②合成されたフェリチンが細胞破壊により放出される場合,③全身の鉄の総量は同じでも偏在化(分布異常)により網内系や肝臓で鉄が過剰となる場合がある4.16)

引用:鉄 Navi in CKD p56

全身の鉄貯蔵量が増加するのは、貧血のために多量の輸血が行われた場合や、鉄剤の過剰投与などがあります。

  • 肝炎:肝細胞には大量にフェリチンがあるので、肝炎ではフェリチンが血液中に放出されて血清フェリチン値は上昇
  • 膵炎:膵炎では組織からフェリチンが逸脱して血清フェリチン値は上昇
  • がん:腫瘍ではフェリチンが産生され、血液中に逸脱するので血清フェリチン値は上昇

あるいは、肝細胞破壊による肝組織などからの逸脱、悪性腫瘍、炎症、その他疾患による影響があります。

血清フェリチンは鉄貯蔵の重要な指標ですが、それと同時に炎症マーカーや腫瘍マーカーでもあるので、体内に鉄を負荷(鉄剤、静注鉄剤、輸血)していなくても血清フェリチンが上昇することがあります。

血清フェリチン値が1,000ng/mL以上になると、過剰鉄による重篤な臓器障害をきたす危険性が増加します。

輸血による鉄過剰症

  • RBC2単位(280mL)あたりの鉄含有量:約200mg
  • 成人男性:1日の鉄排泄量は約1mg

日本の赤血球成分製剤(RBC)は1単位あたり約100mgの鉄を含んでいます。

ですので、2単位のRBCの輸血を行えば、200mgの鉄が体内へ直接負荷されることになります。

これは、食物から吸収される鉄のおよそ半年分に相当します。

しかし、人間には鉄の積極的な排出機構がないため、出血などがなければ1日当たりの鉄の排出量は1mg程度ですので、頻回の輸血は容易に鉄過剰状態を招きます。

血液製剤は、200ml献血より得られたものをすべて1単位(1IU)としています。
つまり、RBC1単位というのは、血液200mlを遠心分離にかけて、血漿、白血球、血小板などを取り除いた後、保存液などを加えたのちにできたもので、約140mlとなります。

実際、国内での鉄過剰症の大部分を占めるのは、長期輸血に伴う輸血のためです。

月に2回程度、定期的に輸血を受けている方では、血清フェリチンが7000ng/mLを超えている、なんてケースもあります。

過剰に体内に蓄積した鉄は、肝臓、心臓、脾臓、内分泌腺などに沈着し、各臓器に機能障害をもたらします。

女性では潜在性鉄欠乏症に注意が必要

鉄欠乏の症状

  • 全身倦怠感
  • メンタルの不調
  • むずむず脚症候群

潜在性鉄欠乏症とは、貧血はないが(Hbの低下はないが)、鉄欠乏がある状態のことです。

血清フェリチンが15ng/mLを下回っていると、全身倦怠感、メンタルの不調、むずむず脚症候群などが起こりやすいです。

ちなみに、鉄不足の人がメンタルを壊しがちなのは、ドーパミン系が不調を起こしていることが多いからです。

国民健康・栄養調査による血清フェリチン値

国民健康・栄養調査(20~49歳の女性)

  • 約70%はフェリチン値が30以下
  • 約85~90%はフェリチン値が50以下

厚生労働省が行っている、国民健康・栄養調査の結果(平成20年)、20~49歳の女性のうち約70%はフェリチン値が30以下、約85~90%はフェリチン値が50以下でした。

このデータからは、月経がある年代の女性ではほぼすべての女性で血清フェリチンが低く、鉄が足りていない(潜在的な鉄欠乏状態である)ことが分かります。

したがって、この年代の女性では積極的に鉄を多く含む食品を摂ったり、サプリや鉄剤で補給する必要があります。

1回の妊娠・出産で、フェリチン値で50に相当する鉄が胎児に移行するといわれています。ですので、今現在、妊娠している女性はもちろんですが、これから妊娠を控えているという女性は、今の内から鉄をしっかりと体内に蓄えておく必要があります。

