遊離テストステロンとは?【テストステロンとの違いをわかりやすく解説】

こんにちは、臨床工学技士の秋元です。

いきなりですが、テストステロンはめちゃくちゃ大事です。

なぜならこのテストステロンは、私たちが仕事や勉強に熱中して、人生に生きがいをもちつつ、楽しく生きていくために欠かせない物質だからです。

このテストステロンが不足してしまうと、以下のような症状の原因となります。

  • 活力が減る
  • 疲れやすくなる
  • 太りやすくなる
  • 心疾患や糖尿病のリスクが増える
  • うつ病に似た症状が起きるリスクが増える

ですので非常に重要なホルモンです。

一方、女性は50歳前後で閉経し、女性ホルモンの1つであるエストロゲンが急激に減少して更年期障害になることは一般的に良く知られています。

しかし、男性にも更年期障害があることはあまり知られていません。

男性の更年期障害のことを、医学的にはLOH症候群(加齢性男性ホルモン低下症候群)といいます。

LOH症候群(加齢性男性ホルモン低下症候群)とは、加齢によってテストステロンが低下することで起こる症状のことです。

40代後半からLOH症候群を発症する人が増えていき、55~65歳の間で発症することが多いです。日本には600万人も潜在患者がいるとの研究データもあります。

LOH症候群の症状として、疲労感、頭痛、やる気の低下、集中力の低下、記憶力の低下、人づきあいが面倒になる、不眠、性欲低下、肥満、鬱など多岐にわたり、個人差があります。ですので、自分で鬱だと思い、精神科を受診してしまうケースも少なくありません。

このテストステロンは、20代をピークに50代には約半分にまで減っているといわれており、なにも対策をしなければ年とともに、気力・体力ともに衰えていってしまいます。

そんなめちゃくちゃ大事なテストステロンについて、テストステロンとはいったいなんなのかについて分かりやすく解説したいと思います。

遊離テストステロンとは?

遊離型テストステロン

ヒトで主たる男性ホルモン(アンドロゲン)は精巣で産生されるテストステロンである。ここで、血液中において活性型テストステロンはフリーテストステロンであり、この濃度は総テストステロンの1~2%にすぎないとされる。このほかに、血液中にはアルブミン結合のテストステロン分画とsex hormone binding globulin(SHBG)結合のテストステロン分画も存在し、これら3分画を合わせて総テストステロンを構成している。

引用:杉本和宏ら,LOHとテストステロン

血液中にあるあるテストステロン

  1. 遊離(フリー)テストステロン(1~2%)
  2. アルブミン結合テストステロン(25~65%)
  3. SHBG(性ホルモン結合グロブリン)結合テストステロン(35~75%)

血液の中にあるテストステロンは、上記の3つの状態に分かれています。

このうち、男性ホルモンとしての体内で実際に活性をもつテストステロンは、「遊離テストステロン」と「アルブミン結合テストステロン」です。

また、症状の相関も総テストステロンよりも、遊離テストステロンのほうが明らかに強いので、特に遊離テストステロンの値が重要となってきます。

そして、総テストステロンとは、これらすべてのテストステロンを足し合わせたものになります。

  • 総テストステロン
    =遊離テストステロン+アルブミン結合テストステロン+性ホルモン結合グロブリン結合テストステロン

テストステロンとは?

テストステロンの構造

テストステロンとは、男性ホルモンの一種です。

後述しますが、男性ホルモンにはいくつか種類があります。

化学式であらわせば C19H28O2、分子量は288.4となります。
このテストステロンは男性ホルモンのなかでも作用が最も強く、生体内で働く真の男性ホルモンと考えられています。

ですので、一般的に「男性ホルモン」といわれたら、テストステロンのことを指しています。

ちなみに、テストステロンは別名「モテホルモン」とも言われてます!
とある実験で、雄のネズミにテストステロンを注射したところ、その雄のネズミに雌のネズミが群がりだしたという実験もあります。

男性ホルモンの種類【アンドロゲンの種類】

  • テストステロン
  • ジヒドロテストステロン(DHT)
  • デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)
  • アンドロステロン
  • アンドロステンジオン
  • エピアンドロステロン

男性ホルモンの種類は上記のとおりです。

これらの男性ホルモンを総称して「アンドロゲン」と呼ぶこともあります。

「男性ホルモン=テストステロン」だと思っている人もいたかもしれませんが、このように男性ホルモンにはいくつか種類があります。

男性ホルモンはステロイドホルモンの一種です。

なお、ホルモンには、大きく分けて以下の3つの種類があります。
このうち男性ホルモンはコレステロールから合成されるステロイドホルモンです。

  1. ペプチドホルモン
    (アミノ酸がペプチド結合しています)
  2. ステロイドホルモン
    (コレステロールから合成され、ステロイド骨格をもっています)
  3. アミン・アミノ酸誘導体ホルモン
    (少数のアミノ酸で構成されています)

