透析で使うリン吸着薬とその特徴をまとめてみた

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

透析患者さんにおいて、高リン血症というのは生命予後の悪化に直結しているというのはよく知られています。ということで、リンの管理が必要というわけなんですが、普通に食事をしていれば高リン血症になってしまいます。ですので、食事でリンを制限しようというわけで、食事を制限すればリンは下がるかもしれません。しかし、今度は逆に栄養状態が悪化してしまいます。ですので、現実的にそこまで食事制限をせずにリンを下げるために、多くの透析患者さんにはリン吸着薬が使われています。

そこで本記事では、日本の透析の現場でつかわれているリン吸着薬をすべて紹介し、その特徴をまとめています。透析室に勤務し始めたばかりの、臨床工学技士や看護師の方に役に立つ内容だと思います。

透析で使うリン吸着薬の種類

商品名一般名内服時期発売日
カルタン沈降炭酸カルシウム食直後2000年10月
フォスブロックセベラマー塩酸塩食直前2003年6月
レナジェルセベラマー塩酸塩食直前2003年6月
ホスレノール炭酸ランタン水和物食直後2012年5月
キックリンビキサロマー食直前2012年6月
リオナクエン酸第二鉄水和物食直後2014年5月
ピートルスクロオキシ水酸化鉄食直前2015年9月

2020年3月現在、日本で処方可能なリン吸着薬を上の表にまとめています。

食直前とは、食事の開始時のことをいいます。お箸をもったときが目安です。
食直後とは、食事の終了時のことをいいます。目安としては、食後5分以内です。

リン吸着薬の分類

リン吸着薬には、金属と結合して便中に排泄されるものと、樹脂により吸着して便中に排泄されるものがあります。

  • 金属と結合して便中に排泄されるもの:カルタン®、ホスレノール®、リオナ®、ピートル®
  • 樹脂により吸着して便中に排泄されるもの:フォスブロック®、レナジェル®、キックリン®

そのほかの分け方として、カルシウムを含むものと含まれないものとでも大別されます。

  • カルシウムを含むもの:カルタン®
  • カルシウムを含まないもの:フォスブロック®、レナジェル®、ホスレノール®、キックリン®、リオナ®、ピートル®

それでは、各リン吸着薬の特徴をもう少し詳しく解説します。

カルタン®(一般名:沈降炭酸カルシウム)

カルタン®の特徴

  • 食事中や食直後に服用
  • 一日最大服用量:3g
  • カルシウムを含むので、異所性石灰化に注意が必要
    (とくに活性型ビタミンD製剤と併用すると高カルシウム血症になりやすい)
  • ほかのリン吸着薬に比べて、消化器系の副作用が少ない
  • 比較的リン吸着効果は高い
  • リン吸着薬の中でもっとも安い

カルタン®は、カルシウムを含むリン吸着薬で、特徴としては比較的安く消化器症状などの副作用が少ないことです。

リン吸着のメカニズムは、消化管内の胃酸によってカルシウムイオンとなり、体内でリン酸と結合して、糞便中に排泄されるので、食べ物からのリン吸収を抑制します。

このようにリン吸着薬は、食べ物と混ざることでリン吸着の効果を発揮します。またカルタン®は、リンと反応するために胃酸が必要となるため、胃酸の分泌の多い食直後に内服します。

食事と良く混ざるように、食事中や食事の終わった後すぐにカルタン®は内服しましょう。

カルタン®は食後しばらくしての内服では、胃酸が薄まってしまって(胃内pHが上昇して)、本来の効果が発揮できません。ですので、食直後に内服する必要があります。また、胃酸を抑制する薬を内服している人では効果が弱くなります。H2ブロッカーやプロントンポンプ阻害薬が投与されていると、胃内のpHがアルカリ側に傾き、カルタン®の吸着能は低下します。

