鉄の生体内役割と体内鉄分量をわかりやすく解説

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

本記事では、鉄の生体内役割と体内鉄分量についてわかりやすく解説しています。

(Fe)とは?

(iron)

  • 元素記号:Fe
  • 原子番号:26
  • 原子量:55.85
  • 比重:7.86

(iron)は金属元素のひとつです。
生体内に存在する金属元素のなかでもっとも多く含まれています。

元素は金属と非金属に分けることができます。非金属とは金属元素ではない元素のことです。周期表の左側の半分以上は金属元素です。
鉄は非常に不安定な物質なので、自然界で単体で存在することはなく、化合物として土壌、岩石、鉱物中などに存在しています。

生体内に必要な鉄

鉄は特に赤血球とのかかわりが深く、ヘモグロビンの構成要素なので、酸素の運搬に欠かせません。

ヘモグロビンの構成成分であるヘムには鉄が必要です。

それ以外にも生体内では、エネルギー代謝、骨やコラーゲンの生合成、筋肉のミオグロビン、神経伝達物質など活躍の幅は広いです。

鉄はミネラルの一つです。ミネラルとは五大栄養素の一つで、ビタミンと同じくカロリーはありません。しかし、わたしたちの身体にとって重要な働きをしており欠かすことができません。

体内にある鉄の量と生体内役割

健常な人の生体内の鉄の量は約3~4gで、女性のほうがやや少なめ傾向にあります。

鉄は、生体内に存在する金属元素のなかでもっとも多く含まれています。

鉄の体内分布

鉄の体内分布

  • ヘモグロビン鉄:6~7割
  • 貯蔵鉄(主に肝臓):2~3割
  • 組織鉄(酵素中の鉄、ミオグロビン鉄):少量
  • 血清鉄:少量

鉄の体内分布は上記のとおりです。

生体内の鉄の6~7割はヘモグロビン鉄として、ヘモグロビンの中にあります。残りの2~3割は貯蔵鉄フェリチンやヘモジデリン)として存在しています。

ごく微量に、筋肉(筋肉中にミオグロビンとして存在)や皮膚に組織鉄として含まれています。いわゆる血液中を流れている血清鉄は、生体内の鉄の0.1%にすぎません。

生体内での鉄の役割

生体内での鉄の役割

  • 赤血球の造血(ヘモグロビン合成)
  • エネルギー代謝
  • 骨やコラーゲンの生合成
  • 筋肉のミオグロビンの成分
  • 神経伝達物質

生体内の鉄のほとんどは、骨髄での赤血球造血(ヘモグロビン合成)に利用されます。

血清鉄は、骨髄で赤芽球・網赤血球のトランスフェリン(Tf)受容体を介して取り込まれて、ヘモグロビンの産生にかかわります(ヘモグロビンの構成成分であるヘムには鉄が必要です)。そして、約120日の赤血球の寿命を迎えると崩壊します。しかし、鉄は血清鉄として再び造血に利用されるか、貯蔵鉄として蓄えられます。

そんな重要な鉄なんですが、潜在的に不足している人が多いといわれています。

一説によると、鉄分が不足している人は、世界で30億人にもなるといわれていわれています。

鉄分不足は見逃されやすいです。鉄分の不足による貧血は、熱がでたり、咳がでたりといったわかりやすい症状がありません。そのため「なんだか調子が悪い・・・」程度で見過ごされやすいので注意が必要です。

鉄とエネルギー代謝

電子伝達系には鉄が必要です。

また、鉄は多くの代謝酵素の成分で、リボヌクレオチド還元酵素、NADH脱水素酵素、コハク酸脱水素酵素、チトクロームC還元酵素/酸化酵素などの代謝酵素の必須成分です。

