透析中にシャント肢の指先にしびれや痛みが起こる原因はなに?

こんにちは、臨床工学技士の秋元麻耶です。

透析中に、シャント肢側の腕の痛みやしびれを訴えらる患者さんがいます。

本記事では、透析中にシャント肢側に痛みやしびれが出る原因をまとめてみました。

シャント肢の指先のしびれの原因

透析中に、稀にシャント肢の指先を訴えられる患者さんがいますが、主な原因は以下の3つです。

  • 原因①:スチール症候群
  • 原因②:手根管症候群
  • 原因③:DWがきつすぎる

ただし、手根管症候群の場合、シャント肢でなくとも起こります。

原因①:スチール症候群

出典:中外製薬 腎不全看護 日本腎不全看護学会 第22回教育セミナー

スチール症候群とはVA作製後、アクセス静脈への血流量が増加する(盗血される)ことにより発症する末梢循環障害・虚血症状をいう。

引用:日本透析医学会、44巻9号、2011

スチール症候群とは、簡単にいえば本来末梢に流れていた血液が、シャントへ流れ込み、末梢(指先への)血流が低下した状態のことです。

しかし、これだけでスチール症候群が起こるわけではなく、指先を栄養するもう1本の動脈である尺骨動脈の血液が、手掌動脈弓を経由して、逆行性に橈骨動脈を通ってシャントに流れる(上の図を参照)ことも一因となります。

一般的に、糖尿病などの末梢循環障害を起こしやすい原疾患をもっている人、肘部シャントや人工血管内シャント、動脈硬化が強い人などで、スチール症候群は発症しやすいです。

ただ、スチール症候群の頻度は体感としてそれほど多くはありません。

スチール症候群の症状

指先の冷感、しびれ、痛くなる、透析中や後半に腕が痛くなる(増悪する)という人はスチール症候群の可能性が高いです。

透析中は、血液をポンプで引き出しているため、末梢へいく動脈血がさらに減るため症状が強くなるといわれています。

進行すると、安静時のしびれや痛み、さらに酷くなると皮膚潰瘍や壊死にいたる場合もあります。

※ 個人的には、透析中盤以降からしびれや疼痛を訴える方が多いように思います。

スチール症候群の診断

診断は、自覚症状を基本としておこないますが、客観的評価として、血管造影や超音波エコー、サーモグラフィーなどで過剰血流や動脈側の狭窄などの所見を確認することができます。

治療はなかなかに難しく、できるだけ内シャントを温存した治療が試みられますが、酷い場合にはシャントを閉じて、反対側の手に新たにシャントをつくる場合もあります。

透析中にすぐにできる対処療法としては、温罨法で指先を温めますが、それほどの効果はありません。

あるいは、スチール症候群ではなく、血圧が下がっているために症状が増強している場合もあるため、いったんDWを上げて様子をみたりもします。

スチール症候群の治療

スチール症候群の治療の絶対適応として、血流障害による皮膚変色、壊死などの兆候がある場合です。

治療として、

  1. 抗血小板薬、抗凝固薬の投与
  2. 炭酸泉浴
  3. 動脈のPTA

などがありますが、効果は限定的です。

最終手段は、シャントをつぶしてしまう、もしくは動脈側の縫縮(シャントの流入口の首を、かるくしめる)です。

シャントをつぶしてしまった場合、また新たなバスキュラーアクセスをつくる必要があります。

原因②:手根管症候群

出典:東京女子医科大学 東医療センター脳神経外科

手根管症候群とは、手首の内側で末梢神経が圧迫されて手指のしびれや痛み、親指の脱力を来す疾患です。
(中略)
原因は手首の内側にある屈筋支帯と呼ばれる靭帯が何らかの原因で肥厚して、その下を走る正中神経という神経が圧迫されて起こります。

引用:東京女子医科大学 東医療センター脳神経外科

透析患者さんにみられる手根管症候群の原因は、横手根靱帯(屈筋支帯)に、β2-MGを前駆蛋白とするアミロイドが沈着し靭帯が肥厚して、正中神経を圧迫するためと考えられています。

出典:大阪脳神経外科病院

手首の付け根には、横手根靭帯(おうしゅこんじんたい)という強いスジと手根骨で覆われた手根管という空間部分があります。この手根管の中を、正中神経と指を曲げるための9本のスジ(屈筋腱)がとおっています。

正中神経は、親指から薬指の半分の領域を支配しているので、その部分にしびれや痛みが出ます。

手根管症候群の症状としては、第1指~第3指、および第4指の撓側のしびれが出ますが、とくに第2指(人差し指)と第3指(中指)の指先にしびれが生じます。親指や薬指もしびれますが、小指のしびれがないのが特徴的です。

そのほか、腕全体が痛い、だるいなどの症状を訴える方もいます。

診断は、チネル徴候(手根管のある手首の手のひら側の中央あたりを叩いたときに、指先までひびくという症状)やファーレン徴候(手関節を曲げるとしびれ感が増悪する)で十分に可能です。確定診断には、正中神経に電気を流して、神経の伝わりを計測して診断します。

透析を行って10年を超えると手根管症候群の発症頻度が増加するといわれています。

治療は手根管開放術です。

原因③:DWがきつすぎる

DWがきつすぎるために、血圧が下がってしまってシャント肢の痛みやしびれを訴える場合もあります。

患者さんから「除水すると痛い」などといわれたら、DWがきつすぎるのかもしれません。

この場合、DWが適正であるかどうかCTR(心胸比)や血圧などから再評価しましょう。

 

というわけで、今回は透析中に指先のしびれや痛みが起こる原因を紹介しました。透析中に即座に対処できる方法はありませんが、症状が続くようでしたら手術などの根本的な治療が必要になることは頭にいれておきましょう。

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