リンの吸着効果は高いですが、カルタンはカルシウムを含んでいるので、カルシウムが上がってしまい、異所性の石灰化のリスクがあります(特に高齢者では元々血管石灰化をもっていることが多いので、カルシウムを含まないリン吸着薬を使うほうがいいといわれています)。ですので、投与量は原則3g/日以下となっています。

また、活性型ビタミンD製剤を併用している場合は、さらに高カルシウム血症のリスクが高まるので要注意となります。

カルタン®は長年使われているリン吸着薬で、2009年末の日本透析医学会の年末調査結果によると、透析患者の59.0%の患者でカルタン®を内服していたとのことです。

フォスブロック®、レナジェル®(一般名:セベラマー塩酸塩)

フォスブロック®とレナジェル®の特徴

  • 食直前に内服する
    (ほかの薬剤の吸収を低下させる可能性があるため)
  • 一日最大服用量:9g
  • カルシウムを含まない
  • 消化器系の副作用(便秘、腹部飽満間、腹痛など)が多い
    (とくに便秘が多いです)
  • カルシウム含有リン吸着薬とくらべて、血管石灰化進展予防効果がある
  • リン吸着効果があまり強くない
    (カルタン®よりもリン吸着の効果は弱い)

フォスブロック®とレナジェル®は、不溶性のリン結合性ポリマーです。陽性荷電したアミノ基が、リン酸イオンと結合し、糞便中に排泄されるので、食べ物からのリン吸収を抑制します。

セベラマーは陰イオン交換樹脂です。塩素イオン(塩酸セベラマー)とリン酸イオンを交換し、結合することで、リンの吸収を抑えます。

このように、食べ物と混ざることでリン吸着の効果を発揮するので、食直前に内服します(また、ほかの薬剤の吸収を低下させる可能性があるので食直前に内服します)

カルシウムを含むリン吸着薬のカルタン®と違い、カルシウム負荷がないので血管石灰化進展予防効果があります。ただし、カルタン®よりもリン吸着効果は弱いです。

副作用として便秘が多く、それを理由に本剤を中止される患者さんもいます。

ホスレノール®(一般名:炭酸ランタン水和物)

ホスレノール®の特徴

  • 食直後に内服する
  • 一日最大服用量:2.25g
  • チュアブル錠タイプは必ずかみ砕いて内服する
  • カルシウムを含まない
  • リン吸着の効果が高く、カルタン以上
  • 吐き気・嘔吐などの消化器系の副作用が多い
  • 長期投与におけるエビデンスが少ない
    (長期投与による骨組織など、体内への蓄積による影響が懸念されている)

ホスレノール®はランタンを含むリン吸着薬です。腸管内で陽イオンとなり、食べ物から遊離したリン酸イオンと結合して、非吸収性の化合物(リン酸ランタン)を形成し、糞便中に排泄されるので、食べ物からのリン吸収を抑制します。

カルシウムを含まないリン吸着にはフォスブロック®とレナジェル®がありますが、リン吸着効果があまり強くありません。そこで、カルシウムを含まないがさらに強力なリン吸着効果のあるものとして、炭酸ランタンが開発されました。
ランタンとは希土類の重金属です。腸管吸収率は低いといわれていますが、長期の臓器蓄積効果については慎重に観察する必要があります。

このようにリン吸着薬は、食べ物と混ざることでリン吸着の効果を発揮します。またホスレノール®は、副作用に悪心・嘔吐や胃部不快感があるので、これを軽減するために食直後に内服します。

リン吸着の効果は非常に強力で、カルタン®をしのぎますが、便秘の副作用はさほど多くはありません。しかし、悪心、嘔吐、胃部不快感は、空腹時に内服した場合に起こりやすいので、食直後に内服します。

キックリン®(一般名:ビキサロマー)

キックリン®の特徴

  • 食直前に内服
    (ほかの薬剤の吸収を低下させる可能性があるため)
  • 一日最大服用量:7.5g
  • リン吸着効果はあまり強くなく、レナジェルやフォスブロックと同じくらい
  • ほかのリン吸着薬と比べて便秘が少ないといわれている