鉄不足の症状

鉄不足の症状として、やる気がでない、イライラ、動悸、倦怠感、寝起きが悪い、ふらつき、めまい、息切れ、顔色が悪いなどがあります。

何らかの理由でヘモグロビンをつくる鉄が不足すると、まず貯蔵鉄(肝臓や脾臓に蓄えられている鉄のことで主に肝臓にフェリチンという形で貯蔵)が使われ始めます。それでも足りない時は血清中の鉄が使われ、さらに足りない場合は組織鉄までも使われるようになります。

このように鉄分が足りなくなると、まずフェリチンの減少→血清鉄の減少→ヘモグロビンの減少という順番に経過していきます。

生体内にある鉄の種類

鉄の体内分布

  • ヘモグロビン鉄:6~7割
  • 貯蔵鉄(フェリチンやヘモジデリン):2~3割
  • 組織鉄(酵素中の鉄、ミオグロビン鉄):少量
  • 血清鉄:少量

鉄の体内分布は上記のとおりです。

生体内の鉄の6~7割はヘモグロビン鉄として、ヘモグロビンの中にあります。残りの2~3割は貯蔵鉄フェリチンやヘモジデリン)として存在しています。

ごく微量に、筋肉(筋肉中にミオグロビンとして存在)や皮膚にある組織鉄に含まれています。いわゆる血液中を流れている血清鉄は、生体内の鉄の0.1%にすぎません。

なお、体内の鉄の貯蔵量を調べるためにもっとも信頼性が高いのは、肝生検で得られた組織中の鉄濃度測定といわれています。しかし、侵襲が高いので安易におこなわれることはありません。

ヘモグロビン鉄

鉄のおおく(約6~7割)は、ヘモグロビンの中に含まれています。

ヘモグロビンは赤血球の中に含まれていて、酸素を運ぶ役割を担っています。

ヘモグロビンの構造は、ヘム(ここに鉄が含まれています)とグロビンといわれるたんぱく質が結合したものです。

このヘモグロビンの中に含まれる鉄が、酸素と結合することで全身に酸素を運んでいます。

ヘモグロビンの基準値
男性13~17g/dl
女性11~16g/dl

ヘモグロビンの基準値は施設により若干違いますので、目安として参考にしてください。

ちなみに、ヘモグロビンの値が小さくなった状態のことを「貧血」といいます。

貯蔵鉄を反映するフェリチン

貯蔵鉄は、肝臓や脾臓に蓄えられている鉄のことです。

なお、生体内にある鉄の2~3割は貯蔵鉄フェリチンやヘモジデリン)として存在しています。

鉄貯蔵タンパクには、水溶性のフェリチンと、水に不溶性で沈着するヘモジデリンがあります。フェリチンは細胞内に貯蔵されますが、水溶性なので組織から血中に溶解され、血清フェリチンとして測定されます。

フェリチンは、水溶性なので一定の割合で血液中に溶けだし、血清フェリチンとして測定できます。また、血清フェリチンは一般に体内の貯蔵鉄の量を反映していて、低値の場合は鉄欠乏以外になく、貯蔵鉄量の非常に鋭敏な指標となります。

すなわち、鉄が不足しているときにフェリチンは低下し、逆に鉄が過剰のときにフェリチンは上昇します。

しかし、高値を示す場合には、貯蔵鉄が増加してるだけでなく,炎症、肝炎、癌なども考えられるので注意が必要です。

血清フェリチンは、肝臓・脾臓・骨髄・胎盤などの組織に広く含まれていますが、その分布量は、血清フェリチン値と相関しています。
フェリチンの基準値
男性17.0~291.5ng/ml
女性6.4~167.1ng/ml