生理で失われる鉄

血液1mLには鉄が0.5mg含まれています。

ですので、女性は月経によって鉄が失われるため、男性に比べて鉄欠乏になりやすいです。

血清鉄は月経のある女性では平均的に男性よりも低値で推移するが,それは成人女性の多くが鉄欠乏傾向にあることを表しています。ただし、血清鉄は腸管から吸収、あるいは静注されて間もない鉄量、造血のために骨髄へ移行した鉄量、さらに鉄貯蔵組織から放出された鉄量などが関連して動的平衡状態にあるため、血清鉄の値が体内鉄量をそのまま反映するわけではありません。

健康な女性の場合、1回の月経で失われる鉄の量は20~30mgです。ですので、1日当たりに換算すると約1mgの鉄を失っています。この月経で失われる鉄に加えて、月経以外での鉄の損失0.72mg(便中、汗やはがれた表皮、尿)と合わせると、生理のある女性が1日に失う鉄の量は約1.72mgとなってしまいます。

ザックリ計算すれば、女性では男性の倍量の鉄を1日で失っています。ですので、男性と同じように鉄を摂っていても、鉄不足になってしまうとうのは必然というわけです。

女性の献血

若い女性が1回献血すると、その後、鉄剤を毎日服用したとしても、回復までに半年はかかるということを研究・主張されている方もいます。
(斎藤宏,鉄代謝異常の臨床 医薬ジャーナル社)

米国では小麦に鉄が添加されています

鉄が添加されている食品

  • 小麦粉、精製糖、トウモロコシ粉、塩、米、醤油、ナンプラーなど

食品へ鉄を添加することが、国民の鉄の栄養状態を改善することは世界的に広く知られています。

米国では1941年より小麦粉への鉄の点かが開始され、女性の鉄欠乏の頻度は減少しています。そして今なお、小麦への鉄の添加は続けられています。

その他、欧米を中心とした50カ国以上の国で小麦粉に鉄が添加されています。

欧米では1940年代くらいに、鉄欠乏性貧血が多発し、対応に困ったという時代があったそうです。そのため、国を挙げての貧血対策として、小麦粉に鉄をいれるようになりました。

また、一部の国では精製糖、トウモロコシ粉、塩、米、醤油、ナンプラーなどに鉄が添加されています。

鉄の過剰にも注意

  1. 肝障害
  2. 糖尿病
  3. 心不全

鉄の過剰がもたらす重大な3つの臓器障害は肝障害、糖尿病、心不全です。

C型慢性肝炎や非アルコール性脂肪性肝炎では肝臓に鉄が過剰に蓄積していて、これが活性酸素を生成して組織障害の原因となっています。

したがって、C型肝炎では除鉄を目的とした瀉血療法が有効で、保険適用も認められています。

糖尿病に関しては、膵臓のランゲルハンス島に鉄が蓄積してインスリン産生能が低下します。心不全は、初期には不整脈として現れることが多いです。

実際のところ、フェリチンはどのくらいあればいいのか

月経のある女性の血清フェリチンの評価

  • 黄信号:血清フェリチン50ng/dL未満
  • 赤信号:血清フェリチン25ng/dL未満
  • 理想:血清フェリチン値100ng/dL程度

月経のある女性での血清フェリチン値は最低でも50ng/dL以上は欲しいところです。できれば100ng/dL程度あるのが理想です。

血清フェリチン値が25ng/dLを下回ってくると、貧血の割合も増えてきて、鉄不足による心身の不調(感情的になったり、不安やうつ症状など)も出やすくなります。

女性は1人出産するとフェリチン30~50下がるといわれています。ですので、妊娠前に血清フェリチンをはかって最低でも60ng/dLくらいまでには上げておく必要があります。

男性や閉経後の女性では、血清フェリチン値も100ng/dL程度を目標にするのが良いでしょう。

鉄の補給

食品特徴
ヘム鉄レバー、赤身の多い牛肉、マグロ、カツオ、アサリなど・吸収率は約30%
・胃もたれしにく
非ヘム鉄ほうれん草、ヒジキなどの海藻類、小松菜などの青菜、大豆・吸収率は約7%
・サプリでは非常に安価