テストステロンがつくられている場所

テストステロンは、男性の場合、約95%が精巣で、残り5%が副腎でつくられています。

ちなみに、成人男性が精巣で1日に分泌するテストステロンは、7mg前後といわれています。

そして、女性の身体の中にも男性ホルモンはあります。つくられる場所は卵巣と副腎です。ここでつくられた男性ホルモンを材料にして女性ホルモンはつくられています。

ちなみに、女性の血中のテストステロン値は男性の5~10%(1/10~1/20)程しかありません。
テストステロン値の高い女性は、気が強い人が多く社会的に活躍している方が多いです。活動的な女性はテストステロン値が高いという研究も多数発表されています。ちなみに、男性でいえば70代のテストステロンの量は、20代で比べて半分にまで減っているといわれています。

テストステロンの働き

  1. 骨・筋肉の発達を促進
  2. 内臓脂肪をへらす
  3. 造血作用
  4. 男性の二次性徴を発現させる
  5. 精子をつくる
  6. 性欲をあげる
  7. やる気や意欲をあげる
  8. 集中力をあげる
  9. 記憶力をあげる
  10. リスクを取りやすくする

テストステロンは性欲のイメージが強いですが、上記のように様々な働きがあります。

最近の研究では、人の性格や考え方にも多大な影響があることがわかっています。

テストステロンと遊離テストステロンの違い

遊離型テストステロン

男性ホルモンの検査では、「総テストステロン」と「遊離型テストステロン」のどちらかの採血項目をとることが多いですが、「遊離型テストステロン」のほうが、男性ホルモンとしての働きが強いため重要です。

血中にあるテストステロンの種類

ヒトで主たる男性ホルモン(アンドロゲン)は精巣で産生されるテストステロンである。ここで、血液中において活性型テストステロンはフリーテストステロンであり、この濃度は総テストステロンの1~2%にすぎないとされる。このほかに、血液中にはアルブミン結合のテストステロン分画とsex hormone binding globulin(SHBG)結合のテストステロン分画も存在し、これら3分画を合わせて総テストステロンを構成している。

引用:杉本和宏ら,LOHとテストステロン

血液中にあるあるテストステロン

  1. 遊離(フリー)テストステロン(1~2%)
  2. アルブミン結合テストステロン(25~65%)
  3. SHBG(性ホルモン結合グロブリン)結合テストステロン(35~75%)

血液の中にあるテストステロンは、上記の3つの状態に分かれています。

このうち、男性ホルモンとしての体内で実際に活性をもつテストステロンは、「遊離テストステロン」と「アルブミン結合テストステロン」です。

また、症状の相関も総テストステロンよりも、遊離テストステロンのほうが明らかに強いので、特に遊離テストステロンの値が重要となってきます。

そして、総テストステロンとは、これらすべてのテストステロンを足し合わせたものになります。

  • 総テストステロン = 遊離テストステロン + アルブミン結合テストステロン + 性ホルモン結合グロブリン結合テストステロン

テストステロンの採血【遊離テストステロンとの違い】

血中テストステロンの基準値

  1. 総テストステロン(RIA固相法)
    基準値:247~836 ng/dl(成人男性)
    基準値:10~60 ng/dl(成人女性)
  2. 遊離テストステロン
    基準値:8.5~27.9 pg/ml(成人男性)
    基準値:2.7 pg/ml(成人女性)

参考:伊藤直樹ら,内分泌学的検査 性腺,テストステロン

テストステロンの採血では主に上記の2つのどちらかをみますが、遊離テストステロンの値のほうが重要です。

遊離テストステロンのほうが重要な理由は、加齢によって総テストステロン値よりも遊離テストステロン値のほうが有意に低下するためです。
くわえて、遊離テストステロンのほうが男性ホルモンとしての働きが強いためです。これが総テストステロンと遊離テストステロンの違いとなります。

総テストステロンは60歳くらいまでほとんど減少しませんが、遊離テストステロンは20歳代を境に減少していきます。
総テストステロンと遊離テストステロンを同時に測定すると保険診療ができなくなるので、採血項目はどちらか一つに絞ることが多いです。

遊離テストステロンの評価

遊離テストステロン値が8.5pg/ml以下だと男性ホルモンが低値だと判断します。

8.5~11.8pg/mlの間だと男性ホルモンが低めの人だと評価されます。

男性の場合、男性ホルモンの値は1日のうちで変動しますので、一般的には比較的男性ホルモン値の高い午前中に採血した値で判断します。

後述しますが、AMSスコアの点数が50点以上、遊離型テストステロン値が10pg/ml以下であれば、冒頭のほうでも少し紹介したLOH症候群(男性更年期障害)の可能性が高いです。