フェリチンの基準値は施設により違うので、目安として参考にしてください。

組織鉄

組織鉄とは、ミオグロビンや酵素に含まれている鉄のことです。

血清鉄

血清鉄の基準値
男性54~200μg/dl
女性48~154μg/dl

生体内の鉄の約6~7割はヘモグロビンの中に含まれています。残り2~3割は肝臓や脾臓(主に肝臓)にフェリチンという形で貯蔵されています。

一方、血清中に存在する鉄はごく微量(約4mg)で、そのほとんどすべてがトランスフェリン(Tf)と結合して輸送されています。

血清とは、血液の液体成分のことです。血清鉄とは血液の液体成分に含まれる鉄のこと(ヘモグロビンの中に含まれる鉄を除く)で、その量は、体内の鉄の総量の約0.1%とごく微量です。
鉄は単体では反応性が高く、活性酸素を産生して有害なので、血清中ではトランスフェリン(Tf)と結合しています。ですので、血清鉄は、血清中に存在するトランスフェリン結合鉄のことです。トランスフェリン(Tf)とは、分子量約8万の血液中の鉄を輸送するためのたんぱく質で、1分子のトランスフェリン(Tf)に2つのFe3+が結合します。鉄は、血液中ではトランスフェリンと結合して安定することで、毒性を抑えています。

貯蔵鉄から動員された鉄はトランスフェリン(Tf)と結合して血清鉄となり、血清中を流れて骨髄の赤芽球に入っていきます。

血清鉄は、鉄欠乏や鉄過剰の指標になりますが、必ずしても生体内の鉄量を反映するとは限りません。なお、血清鉄は日内変動があり、早朝は高値で、夜間は低値となります。また、採血のときに溶血が起こると、赤血球中の鉄によって異常に高値となることがあります。

総鉄結合能(TIBC)と不飽和鉄結合能(UIBC)

  • 総鉄結合能(TIBC)
    →すべてのトランスフェリンが鉄と結合した場合の鉄濃度のこと
  • 不飽和鉄結合能(UIBC)
    →鉄と結合していない、フリーのトランスフェリンが新たに結合できる鉄濃度のこと

血清中の鉄は、ほとんどすべてトランスフェリン(Tf)と結合しています。ですので、血清鉄は、血清中に存在するトランスフェリン結合鉄です。

通常、血清中のトランスフェリン(Tf)の約3分の1が鉄と結合していて、残りの3分の2は鉄と結合していません。

この鉄と結合していない、フリーのトランスフェリンが新たに結合できる鉄濃度のことを「不飽和鉄結合能(UIBC)」と呼びます。

鉄欠乏性貧血のように、鉄の量が減少すれば、未結合状態のトランスフェリンが増加するので、UIBCも増加します。

すべてのトランスフェリン(Tf)が鉄と結合した場合の鉄濃度を「総鉄結合能(TIBC)」と呼びます。

ですので、TIBC=UIBC+血清鉄 という関係式が成り立ちます。

まとめ:生体内での鉄の役割と体内分布

(iron)は金属元素のひとつで、生体内に存在する金属元素のなかでもっとも多く含まれています。

生体内の鉄のほとんどは、骨髄での赤血球造血(ヘモグロビン合成)に利用されます。

赤血球の中にはヘモグロビンが含まれていて、ヘモグロビンの構成成分であるヘムには鉄が必要です。このヘモグロビンの中に含まれる鉄が、酸素と結合することで全身に酸素を運んでいます。

それ以外にも鉄は生体内では、エネルギー代謝、骨やコラーゲンの生合成、筋肉のミオグロビン、神経伝達物質など活躍の幅は広いです。

鉄の体内分布

  • ヘモグロビン鉄:6~7割
  • 貯蔵鉄(主に肝臓):2~3割
  • 組織鉄(酵素中の鉄、ミオグロビン鉄):少量
  • 血清鉄:少量

鉄の体内分布は上記のとおりです。

生体内の鉄の6~7割はヘモグロビン鉄として、ヘモグロビンの中にあります。残りの2~3割は貯蔵鉄フェリチンやヘモジデリン)として存在しています。

ごく微量に、筋肉(筋肉中にミオグロビンとして存在)や皮膚にある組織鉄に含まれています。いわゆる血液中を流れている血清鉄は、生体内の鉄の0.1%にすぎません。

 

 

ということで今回は以上です。

 

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