鉄の補給は、鉄分を多く含む食材を食事に取り入れつつ、鉄剤やサプリメントで補助するのがいいと思います。

鉄剤やサプリメントでサポートしたほうがいい理由としては、鉄は非常に体内への吸収率が悪いためです。

ヘム鉄は非ヘム鉄より吸収率が約3倍高いとする報告(Scand J Gastroenterol. 1979;14(7):769-79)、約7倍高いとする報告(J Clin Invest. 1974 Jan;53(1):247-55.)などあり、その他の報告も勘案すると概ね5倍ほど高いようです。
なお、鉄剤には経口鉄剤と静注鉄剤がありますが、経口鉄剤から開始するのが原則です(とはいえ、静注は病院やクリニックでしかできませんが)。経口鉄剤で副作用の消化器症状(悪心・嘔吐、腹痛、便秘など)が出れば、鉄含有量の少ないものや他の種類の鉄剤を試します。それでもどうしても飲めないときは、飲めない原因を探ったり、貧血が重度であれば静注鉄剤を使用します。

食べ物に含まれる鉄は動物性のヘム鉄(レバー、赤身の多い牛肉、マグロ、カツオなど)と植物性の非ヘム鉄(ほうれん草、ヒジキなどの海藻類、小松菜などの青菜)の2種類に分けられ、どちらもビタミンCと一緒に摂ると吸収が促進されます。

ちなみに私は、ビタミンCはサプリで摂るのではなく、冷凍イチゴから摂取していて、アマゾンで大量の冷凍イチゴをコスパよく購入できます。

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キレート鉄とは

キレート鉄とは、非ヘム鉄をキレート加工することで人工的に吸収率を高めたものです。体内への吸収率が高く、アメリカではサプリメントとして人気があります。

キレートとは、ギリシャ語でカニのハサミの意味です。有機酸やアミノ酸などが金属イオンを挟み込むように結合するため、それがカニがハサミでつかんでいる様子に似ていることからキレートといわれています。キレートすることで、不活性化したり、逆に体内に吸収しやすくさせます。

おすすめの鉄のサプリメント

  • 1日の鉄摂取の推奨量:6.0~7.5mg
    (月経時:10.5~11.0mg)

鉄は吸収率の高いミネラルではないので、日頃からこまめに摂っていくことが大切です。

おすすめのサプリメントは以下のとおり。

フェロケル鉄とは、グリシン(アミノ酸の一種)で鉄を挟んでいるサプリメント用の鉄です。フェロケルというのは商標で、米国の会社が開発しました。日本ではキレート鉄と呼んでいることもあります。

鉄が全然足りていないという人は、フェリチン鉄やキレート鉄で一気に鉄を補給してあげるというのもいいと思います。ただ、吸収率が良すぎるので、漫然と長期間飲み続けるのだけは辞めてください。

とりあえず、日本女性は慢性的に鉄不足の状態にありますので、実際に試してみて、調子が良くなれば鉄が足りていなかったということがわかります。

鉄サプリや鉄剤を飲むときの注意点

鉄剤や鉄サプリを飲むときはは定期的に採血を行い、必ずフェリチン値をチェックしましょう。

漫然と盲目的にサプリメントを飲み続けることは非常に危険です。

鉄が過剰になると心臓や肝臓に負担をかけますし、膵臓にも負担をかけて糖尿病になりやすくなってしまいます。

鉄不足も問題ですが、鉄過剰も人間にとっては毒です。一度、体内に蓄積してしまった鉄を体外へ出すことは難しいです。

血清フェリチン値は自宅でも簡単に測定できますが、若干割高です(10,780円(税込み))。また、普通の血液検査と比べてどの程度正確な値がでるかはわかりませんので、あくまで参考程度とお考えください。
»MICRO-SELF-Kit®

血清フェリチンくらいならどこの病院でも測定できると思いますが、どうせなら鉄不足に理解のある病院やクリニックで測定したほうがいいです。下記のブログでおすすめの病院を紹介していますので、興味のある方はご覧ください。
»精神科医こてつ名誉院長のブログ フェリチンを測定してもらえる医療機関と医師(全国版)

血清フェリチン値を数カ月に一度程度は測定し、目標とする100ng/dLあたりになったらサプリメントや鉄剤を辞めて、食品(レバーや赤身肉など)として自然な形で摂取するようにしていきましょう。

 

というわけで今回は以上です。

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