自分のテストステロン値を簡単に確認する方法

病院で血中の遊離テストステロン値を測定すればいいんですが、なかなか面倒だという人のために、簡単に自信のテストステロン値を知る方法を紹介したいと思います。

朝勃ちしてるか

テストステロンがしっかり分泌されてるかどうかの最も分かりやすい指標として、早朝勃起(朝勃ち)をしているのかどうかというのがあります。

朝勃ちがなくなるというのは、テストステロンが減ってきたときに一番初めに出る、わかりやすい症状です。

また、睡眠中の勃起はテストステロン値と相関関係にあり、20代では合計睡眠時間の/1/2、50代では合計睡眠時間の1/4は起こっています。

朝勃ちする理由
私たちの睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しています。レム睡眠は、急速眼球運動ともいい、身体は眠っているのに脳は起きている状態です。そのレム睡眠中は、副交感神経が活性化して腸などが動きますが、陰茎も腸につられて同様に反応し、勃起します(夜間睡眠時勃起)。そして、私たちはレム睡眠中に起きるので、無自覚で勃起しているというわけです。
勃起というのは、陰茎の海綿体に血液が大量に流れることによって起こります。このときに、陰茎の筋肉を緩めるNO(一酸化窒素)が働いて血管を広げるんですが、テストステロンはこのNOをつくる働きをしています。

AMSスコア

LOH症候群(加齢性男性ホルモン低下症候群)の診断には、AMSスコアという質問シートがよく使われます。

AMSスコアとは
AMSスコアはLOH症候群の診断に世界的に広く使われている質問シートです。質問は17個あり、5段階で回答して、それぞれの点数を合計して総点数で評価します。

AMSスコアと遊離テストステロン値の関係を調べた結果、AMSスコアが27点以上の人のうち、85%は遊離テストステロン値が11.8pg/ml以下だったそうです。
(遊離テストステロンの正常値は、8.5~27.9pg/ml(20~29歳の男性)です。)

つまり、AMSスコアが27点以上の人は、遊離テストステロン値が低い(≒男性ホルモンが低い)可能性が高いです。

表.HeinemannらによるAging males’ symptoms(AMS)スコア

質問なし軽い中等度重い非常に重い
1.総合的に調子が思わしくない1点2点3点4点5点
2.関節や筋肉の痛み1点2点3点4点5点
3.ひどい発汗1点2点3点4点5点
4.睡眠の悩み
(寝つきが悪い、ぐっすり眠れないなど)
1点2点3点4点5点
5.よく眠くなる、しばしば疲れを感じる1点2点3点4点5点
6.いらいらする
(当たりちらす、些細なことで腹を立てる)
1点2点3点4点5点
7.神経質になった
(緊張しやすい、精神的に落ち着かない)
1点2点3点4点5点
8.不安感
(パニック状態になる)
1点2点3点4点5点
9.からだの疲労や行動力の減退
(余暇活動に興味がない、活動の減少)
1点2点3点4点5点
10.筋力の低下1点2点3点4点5点
11.憂鬱な気分
(意欲がわかない、気分のむら、落ち込み)
1点2点3点4点5点
12.「絶頂期は過ぎた」と感じる1点2点3点4点5点
13.力尽きた、どん底にいると感じる1点2点3点4点5点
14.ひげの伸びが遅くなった1点2点3点4点5点
15.性的能力の衰え1点2点3点4点5点
16.早朝勃起(朝立ち)の回数の減少1点2点3点4点5点
17.性欲の低下1点2点3点4点5点
合計

参考:加齢性男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き

AMS検査結果の見方

  • 合計点数が17~26点→正常
  • 合計点数が27~36点→軽度
  • 合計点数が37~49点→中等度
  • 合計点数が50点以上→重度
中等度以上の人は、泌尿器科(メンズヘルス外来)への受診をおすすめします。日本Men’s Health医学会の公式ホームページ(http://www.mens-health.jp/)には、日本全国のメンズヘルス外来が掲載されているので参考にしてください。

LOH症候群(加齢性男性ホルモン低下症候群)の診断

LOH症候群の診断では問診票やAMSスコアなどに記入していただき、採血して遊離テストステロン値を調べます。
AMSスコアが50点以上、遊離テストステロン値が8.5pg/ml以下であればLOH症候群と診断されます。

まとめ:テストステロンと遊離テストステロンの違い

テストステロンは、いくつかある男性ホルモンのうちの1つです。

  • テストステロン
  • ジヒドロテストステロン(DHT)
  • デヒドロエピアンドロストロン(DHEA)
  • アンドロステロン
  • アンドロステンジオン
  • エピアンドロステロン

上記の男性ホルモンを総称して、アンドロゲンとも呼びます。

つまり、テストステロンはアンドロゲンの一種です。

そして、このテストステロンは、男性の場合、約95%が精巣で、残り5%が副腎でつくられています。

そして血液の中にあるテストステロンは、下記の3つの状態に分かれています。

血液中にあるあるテストステロン

  1. 遊離(フリー)テストステロン(1~2%)
  2. アルブミン結合テストステロン(25~65%)
  3. SHBG(性ホルモン結合グロブリン)結合テストステロン(35~75%)

このうち、男性ホルモンとしての体内で実際に活性をもつテストステロンは、「遊離テストステロン」と「アルブミン結合テストステロン」です。

また、症状の相関も総テストステロンよりも、遊離テストステロンのほうが明らかに強いので、特に遊離テストステロンの値が重要となってきます。

 

というわけで今回は以上です。

 

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