キックリン®は、不溶性のリン結合性ポリマーです。陽性荷電したアミノ基がリン酸イオンと結合し、糞便中に排泄されるので、食べ物からのリン吸収を抑制します。

このように、食べ物と混ざることでリン吸着の効果を発揮するので、食直前に内服します(また、ほかの薬剤の吸収を低下させる可能性があるので食直前に内服します)

レナジェル®やフォスブロック®と比べて、消化器系の副作用が少ないといわれていますが、リン吸着効果は、レナジェル®やフォスブロック®と同等です。

リオナ®(一般名:クエン酸第二鉄水和物)

リオナ®の特徴

  • 食直後に内服する
  • 一日最大服用量:6g
  • 鉄を含むリン吸着薬なので、体内への鉄吸収が起こるのて鉄過剰に注意が必要
  • 鉄が腸管粘膜を刺激して下痢を起こす場合がある
  • フェリチンのモニタリングが必要
  • 腎性貧血の改善効果がある
  • 便が黒くなることがある(黒色便)

リオナ®は、鉄を含むリン吸着薬です。腸管内で鉄が電離してリンを吸着し(リン酸第二鉄を形成し)、食べ物からのリン吸収を抑制します。しかし同時に鉄が体内に吸収されてしまうので、貧血を改善する効果も期待されます。

このように、リオナ®は食べ物と混ざることでリン吸着の効果を発揮するので、食直後に内服します。

カルタン®と同じくらいか、それ以上のリン吸着効果があります。

副作用としては、下痢が出現する場合が多いです。リオナ®を内服して下痢が出てしまう患者さんも実際にいらっしゃいます。

アメリカでは2017年に、リオナ®がリン吸着薬にCKDに伴う鉄欠乏性貧血の治療薬として承認されました。

ピートル(一般名:スクロオキシ水酸化鉄)

ピートル®の特徴

  • 食直前に内服
  • 鉄を含むリン吸着薬ですが、体内への吸収率は低い
  • 鉄が腸管粘膜を刺激して下痢を起こす場合がある
  • 便が黒くなることがある(黒色便)
  • 腎性貧血の改善効果がある
ピートル®は、不溶性のリン結合性ポリマーです。リオナ®と同じように鉄を含むリン吸着薬ですが、鉄が腸管内で電離せずにリンを吸着するため、リオナ®と違って鉄が吸収されにくいです。

他のリン吸着薬と同様に、食べ物と混ざることでリン吸着の効果を発揮するので、食直前に内服します。

副作用として、下痢が出現する場合があります。

ピートルを飲み始めて下痢が止まらなくなると訴えられる透析患者さんも実際にいます。

まとめ:透析で使うリン吸着薬は全部で7種類

商品名一般名内服時期発売日
カルタン沈降炭酸カルシウム食直後2000年10月
フォスブロックセベラマー塩酸塩食直前2003年6月
レナジェルセベラマー塩酸塩食直前2003年6月
ホスレノール炭酸ランタン水和物食直後2012年5月
キックリンビキサロマー食直前2012年6月
リオナクエン酸第二鉄水和物食直後2014年5月
ピートルスクロオキシ水酸化鉄食直前2015年9月

というわけで、日本で処方可能な7種類のリン吸着薬とその特徴について紹介しました。

リンを下げる薬にはこれだけの種類があり、一般名で呼ぶ場面もあるので、なかなかややこしいですが、頑張って覚えていきましょう!

 

<注意事項> 本ブログに掲載されている情報の正確性については万全を期しておりますが、掲載された情報に基づく判断については利用者の責任のもとに行うこととし、本ブログの管理人は一切責任を負わないものとします。 本ブログは、予告なしに内容が変わる(変更・削除等)ことがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA